ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

友愛を捨てて、日本に返れ32

2010-01-11 06:36:29 | 時事
●現在の東アジアは、冷戦下のヨーロッパに似ている

 先に東アジアとヨーロッパでは、大きな違いが7つあると書いた。それらの違いを踏まえるならば、鳩山氏の東アジア共同体構想は、東アジアの現実を見ない理想論といわざるを得ない。現実を踏まえてこの地域の今後のあり方を考えるには、1970~80年代のヨーロッパと2000~2010年代の東アジアを比較することが有益だと私は思う。
 1970~80年代のヨーロッパで、西欧諸国は、アメリカとNATOによる軍事同盟を結び、ソ連に対する防衛体制を取っていた。その体制の下でヨーロッパは統合を進めた。2000~10年代の東アジアで、この関係に相似する点は、日本がアメリカと軍事同盟を結んでおり、日米安保体制がNATOに相当することである。また、1970~80年代のヨーロッパ諸国にとってのソ連に相似するのが、2000~2010年代における中国である。
 ソ連は、1970~80年代に軍事力を増強し、80年代半ばに軍事的なピークを迎えようとしていた。ヨーロッパは三度目の大戦の舞台になり、核戦争の戦場となりかねないという危機感が、ヨーロッパ統合の推進力になった。
 ヨーロッパ諸国はアメリカとのNATOを堅持して、ソ連の軍事的冒険主義を防ぎ、ソ連・東欧の共産政権を崩壊させ、民主化に導いた。ソ連の労働者・農民・少数民族は、共産党支配から解放された。わが国がこの歴史的事例に学ぶとすれば、アメリカとの安保体制を堅持して、中国の軍事的膨張主義を防ぎ、共産政権を崩壊させ、民主化に導くことである。それは、中国の労働者・農民・少数民族を、共産党支配から解放することになるだろう。
 今日、日本の取るべき道は、決してアメリカから離れて、中国と結ぶ道ではない。その道は、1970~80年代のヨーロッパで言えば、アメリカから離れて、ソ連と結び、社会主義化する道である。

●全体主義と戦わない鳩山氏の友愛は「偽せの友愛」である

 ここで鳩山氏の好む「友愛」という言葉を使うならば、1970~80年代のヨーロッパ諸国はアメリカとの「友愛」を堅持して、ソ連の全体主義に対抗し、全体主義国家を崩壊に導いたのである。今日の日本はその先例に学んで、アメリカとの「友愛」を堅持して、中国の全体主義に対抗し、全体主義を崩壊に導くべきだということになる。
 東アジアには、まだNATOに当たるものがない。地域集団安全保障体制が存在しない。日本が結んでいるのは、日米安保条約のみ。日米と中国は軍事同盟を結ぶ関係ではなく、むしろ対立関係にある。
 鳩山氏が信奉するカレルギーは「全体主義国家対人間」を著し、友愛を掲げて全体主義と戦った。ソ連の共産主義、及びドイツのナチズムとの戦いである。カレルギーの妻はユダヤ人だったから、ナチスとの戦いは命懸けだった。
 第2次大戦でドイツのナチズムは敗退した。その後、ソ連の共産主義は、冷戦の終結後に、崩壊した。鳩山氏は、冷戦終結後、「自由」を価値とする新自由主義・市場原理主義への批判に特化する。ここで、鳩山氏はソ連・東欧の共産政権崩壊によって、全体主義がすべて消滅したかのように錯覚している。東アジアには、依然として全体主義国家が存続している。中国と北朝鮮である。
 鳩山氏は全体主義を人間の尊厳への抑圧だと告発せず、中国・北朝鮮を含む東アジア共同体を構想する。しかし、1970~80年代のヨーロッパ諸国は、ソ連・東欧の全体主義に屈することなく対峙し、1990年前後、ソ連・東欧の全体主義が崩壊した後に、本格的に統合を進めた。ヨーロッパとアメリカの友愛が共産諸国を崩壊に追い込んだ。日本の経済力も大きな役割を果たした。
 もしカレルギ-が今日、東アジアにいれば、友愛を掲げて、中国と北朝鮮の全体主義を厳しく批判するだろう。中国の天安門事件や生体臓器摘出、チベットや新疆ウイグルでの虐殺・虐待等、また北朝鮮の強制収容所や多数の餓死等に関して、これら全体主義国家に抗議するだろう。またミャンマーの軍事政権を批判し、その後ろ盾になっている中国を告発するだろう。
 しかし、鳩山氏は、友愛、友愛と説いて回りながら、本気で全体主義国家を批判しようとしない。形ばかりの言辞を吐くのみである。全体主義と戦わない友愛は、カレルギーの友愛とは違う。私は鳩山氏の友愛は「偽の友愛」だと思う。

 次回に続く。


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