ほそかわ・かずひこの BLOG

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仏教116~江戸時代の天台宗・真言宗・浄土宗・浄土真宗

2021-02-26 10:14:31 | 心と宗教
◆各宗派の動き

#天台宗
 日本の仏教では、平安時代以来、戒律に関する論争や取り組みが繰り返された。戒律を簡略化したのは、最澄である。最澄は、小乗戒を切り捨て、鑑真が伝えた大乗戒の1つである梵網戒のみで出家者の授戒とした。それが、最澄のはじめた大乗戒であり、円頓戒である。鎌倉時代に天台宗から出て新宗派を開いた法然・親鸞・日蓮は、戒律を軽視または無視した。これに対して、既成の宗派では、真言宗の叡尊が戒律の復興運動を起こした。だが、仏教界の大勢としては、戒律が緩み、僧尼の間に世俗的価値が浸透する傾向にあった。
 そうした中で、最澄が開創した天台宗では、江戸時代初期に安楽律論争が起きた。安楽律とは、大乗戒の梵網戒に小乗戒の四分律(しぶんりつ)を加えたものである。妙立とその弟子の霊空がこれらを合わせ修めることを主張し、論争になった。宗祖・最澄の教えを順守するか、修正するかという論争である。幕府の裁定によって、安楽律派の正当性が認められ、安楽律派は比叡山安楽律院を根本道場とした。その宗派を、天台律宗ともいう。

#真言宗
 戒律の復興の取り組みは、真言宗でも起こった。江戸時代中後期の真言宗の僧、慈雲は、釈迦在世時の正しい戒律の復興を目指して、鑑真以来一定していなかった授戒の作法に規律を定めて正法律と称した。正法律の実践運動を起こして各地で教化に努めた後、幕府の許可を得て葛城山の高貴寺を正法律の根本道場とした。慈雲は、飲光(おんこう)ともいう。
 慈雲はまた釈迦時代の仏教への回帰を志し、梵語を研究した。梵字の書体・書法を悉曇(しったん)という。鎌倉時代以降、悉曇の学習は主に真言宗で保持された。それは、空海がシナで梵語を学んだことによる。江戸時代になってから、悉曇はあらためて研究されるようになった。その先駆者は浄厳で、彼に悉曇を学んだ契沖は国語研究にこれを生かし、画期的な業績を上げた。浄厳以後、最大の研究者となったのが、慈雲である。慈雲は独力で梵語の文法を理解し、大著『梵学津梁(ぼんがくしんりょう)』を完成した。ヨーロッパでのサンスクリット語研究に半世紀先立つ偉業だった。
 これほどまでに仏教の原点を追求した慈雲であったが、晩年は神道を研究し、雲伝神道(うんでんしんとう)を提唱した。葛城神道ともいう。これは、『古事記』『日本書紀』を基本教典とし、密教の理によって神道を説くものである。神道の奥義は、赤心すなわち嘘いつわりのない、ありのままの心と、君臣の大義にあると主張した。仏教の側から現れた神・儒・仏融合の神道である。

#浄土宗
 徳川家康は、浄土宗増上寺を徳川家の菩提寺とした。幕府は、増上寺を天台宗寛永寺とともに将軍家の2大寺院とした。これらの寺院が歴代将軍の墓を交代で受け持ったことにより、浄土宗は江戸時代において幕府に重用された。

#浄土真宗
 蓮如によって飛躍的に発展した浄土真宗は、日本最大の宗派に成長し、戦国時代には一向一揆によって武将を脅かした。最も権力に対抗的で農民に信徒の多い浄土真宗をどのように抑えるかは、武将にとって重大な課題となった。
 浄土真宗は、封建勢力の一つとして次第に権力を増したが、天文年間の1530年代頃からは諸大名と交際を持ち、貴族の九条家を通じて朝廷に近づいた。12世准如は、豊臣秀吉は寄進された土地に、本願寺を造成した
 徳川家康は、浄土真宗の勢力を抑えるために、巧妙に内部争いにつけ込んだ。1602年(慶長7年)に11世法主・顕如の長子・教如に寺地を与え、東本願寺を創立させた。そのため、本願寺は西本願寺として、東本願寺と対立することになった。幕府は、本願寺を東西に二分することで、その勢力を押さえることに成功したのである。西本願寺派を真宗本願寺派、東本願寺派を真宗大谷派という。
 今日、浄土真宗と呼ばれている宗派は、江戸時代には幕府によって一向宗を公称とされていた。江戸時代後期に、東本願寺は、幕府に対して、公称を浄土真宗に変更するよう請願した。寺社奉行が諮問すると、浄土宗の増上寺が反対を表明した。そのため、公称の変更はならなかった。明治政府が一向宗の宗名を「浄土真宗」とすると定めたことで、ようやく決着した。

 次回に続く。

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