ほそかわ・かずひこの BLOG

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警察権と防衛力を持つ「海洋警備隊」の創設を~山田吉彦氏

2018-11-23 08:42:55 | 時事
 東海大学教授・山田吉彦氏は、 産経新聞平成30年10月24日の記事で、中国の動きを踏まえて、警察権と防衛力を持つ「海洋警備隊」の創設を提案している。
 山田氏によると、中国は海洋進出の過程で、海上警備体制の改革を進めてきた。2013年には、海上での法執行機関を統合し、日本の海上保安庁を規模や装備面でしのぐ「中国海警局」を創設した。今年7月には同局は中央軍事委員会の指導下にある中国人民武装警察部隊(武警)に編入され、「中国人民武装警察部隊海警総隊」となった。すなわち、「軍隊の一部に変貌し、人民解放軍や民兵と一体化して戦う組織に変わった」のである。
この中国海警局の改編は、米国の沿岸警備隊(USCG)に対抗したものである。「USCGは、国土安全保障省に属する法執行機関だが、米国が戦争状態となった場合は、大統領令により国防総省の指揮下に入る軍事機関」である。
 山田氏は、米国に対抗する中国の動きを踏まえて、次のように提案する。「広範囲な海域における海洋安全に寄与するには、内外の軍事的な機関と連携できるUSCGに匹敵する警察権と防衛力を併せ持った「海洋警備隊」の創設が必要である」と。
 山田氏は、世界の海は海賊の重武装化や凶悪化が進み、海保が警察機関として対応できる能力をはるかに超えており、南シナ海では「中国の軍拡で、アジアの海洋安全保障は警察権を重視した体制から軍事的な体制へと移行している」指摘している。
 山田氏は、記事の結尾部に「国際社会からの期待に応え、新設された陸上自衛隊水陸機動団などとも連携して、日本の海、世界の海の安全に寄与する体制を構築すべきだと考える。海洋安全保障における国際水準に対応できなければ、日本だけが取り残されることになりかねない」としか書いていない。
 だが、この一節より前の部分に、「海上保安庁法第25条は海保が軍隊として組織、訓練され、または軍隊の機能を持つことを禁じている」と書いており、海洋警備隊の創設には、海上保安庁法の改正が必要と思われる。
 以下は、山田氏の記事の全文。

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●産経新聞 平成30年10月24日

https://www.sankei.com/column/news/181024/clm1810240004-n1.html
【正論】防衛力持つ「海洋警備隊」創設を 東海大学教授・山田吉彦
2018.10.24 12:30

 ベトナムのフック首相は10月6日、ハノイで日本の記者団に対し「航行の自由や、平和と安定の維持に向け、日本が引き続き役割を担うことを期待する」と発言した。フィリピン、インドネシアなども日本の海洋秩序の構築に対する貢献を求めている。日本は、中国に脅かされているアジア海域の安定のために行動を起こさなければならない。それは、日本のシーレーンを守ることと一体である。

≪沿岸上陸作戦を想定する中国≫
 中国の覇権戦略は、中国経済圏の拡大と軍事展開を同時に進めるというものだ。艦艇や武器を充実させ、アジア、アフリカ諸国の港湾を経済的に支配し、海洋拠点を形成して「一帯一路」を進めることで、中華民族の復興を目指している。
 しかし、強引な経済進出は各国に警戒心を抱かせ、中国からの経済支援や共同事業を敬遠する風潮も生んでいる。米国は政治経済・安全保障面で対中抑止を強めており、中国は膨張した海洋進出を見直し、南シナ海での海洋支配の地固めに重点を置き始めている。
 現在、南シナ海スプラトリー諸島のスービ礁では400棟以上の建造物、3000メートル級滑走路、ミサイル発射台などの軍事施設が確認されている。またミスチーフ礁とファイアリークロス礁にも同様の施設が建造されている。
 中国は海洋進出の過程で、海上警備体制の改革を進めてきた。2013年、海上での法執行機関を統合し、日本の海上保安庁を規模や装備面でしのぐ「中国海警局」を創設した。さらに今年7月には、同局を中央軍事委員会の指導下にある中国人民武装警察部隊(武警)に編入し、「中国人民武装警察部隊海警総隊」となった。
 対外的な呼称は「中国海警局」だが、軍隊の一部に変貌し、人民解放軍や民兵と一体化して戦う組織に変わったのだ。
中国海警局の改編は、米国の沿岸警備隊(USCG)に対抗したものである。USCGは、国土安全保障省に属する法執行機関だが、米国が戦争状態となった場合は、大統領令により国防総省の指揮下に入る軍事機関だ。
 中国海警局は常時、人民解放軍と一元化した指揮系統を持ち、USCGよりも速やかに軍事展開できるとされる。
 また、強襲上陸による支配地の拡大と島嶼(とうしょ)における拠点防衛などを任務とする海軍陸戦隊を、20年に3万人にまで増員する計画だ。中国海警局と陸戦隊の拡充は、沿岸上陸作戦を想定したものであり、アジア海域に対して、さらなる脅威を与えている。

≪海保の警察力では追いつかない≫
 わが国では海保と自衛隊が連携するため、自衛隊法第82条で海上における日本人の生命財産の保護や、治安維持に必要があると防衛相が判断した場合は、首相の承認を得て「海上警備行動」を発令する。海保が行う任務を自衛隊が遂行し、海保は防衛相の指揮下に入ると想定されている。
 しかし、海保は国際水準では「準軍事機関」に相当するものの、防衛的な役割で軍事的任務に就くことは許されていない。海上保安庁法第25条は海保が軍隊として組織、訓練され、または軍隊の機能を持つことを禁じている。
 1950年、海保は国連軍の要請により朝鮮戦争における掃海活動に従事し、その際に触雷して掃海艇が沈没。1人が死亡し18人が負傷した。死者を出したことは海保にとって重圧となり、以後、純粋な警察機関として、アジア各国の海上警備協力をリードする役割を担った。特に当初は、海賊対策に効力を発揮した。
 しかし、世界の海は海賊の重武装化や、イエメン沖での反政府組織によるタンカーへの砲撃などで凶悪化が進み、海保が警察機関として対応できる能力をはるかに超えてしまった。さらに南シナ海も中国の軍拡で、アジアの海洋安全保障は警察権を重視した体制から軍事的な体制へと移行している。

≪国際水準に対応した体制に≫
 日本国内においても、外国船による管轄海域への侵入や密漁、北朝鮮船の漂着などに対応する任務が拡大している。政府は海保の人員を増強し、2018年度の定員は前年度比250人増の1万3994人となった。しかし、実数は約1万2700人で、1000人を超える欠員を補いながら「日本の海」を守っているのが実情だ。海保の任務はあまりにも多く、すでに、遠洋におけるシーレーンの安全確保は海保の能力の範疇(はんちゅう)を超えている。
 広範囲な海域における海洋安全に寄与するには、内外の軍事的な機関と連携できるUSCGに匹敵する警察権と防衛力を併せ持った「海洋警備隊」の創設が必要である。領海は海保、その外側は新組織に役割を分担するのも一案だ。
 国際社会からの期待に応え、新設された陸上自衛隊水陸機動団などとも連携して、日本の海、世界の海の安全に寄与する体制を構築すべきだと考える。海洋安全保障における国際水準に対応できなければ、日本だけが取り残されることになりかねない。(やまだ よしひこ)
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