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高校生たちの演劇

(庭のジニア・リネアリス-百日草の仲間)

昨日、午後3時前に帰宅して、NHKのBSを点けると、高校生の演劇をやっていた。NHKの番宣でチラッと情報は聞いていた。見るともなしに見ていて、どんどん引き込まれ、結局、午後6時まで見てしまった。

見たのは、「青春舞台2009-全国高等学校演劇優秀校 東京公演」であった。この夏の第55回全国高等学校演劇大会で優秀校に選ばれた4校の演劇を一挙に上演したものである。見始めたときは、優秀作品の青森中央高校の「ともことサマーキャンプ」の終り掛けで、そのあと、同じく優秀作品の松戸馬橋高校の「赤鬼」、最優秀作品の帯広柏葉高校の「これからごはん」の2作品はフルに見ることが出来た。

「赤鬼」は野田秀樹の脚本。有名な劇らしいので筋書はとにかく、商業演劇を見るようであった。「あの女」と白痴の兄とんび、あの女を狙うミズカネ、浜に現れた赤鬼が入り乱れて、フカヒレのスープを呑んで死んだ「あの女」の死に至る再現劇である。もとは4人の劇だが、学校演劇ゆえに、村人たちを含めた集団劇に構成されていた。

「これからごはん」はエチュード(即興劇)という手法によって造られた。状況や場面、人物の性格だけを設定し、台本無しで役者のアドリブを積み重ねて、少しずつ役者の動作や台詞を創造していく芝居である。一人暮らしの祖母が亡くなり、葬式の朝までの子供や孫たちのドラマである。さしたる事件も起らず、淡々と芝居を進めながら、観客を引き込んで放さない力がある。司会者はまるで小津安次郎の映画を見ているようだと評した。演劇では台詞をしゃべっている役者以外は目立たないようにじっとしていることが多いのだが、この演劇は出演者全員が祖母の遺品を出したり片付けたり、常に動いている。だからこの演劇は台詞をしゃべる人にスポットを当てるテレビ画面ではなくて、生の舞台で見てほしいという演劇評論家の話は頷けた。

45年前、高校2年生の秋、文化祭で演劇実行委員長をやったことを思い出す。亡くなった友人のY君が生徒会長をやっていて、そんな役割りが廻ってきた。参加したクラスが幾つくらいあったのか、どんな演劇が上演されたのか、演劇そのものもほとんど覚えていない。体育館で全校生徒を観客として上演された。審査員も先生方にお願いしたのだろうか。その中に演劇部も参加して同時に上演されたが、昨日テレビで見た高校生の演劇とは、格段にレベルが違った。

記憶に残っているエピソードが二つある。演劇の担当教師に、打ち合わせ時間を5時過ぎに決めて報告したところ、時間外は駄目だと言われた。教師も労働者の一人に過ぎないと気付かされ、大きな失望を感じた。

もう一つは、当時としてはちょっと派手な女子生徒が副委員長になって、廊下などでちょっとした打ち合わせの立ち話などもしたのだろう。そんな姿を見られたのか、ある時3年生の男子生徒に呼び止められ、「おれの女に手を出すな」という意味の言葉を投げられた。そんな気などさらさら無くて、とんだ誤解だと言ったのかどうか。校内にそんな世界もあったのだと驚いた記憶がある。

いずれも演劇とは無関係なエピソードである。
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