ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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仏教183~GLA、幸福の科学

2021-07-20 10:05:41 | 心と宗教
・GLA
 GLAは、God Light Associationの略称で、仏教の影響を強く受けた新宗教団体である。
 開祖の高橋信次は、10歳の時、原因不明の病気で生死の境をさまよった際に、臨死体験をしたという。それがきっかけで、宗教に関心を持つことになったらしい。町工場の経営者をしていたが、1968年(昭和43年)に自分や親族に霊的な現象が現われ、その話を周囲に語るようになった。高橋や彼の話に関心を持って集まった者たちには、先祖の霊だけでなく、古代エジプト、古代インド、イスラエル、伝説のアトランティス大陸等の霊が現れ、それぞれの時代の言葉で霊言を語ったという。極めて優秀な言語学者であっても、古代の外国語を聴いて、それがどこの言葉だと判断し、その内容を理解することはできないだろうから、事実とは到底認められない。だが、高橋はこうしたオカルト的な状況において、真の自分の魂に目覚め、宇宙を貫く法である「正法・神理」に到達したという。翌年、大宇宙神光会を始め、1970年(昭和45年)、GLAに改称しに。
 GLAのGは、Godの頭文字だが、高橋の教えは、キリスト教よりむしろ仏教に基づくものである。釈迦の説いた八正道を、各人の魂の成長及び地上の調和のための方法とし、その実践を説く。特徴的なのは、仏教的な教義を独自の霊界論と結び付けている点である。高橋は、各人の魂は死後、その魂が神から受けた光の量に応じた地位に赴くとし、霊界の階層的な構成を語った。その内容は、大乗仏教で説かれるものとは大きく異なり、またエマヌエル・スヴェーデンボリの霊界物語やフレデリック・ウィリアム・ヘンリー・マイヤースの霊界通信とも異なっている。霊界を語る者は、みな言うことが違う。いずれにしても客観的に検証できない事柄に関する話である。
 高橋は、仏教、キリスト教、ユダヤ教、イスラーム教は、みな天上界の指導によって作られたものとし、それらの統合を目指した。自分の前世は釈迦だと称し、多くの会員から釈迦の化身とみなされていた。だが、高橋は、死の直前に自身をエル・ランティーと称した。この言葉は、真のメシアを意味し、高橋はイエスやモーゼを指導したり、守護する立場にあるという。
 高橋は、すべての不幸の原因は自分自身にあり、生活の不調和がもたらしたものであって、心が調和していれば、病気もなく神仏に守られると説いた。だが、自分が病気にかかって、48歳で死亡した。その教えに基づくならば、原因は心の不調和となるであろう。また、一般的に見て、早死である。
 高橋は、晩年、娘の佳子を後継者と定めた。彼の死後、当時19歳だった高橋佳子が法の継承者となった。佳子は、『真創世記』シリーズを出版して注目を浴びたが、後年、SF作家の平井和正が自分が書いたものであることを明らかにした。また、佳子は「父、高橋信次の教えは無意味である」などと発言し、教団の内外に波紋を生んだ。佳子のもと、GLAは、表面的には宗教色を薄め、スピリチュアル・ムーブメントの団体のような様相を呈している。
 GLAには、政治を通じた社会変革を目指すような主張や活動はなく、政治的な関心は低いと見られる。

