東日本大震災で全国の54基の原発のうち15基が壊れたり、止まったりした。原発は関係法規により13ヶ月に1回定期点検を行わねばならない。それゆえ、大震災後も順次、定期点検に入っている。普通であれば、点検終了後、再稼動されるのだが、電力各社は地元の合意が得られず、検査終了後の再稼働をできていない。
日本原子力技術協会のサイトで、ほそかわが調べたところ、6月5日時点で、54基中稼動しているのは17基のみ。68.5%に当たる37基が停止している。
http://www.gengikyo.jp/status/status1.html
電力需要が最も多いのは、夏である。ピークは7月。来月である。電力供給不足に対応するため、企業や国民に節電が呼びかけられているが、原発は次々に定期点検に入る。そのまま地元の合意を得られずに再稼動できないものが増えるだろう。
全国の原発立地道県でつくる「原子力発電関係団体協議会」は、政府に「原子力発電の安全確保に関する要請書」を提出した。政府の回答には説得力がなく、国の安全基準に不信感を募らせる自治体との間で、膠着状態にあると報じられる。
原発の停止が継続すれば、夏の電力不足は、全国規模となる。西日本の電力会社5社は、供給力が11%減少し、東電や中部電への電力融通は難しい。
このまま行くと、原発は今年中にさらに10基停止し、年末には稼動は7基のみ。87%に当たる47基が停止する。そして、来春には54基のすべてが止まる。大幅な電力不足により、経済と国民生活に極めて深刻な影響が出る。地元住民の理解を得て、原発を再稼動するのか。火力・水力等でどこまで補えるのか。政府は、早急に方針を決め、計画を具体化し、国民に提示しなければならない。その際、最大の問題は、国家指導者が国民の信頼を取り戻すことができないと、仮に説明を行っても、国民の理解・協力は得られないということである。
電力不足への対応は、被災地の復旧・復興と一体の課題、日本の復興に係る課題である。この課題を遂行するために、まず必要なのは、菅首相の即時辞任である。そして、首班・内閣を一新しなければならない。
次に、供給力をどう増やすかという点についてだが、私は、基本的にわが国は原発の安全性を確保しながら、原発への依存を段階的に減らし、再生可能な自然エネルギーの活用を拡大することが必要だと考える。ただし、自然エネルギーは現在、全電力供給量の9%を占めるに過ぎない。原発は、震災前には約30%を占めていた。自然エネルギーの活用を急いでも、短期間に、急激に発電量を増やすことは不可能である。技術や制度の革新を大胆に進めるとしても、最低10年は、原発による電力供給分の減少を補うエネルギー源を確保しなければならない。
経済産業省の試算では、現時点で停止中の原発を火力発電で代替すると今年度で1・4兆円のコスト増となるという。停止する原発が増えれば、このコストはさらに増える。原油は価格が高騰する傾向にあり、また価格の変動幅が大きい。コスト負担増は、経済・生活を圧迫する。そこで、注目されているのが、液化天然ガス(LNG)である。
LNGは、メタンを主成分とした天然ガスをマイナス162度まで冷却し、液体にしたものである。不純物をほとんど含まず、窒素酸化物の発生も極めて少ないことから、クリーンなエネルギーとして、世界的に利用が拡大している。気体に比べ体積を600分の1に圧縮出来るので、大量輸送や貯蔵ができる。
日本経済新聞5月12日号の記事によると、電力各社や商社は、夏の電力需要ピークに向けて、LNG500万トンの調達にめどをつけたことという。原発を補うには、年間で1000万トンの輸入が必要という。その調達が急ぎ試みられている。発電用の大型タービンも三菱重工などの各社が国内外で増産を開始したという。
わが国の日本の輸入量は昨年度、約7千万トンと世界で最も多い。調達先はマレーシアを筆頭にオーストラリアやインドネシア、カタール、ロシア、ブルネイ、UAE等、多数の国々にわたる。
今年は1千万トンを追加し、年間で8千万トンを輸入することとなる。LNGによる火力発電は、石油より単価が低く、安定供給が見込めるという。ただし、世界的なエネルギー需要の増加の中で、わが国も需要を増やすから、価格は上昇し続けるだろう。それでも今後、少なくとも数年間は、LNGの輸入量を増やし、原発削減による電力供給量の減少を補うべきである。ガス会社による天然ガス利用の発電の拡大が期待される。東京都の石原都知事は、東京湾埋立地に天然ガス発電所の建設を検討しているという。
