ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

キリスト教248~地球環境危機の原因としてのキリスト教

2019-09-07 08:32:35 | 心と宗教
●地球環境危機の原因としてのキリスト教

 核の危機が恒常化した現代世界において、新たに進行してきたのが、地球環境の破壊である。キリスト教には、自然の征服・支配の思想があり、その思想は西欧発の文明に具体化された。近代西洋文明の発展によって、自然を征服・支配し、物質化・手段化し、資源として利用しようとする態度が世界に広がった。物質科学文化の威力は、人類の生存の前提である地球の自然を破壊し、人類の生存そのものを脅かすに至った。
 地球環境問題は、1972年(昭和47年)にストックホルムで開かれた国連人間環境会議によって、世界的な関心事となり、1992年(平成4年)にリオデジャネイロで行われた「環境と開発に関する国連会議」(地球サミット)によって、全人類の課題となった。1972年には「人間環境宣言」、1992年には「環境と開発に関するリオ宣言」が出された。そして、フロンガスによるオゾン層の破壊や、大気中の二酸化炭素の増加による地球温暖化、森林乱伐、土壌の流出・家畜の過放牧等による砂漠化等を防ぐため、各国の努力が行われている。
 ところが、「人間環境宣言」や「環境と開発に関するリオ宣言」には、重要なことが欠けている。近代西洋文明に対する考察や、環境保全のための新しい世界観の必要性や、われわれ先進国民の生活のあり方の見直しなどは、ほとんど説かれていないのである。これらの宣言は、先進国の生活文化や社会制度には大きな変更を加えないことを前提としており、その枠内で国家間の利害関係を調整し、環境問題の政治的・経済的な解決を目指そうとしている。
 しかし、今日の地球環境問題は、その程度で解決できる事柄ではない。この問題に真剣に取り組むならば、おのずと近代西洋文明に対する反省に入らざるをえない。自然環境の破壊は、自然を征服・支配し、物質化・手段化し、資源として利用しようとする考えから生じている。その考えの根底には、近代西洋文明の中核となっているキリスト教がある。この点にも反省を掘り下げる必要がある。
 キリスト教は、ユダヤ教から派生した宗教であり、セム系一神教の一つである。セム系一神教は砂漠に発生した宗教である。そのために、自然に対する考え方に独自性を持つ。砂漠の生態系は、森林の生態系と異なり、限られた動植物で構成されている。そのような風土で発生した宗教が森林地帯に広がった時、森林の保全は軽視され、自然の支配や管理が目指される。斧や鍬、牛や馬によって開墾や伐採がされていた時代には、その弊害は少なかった。しかし、化石燃料を用いた動力源を伴う機械が開発に使われるようになると、その弊害は一気に増大した。このまま自然の征服・支配の文化を続けていくならば、人類の文明は自らの土台を危うくするばかりである。人類は生存と繁栄のために、自然と調和する道を見出さなければならない。
 キリスト教は世界で最も多くの信徒を持つ宗教として、文明のあり方を改善して、人類を自然と調和する文明の建設に向かわせる役割が期待される。だが、セム系一神教の一つであるというその本質によって、キリスト教は、容易にそのような役割を担うことのできない性格を持っている。
 米国の科学史学者リン・タウンセンド・ホワイト・ジュニアは、昭和43年(1968年)に刊行された『機械と神』で、キリスト教の聖書は人間にこの地球上のすべての生物を支配するように命じており、地球環境危機の原因はこの「最も人間中心主義的な宗教」の思想の支配にあると論じた。ホワイトは、自然に対するキリスト教的な尊大さが、現代の生態学的な危機の歴史的根源であるとして、その危機のはじまりを聖書の創造神信仰に見出した。ホワイトによれば、人間は被造物を支配する権威を持つという信仰は、自然は人間の欲求に奉仕するためにあるという思想に進み、自然への搾取的な態度を正当化することになった。キリスト教は地球環境危機に最大の責任を負っている、とホワイトは言う。
 ホワイトは、13世紀の修道士アッシジのフランチェスコを「キリスト以来のキリスト教の歴史上で最もラディカル」な人物と呼ぶ。その理由は、フランチェスコが、神のすべての創造物の間の純粋な平等主義を主張したからだという。人間以外の生物も世界で人間と同じ地位を持つというフランチェスコの見方は、自然に対する西洋文明の伝統的なとらえ方とは相反している。そして、ホワイトは、キリスト教はフランチェスコの精神に帰れ、と呼びかけている。
 自然は人間に仕える以外に存在の理由がなく、人間は自然を支配すべきだというキリスト教の原理こそが、われわれの惑星に情け容赦なく加えられた、すさまじい冒涜の原因となってきた、とホワイトは考える。そして、「新しい宗教を見出すか、古い宗教を見直すかしない限り、科学やテクノロジーの進歩は今日の生態学的な危機を救うことはできない」と説いている。彼は、われわれの生態学的な問題の根源は、大部分が宗教的なものであり、問題の解決には宗教的・精神的な変革が必要だと訴えている。私見を以って補えば、ここでホワイトのいうキリスト教は、ユダヤ=キリスト教というべきものである。キリスト教の根源には、ユダヤ教があるからである。

 次回に続く。

************* 著書のご案内 ****************

 細川一彦著『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/d4dac1aadbac9b22a290a449a4adb3a1

************************************

最新の画像もっと見る

コメントを投稿