菅義偉首相は、科学者をメンバーとする政府機関である日本学術会議が推薦した新会員候補のうち6人の任命を見送った。これは、英断だと思う。この日本の安全保障、さらには世界の安全保障に関わる関わる問題だからである。「学問の自由」を隠れ蓑にした反国家的な活動を、政府は容認すべきではない。本件に関する有識者の発言を紹介し、私見を述べる。
●「学問の自由」の侵害ではない
科学史家・科学哲学者として名高い村上陽一郎氏の発言
「日本学術会議次期会員の推薦候補の一部を内閣が任命しなかった事について、出発点から、『学問の自由の侵害』と捉え、糾弾するのが新聞輿論のようです。一部の学者や識者層も、その立場で動こうとしているようです。しかし、客観的に見れば、この主張は全く的外れであることは明瞭で、間違いの根本は『現在の』日本学術会議に対して広がっている幻想、あるいは故意の曲解にあります。
日本学術会議はもともとは、戦後、総理府の管轄で発足しましたが、戦後という状況下で総理府の管轄力は弱く、七期も連続して務めたF氏を中心に、ある政党に完全に支配された状態が続きました。特に、1956年に日本学士院を分離して、文部省に鞍替えさせた後は、あたかも学者の自主団体であるかの如く、選挙運動などにおいても、完全に政党に牛耳られる事態が続きました。
今、思えば、そうした状態を見ぬ振りで放置した研究者や会員に大きな責任があるのですが、見かねた政府が改革に乗り出し、それなりの手を打って来ました。1984年に会員選出は学会推薦とすることが決まり、2001年には総務省の特別機関の性格を明確にし、2005年には、内閣府の勢力拡大とともに、総理直轄、実際には内閣府管轄の特別機関という形で、日本学術会議は完全に国立機関の一つになりおおせました。
もちろん、この動きに反対する活動も無かったわけではないのですが、政党支配に不満を持つ一部会員は、この政府の動きを支持し、一般の会員の大部分はここでも成り行きに任せた状態のままでした。
その結果として、今回、菅首相が主張する、日本学術会議は国立の機関として、首相・内閣府の管轄下にあること、その会員は(特別)公務員としての立場にあること、その任命の権限は内閣・首相にあること、といった内容は現行の規定に従えば、まず疑問の余地のないところです。
実際、今回の件で、自分の学問の自由を奪われた人は、一人もいません。強いていえば、任命を見送られた方の中で、学術会議会員の資格の欲しかった方は、希望の就職の機会を奪われたことになるわけですが、それも就職の際には、常に起こり得ることと言わねばなりませんし、どんな推薦があっても採用されないという人は出るものです。採用されなかった人に、その理由を細々と論って説明する義務は、選考側には通常は無いはずではないでしょうか。
そうした事情を抜きにして『学問の自由』を訴えるのは、完全に問題のすり替えであって、学問の自由の立場からすれば、却ってその矮小化につながる恐れなしとしません。むしろ、学術会議の会員になること自体が、ある立場からすれば、学問の自由に反する行為になる可能性さえあるのですから」
文中の「ある政党」とは、日本共産党であることは明らかである。村上氏は事実に基づく科学的思考の枠組みを研究する学者なのだから、一個の事実として政党名を明示してほしかった。
評論家・石平氏のツイート
「学術会議任命見送りの件、任命権は首相にある以上任命しないのも法的に定められた首相の権限だ。学者たちが今まで任命を受けていることは、要するに彼らも首相の任命権を認めていること。任命してくれる時任命権を認めるが、任命してくれないとけしからんという彼らの論理はまるで駄々っ子ではないか」
「学術会議任命見送りの一件、一部のマスコミや学者本人が「学問の自由」云々と言うが、それは全く別々の問題。有給の学術会議のメンバーにならないだけのことで、学者たちの学問の自由に何の支障も生じない。まさか、税金からの報酬のある仕事を失ったから「学問の自由」も失うと言うのか」
イスラーム思想研究者・飯山陽氏のツイート
「大学に所属する特定の研究者に権威と公金を与えるのを政府が承認しなかったからといって、社会が劣化などするわけがない。安保法制が施行されれば日本は戦争になる、などとウソで人々の不安を煽り、日本の安全保障を損なわせようとする活動家らにカネと権威を与えるほうが、よほど社会を劣化させよう」
次回に続く。
************* 著書のご案内 ****************
『人類を導く日本精神~新しい文明への飛躍』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/cc682724c63c58d608c99ea4ddca44e0
『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/d4dac1aadbac9b22a290a449a4adb3a1