原油やLNGを必要量確保できたとしても、大震災前より、企業及び国民の負担は増える。コスト・プッシュによる価格上昇や、労働賃金の低下等が予想される。国民はそれに耐え忍びながら、日本の復興を進めねばならない。
特に注意したいのは、ここで政府が政策を誤り、デフレ下での消費増税を強行したり、アメリカに食い物にされるTPPに参加したりすれば、わが国はかつてない経済危機に突入する恐れがあることである。デフレ下での増税やTPP参加の危険性については、別に書いたので、ここでは触れないが、新政権は、大震災からの復興を的確・迅速に進めつつ、電力供給の危機に対処することができ、デフレ下の増税とTPP参加を行わない政権でなければならない。
下記は関連する報道記事。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
●産経新聞 平成23年6月9日
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110609/trd11060900250000-n1.htm
【東日本大震災】
原発稼働不能なら…今夏の電力不足、西日本にも拡大
2011.6.9 00:23
東京電力福島第1原発事故から、定期検査を終えた全国の原発が地元の合意が得られず再稼働できない状態が続き、関西や九州など西日本でも、今夏の深刻な電力不足の懸念が広がっている。経済産業省の試算では、停止中の原発を火力発電で代替すると今年度で1・4兆円のコスト増となる。7月の電力需要ピークまで、残された時間は少ない。
全国の原発立地道県でつくる、原子力発電関係団体協議会の三村申吾会長(青森県知事)は8日、海江田万里経済産業相と会談し、中部電力浜岡原発以外の運転再開を認める判断根拠の開示などを求める「原子力発電の安全確保に関する要請書」を手渡した。
海江田経産相は「(自治体には)緊急対策について国が責任を持つとお伝えしている」と応じたが、国の安全基準に不信感を募らせる自治体との間で、事態は膠(こう)着(ちゃく)している。
原発がこのまま再開できなければ、東電・東北電力管内の問題だった今夏の電力不足は、全国規模となる。経産省によると、関西、北陸、中部、四国、九州の西日本5電力会社で、夏季の予定供給力の11%に相当する880万キロワットの供給力が減少する。この結果、東電や、浜岡原発を止めた中部電への電力融通は困難となる。
電力需要を満たしてなお残る供給余力を示す予備率は、8%以上必要とされる。経産省の試算では定期検査中の原発が再稼働できなければ今夏の予備率は、すでにマイナスに陥っている東電、東北電力管内に加え、西日本もギリギリだ。
とくに関西電力はマイナス6・4%。九州電力も1・6%で、西日本5社を平均すると0・4%と、余力はないに等しい。震災や節電の影響で西日本シフトを進める企業も増える中、事態は深刻だ。
電力会社も痛手を被る。原発1基を止めると、代替エネルギーコストで1日で2億円が吹き飛ぶ。
このまま再開できない状況が続けば、来春には全国54基の原発がすべて止まる。資源エネルギー庁幹部は「震災復興と日本経済の足かせになる」と、危機感を募らせている。
●産経新聞 平成23年6月2日
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110602/trd11060221450017-n1.htm
【内閣不信任案】
原発停止は長期化、東電資金繰り行き詰まりも
2011.6.2 21:44
内閣不信任案をめぐる政局の混乱で、電力危機が一段と深刻化する懸念がある。菅直人首相の要請による中部電力浜岡原発の全面停止で、各地の原発は定期検査後の再稼働に入れない状況にあるが、地元自治体が求める「安全基準」の提示は宙に浮いたまま。東京電力福島第1原発事故の賠償をめぐる政府支援の枠組みも関連法案成立のメドが立たず、東電の資金繰りが行き詰まる懸念が拭えない。行き当たりばったりの政策運営のツケは大きい。
菅首相が法的根拠もないまま“政治判断”で浜岡原発停止を要請したが、浜岡だけを停止させる理由が曖昧で、立地自治体は「地元に説明できない」と猛反発。かえって原発不信を高めることになった。
