ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

政府は国益を守る対中外交を

2010-06-11 20:18:23 | 国際関係
 昨日、櫻井よしこ氏が、管首相に対し、中国大使の起用に関し、厳しい意見を物申している記事を転載した。最近、日本近海で国の主権と安全にかかわる重大なことが起きている。一つは中国海軍宮古島沖島等でわがもの顔の行動をしていることであり、一つは、東シナ海のガス田問題の日中交渉で日本側が大幅譲歩案を示したと報じられていることである。特に後者は、事実であればわが国の長期にわたる国益を損なう。産経新聞が報じた後、どういう結果になったのか、私はまだ分からない。しかし、下手をすると、数百兆円規模の損失と試算される。国家予算の数年分が中国に吸い取られるわけである。
 わが国は資源が乏しい。それだけに海底に眠る資源は貴重である。海底の石油・天然ガスの利用が実現すれば、わが国は一気に資源大国にすらなり得る。ところがわが国の政府は、中国に対し、こうした国益を貫く姿勢が弱い。民主党政権はもちろんだが、自民党政権もおおむねそうだった。故中川昭一氏のようなわずかな政治家以外、中国に対しては、及び腰である。片方でいくら無駄の削減や国債発行の抑制をしても、外交でこれほどの損失を出したら、無意味である。海洋資源の開発は、巨額の財政赤字を解消する唯一の道かもしれないのにである。
 メタンハイドレート(MH)の問題もある。MHは「燃える氷」と呼ばれ、CO2がほとんどでないクリーンエネルギー源である。太陽光とMHを大規模に利用すれば、エネルギーと環境の問題は、相当解決する。MHは、日本近海だけでも日本の現在の天然ガス消費量の100年分はあると推定される。日本周辺では沖縄・南西諸島周辺海域にMH層が存在している。とりわけ大規模なMH層が、南西諸島海溝に存在している。竹島周辺等にもMH層の存在が確認されている。海底油田もある。MHを日本よりも早く自国のものにしようと、中国と韓国が積極に開発を進めている。もはや領土・領海問題は、単なる安全保障の問題でなく、資源・エネルギーの問題でもあり、わが国の経済を成長か衰退かに分けるほどの重大問題なのである。
 冒頭に書いた櫻井氏の記事には、この点の詳しい言及がなかった。補足の意味で本稿を書いた。何党であれ、政権を担う政党は、上記のことをよく踏まえて、国益を守る対中外交をやってもらいたい。
 
 以下は関連する報道のクリップ。

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●産経新聞 平成22年6月8日

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100608/plc1006080317005-n1.htm
【主張】次期駐中国大使 海洋覇権にモノ言えるか
2010.6.8 03:17

 菅直人新首相は、次期駐中国大使に伊藤忠商事元社長の丹羽宇一郎相談役を起用する方向で調整に入った。
 丹羽氏は中国政府と太いパイプを持つ経済界の大物で知られ、有識者の「日中韓賢人会議」のメンバーだ。鳩山由紀夫首相の「中国重視」路線を継承し、米国を上回る貿易相手国になった中国との経済交流をさらに拡大発展させたい民主党の意欲の表れとみられる。
 だが、日中間の懸案は経済問題だけではない。最近、日本近海で国の主権と安全にかかわる重大な事態が相次いで起きている。
 4月、中国海軍はミサイル駆逐艦など10隻を沖ノ鳥島近海まで進出させ、2度にわたり艦船ヘリを海上自衛隊の護衛艦に異常接近させた。5月には、中国の海洋調査船が東シナ海の日本側の排他的経済水域(EEZ)内で活動中の海上保安庁の測量船に作業中止を求め、4時間近く追跡した。
 これらの危険な威嚇行為や権益侵害に対し、民主党政権は十分な対応をしてこなかった。鳩山首相は4月の胡錦濤国家主席との日中首脳会談で中国の軍事威嚇に触れず、5月末の温家宝首相との会談でやっと「懸念」を示した。
 また、東シナ海のガス田問題は上記の日中首脳会談で共同開発について早期の条約締結交渉入りで合意したものの、日本側が大幅譲歩案を示したとも伝えられ、先行きが懸念される。中国が一方的に採掘・生産を開始しないように、監視も必要である。
 このような時期に、次の駐中国大使は国益を踏まえ、中国政府に耳の痛いことをはっきり言わねばならない。日中は多くの利害を共有している。一方で基本的な価値観などで重大な相違がある。その両国が真に建設的な関係になるには、多様な意見の存在を積極的に認め合うことが欠かせない。
 とりわけ今は、日本の主権と安全保障が最重要の問題だ。中国海軍の威嚇行為がいかに日中関係を傷つけ、中国への不信感を高めるかを説明し、理解させることが駐中国大使の大きな責務である。
 この点で経済を優先しがちな商社出身者が次期大使にふさわしいか疑問を提起せざるを得ない。
 民主党はかつて大使の2割以上を民間登用する改革案を示した。これを実行し、「脱官僚」人事を印象づける狙いもあるのだろうが、今回の構想はあまりに問題が多い。菅氏に再考を求めたい。

