ほそかわ・かずひこの BLOG

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キリスト教122~東アジア・太平洋地域にワシントン体制を実現

2018-11-22 12:36:07 | 心と宗教
●東アジア・太平洋地域にワシントン体制を実現

 第1次世界大戦後、アメリカが国際連盟に加入しなかったのは、伝統的なアイソレイショニズムによる。アメリカの不干渉主義は、ヨーロッパの争いに関わらないことが独立と繁栄を維持する最善の策であるという考えに基づく。ただし、それはヨーロッパとの間の不干渉であり、他の地域に対しては、アメリカは積極的に進出した。フィリピン、グアム、ハワイ等がそうである。こうしたアメリカが第1次世界大戦後、積極的に東アジアや太平洋地域での国際秩序の形成を主導したのが、ワシントン会議である。
 ワシントン会議におけるアメリカの狙いは、主に三つあった。東アジアと太平洋地域で高まるナショナリズムへの対処、宿願であるシナの門戸開放、そして日本へのけん制である。
 そのうち最も注目したいのは、日本へのけん制である。わが国は、第1次大戦が始まると、日英同盟を根拠として、ドイツがシナから租借した山東省の膠州湾に進出した。また、中華民国の袁世凱政権に対して、21か条要求を突きつけた。ヨーロッパで消耗戦を続けている列強の隙を衝いて、シナ大陸での権益を拡大した。また、大戦後は、旧ドイツ領の南洋諸島の統治を国際連盟から委任された。国際連盟の常任理事国ともなり、有色人種の国でありながら、列強の一員となった。
 こうしたわが国に対し、アメリカは警戒感を表した。かつてペリー提督やハリス領事が開国させた日本が、東アジア、太平洋地域で勢力を増すのは、目ざわりだった。わが国は日露戦争でロシアに勝った。すると、アメリカは日本の台頭を警戒し、日本を仮想敵国として対日戦争に備える「オレンジ計画」の策定を開始した。そして日米対決の時に備えて、長期的な戦略を練っていた。また、シナ大陸への進出を狙うアメリカは、日本がイギリスと同盟関係にあることを嫌った。そこで、日本とイギリスの関係を絶ち、自国とイギリスの結束を強めようとした。
 第1次世界大戦後、アメリカは、東アジア・太平洋地域に関係するワシントン会議を主導した。この会議の結果、アメリカには海軍軍縮条約により、イギリスと同等の海軍力を保有することが認められた。また、米英仏日の間で太平洋諸島の現状維持を確認する四カ国条約が結ばれた。この条約は日英同盟を不要なものとして破棄させ、日本の後ろ盾をなくすものだった。アメリカは、日本の外交的な孤立を図ることに成功した。また、イタリアや中国などを加えた九カ国条約で、シナに対する門戸解放や機会均等を確認した。九カ国条約によって、アメリカは、日本がドイツから奪った山東省の権益を中華民国に返還させることに成功した。アメリカの巧妙な外交を前に、わが国はほとんどなすすべがなかった。
 ワシントン会議でつくられた体制をワシントン体制という。ヴェルサイユ体制と合わせて、ヴェルサイユ=ワシントン体制とも呼ぶ。ヴェルサイユ=ワシントン体制のもと、アメリカの対日政策は、排日運動へとエスカレートしていった。欧米では、黒人奴隷制の廃止後、黒人奴隷に替わる安価な労働力として、シナ人やインド人を利用した。日本人もまた仕事を求めて入国していた。しかし、第1次大戦後、アメリカは、日本人に対しては、差別を厳しくした。
 日露戦争後、カリフォルニアでは、排日運動が激しくなり、1913年には大統領の立法阻止を無視して、日本人の土地所有権、一部借地権が否認された。さらに20年には借地権を完全に否認する排日土地法が制定された。これが各州に広がりを見せた。
 22年には、アメリカの連邦最高裁は、帰化権剥奪に関する訴訟において、「黄色人種は帰化不能外人であって、帰化権はない」との判断を示した。この場合の黄色人種は、日本人を指す。しかも、この判決は、適用を過去に溯るという近代法の原則を無視したものだった。既にアメリカに帰化した者であっても、日系ということを理由に、その権利を剥奪された。第1次大戦でアメリカ軍兵士として従軍し、帰化権を得た日本人までが、権利を剥奪された。合衆国憲法の修正第14条「アメリカ合衆国で生まれた子どもは、すべてアメリカ人である」という条項には、ただし「日本人移民の子はアメリカで生まれてもアメリカ人とはしない」という補助第19条が付記された。さらに、24年には、日本人の移民を完全に禁止した。
 こうした露骨な排日政策は、日米戦争の遠因の一つとなる。排日政策は人種差別的なものである。そこには、キリスト教徒による非キリスト教徒への差別がある。ただし、根本動機はワシントン体制の形成と同じものである。すなわち、シナへの本格的な進出をめざすアメリカが、競争相手と成り得る日本を抑え込もうとしたのである。
 わが国は、アメリカによって外交的に孤立させられ、また排日運動を蒙るという厳しい風を受けることになった。

 次回に続く。

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