電力各社は、地元に配慮し、定期検査終了後の再稼働を見合わせており、全国54基のうち35基が停止する異常事態となっている。全国的に夏の電力不足が懸念されるなか、電力業界は「地元の理解を得るため、政府が先頭に立ってほしい」(電力会社首脳)と、悲痛な声を上げる。
自治体は、再開に同意する上で、新たな安全基準を政府が示すことを求めているが、具体的な作業はほぼ手つかずの状態だ。政府内からは、「退陣する首相の独断のツケを負わされるのはたまらない」との不満も漏れる。現在運転中の原発もいずれは定期検査に入り、すべての原発が停止する事態も現実味を帯びてきた。(略)
●産経新聞 平成23年5月13日
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110513/plc11051303210005-n1.htm
【主張】
原子力発電 首相は再稼働を命じよ 電力不足は経済の活力を奪う
2011.5.13 03:20
いま日本は、エネルギー政策の根幹が揺らぎかねない国家レベルの危機に陥っている。
東京電力福島第1原子力発電所の事故に加え、菅直人首相の唐突すぎる要請によって中部電力浜岡原子力発電所が運転停止を余儀なくされ、原発がある地元の動揺が収まらないためだ。
不安感を背景に、運転上の安全を確保する定期検査が終わっても再稼働への地元の同意が得られず、停止したままの原発が増える状況になりかねない。
◆何のための安全確認か
先進国の生活水準を維持するにはエネルギーがいる。その安定供給に果たす原子力発電の位置付けと安全性について、国による国民への十分な説明が必要だ。菅政権が漫然と手をこまねいていれば、大規模停電が心配されるだけでなく、国民は慢性的な電力不足を強いられかねない。国際的な産業競争力の喪失にもつながる。
浜岡原発の停止要請を、菅首相は「政治主導」と表現した。であるなら、定期検査を終了した原発の速やかな再稼働についても国の責任で推進することを決断し、実現させるべきだ。
原発は13カ月運転すると、必ず部品交換や整備などのため原子炉を止め約3カ月間、定期検査を行う。検査終了後に運転を再開しなければ、来夏までに国内すべての原発が止まることになる。
すでにその兆候は見えている。関西電力や九州電力などの一部の号機が、本来なら可能なはずの運転再開に至っていないのだ。
福島事故を踏まえて、各電力会社は津波などへの緊急安全対策を国から求められたが、それが遅れの主因ではない。「地元の同意」が得にくいためである。
事故などで停止した原発は、経済産業省の原子力安全・保安院が安全性の回復を検査するが、保安院のお墨付きだけでは、電力会社は運転再開に進めない。発電所が立地する地元市町村と県の同意が求められるのだ。
だが、原子炉起動に地元の同意を必要とする法律はない。電力会社と地元の間で結ばれている「安全協定」は、一種の紳士協定なのだ。国は自民党政権時代から、この安全協定に基づく地元の関与を容認してきた。
しかし、現在は日本のエネルギーの供給に「黄信号」がともっている。菅首相や海江田万里経済産業相は自ら各原発の地元に足を運び、原子力による電力の必要性についても説明に意を尽くさなければならない。
何しろ、大津波によって国内54基の原発中、15基の原発が壊れたり止まったりしている。東電柏崎刈羽原発の3基も新潟県中越沖地震以来、停止している。浜岡原発の3基も止まる。
これに加え、地元の同意が得られずに再稼働が遅れ続けるとどうなるか。菅首相らは事態を深刻に受け止めるべきだ。
◆「脱原発」に流されるな
菅首相は10日、今後約20年間で原子力発電の割合を総電力の50%以上とすることを目標に定めた政府の「エネルギー基本計画」を白紙に戻す意向を示した。
原子力の縮小分を、太陽光や風力などの再生可能エネルギーで補う算段のようだが、実現の可能性は低いはずだ。省エネ社会も目指すというが、思いつきで進められると国の将来を誤ることになってしまう。エネルギーが国の生命力の源泉であることを菅首相は、どこまで理解しているのか。
世界の人口増、中国やインドをはじめとする新興諸国の台頭でエネルギー事情は、年を追って厳しくなっていく。安全に利用するかぎりにおいて原子力は中東の産油国でさえ重視する存在だ。