●産経新聞 平成22年6月1日

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100601/plc1006010113005-n1.htm
【日中首脳会談】成果の裏には大幅譲歩 「白樺」出資は3分の1以下の見通し
2010.6.1 01:12

 31日に行われた鳩山由紀夫首相と温家宝中国首相の首脳会談は友好ムード演出に腐心し、東シナ海のガス田共同開発問題で中国が条約交渉入りに同意するなど成果が並んだ。だが、中国が早期開発を目指す「白樺(しらかば)」ガス田(中国名・春暁)などで日本側が事前交渉で大幅な譲歩案を示し、これに中国側が飛びついたにすぎない。両政府は局長級協議を近く開始する方針だが、日本の出資比率は最大で3分の1以下に抑えられる可能性が高い。
 温首相「総理から『日本は今が一番いい季節だ』と聞いた」
 鳩山首相「短い滞在ですが、新緑の日本を味わっていただければと思います」
 31日の首脳会談は、和やかなやりとりから始まり、ガス田共同開発問題も温首相が「できるだけ早急に交渉を開始したい」と切り出した。「東シナ海を平和、協力、友好の海にするための合意を実施に移したい」とわざわざ鳩山首相の言葉を引用してみせるなど、“気配り”も忘れなかった。
 これまでの交渉で、中国側は、先行開発したガス田「白樺」について、5対5の対等条件での開発とした他のガス田と異なり、共同開発の対象外と明確にするように強硬に要求してきた。
 白樺は東シナ海のガス田で最大の埋蔵量が見込まれており、中国側はすでに商業都市の上海につなぐパイプラインの敷設を進めているからだ。出資比率などの条件面が有利に進めば、中国側のメリットは大きい。
 結局、日本政府は3月に過去の交渉経緯などを精査した上で、白樺と他の共同開発を切り分ける対処方針を決定。これを受け、中国政府は5月上旬に非公式の局長級協議、5月中旬に外相会談に応じるなどじわじわと態度を軟化した。温首相のにこやかな対応は、日本政府の譲歩に対する謝意だと言えなくもない。
 外務省幹部は「白樺の出資比率について中国側と合意はない」と説明するが、他の共同開発と「出資」との線引きを明確にしたことにより、交渉は中国側に有利に進む見通しだ。日中関係筋は中国企業2社がすでに開発を手がけていることを挙げ、「日本の出資比率は単独で2社を超えない3分の1以下となるはずだ」との見方を示している。(赤地真志帆)

●産経新聞 平成20年8月27日

http://sankei.jp.msn.com/life/environment/070827/env0708270744005-n1.htm
【やばいぞ日本】第2部 資源ウオーズ(9)「燃える氷」中韓、虎視眈々
2007.8.27 07:44

