ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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ユダヤ14~性愛と結婚、教育、労働

2017-02-19 08:49:37 | ユダヤ的価値観
●性愛と結婚

 ユダヤ教では、重要な戒律として、家族を形成するために結婚することが定められている。神の創造の御業を讃え、生命を肯定し、現世を志向し、子孫繁栄を願うからである。性衝動や性行為は自然なものとし、キリスト教におけるように必要悪とは考えない。夫婦の性行為はそれを歪めることが罪であるとされる。快楽を伴わない性交もまた罪とされる。祭司にも預言者にも、一般的な戒律としては性愛を禁止していない。戒律を最も厳格に守る正統派では、多産を神の御心にかなうことと考え、避妊を一切行わない。
 ユダヤ民族は各地に離散し、迫害を受けてきた。苛酷な運命のもとで民族が生き残るためにも、結婚・出産が重視されてきたのだろう。性愛と結婚に関する戒律は、個々の家族が存続することより、民族の存続を目指すものと考えられる。

●教育

 ユダヤ教は啓典宗教であり、文字を読む能力を必須とする。そのため、ユダヤ人は近代以前から世界の諸民族の中で識字率が例外的に高く、教育に力を入れ、知性を尊重してきた。教育こそが民族を守る手段と考え、熱心に子供に教育を授けてきた。他の民族では大衆のほとんどが文盲だった紀元前から、ユダヤ人共同体では授業料のない公立学校が存在していた。紀元後1世紀には、すべてのユダヤ人男子は6歳になったらユダヤ人学校で学ばなければならないという布告が全ユダヤ人に通達された。その結果、ユダヤ人男子は識字・計算能力をほぼ100%の割合で身につけることになった。
 知的能力の高さは、祖国を失ったディアスポラ(離散民)である彼らが、諸民族の間で生き続けるために必要だった。諸民族間の通訳や商業は、彼らが古代から得意とした仕事である。とりわけ金融に関する知識・技術は、西欧でユダヤ人が生き延びる術となり、彼らはそれを用いて社会的地位を高め、各国で政治的・経済的な影響力を振るうまでになった。
 家庭教育では、父親が先導して子供にタルムードなどを教える。子供を立派なユダヤ人に育てた者は、永遠の魂を得ると信じられている。ユダヤ教徒は非常に教育熱心で、子供をよい学校に行かせるためには借金をすることも当然と考える。
 ユダヤ人社会の家族形態である直系家族は、伝統的な社会が近代化し、さらに脱工業化社会になっても、親子の結びつきが強く、家族の団結が強い。それが子供の勉学には有利に働き、社会的職業的な上昇を促す。ユダヤ人が、アメリカ社会で、大学に多数進学しているのは、そのためである、とトッドは指摘している。

●労働
 
 ユダヤ教は、原罪によって、男には食べ物を得るための労働が課せられたとする。神はアダムに向かって「お前は、生涯食べ物を得ようと苦しむ」(『創世記』)と言ったという。だが、またこれをより積極的に、人間は創造主の代わりに労働をする存在として作られたとも考える。労働は天地万物を創造した神の行いのひとつであり、神聖な行為とされている。労働により得た賃金や成果は、その一部を創造主に捧げなければならない。
 安息日にすべての労働を休むのは、神の恵みの業を思い起こすためである。安息日には、その主旨のもとに多くのタブーがある。決められた歩数を超える歩行、傘をさすこと、金銭についての話、買い物、書くこと、料理などである。現代生活で言えば、通信機器・電化製品・カメラの使用、自動車・バイクの運転なども禁じられている。

●食事と飲酒

 食事には、細かい戒律がある。カシュルート(適正食品規定)に従って、不潔と定められた豚肉などの食用、肉とミルクの混食などが禁じられている。こうした規定は、選民の身分を守るための戒律とされる。
 飲酒は禁じられていない。ワインは喜びの象徴であり、祭礼のたびに飲まれる。
 安息日と祝祭日の食事は、家庭で行わなければならないとされている。

●暦

 ユダヤ教では、天地の創造を紀元前3761年10月7日とし、この日を紀元元年1月1日とする。
 ユダヤ暦は太陰暦で、新年は太陽暦の9~10月に始まる。現在もこの暦が使用されている。いわゆる西暦はイエス=キリストの出現を基準としたキリスト教暦である。イエスをメシアと認めないユダヤ教が、ユダヤ暦を捨ててキリスト教暦に替えることは、教義上あり得ない。西方キリスト教による近代西洋文明が普及した社会において生活・活動するため、便宜上、ユダヤ暦と西暦の併用が行われている。

 次回に続く。

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