わが国の原子力政策は今、岐路に立っている。ムードに流され、脱原発に進めば、アジアでの日本の地盤沈下は決定的となる。
今月下旬の主要国首脳会議(G8)では長期的なエネルギー戦略などが焦点となり、世界の目が注がれる。原発事故の原因と経過の説明も求められよう。菅首相は、原発を進める米国やフランスなどに、日本の方針をきちんと説明すべきだ。津波被災国への同情ばかりとはかぎらない。
また、民主党政権が世界に公約した温室効果ガスの25%削減はどうするのか。年限は2020年だ。景気を低迷させ経済を失速させれば達成できるだろうが、それは日本の「不幸」である。
●東京新聞 平成23年5月28日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/20110528/CK2011052802000037.html
知事 天然ガス発電所を検討 東京港埋め立て地に新設
石原慎太郎知事は二十七日の定例会見で、東京港の埋め立て地に発電効率が高い天然ガス発電所を新設する計画を検討していく考えを示した。川崎市にある「川崎天然ガス発電所」を猪瀬直樹副知事らが二十三日に視察。比較的狭い土地に建設可能で、送電距離も短くて済むことから、都が目指す都市型電力の確保にもつながると判断した。
川崎天然ガス発電所はガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた最新のコンバインドサイクル方式により、一般の火力発電所の発電効率40%を大きく上回る59%で発電。二基で八十五万キロワットと原発一基並みの出力を誇っている。また敷地は六万平方メートルと小さく、排熱回収ボイラー内の装置で窒素酸化物(NOx)を水と窒素に分解し、環境への負荷も少ないという。
猪瀬副知事は視察時に「分散型発電により電力の安定供給が確保でき、リスクもほとんどない」と評価。報告を受けた石原知事は「一基二百億円くらいでできるそうで、財政状況によっては防災と東京の経済の維持を考えて、実現可能なプロジェクトの一つと考える」などと述べ、経済界にも協力を要請していく考えを示した。
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日本原子力技術協会のサイトで、ほそかわが調べたところ、6月5日時点で、54基中稼動しているのは17基のみ。68.5%に当たる37基が停止している。
http://www.gengikyo.jp/status/status1.html
電力需要が最も多いのは、夏である。ピークは7月。来月である。電力供給不足に対応するため、企業や国民に節電が呼びかけられているが、原発は次々に定期点検に入る。そのまま地元の合意を得られずに再稼動できないものが増えるだろう。
全国の原発立地道県でつくる「原子力発電関係団体協議会」は、政府に「原子力発電の安全確保に関する要請書」を提出した。政府の回答には説得力がなく、国の安全基準に不信感を募らせる自治体との間で、膠着状態にあると報じられる。
原発の停止が継続すれば、夏の電力不足は、全国規模となる。西日本の電力会社5社は、供給力が11%減少し、東電や中部電への電力融通は難しい。
このまま行くと、原発は今年中にさらに10基停止し、年末には稼動は7基のみ。87%に当たる47基が停止する。そして、来春には54基のすべてが止まる。大幅な電力不足により、経済と国民生活に極めて深刻な影響が出る。地元住民の理解を得て、原発を再稼動するのか。火力・水力等でどこまで補えるのか。政府は、早急に方針を決め、計画を具体化し、国民に提示しなければならない。その際、最大の問題は、国家指導者が国民の信頼を取り戻すことができないと、仮に説明を行っても、国民の理解・協力は得られないということである。
電力不足への対応は、被災地の復旧・復興と一体の課題、日本の復興に係る課題である。この課題を遂行するために、まず必要なのは、菅首相の即時辞任である。そして、首班・内閣を一新しなければならない。
