ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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ルーズベルトは「北方領土は日本保持」とする米極秘文書を無視した

2014-02-19 10:23:33 | 歴史
 わが国の北方領土は、ソ連が占領し、現在も後継国家ロシアが「第2次大戦の結果、自国領になった」と領有を主張している。この不法行為を正当化する根拠とされてきたのが、ヤルタ協定である。
 ヤルタ協定は、連合国首脳が交わした軍事協定にすぎず、条約ではない。国際法としての根拠をもっていない。ヤルタ密約とも呼ばれる。当事国が関与しない領土の移転は無効という国際法に違反しており、当事国だった米国も法的根拠を与えていない。1956年、共和党のアイゼンハワー政権は、ヤルタ秘密議定書は、「ルーズベルト個人の文章であり、米国政府の公式文書ではなく無効」との国務省声明を発表している。
 産経新聞2月6日の記事は、ヤルタ会談でルーズベルトが無視した極秘報告書について書いている。記事によると、戦前米国では、国務省がクラーク大学のブレイクスリー教授に委嘱して千島列島を調査し、1944年12月に「南千島(歯舞、色丹、国後、択捉の4島)は地理的近接性、経済的必要性、歴史的領土保有の観点から日本が保持すべきだ」との極秘報告書を作成した。そしてヤルタ会談の前にルーズベルト大統領とステティニアス国務長官に提出した。
 しかし、ルーズベルトは国務省の報告を読まず、進言を無視した。その理由は、米軍は日本本土上陸作戦になると、日本軍の抵抗で50万人の兵士が犠牲になると推定しており、ルーズベルトはソ連の参戦を望んでいたためだった。ハリマン駐ソ大使は、ルーズベルトに対し、ソ連に千島列島を与えるという合意に再考を促したが、ルーズベルトは「ロシアが対日戦の助っ人になってくれる大きな利益に比べれば、千島は小さな問題だ」と進言を退けたという。
 記事は、ワシントン・ポスト紙の元モスクワ支局長、マイケル・ドブズの近著『ヤルタからヒロシマへ』を紹介している。それによると、スターリンは「盗聴報告のほか、スパイがもたらす米国の説明文書も目にすることができた。共産主義の崩壊後、彼の個人ファイルにはクリール諸島(千島列島)のソ連への割譲に反対する44年12月の米国務省作成の内部文書が含まれていることが分かった。ルーズベルトはこうした問題で自国の専門家の見解を読む気にならなかったが、スターリンはあらゆる微妙な綾までむさぼり読んでいたのである」。そして「ルーズベルトが国務省の助言に従わないことを喜んだ」という。
 スターリンは、ルーズベルトが脳こうそくの一種であるアルバレス病のため、精神がもうろうとして正常な判断ができない状態であることを把握していた。そのうえ、ルーズベルト政権には200人を超すソ連のスパイや工作員が侵入していた。なかでも、ステティニアス国務長官の首席顧問としてヤルタに随行したアルジャー・ヒスは、ソ連の軍参謀本部情報総局(GRU)のエージェントとして、ヤルタ会談で重要な役割を担った。ヒスは、国務省を代表してほとんどの会合に出席し、ルーズベルトを補佐した。会談の前に、米国の立場に関する全ての最高機密ファイルと文書を与えられ、ヤルタ密約の草案を作成した。「ルーズベルトが国務省文書を一顧だにせず北方領土を引き渡した背景にスターリンの意をくんだヒスの働きがあったといえる」と記事は書いている。
 ヒスの暗躍については、拙稿「日本を操る赤い糸~田中上奏文・ゾルゲ・ニューディーラー等」の第9章「ヤルタ会談でもソ連スパイが暗躍」にも書いたところである。現代史の常識として、日本人はよく知るべきである。
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion07b.htm
 以下、記事を転載する。
 
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●産経新聞 平成26年2月6日

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140206/plc14020609370006-n1.htm
米極秘文書「北方四島は日本保持」 諜報駆使、スターリン熟読
2014.2.6 09:35

「ヤルタ密約」で主導権
 あす7日は北方領土の日。先月31日の日露次官級協議でロシア側は「北方四島は第二次大戦の結果、ロシア領になった」との従来の主張を繰り返した。ロシアが北方四島領有を正当化する根拠としてきたのが1945年2月のヤルタ会談で交わされた「ヤルタ密約」だ。会談直前に米国務省は「北方四島は日本が保持すべきだ」との報告書を作成しながら、ルーズベルト米大統領は一切目を通さず、逆に事前に入手したソ連のスターリン首相が熟読し、ルーズベルトが国務省の進言に従わないことを奇貨として、主導権を握って巧みに北方領土を奪ったことはあまり知られていない。
(岡部伸)

