●キリスト教と同性愛・同性結婚
キリスト教では、同性愛は禁じられている。『レビ記』18章22節に「女と寝るように男と寝てはならない。それはいとうべきことである。」とあり、同じく20章13節に「女と寝るように男と寝る者は、両者共にいとうべきことをしたのであり、必ず死刑に処せられる。彼らの行為は死罪に当たる。」 と記されている。
新約聖書の中にも、同性愛に関する記述がある。パウロによる『コリントの信徒への手紙一』6章9~10節に、「正しくない者が神の国を受け継げないことを、知らないのですか。思い違いをしてはいけない。みだらな者、偶像を礼拝する者、姦通する者、男娼、男色をする者、泥棒、強欲な者、酒におぼれる者、人を悪く言う者、人の物を奪う者は、決して神の国を受け継ぐことができません。」と記されている。これらの記述が禁止の根拠とされている。ここで、偶像崇拝、姦通、泥棒等とともに「男色をする者」が挙げられ、神の国を受け継ぐことはできないとしている。
このパウロの言葉に関して、イエスは特に同性愛について言及していないという指摘がある。この点について、イエスは当時のユダヤ教の聖書すなわち旧約聖書に基づいて教えを説いたので、特に違う見解を明示していないものは、旧約聖書の記述と変わらないと考えられる。
西方キリスト教の文化圏である欧米諸国では、伝統的に同性愛は聖書において禁じられた性的逸脱であり、宗教上の罪としてきた。しかし、近年、同性愛について、キリスト教では、教派や聖職者、神学者によって様々な見解が現れ、論争になっている。人工妊娠中絶と同様、本件でもキリスト教の教義の順守と個人の自由と権利の尊重の間で、意見の対立がある。
宗教的・道徳的に絶対容認できないという意見に対し、同性愛行為は罪であって容認できないが、同性愛者の人間としての権利は尊重すべきという意見がある。その一方、同性愛を容認し、同性愛者が不当な扱いをされるべきではないとの意見が広まっている。また、積極的に同性愛を肯定し、同性結婚も可能にすべきとする動きがあり、米国等で同性結婚を可能にする法制化が進んでいる。
米国では、2003年にマサチューセッツ州の最高裁判所が「同性結婚を認めないのは憲法違反」との判決を下した。翌年、同州はこの判決を受け、米国の州で初めて同性結婚を認めた。これに続いて、2008年にカリフォルニア州最高裁が同様の違憲判決を下した。しかし、同年行われた住民投票の結果、同性愛者の結婚の権利は剥奪された。その後、裁判が行われ、2013年の連邦最高裁判所の判決により、同性結婚擁護派が勝訴する判決が確定した。この間、カリフォルニア州に続いて、わずか約2年の間に、同性結婚は50州のうち30州とワシントンDCで認められることになった。今や米国民の過半数の人々が、同性結婚を認める州に住んでいる。
だが、こうした傾向に反対し、同性愛・同性結婚に反対する意見は根強く、先に引いたPRCの2014年の意識調査では、同性愛に「非容認」が38%、同性結婚に「反対」が48%という回答だった。福音派プロテスタントでは、同性愛に「非容認」が55%、同性結婚に「反対」が64%であり、同性愛容認・同性結婚賛成が過半数の主流派プロテスタントやカトリックと対立している。
人工妊娠中絶の問題と同じく同性愛・同性結婚の問題も、アメリカでは選挙における政治的な争点となっている。中絶反対派の保守的な政治家は、ほとんどが同性結婚にも反対している。特に共和党の候補者にとっては、中絶・同性愛・同性結婚に反対するキリスト教右派の票が選挙結果を左右する。一方、中絶を擁護するリベラルな政治家は、同性愛者の権利に対しても理解を示す傾向がある。
次回に続く。
************* 著書のご案内 ****************
細川一彦著『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/d4dac1aadbac9b22a290a449a4adb3a1
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キリスト教では、同性愛は禁じられている。『レビ記』18章22節に「女と寝るように男と寝てはならない。それはいとうべきことである。」とあり、同じく20章13節に「女と寝るように男と寝る者は、両者共にいとうべきことをしたのであり、必ず死刑に処せられる。彼らの行為は死罪に当たる。」 と記されている。
新約聖書の中にも、同性愛に関する記述がある。パウロによる『コリントの信徒への手紙一』6章9~10節に、「正しくない者が神の国を受け継げないことを、知らないのですか。思い違いをしてはいけない。みだらな者、偶像を礼拝する者、姦通する者、男娼、男色をする者、泥棒、強欲な者、酒におぼれる者、人を悪く言う者、人の物を奪う者は、決して神の国を受け継ぐことができません。」と記されている。これらの記述が禁止の根拠とされている。ここで、偶像崇拝、姦通、泥棒等とともに「男色をする者」が挙げられ、神の国を受け継ぐことはできないとしている。
このパウロの言葉に関して、イエスは特に同性愛について言及していないという指摘がある。この点について、イエスは当時のユダヤ教の聖書すなわち旧約聖書に基づいて教えを説いたので、特に違う見解を明示していないものは、旧約聖書の記述と変わらないと考えられる。
西方キリスト教の文化圏である欧米諸国では、伝統的に同性愛は聖書において禁じられた性的逸脱であり、宗教上の罪としてきた。しかし、近年、同性愛について、キリスト教では、教派や聖職者、神学者によって様々な見解が現れ、論争になっている。人工妊娠中絶と同様、本件でもキリスト教の教義の順守と個人の自由と権利の尊重の間で、意見の対立がある。
宗教的・道徳的に絶対容認できないという意見に対し、同性愛行為は罪であって容認できないが、同性愛者の人間としての権利は尊重すべきという意見がある。その一方、同性愛を容認し、同性愛者が不当な扱いをされるべきではないとの意見が広まっている。また、積極的に同性愛を肯定し、同性結婚も可能にすべきとする動きがあり、米国等で同性結婚を可能にする法制化が進んでいる。
米国では、2003年にマサチューセッツ州の最高裁判所が「同性結婚を認めないのは憲法違反」との判決を下した。翌年、同州はこの判決を受け、米国の州で初めて同性結婚を認めた。これに続いて、2008年にカリフォルニア州最高裁が同様の違憲判決を下した。しかし、同年行われた住民投票の結果、同性愛者の結婚の権利は剥奪された。その後、裁判が行われ、2013年の連邦最高裁判所の判決により、同性結婚擁護派が勝訴する判決が確定した。この間、カリフォルニア州に続いて、わずか約2年の間に、同性結婚は50州のうち30州とワシントンDCで認められることになった。今や米国民の過半数の人々が、同性結婚を認める州に住んでいる。
だが、こうした傾向に反対し、同性愛・同性結婚に反対する意見は根強く、先に引いたPRCの2014年の意識調査では、同性愛に「非容認」が38%、同性結婚に「反対」が48%という回答だった。福音派プロテスタントでは、同性愛に「非容認」が55%、同性結婚に「反対」が64%であり、同性愛容認・同性結婚賛成が過半数の主流派プロテスタントやカトリックと対立している。
人工妊娠中絶の問題と同じく同性愛・同性結婚の問題も、アメリカでは選挙における政治的な争点となっている。中絶反対派の保守的な政治家は、ほとんどが同性結婚にも反対している。特に共和党の候補者にとっては、中絶・同性愛・同性結婚に反対するキリスト教右派の票が選挙結果を左右する。一方、中絶を擁護するリベラルな政治家は、同性愛者の権利に対しても理解を示す傾向がある。
次回に続く。
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