次に、供給力をどう増やすかという点についてだが、私は、基本的にわが国は原発の安全性を確保しながら、原発への依存を段階的に減らし、再生可能な自然エネルギーの活用を拡大することが必要だと考える。ただし、自然エネルギーは現在、全電力供給量の9%を占めるに過ぎない。原発は、震災前には約30%を占めていた。自然エネルギーの活用を急いでも、短期間に、急激に発電量を増やすことは不可能である。技術や制度の革新を大胆に進めるとしても、最低10年は、原発による電力供給分の減少を補うエネルギー源を確保しなければならない。
経済産業省の試算では、現時点で停止中の原発を火力発電で代替すると今年度で1・4兆円のコスト増となるという。停止する原発が増えれば、このコストはさらに増える。原油は価格が高騰する傾向にあり、また価格の変動幅が大きい。コスト負担増は、経済・生活を圧迫する。そこで、注目されているのが、液化天然ガス(LNG)である。
LNGは、メタンを主成分とした天然ガスをマイナス162度まで冷却し、液体にしたものである。不純物をほとんど含まず、窒素酸化物の発生も極めて少ないことから、クリーンなエネルギーとして、世界的に利用が拡大している。気体に比べ体積を600分の1に圧縮出来るので、大量輸送や貯蔵ができる。
日本経済新聞5月12日号の記事によると、電力各社や商社は、夏の電力需要ピークに向けて、LNG500万トンの調達にめどをつけたことという。原発を補うには、年間で1000万トンの輸入が必要という。その調達が急ぎ試みられている。発電用の大型タービンも三菱重工などの各社が国内外で増産を開始したという。
わが国の日本の輸入量は昨年度、約7千万トンと世界で最も多い。調達先はマレーシアを筆頭にオーストラリアやインドネシア、カタール、ロシア、ブルネイ、UAE等、多数の国々にわたる。
今年は1千万トンを追加し、年間で8千万トンを輸入することとなる。LNGによる火力発電は、石油より単価が低く、安定供給が見込めるという。ただし、世界的なエネルギー需要の増加の中で、わが国も需要を増やすから、価格は上昇し続けるだろう。それでも今後、少なくとも数年間は、LNGの輸入量を増やし、原発削減による電力供給量の減少を補うべきである。ガス会社による天然ガス利用の発電の拡大が期待される。東京都の石原都知事は、東京湾埋立地に天然ガス発電所の建設を検討しているという。
原油やLNGを必要量確保できたとしても、大震災前より、企業及び国民の負担は増える。コスト・プッシュによる価格上昇や、労働賃金の低下等が予想される。国民はそれに耐え忍びながら、日本の復興を進めねばならない。
特に注意したいのは、ここで政府が政策を誤り、デフレ下での消費増税を強行したり、アメリカに食い物にされるTPPに参加したりすれば、わが国はかつてない経済危機に突入する恐れがあることである。デフレ下での増税やTPP参加の危険性については、別に書いたので、ここでは触れないが、新政権は、大震災からの復興を的確・迅速に進めつつ、電力供給の危機に対処することができ、デフレ下の増税とTPP参加を行わない政権でなければならない。
下記は関連する報道記事。
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●産経新聞 平成23年6月9日
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110609/trd11060900250000-n1.htm
【東日本大震災】
原発稼働不能なら…今夏の電力不足、西日本にも拡大
2011.6.9 00:23
東京電力福島第1原発事故から、定期検査を終えた全国の原発が地元の合意が得られず再稼働できない状態が続き、関西や九州など西日本でも、今夏の深刻な電力不足の懸念が広がっている。経済産業省の試算では、停止中の原発を火力発電で代替すると今年度で1・4兆円のコスト増となる。7月の電力需要ピークまで、残された時間は少ない。
全国の原発立地道県でつくる、原子力発電関係団体協議会の三村申吾会長(青森県知事)は8日、海江田万里経済産業相と会談し、中部電力浜岡原発以外の運転再開を認める判断根拠の開示などを求める「原子力発電の安全確保に関する要請書」を手渡した。
海江田経産相は「(自治体には)緊急対策について国が責任を持つとお伝えしている」と応じたが、国の安全基準に不信感を募らせる自治体との間で、事態は膠(こう)着(ちゃく)している。