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●「学問の自由」の侵害ではない
科学史家・科学哲学者として名高い村上陽一郎氏の発言
「日本学術会議次期会員の推薦候補の一部を内閣が任命しなかった事について、出発点から、『学問の自由の侵害』と捉え、糾弾するのが新聞輿論のようです。一部の学者や識者層も、その立場で動こうとしているようです。しかし、客観的に見れば、この主張は全く的外れであることは明瞭で、間違いの根本は『現在の』日本学術会議に対して広がっている幻想、あるいは故意の曲解にあります。
日本学術会議はもともとは、戦後、総理府の管轄で発足しましたが、戦後という状況下で総理府の管轄力は弱く、七期も連続して務めたF氏を中心に、ある政党に完全に支配された状態が続きました。特に、1956年に日本学士院を分離して、文部省に鞍替えさせた後は、あたかも学者の自主団体であるかの如く、選挙運動などにおいても、完全に政党に牛耳られる事態が続きました。
今、思えば、そうした状態を見ぬ振りで放置した研究者や会員に大きな責任があるのですが、見かねた政府が改革に乗り出し、それなりの手を打って来ました。1984年に会員選出は学会推薦とすることが決まり、2001年には総務省の特別機関の性格を明確にし、2005年には、内閣府の勢力拡大とともに、総理直轄、実際には内閣府管轄の特別機関という形で、日本学術会議は完全に国立機関の一つになりおおせました。
もちろん、この動きに反対する活動も無かったわけではないのですが、政党支配に不満を持つ一部会員は、この政府の動きを支持し、一般の会員の大部分はここでも成り行きに任せた状態のままでした。
その結果として、今回、菅首相が主張する、日本学術会議は国立の機関として、首相・内閣府の管轄下にあること、その会員は(特別)公務員としての立場にあること、その任命の権限は内閣・首相にあること、といった内容は現行の規定に従えば、まず疑問の余地のないところです。
実際、今回の件で、自分の学問の自由を奪われた人は、一人もいません。強いていえば、任命を見送られた方の中で、学術会議会員の資格の欲しかった方は、希望の就職の機会を奪われたことになるわけですが、それも就職の際には、常に起こり得ることと言わねばなりませんし、どんな推薦があっても採用されないという人は出るものです。採用されなかった人に、その理由を細々と論って説明する義務は、選考側には通常は無いはずではないでしょうか。
そうした事情を抜きにして『学問の自由』を訴えるのは、完全に問題のすり替えであって、学問の自由の立場からすれば、却ってその矮小化につながる恐れなしとしません。むしろ、学術会議の会員になること自体が、ある立場からすれば、学問の自由に反する行為になる可能性さえあるのですから」
文中の「ある政党」とは、日本共産党であることは明らかである。村上氏は事実に基づく科学的思考の枠組みを研究する学者なのだから、一個の事実として政党名を明示してほしかった。
評論家・石平氏のツイート
「学術会議任命見送りの件、任命権は首相にある以上任命しないのも法的に定められた首相の権限だ。学者たちが今まで任命を受けていることは、要するに彼らも首相の任命権を認めていること。任命してくれる時任命権を認めるが、任命してくれないとけしからんという彼らの論理はまるで駄々っ子ではないか」
「学術会議任命見送りの一件、一部のマスコミや学者本人が「学問の自由」云々と言うが、それは全く別々の問題。有給の学術会議のメンバーにならないだけのことで、学者たちの学問の自由に何の支障も生じない。まさか、税金からの報酬のある仕事を失ったから「学問の自由」も失うと言うのか」
イスラーム思想研究者・飯山陽氏のツイート
「大学に所属する特定の研究者に権威と公金を与えるのを政府が承認しなかったからといって、社会が劣化などするわけがない。安保法制が施行されれば日本は戦争になる、などとウソで人々の不安を煽り、日本の安全保障を損なわせようとする活動家らにカネと権威を与えるほうが、よほど社会を劣化させよう」
次回に続く。
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『人類を導く日本精神~新しい文明への飛躍』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/cc682724c63c58d608c99ea4ddca44e0
『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
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