5月末から今月中旬にかけて、私は、東日本大震災に関する講話を、鎌倉、都内、秋田の各地で都合4回行なった。主題は「日本の復興は日本精神の復興から~大震災による国難を乗り越えよう」。その要旨を掲載する。
●東日本大震災による国難にある日本
東日本大震災は、死者1万5千人以上、行方不明者約8千人(平成23年6月10日現在)という多大な犠牲者をもたらした。また、政府は道路・建物等の直接的被害を16~25兆円と概算する。日本経済への影響は甚大であり、損失はその数倍に達すると見られる。まさに戦後最大の惨事であり、わが国が直面している国難である。
国難とは、一国の危機、国全体の危機をいう。国家・民族の存亡の危機である。歴史的には、元寇、黒船来航、日露戦争、大東亜戦争等が挙げられる。昭和40年代には、共産化と第三次世界大戦の危機というわが国史上最大の国難があり、またそれは人類存亡の危機でもあった。
わが国は東日本大震災によって新たな国難に直面している。大震災後、3ヶ月以上過ぎたが、余震はなお続いている。原発事故は収束しておらず、まだ予断を許さない状態にある。ゴールデンウィーク後の変化として、5月5日に1号機に人が入り、次いで2~3号機にも入った。それによって中の状態がわかった。東京電力は1号機は完全に「炉心溶融(メルトダウン)」しており、2~3号機も炉心溶融している可能性があると発表した。
原子力保安院は、溶け落ちた燃料によって圧力容器が破損したのは、1号機は3月11日午後8時ごろ、2号機は14日午後10時50分ごろ、3号機は14日午後10時10分ごろと推定している。
福島原発は、11日夜から14日夜の時点で、極めて深刻な事態になっていたのである。しかも、政府は、炉心溶融より深刻な「溶融貫通(メルトスルー)」が起こった可能性を認めている。溶融貫通まで行っていれば、もし格納容器の中に溶けた燃料が一挙に大量に落下していたら、決定的な大事故となっただろう。
高温の燃料が格納容器に落下した瞬間に、格納容器の水から大量の水蒸気が発生すると、原子炉は爆発する。これを「水蒸気爆発」という。福島では、この「水蒸気爆発」が3月11日から14日にかけて起こっていたかもしれない。そうなっていたら、原子炉から厖大な量の放射性物質が飛散し、首都圏を含む地域に、深刻な被害をもたらしただろう。
幸い、こうした破局的な事態は避けられていた。溶融した核燃料のほとんどは、圧力容器の底に溜まって、水中で徐々に冷却されていった。東日本の広範囲で多数の人命が失われるような、決定的な大事故にはいたらずに済んだ。私は、人々の祈りが通じて、日本はギリギリのところで、奇蹟的に守られたのではないかと思う。
ただし、国難はなお続いている。今、厳しい状況にあるのは、電力の供給不足である。大震災で54基の原発のうち15基が壊れたり、止まったりした。電力各社は定期検査終了後、地元に配慮し、再稼働を見合わせている。6月12日時点で、54基中稼動しているのは17基のみ。夏の電力不足が懸念されるが、さらに停止する原発が続く見通しである。このまま行くと、今年中に定期点検でさらに10基停止し、年末には稼動しているのが7基のみ。9割近い47基が停止。来春には全部停止となる。原発が占めていた全供給量の約3割分を火力・水力等でどこまで補えるか。電力供給不足の長期化・深刻化は、日本の経済、国民の生活に極めて深刻な影響をもたらすおそれがある。
日本国民は、この事態を真剣に受け止め、国難を乗り越えるために、一致協力しなければならない。そこで重要なものこそ、日本精神の復興である。
次回に続く。
●東日本大震災による国難にある日本
東日本大震災は、死者1万5千人以上、行方不明者約8千人(平成23年6月10日現在)という多大な犠牲者をもたらした。また、政府は道路・建物等の直接的被害を16~25兆円と概算する。日本経済への影響は甚大であり、損失はその数倍に達すると見られる。まさに戦後最大の惨事であり、わが国が直面している国難である。
国難とは、一国の危機、国全体の危機をいう。国家・民族の存亡の危機である。歴史的には、元寇、黒船来航、日露戦争、大東亜戦争等が挙げられる。昭和40年代には、共産化と第三次世界大戦の危機というわが国史上最大の国難があり、またそれは人類存亡の危機でもあった。
わが国は東日本大震災によって新たな国難に直面している。大震災後、3ヶ月以上過ぎたが、余震はなお続いている。原発事故は収束しておらず、まだ予断を許さない状態にある。ゴールデンウィーク後の変化として、5月5日に1号機に人が入り、次いで2~3号機にも入った。それによって中の状態がわかった。東京電力は1号機は完全に「炉心溶融(メルトダウン)」しており、2~3号機も炉心溶融している可能性があると発表した。
原子力保安院は、溶け落ちた燃料によって圧力容器が破損したのは、1号機は3月11日午後8時ごろ、2号機は14日午後10時50分ごろ、3号機は14日午後10時10分ごろと推定している。
福島原発は、11日夜から14日夜の時点で、極めて深刻な事態になっていたのである。しかも、政府は、炉心溶融より深刻な「溶融貫通(メルトスルー)」が起こった可能性を認めている。溶融貫通まで行っていれば、もし格納容器の中に溶けた燃料が一挙に大量に落下していたら、決定的な大事故となっただろう。
高温の燃料が格納容器に落下した瞬間に、格納容器の水から大量の水蒸気が発生すると、原子炉は爆発する。これを「水蒸気爆発」という。福島では、この「水蒸気爆発」が3月11日から14日にかけて起こっていたかもしれない。そうなっていたら、原子炉から厖大な量の放射性物質が飛散し、首都圏を含む地域に、深刻な被害をもたらしただろう。
幸い、こうした破局的な事態は避けられていた。溶融した核燃料のほとんどは、圧力容器の底に溜まって、水中で徐々に冷却されていった。東日本の広範囲で多数の人命が失われるような、決定的な大事故にはいたらずに済んだ。私は、人々の祈りが通じて、日本はギリギリのところで、奇蹟的に守られたのではないかと思う。
ただし、国難はなお続いている。今、厳しい状況にあるのは、電力の供給不足である。大震災で54基の原発のうち15基が壊れたり、止まったりした。電力各社は定期検査終了後、地元に配慮し、再稼働を見合わせている。6月12日時点で、54基中稼動しているのは17基のみ。夏の電力不足が懸念されるが、さらに停止する原発が続く見通しである。このまま行くと、今年中に定期点検でさらに10基停止し、年末には稼動しているのが7基のみ。9割近い47基が停止。来春には全部停止となる。原発が占めていた全供給量の約3割分を火力・水力等でどこまで補えるか。電力供給不足の長期化・深刻化は、日本の経済、国民の生活に極めて深刻な影響をもたらすおそれがある。
日本国民は、この事態を真剣に受け止め、国難を乗り越えるために、一致協力しなければならない。そこで重要なものこそ、日本精神の復興である。
次回に続く。
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