原発がこのまま再開できなければ、東電・東北電力管内の問題だった今夏の電力不足は、全国規模となる。経産省によると、関西、北陸、中部、四国、九州の西日本5電力会社で、夏季の予定供給力の11%に相当する880万キロワットの供給力が減少する。この結果、東電や、浜岡原発を止めた中部電への電力融通は困難となる。
電力需要を満たしてなお残る供給余力を示す予備率は、8%以上必要とされる。経産省の試算では定期検査中の原発が再稼働できなければ今夏の予備率は、すでにマイナスに陥っている東電、東北電力管内に加え、西日本もギリギリだ。
とくに関西電力はマイナス6・4%。九州電力も1・6%で、西日本5社を平均すると0・4%と、余力はないに等しい。震災や節電の影響で西日本シフトを進める企業も増える中、事態は深刻だ。
電力会社も痛手を被る。原発1基を止めると、代替エネルギーコストで1日で2億円が吹き飛ぶ。
このまま再開できない状況が続けば、来春には全国54基の原発がすべて止まる。資源エネルギー庁幹部は「震災復興と日本経済の足かせになる」と、危機感を募らせている。
●産経新聞 平成23年6月2日
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110602/trd11060221450017-n1.htm
【内閣不信任案】
原発停止は長期化、東電資金繰り行き詰まりも
2011.6.2 21:44
内閣不信任案をめぐる政局の混乱で、電力危機が一段と深刻化する懸念がある。菅直人首相の要請による中部電力浜岡原発の全面停止で、各地の原発は定期検査後の再稼働に入れない状況にあるが、地元自治体が求める「安全基準」の提示は宙に浮いたまま。東京電力福島第1原発事故の賠償をめぐる政府支援の枠組みも関連法案成立のメドが立たず、東電の資金繰りが行き詰まる懸念が拭えない。行き当たりばったりの政策運営のツケは大きい。
菅首相が法的根拠もないまま“政治判断”で浜岡原発停止を要請したが、浜岡だけを停止させる理由が曖昧で、立地自治体は「地元に説明できない」と猛反発。かえって原発不信を高めることになった。
電力各社は、地元に配慮し、定期検査終了後の再稼働を見合わせており、全国54基のうち35基が停止する異常事態となっている。全国的に夏の電力不足が懸念されるなか、電力業界は「地元の理解を得るため、政府が先頭に立ってほしい」(電力会社首脳)と、悲痛な声を上げる。
自治体は、再開に同意する上で、新たな安全基準を政府が示すことを求めているが、具体的な作業はほぼ手つかずの状態だ。政府内からは、「退陣する首相の独断のツケを負わされるのはたまらない」との不満も漏れる。現在運転中の原発もいずれは定期検査に入り、すべての原発が停止する事態も現実味を帯びてきた。(略)
●産経新聞 平成23年5月13日
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110513/plc11051303210005-n1.htm
【主張】
原子力発電 首相は再稼働を命じよ 電力不足は経済の活力を奪う
2011.5.13 03:20
いま日本は、エネルギー政策の根幹が揺らぎかねない国家レベルの危機に陥っている。
東京電力福島第1原子力発電所の事故に加え、菅直人首相の唐突すぎる要請によって中部電力浜岡原子力発電所が運転停止を余儀なくされ、原発がある地元の動揺が収まらないためだ。
不安感を背景に、運転上の安全を確保する定期検査が終わっても再稼働への地元の同意が得られず、停止したままの原発が増える状況になりかねない。
◆何のための安全確認か
先進国の生活水準を維持するにはエネルギーがいる。その安定供給に果たす原子力発電の位置付けと安全性について、国による国民への十分な説明が必要だ。菅政権が漫然と手をこまねいていれば、大規模停電が心配されるだけでなく、国民は慢性的な電力不足を強いられかねない。国際的な産業競争力の喪失にもつながる。
浜岡原発の停止要請を、菅首相は「政治主導」と表現した。であるなら、定期検査を終了した原発の速やかな再稼働についても国の責任で推進することを決断し、実現させるべきだ。
原発は13カ月運転すると、必ず部品交換や整備などのため原子炉を止め約3カ月間、定期検査を行う。検査終了後に運転を再開しなければ、来夏までに国内すべての原発が止まることになる。