 深海底の地中にメタンガスが凍ってシャーベット状になって分布している。「燃える氷」メタンハイドレート(MH)である。日本近海だけでも日本の現在の天然ガス消費量の100年分はあると推定される。この新エネルギー源を日本よりも早く自国のものにしようと、中国と韓国が目の色を変えている。
 中国は今年5月1日、南シナ海北部でMHの採取に成功した。米、インド、日本に次いで4番目だ。「国家を総動員してのMH開発だ。中国は確実に日本に追い付いてきている」と経済産業省資源エネルギー庁幹部は驚きを隠さない。
 MHの存在が世界的に知られたのは1800年代。欧米諸国が1960年代から本格的な研究を始め、日本も1970年代に参入した。
 中国のMH開発の歴史は新しい。本格的研究が始まったのは1990年代後半だ。それが、わずか10年足らずで海底のMH採取に成功した。驚いたことに、中国は間髪を置かずに実用化に乗り出した。
 MH採取技術や機器を開発した専門家で、北京政府のMH政策指南役の王維煕・中国地質大学客員教授が言う。「海南省(島)の三亜市に大規模なガス精製施設のほか、香港まで海底を通るパイプラインの建設を計画している」。
 三亜から香港までは約800キロと、世界有数のパイプラインとなる。MHからメタンガスを分離抽出してパイプに流す。MH生産コストは高く、天然ガスに比べ経済性は圧倒的に不利だ。しかもパイプラインの建設費は膨大だというのに、採算性を度外視してまで中国は突っ走る。
 これは、中国が98年時点で「石油・天然ガスに代わる新たなエネルギー資源の開発は急務」(当時の朱鎔基首相)との危機感に基づく国家戦略があるためだ。
 2006年8月、中国の経済政策を立案する国家発展改革委員会が「中国の石油代替エネルギー発展概況」を発表し、10年で8億元(約120億円)のMH実用化への研究開発費を計上した。
 中国共産党の海南省委員会機関紙「海南日報」によると、中国石油化工、中国石油天然ガス、中国海洋石油という中国石油業界の3大国有企業の担当者はこのほど海南省を訪れ、パイプラインや精製施設などの建設候補地などを視察した。建設は3社合同プロジェクトとして総額で約100億元(約1500億円)に達するという。
 中国ばかりではない。韓国も今年6月24日、同国南東部、浦項の北東約135キロの日本海でMHの採取に成功した。韓国政府は2000年から4年間、日本海の全海域にわたって、資源探査のための広域探査を行った。
 その結果、同国のガス消費量の30年分に当たる約6億トンのMH埋蔵を予測した。韓国政府は2014年末までに計2257億ウォン(約300億円)を投入し、探査と商業生産技術を開発し15年から本格生産に入るという。
 日本は実用化に向け、経済産業省主導で、産学官一体の研究機関「メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム」を結成し、16年の商業化を一応目指しているが、民間は「MHなんて夢のまた夢」(石油資源開発幹部)。投資リスクや商業化の困難さをみて経済産業省系の独立行政法人の行政法人「石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)」まかせだ。「エネルギー資源への関心の高まりの中で、MHを予算獲りの口実にしているだけ」(元経産省幹部)というのが本音で、省益の延長でしかMH開発を見ていない。
 日本はMHという「豊穣(ほうじょう)の海」を有しながら、政府は縦割り、民間はバラバラ。何よりも国家戦略が不在だ。(相馬勝)

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≪中国探査は軍艦の護衛付き≫
 「燃える氷」メタンハイドレート(MH)は、石油換算で約1000年分という膨大な量が世界の海底約10分の1に埋蔵されていると予測される。その争奪戦は、下手をすると石油以上の国家間の紛争の火種になりかねない。理由はMHの二つの利点にある。
 まず、成分は大半が天然ガスと同じメタンガスであるため、石油などと違い、燃やしても二酸化炭素の排出量は少なく、地球温暖化対策にもなる「クリーンエネルギー」であることだ。
 それに加え、MHが自国の周辺海域にあるため、「エネルギー安全保障」に資すると各国が考えるためだ。
 中国の場合、中東やアフリカに石油供給源を求めてもシーレーンに不安がつきまとう。それだけにMH開発への関心を高める。
 中国にとって南シナ海はベトナムやフィリピンなどとの領海をめぐる係争地帯でもある。在京中国筋は「中国地質調査局の調査船は中国人民解放軍の軍艦の護衛付きで、MHの探査を行っている」と語る。力の行使も辞さない構えのようだ。
 日本周辺では沖縄・南西諸島周辺海域にMH層が存在している。とりわけ大規模なMH層が、その海域の南西諸島海溝に存在していることが確認されている。
 南西諸島の西側には沖縄トラフという海底の窪みがある。中国は大陸から沖縄トラフまでを一つの大陸棚として、東シナ海大陸棚全域に対する主権的権利を主張し、日本にはその権利はないとしている。
 ところが最近の研究では、東シナ海大陸棚を形成する大陸性地殻は南西諸島を越えて、南西諸島海溝にまで延びている。東シナ海の大陸棚は中国が主張するように沖縄トラフでは終わっていない。日本が主張する日中の中間で大陸棚を二等分する中間線論の正しさが証明されているのだが、中国は中間線を一切認めようとしない。
 中国は現在、南シナ海を中心にMH層の開発をしているが、いずれ東シナ海に関心を向けるのは間違いないだろう。
 一方、韓国が現在、開発を急いでいるのは鬱陵島周辺だが、この東南方90キロには日本固有の領土で、韓国が占拠している竹島(韓国名・独島)がある。
 韓国政府の発表によると、韓国は年内に鬱陵島のほか、竹島など日本海の5つの海域で、MHの試掘を始めることにしている。韓国メディアの中には、「日本が独島(竹島)の領有権を執拗(しつよう)に主張する主な理由の一つはMHの存在である。鬱陵島や竹島の周辺海域に埋蔵されている6億トンのMHを確保するための戦略だ」(今年1月26日付「韓国経済新聞」電子版)と報じているところもある。
 竹島海域周辺には大規模な海底油田が存在しているともいわれる。
 海上保安庁幹部は「日本、中国、韓国のMH開発競争が本格化すれば、領土問題が激化する可能性が高い」と警戒するが、自国の海洋権益をいかに守るかという戦略をいまだに構築していない日本が後手に回るのは必至だ。
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