◆ルーズベルト無視
 国務省はクラーク大学のブレイクスリー教授に委嘱して千島列島を調査し、44年12月に「南千島(歯舞、色丹、国後、択捉の4島)は地理的近接性、経済的必要性、歴史的領土保有の観点から日本が保持すべきだ」との極秘報告書を作成、ヤルタ会談前にルーズベルト大統領とステティニアス国務長官に手渡した。
 ワシントン・ポスト紙の元モスクワ支局長、マイケル・ドブズ氏が上梓した近著『ヤルタからヒロシマへ』によると、スターリンは「盗聴報告のほか、スパイがもたらす米国の説明文書も目にすることができた。共産主義の崩壊後、彼の個人ファイルにはクリール諸島(千島列島)のソ連への割譲に反対する44年12月の米国務省作成の内部文書が含まれていることが分かった。ルーズベルトはこうした問題で自国の専門家の見解を読む気にならなかったが、スターリンはあらゆる微妙な綾までむさぼり読んでいたのである」。そして「ルーズベルトが国務省の助言に従わないことを喜んだ」という。
 またスターリンは往年の覇気を失ったルーズベルトの病名がアルバレス病(動脈硬化に伴う微小脳梗塞の多発)で、精神がもうろうとして正常な判断ができないほど悪化していたことを正確に把握していた。
 スターリンは、インテリジェンス(諜報)を駆使してルーズベルトと米国を丸裸にして、南樺太同様に「北方四島も日露戦争で奪われた」とルーズベルトを欺いたのである。
 では、なぜルーズベルトは国務省の進言を無視したのだろうか-。
 米軍は日本本土上陸作戦(ダウンフォール作戦)になると、日本軍の抵抗で50万人の兵士が犠牲になると推定しており、「背後」からソ連の参戦を望んだためだ。この当時は原爆が完成していなかった。
 米国は1941年4月、モスクワで日ソ中立条約を締結した際、スターリンが松岡洋右外相に「条約締結の見返りに千島列島の譲渡」を要求した、との日本の外交電報を傍受、解読していた。北方四島を含む千島列島に領土的野心を燃やすスターリンの歓心を買おうとしたともいえる。ソ連に大きく譲歩する合意に再考を促したハリマン駐ソ大使に対し、ルーズベルトは「ロシアが対日戦の助っ人になってくれる大きな利益に比べれば、千島は小さな問題だ」と進言を退けたという。
 ルーズベルトの背後で暗躍したのがソ連のスパイたちだった。ルーズベルト政権には200人を超すソ連のスパイや工作員が侵入していたことが米国家安全保障局(NSA)の前身がソ連の暗号を傍受・解読したヴェノナ文書で判明している。
 側近としてヤルタに同行したアルジャー・ヒスもその一人で、ソ連の軍参謀本部情報総局(GRU)のエージェントだった。
 ステティニアス国務長官の首席顧問としてヤルタに随行したヒスは、国務省を代表してほとんどの会合に出席し、病身の大統領を補佐した。会談19日前、米国の立場に関する全ての最高機密ファイルと文書を与えられ、ヤルタ協定の草案も作成している。そこで北方四島を含む千島列島引き渡しのアウトラインを描いた可能性が高い。ルーズベルトが国務省文書を一顧だにせず北方領土を引き渡した背景にスターリンの意をくんだヒスの働きがあったといえる。

◆プーチン氏も踏襲
 このヤルタ密約を根拠にソ連は、北方四島を占領し、現在も後継国家ロシアは「第二次大戦の結果、自国領になった」と北方領土を領有する歴史的正当性を主張し続けている。プーチン大統領も「ロシアが積極的な役割を果たして達成したヤルタ合意こそ世界に平和をもたらした」と評価し、31日の日露次官級協議でもヤルタ密約をサンフランシスコ講和条約、国連憲章の旧敵国条項などとともに根拠にあげたもようだ。
 しかし、そもそもヤルタ密約は、連合国首脳が交わした軍事協定にすぎず、条約ではないため国際法としての根拠をもっていない。さらに当事国が関与しない領土の移転は無効という国際法にも違反しており、当事国だった米国も法的根拠を与えていない。共和党アイゼンハワー政権は1956年、ヤルタ秘密議定書は、「ルーズベルト個人の文章であり、米国政府の公式文書ではなく無効」との国務省声明を発表。2005年にはブッシュ大統領が「史上最大の過ちの一つ」と批判している。
 「ヤルタ密約」が招いたのは北方領土問題だけではない。中国、北朝鮮などアジアに共産化を引き起こした。
 8日ロシア南部のソチで日露首脳会談が行われるが、北方領土問題の原点ともいえる「ヤルタ密約」を克服して国際的に合法な国境画定ができるかが鍵となりそうだ。
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関連掲示
・拙稿「日本を操る赤い糸~田中上奏文・ゾルゲ・ニューディーラー等」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion07b.htm