すでにその兆候は見えている。関西電力や九州電力などの一部の号機が、本来なら可能なはずの運転再開に至っていないのだ。
福島事故を踏まえて、各電力会社は津波などへの緊急安全対策を国から求められたが、それが遅れの主因ではない。「地元の同意」が得にくいためである。
事故などで停止した原発は、経済産業省の原子力安全・保安院が安全性の回復を検査するが、保安院のお墨付きだけでは、電力会社は運転再開に進めない。発電所が立地する地元市町村と県の同意が求められるのだ。
だが、原子炉起動に地元の同意を必要とする法律はない。電力会社と地元の間で結ばれている「安全協定」は、一種の紳士協定なのだ。国は自民党政権時代から、この安全協定に基づく地元の関与を容認してきた。
しかし、現在は日本のエネルギーの供給に「黄信号」がともっている。菅首相や海江田万里経済産業相は自ら各原発の地元に足を運び、原子力による電力の必要性についても説明に意を尽くさなければならない。
何しろ、大津波によって国内54基の原発中、15基の原発が壊れたり止まったりしている。東電柏崎刈羽原発の3基も新潟県中越沖地震以来、停止している。浜岡原発の3基も止まる。
これに加え、地元の同意が得られずに再稼働が遅れ続けるとどうなるか。菅首相らは事態を深刻に受け止めるべきだ。
◆「脱原発」に流されるな
菅首相は10日、今後約20年間で原子力発電の割合を総電力の50%以上とすることを目標に定めた政府の「エネルギー基本計画」を白紙に戻す意向を示した。
原子力の縮小分を、太陽光や風力などの再生可能エネルギーで補う算段のようだが、実現の可能性は低いはずだ。省エネ社会も目指すというが、思いつきで進められると国の将来を誤ることになってしまう。エネルギーが国の生命力の源泉であることを菅首相は、どこまで理解しているのか。
世界の人口増、中国やインドをはじめとする新興諸国の台頭でエネルギー事情は、年を追って厳しくなっていく。安全に利用するかぎりにおいて原子力は中東の産油国でさえ重視する存在だ。
わが国の原子力政策は今、岐路に立っている。ムードに流され、脱原発に進めば、アジアでの日本の地盤沈下は決定的となる。
今月下旬の主要国首脳会議(G8)では長期的なエネルギー戦略などが焦点となり、世界の目が注がれる。原発事故の原因と経過の説明も求められよう。菅首相は、原発を進める米国やフランスなどに、日本の方針をきちんと説明すべきだ。津波被災国への同情ばかりとはかぎらない。
また、民主党政権が世界に公約した温室効果ガスの25%削減はどうするのか。年限は2020年だ。景気を低迷させ経済を失速させれば達成できるだろうが、それは日本の「不幸」である。
●東京新聞 平成23年5月28日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/20110528/CK2011052802000037.html
知事 天然ガス発電所を検討 東京港埋め立て地に新設
石原慎太郎知事は二十七日の定例会見で、東京港の埋め立て地に発電効率が高い天然ガス発電所を新設する計画を検討していく考えを示した。川崎市にある「川崎天然ガス発電所」を猪瀬直樹副知事らが二十三日に視察。比較的狭い土地に建設可能で、送電距離も短くて済むことから、都が目指す都市型電力の確保にもつながると判断した。
川崎天然ガス発電所はガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた最新のコンバインドサイクル方式により、一般の火力発電所の発電効率40%を大きく上回る59%で発電。二基で八十五万キロワットと原発一基並みの出力を誇っている。また敷地は六万平方メートルと小さく、排熱回収ボイラー内の装置で窒素酸化物(NOx)を水と窒素に分解し、環境への負荷も少ないという。
猪瀬副知事は視察時に「分散型発電により電力の安定供給が確保でき、リスクもほとんどない」と評価。報告を受けた石原知事は「一基二百億円くらいでできるそうで、財政状況によっては防災と東京の経済の維持を考えて、実現可能なプロジェクトの一つと考える」などと述べ、経済界にも協力を要請していく考えを示した。
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