ほそかわ・かずひこの BLOG

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仏教182~仏教の影響が強い団体:オウム真理教

2021-07-18 10:05:47 | 心と宗教
◆仏教の影響が強い団体

・オウム真理教
 オウム真理教は、仏教の影響を強く受けた新宗教団体である。
 開祖の麻原彰晃(本名松本智津夫)は、1984年(昭和59年)にオウム神仙の会をはじめ、ヨーガの指導を中心に活動していたが、自身を最終解脱者であると称し、 1987年(昭和62年)にオウム真理教と改称した。
 オウム真理教は、ヒンドゥー教のシヴァを主神とし、ヨーガの修行を行う。オウムの名は、インドの聖音オームによる。だが、教義は仏教の影響を強く受けており、ヒンドゥー教に原始仏教、大乗仏教等の思想が混合しており、教えの中心は無常と煩悩破壊にある。
 オウム真理教は、修行によって様々な超能力が得られると説き、イニシエーションと呼ばれる秘儀を行って、若者を中心として信者を集めた。麻原は1980年(昭和55年)に阿含宗に入信して修行をしており、修行法や思想に阿含宗の影響が見られる。
 阿含宗以上に影響が大きいのは、チベット密教である。麻原は、ダライ・ラマ14世と1987年(昭和62年)と1988年(昭和63年)に会談した。ダライ・ラマ14世は、麻原と会談した場で、「彼と会うことを楽しみにしている」「仏教の修行に対する彼の強い欲求に感銘を受けている」「古くからの友人である彼が成功し、より多くの利益が他の人にもたらされるように、いつも祈願している」と語った。また、オウム真理教から1億円に上る布施を受けている。1989年(平成元年)にオウム真理教が東京都で宗教法人格を取得するに当たっては、東京都に推薦状を提出してオウム真理教を支援した。
 チベット密教で「生き仏」とされるダライ・ラマ14世は、麻原の危険性・凶悪性を見抜けなかったわけだが、オウム真理教は既に教団内部で死亡者を出すなどの問題を起こしていた。オウム真理教被害者の会の会長となった坂本堤弁護士は、1989年(平成元年)に教団信者に襲われ、妻子ともども殺害された。麻原は、自分や教団に都合の悪い人間を殺害することを、チベット仏教で「死後の意識の移し変え」を意味する「ポア」と称して、宗教的な救済だと意味づけて、幹部や信者に指示した。また、毒ガスのサリンを製造するなどして、教団を過激組織化した。この間、真理党という政党を作って、1990年(平成2年)の衆議院選挙に出て世間の耳目を集めたが、大惨敗に終わった。
 オウム真理教は、サリンを使って最初に池田大作創価学会名誉会長を殺害しようとした。麻原が創価学会を敵視していたからである。だが、この襲撃は失敗した。その後、オウム真理教は、1994年(平成6年)に松本サリン事件を起こし、さらに1995年(平成7年)に地下鉄サリン事件を起こした。これらの凶悪犯罪によって、麻原をはじめ多数の幹部が逮捕された。翌年、教団は東京地裁より解散命令を受け、宗教法人格を失った。
 地下鉄サリン事件は、無差別大量殺人事件だった。しかも、背後には、国家中枢を攻撃する大規模なテロ計画があった。オウム真理教は、サリンを散布するために、ロシアからヘリコプターを購入していた。だが、それにもかかわらず、破壊活動防止法は適用されなかった。オウム真理教は、公然と活動を継続した。教団への社会的な批判が強まると、オウム真理教は1999年(平成11年)に休眠宣言をした。それで活動を停止するかと見られたが、2000年(平成12年)に名称をアレフに変更して存続を図った。アレフは、ヘブライ語のアルファベットの第1文字である。ギリシャ語のアルファに当たる。オウムはインドの聖音オームに基づく名称だったが、今度はユダヤの言語に転じたわけである。
 改称後の団体アレフは、アーレフに再度名称を変えた。オウム真理教の教義からヨーガや仏教に関するものを継承し、シヴァ神及び諸仏を崇拝の対象としている。オウム真理教の広報責任者だった上祐史浩は、2007年(平成19年)にアーレフを脱会し、新団体「ひかりの輪」を設立した。他に「山田らの集団」も分派した。オウム真理教の後継団体及び分派団体は、一連の事件をきっかけに1999年(平成11年)に制定された「無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律(団体規制法)」による観察処分を受け、公安調査庁の監視下にある。また問題を起こせば、再発防止処分が下される。
 裁判の結果、麻原は2016年(平成28年)に死刑の判決を受けた。2018年(平成30年)に麻原及び事件に関わった教団の元幹部ら計13名の死刑が執行された。
 裁判で麻原はほとんど陳述を行うことがなく、異常な言動が目立ったという。裁判は、北朝鮮・ロシアとのコネクション、赤軍派との関係、政治家の関与等、重要な部分については、何一つ解明することなく終わった。事件の真相は、歴史の闇の中に沈んでいる。

 次回に続く。

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