ほそかわ・かずひこの BLOG

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ユダヤ146~ユダヤ教の内部からの改革に期待する

2018-01-02 08:48:19 | ユダヤ的価値観
●ユダヤ教の内部からの改革に期待する

 ユダヤ的価値観は、ユダヤ教の教義に基づいて発達した価値観である。それゆえ、ユダヤ的価値観の超克のためには、まずユダヤ教の内部から改革が起こることが期待される。
 ユダヤ教は民族宗教であり、ユダヤ民族のみが救われると説く。一方、ユダヤ教の中から現れたキリスト教民族を超えた教えである。ユダヤ教の強い影響のもとに現れたイスラーム教も同様である。それゆえ、これら二つの宗教は、世界宗教になり得た。そして、民族を超えてその教えを信じる者は救われると説く。この点において、ユダヤ教との違いは大きい。
 ユダヤ教とキリスト教は長い抑圧や抗争の歴史の果てに、ある程度、協調的となり、一部では融合が進んでいる。一方、ユダヤ教・キリスト教とイスラーム教との間には歴史的な対立があり、その深刻さは20世紀後半から度合いを増している。その対立は、セム及びアブラハムの子孫同士の戦いであり、異母兄弟の骨肉の争いである。争いは互いの憎悪を膨らませ、報復が報復を招き、中東を中心として、抜き差しならない状態となっている。そのことが国際社会の不安定の重大な要因となっている。その焦点が、イスラエル=パレスチナ紛争である。
 中東に平和を実現できるかどうかは、なにより宗教間の問題である。この問題は、中東だけでなく、世界的な広がりを持つ。長く世界最大の宗教であり続けているのは、キリスト教である。キリスト教は、現在も世界で最も多くの信者数を持つ。これに次ぐのがイスラーム教であり、イスラーム教は、今日の世界で最も信者数が増加している宗教である。世界で最も人口が増加しているアジア・アフリカで教勢を強めており、人口の増加とともに信者数も増加している。現在世界人口のおよそ4人に1人がイスラーム教徒と言われる。今後、ますますイスラーム教徒は絶対的にも相対的にも増えていくだろう。
 米調査機関ピュー・リサーチ・センターは、2015年(平成27年)の調査報告で、2070年にはイスラーム教徒とキリスト教徒がほぼ同数になり、2100年になるとイスラーム教徒が最大勢力になる、という予測を発表している。これに比べ、ユダヤ教徒は、キリスト教徒、イスラーム教徒に比べ、信者数がその100分の1以下であり、特にイスラーム教に対しては、相対比が今後、ますます小さくなっていくと予想される。こうした長期的な人口動態は、ユダヤ教とイスラーム教の関係に少なからぬ影響を与えるだろう。
 今後、西洋文明、東方正教文明、ユダヤ文明等のユダヤ=キリスト教系諸文明とイスラーム文明の対立・抗争が今よりもっと深刻化していくか、それとも協調・融和へと向かっていくか。このことは、人類全体の将来を左右するほどに重大な問題である。その影響力の大きさは、米国と中国の関係が世界にもたらす影響力の大きさと比較されよう。
 中東に平和と安定をもたらすことができないと、世界平和は実現しない。平和を維持するための国際的な機構や制度を整備・強化していっても、中東で対立・抗争が続いていると、そこでの宗教戦争・民族戦争に世界全体が巻き込まれる可能性がある。最悪の場合は、セム系一神教文明群における対立・抗争から核兵器を使用した第3次世界大戦が勃発するおそれがある。
 いかに中東で平和を実現するか。ユダヤ教とイスラーム教の争い、ユダヤ人・アラブ人・イラン人・クルド人等の民族間の争い等を収め、いかに地域の共存共栄を実現するか。その道が求められている。
 ユダヤ教は、排他的な性格の強い一神教であり、ユダヤ教徒は自分たちのみが神に選ばれた特別の民族だという選民思想を持つ。また世の終わりにおいて、メシアが出現し、ユダヤ教徒のみが救われ、メシアのもとで地上天国を作るという生存闘争的な思想を持つ。
 この排他的な教義と闘争的な思想が、他の宗教や思想と共存調和できるものへと発展することができるように、ユダヤ教の中から改革が行われていかないと、ユダヤ教と他宗教、ユダヤ民族と他の民族、及びイスラエルと他の国々が協調・融和できるようにはならないだろう。
 ユダヤ民族が生き延びるためには、人類の滅亡を避けなければならない。人類が滅亡する最悪の事態になったときは、ユダヤ民族もまた絶滅する。その愚を避けるには、ユダヤ民族自身が、自らも生き延び、また人類も生き延びる道を求めて、改革に踏み出さねばならない時に来ている。その改革の動きに期待する。

 次回に続く。

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