ほそかわ・かずひこの BLOG

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ユダヤ149~ハンチントンの日本文明への期待

2018-01-09 09:21:13 | ユダヤ的価値観
ハンチントンの日本文明への期待

 20世紀の末頃から、日本文明に世界平和への貢献を期待する外国人有識者が目立って増えている。そのうちの一人が、国際政治学者のサミュエル・ハンチントンである。
 ハンチントンは、1996年に刊行した著書『文明の衝突』で、冷戦終結後の世界を分析し、文明は衝突の元にもなりうるが、共通の文明や文化を持つ国々で構築される世界秩序体系の元にもなりうる、と主張した。主にカトリック及びプロテスタントによる西洋文明とイスラーム文明の衝突の可能性とその回避を論じた。ハンチントンは、文明内での秩序維持は、突出した勢力、すなわち中核国家があれば、その勢力が担うことになる、と説く。また、文明を異にするグループ間の対立は、各文明を代表する主要国の間で交渉することで解決ができるとし、大きな衝突を回避する可能性を述べた。そして、日本文明に対して、世界秩序の再生に貢献することを、ハンチントンは期待した。
 ハンチントンは「日本国=日本文明」であり、一国一文明という独自の特徴を持っていることを指摘した。「世界のすべての主要な文明には、2ヶ国ないしそれ以上の国々が含まれている。日本がユニークなのは、日本国と日本文明が合致しているからである。そのことによって日本は孤立しており、世界のいかなる他国とも文化的に密接なつながりをもたない」と、ハンチントンは書いている。
 『文明の衝突』は、2001年(平成13年)9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件を予測した本として、世界的に評判となった。事件の翌年である2002年(平成14年)に、ハンチントンは『引き裂かれる世界』を刊行し、次のように日本への期待を述べた。
 「日本には自分の文明の中に他のメンバーがいないため、メンバーを守るために戦争に巻き込まれることがない。また、自分の文明のメンバー国と他の文明との対立の仲介をする必要もない。こうした要素は、私には、日本に建設的な役割を生み出すのではないかと思われる。
 アラブの観点から見ると、日本は西欧ではなく、キリスト教でもなく、地域的に近い帝国主義者でもないため、西欧に対するような悪感情がない。イスラーム教と非イスラーム教の対立の中では、結果として日本は独立した調停者としての役割を果たせるユニークな位置にある。また、両方の側から受け入れられやすい平和維持軍を準備でき、対立解消のために、経済資源を使って少なくともささやかな奨励金を用意できる好位置にもある。
 ひと言で言えば、世界は日本に文明の衝突を調停する大きな機会をもたらしているのだ」と。
 私は、ハンチントンの上記の指摘に基本的に同意する。ハンチントンは、西洋文明とイスラーム文明の衝突について、日本文明が「建設的な役割」「調停者としての役割」を果たすことを期待する。だが、ハンチントンは、西洋文明を語る際、ユダヤ文明について語らず、アメリカ合衆国を語る際、イスラエルについて語らなかった。その点を私は批判してきた者だが、日本文明が「建設的な役割」「調停者としての役割」を果たし得るのは、ユダヤ文明とイスラーム文明の間においても、同様であることを、ここであらためて指摘したい。より具体的に言えば、日本文明は、アメリカ=イスラエル連合及びその提携国とイスラーム文明諸国の衝突を回避し、中東に平和をもたらし、世界に安定をもたらすという非常に重要な役割を担い得る潜在的能力を持っているということである。それは、日本文明の一国一文明というハンチントンが指摘した特徴だけでなく、日本文明の共存調和を重んじる、より本質的な特徴から発する能力である。ハンチントンは、その本質的な特徴についてほとんど研究を行っていない。

 次回に続く。

関連掲示
・拙稿「ハンチントンの『文明の衝突』と日本文明の役割」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion09j.htm

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