・幸福の科学  
 幸福の科学は、仏教の影響を強く受けた諸宗教混交型の新宗教団体である。
 開祖の大川隆法は、東京大学卒の商社マンだったが、霊的な現象を体験するようになり、1986年(昭和61年)に幸福の科学を設立して、その総裁となった。幸福の科学は、1991年(平成3年)に宗教法人となる前後から急成長した。
 大川は、GLAの高橋信次の著作から大きな影響を受けたという。高橋には仏教の強い影響が見られるが、大川もまた独自の「仏法真理」を説く。幸福の科学は、『仏説・正心法語』を根本経典する。仏説と称するが、釈迦自身が説いたものではなく、これを釈迦仏の啓示によって書かれた経文であるとし、「仏教の経典の1万倍以上の功徳がある」とする。このことは、大川は自分が釈迦より上だと考えていることを示す。
 幸福の科学の信仰の形態は、「仏宝」「法宝」「僧宝」の「三宝」に帰依することだという。仏宝とは、「現成の仏陀」にして、「エル・カンターレ」の法を説く大川を意味する。法宝とは、大川の教えであり、僧宝とは、「エル・カンターレ」の法を護持する集団だとする。
 「エル・カンターレ」とは、幸福の科学の本尊であり、「地球の至高神」の名であり、「地球の光」を意味するという。エルはスペイン語の男性定冠詞であり、カンターレはイタリア語で「歌う」を意味する動詞である。文法的には、動詞には定冠詞はつかないので、カンターレは同音の名詞とも考えられる。
 カンターレは、高橋信次が釈迦の魂グループの霊界での名称としたものである。大川は、それを地球神の名称とした。釈迦や地球神に関する名称が、スペイン語とイタリア語の単語の結合となっている。また、宇宙神ではなく、地球神というローカルな神格である。
 幸福の科学では、エル・カンターレは、さまざまな名前で世界の多様な民族や宗教を指導してきたとする。キリスト教の主なる神、ユダヤ教のエローヒム、イスラーム教のアッラー、儒教の天帝、仏教の久遠実成の仏陀、神道の古事記以前の天御祖神(あめのみおやがみ)は、すべて同一の存在であり、エル・カンターレのことだと説く。
 幸福の科学の信仰は、「エル・カンターレ信仰」だとする。「エル・カンターレ信仰」とは「地球神の存在を認める」という信仰だという。そして、大川は、エル・カンターレの中核であり、「本体意識」であるとする。
 大川が大きな注目を受けるようになったのは、霊言による。この点にも、高橋の影響が見られる。大川は、故人だけでなく現存の人物の霊までもが、大川を通じて自分の考えや思想を語ったとして、多数の『霊言集』を出版している。その霊言には、もし霊の本人が語っているのであれば、間違えるはずのない事実の違いが見られたり、本人が語るはずのないような内容が多く含まれている。大川隆法の長男・宏洋は、この霊言が実際は演技であることを明らかにした。霊が語ったとする内容は、スタッフが調べた情報をもとに大川が語ったもので、事前の調査が不十分だと、霊言の内容に影響するという。霊言集には、天照大神や昭和天皇の霊言と称するものもあり、冒涜・不敬だという批判を受けている。
政治的には、保守的・愛国的な主張を活発に行っている。創価学会の公明党に対抗して、2009年(平成21年)に幸福実現党を設立し、政界への進出を図っている。公認地方議員は35名(2019年4月現在)となっているが、国政選挙では当選者を出していない。
 幸福の科学は、信者数を1200万人と称し、創価学会を抜いたと公言している。だが、幸福実現党が国政選挙の比例投票で獲得するのは約20万票であり、得票率の0.3%である。それをもとに考察すると、実際の信者数は10万人単位の規模と考えられる。
 大川隆法は、元妻の大川きょう子について、かつてその過去世は「美の女神」アフロディーテ、ナイチンゲール、文殊菩薩だったと賞賛していた。だが、夫婦仲が悪くなると、教団は、大川きょう子を、三宝帰依違反、主エル・カンターレを汚した行為、霊言への愚ろう行為等を理由として、永久追放の懲戒処分とした。離婚後、大川隆法は、29歳年下の女性と再婚している。大川は、元妻を裏切りの悪魔ユダと呼んでいる。また、息子たちが自分の意に沿わなくなると、長男を悪魔、次男を妖怪、三男をカラス天狗と蔑称している。
 だが、こうした教団に入信し、大川を神と仰ぎ、その霊言を信じる人々が、今も多数おり、熱心に活動している。

 次回に続く。

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