ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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イスラーム52~イスラーム文明と人類の将来

2016-05-07 08:46:52 | イスラーム
結びに

●イスラーム文明と人類の将来

 イスラーム文明は世界で最も人口が増加している地域に広がっている。人口増加とともに、イスラーム教徒の数も増加している。そのため、イスラーム教は、今日の世界で最も信者数が増加している宗教である。世界人口のおよそ4人に1人がイスラーム教徒と言われる。今後、ますますイスラーム教徒は絶対的にも相対的にも増えていく。
 2015年(平成27年)4月、米調査機関ピュー・リサーチ・センターが、次のような予測を発表した。世界の宗教別人口は2015年現在、キリスト教徒が最大勢力だが、2070年にはイスラーム教徒とキリスト教徒がほぼ同数になり、2100年になるとイスラーム教徒が最大勢力になる、と。
 同センターは世界人口をキリスト教、イスラーム教、ヒンズー教、仏教、ユダヤ教、伝統宗教、その他の宗教、無信仰の8つに分類し、地域別などに人口動態を調査して、2010年から2050年までの40年間の変動予測を作成した。
 2010年(平成22年)の時点で、キリスト教徒は約21億7千万人、イスラーム教徒は約16億人であり、それぞれ世界人口の31・4%と23・2%を占めた。イスラーム教徒が住む地域の出生率が高いことなどから、2050年になるとイスラーム教徒は27億6千万人(29・7%)となり、キリスト教徒の29億2千万人(31・4%)に人数と比率で急接近する。そして、2070年にはイスラーム教徒とキリスト教徒がほぼ同数になり、2100年になるとイスラーム教徒が最大勢力になると、同センターは予測している。
 予測の精度はともかく、これから21世紀が進むにしたがって、イスラーム教徒の人口が増加し、人類の中での比率が上昇していくことは、間違いない。世界的に増加するイスラーム教徒と、発展途上国の集団として成長するイスラーム文明に対して、どのように対応するか。これは、単にそれぞれの国家や地域だけでなく、全世界的な関心事である。
 ところで、私は、2050年前後に人類は未だかつてない大変化を体験するだろうと考えている。これは、我が生涯の師にして神とも仰ぐ大塚寛一先生の言葉に基づく予測である。大塚先生は、人類は長い「夜の時代」を終え、21世紀には「昼の時代」を迎えると説いている。「夜の時代」とは対立・抗争の時代であり、「昼の時代」とは共存共栄・物心調和の新文明が実現する時代である。「昼の時代」の到来は、21世紀の半ばぐらいだろうと語っておられた、と私は伝え聞いている。大塚先生の21世紀を導く指導原理に関する言葉を、本サイトの「基調」(その3)に掲載しているので、ご参照願いたい。
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/keynote.htm
 「昼の時代」への転換は、人類が過去に体験したことのない大変化となる。ちょうど胎児が暗黒と不自由な母親の胎内を出て、この世に生まれると、それまでの胎内生活の段階とは、全く違う生き方を始めるように、2050年前後に人類は現在、想像のできないような新たな段階に入っていく、と私は期待している。
 これに符合するように、情報通信の分野では、2045年に特異点的な変化が起こるという予測が出されている。テクノロジーの進歩は、指数関数的な変化を示してきた。たとえば、コンピュータの演算速度は、過去50年以上にわたり、2年ごとに倍増してきた。これを「ムーアの法則」という。「ムーアの法則」によると、2045年に一個のノートパソコンが全人類の脳の能力を超えると予測される。人工知能が人間の知能を完全に上回るということである。そのような時代を未来学者レイ・カーツワイルは「シンギュラリティ(特異点)」と呼んでいる。カーツワイルは、人間とコンピュータが一体化し、「人類は生物的限界をも超える」と予測している。カーツワイルは、その時、人類の「黄金時代」が始まるという。
 世界的な理論物理学者ミチオ・カクは、今から約30年後に迫るこの「黄金時代」について、次のように予測する。

・ナノテクノロジー・再生医療等の発達で、寿命が延び、平均100歳まで生きる。
・遺伝子の研究で、老化を防ぐだけでなく、若返りさえ実現する。
・退屈な仕事や危険な仕事は、ロボットが行う。
・脳をコンピュータにつなぎ、考えるだけで電気製品や機械を動かせる、など。

 これ以外にも、新DIY革命、テクノフィランソロピスト(技術慈善活動家)の活躍、ライジング・ビリオン(上昇する数十億人)の勃興等で、次のようなことも可能になると予想されている。
 
・新種の藻類の開発で石油を生成
・水の製造機でどこでも安全な水を製造
・垂直農場やバイオテクノロジーで豊富な食糧生産
・太陽エネルギーの利用で大気中の不要なC02を除去

等である。
 こうしたテクノロジーの爆発的な進歩は、人類の生活と社会に想像を越えた変化をもたらすだろう。あまりにも変化が早く、この変化についていくことのできない人も多くなるだろう。だが、若者は、既成観念に縛られず、過去の伝統・慣習・発想から自由である。若い世代は、新しい時代を抵抗なく受け入れ、自然に、来るべき「黄金時代」に入っていくことができるだろう。これは、イスラーム文明においても同じである。既に「アラブの春」では、民主化を求める若い世代がフェイスブックやツイッターなどのSNSを活用していた。
 かつてヨーロッパでは、近代科学の発達によって天動説から地動説に転じ、中世キリスト教の世界観に閉じ込められていた人々の世界観が大きく変わった。21世紀の人類は、これから世界観の大変化を体験することになるだろう。だが、人類が過去の歴史で生み出し、受け継いできた宗教・国家・制度等は非常に堅固であり、それらによって生じている弊害は大きい。とりわけ宗教による対立・抗争は、非常に深刻である。この障害をどう乗り越えるかに、人類の将来の多くがかかっている。私は、従来宗教による障害を乗り越えていくのもまた、若者だろうと考える。若い世代は、過去の世代を呪縛してきた既成観念から自由であり、従来宗教の矛盾・限界を見抜いて、新しい指導原理を求め、また受け入れるようになるだろう。これは、イスラーム文明においても同様だろう。

 次回は最終回。

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