ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

櫻井よしこ氏、菅首相にもの申す

2010-06-10 12:54:58 | 時事
 菅直人首相がどういう外交をするか、注目していたところ、駐中国大使に民間人の丹羽宇一郎氏を充てる方針と報じられた。台頭する中国に対し、わが国の国益を守る外交のできる人物であるのか、各方面から疑問の声が上がっている。
 なかでも櫻井よしこ氏は、菅首相には「国家の基本軸をどこに置くのかという国家観や大局観がない」、丹羽氏にも国家観が見えない、と厳しく指摘している。いつもながら凛とした物言いである。
 以下に櫻井氏の記事をクリップ。

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●産経新聞 平成22年6月10日

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100610/plc1006100301003-n1.htm
【櫻井よしこ 菅首相に申す】生き残るための大局観がない
2010.6.10 03:00

 菅直人首相は日米関係を重視するといち早く表明した。具体的政策は定かではないが、日米関係重視の強調と実践は日本の国益上、必要不可欠だ。一方で、菅政権の中国外交への疑問が残る。
 米中両国の外交、安全保障政策はこの数年、ダイナミックかつ複雑に変化している。そうした中、日本の生き残りと繁栄を担保するには、何よりもしっかりした国家観に基づく大戦略が必要だ。外交は目先の懸案処理や経済関係に埋没してはならない。世界の中心が太平洋からインド洋へ移り、米中関係が経済的結びつきを深めながらも、軍事的にはより深い対立構造に進んでいきつつある今、日本周辺の韓国、豪州、東南アジア、インドの全諸国が生き残りをかけて闘っている。その中で、日本も国際情勢を見据え、大局観を持って臨まなければ生き残れない。中国海軍の大艦隊の航行、東シナ海のガス田問題など、眼前には多くの日中摩擦の種がある。経済だけでなく、安全保障や国際政治についての深い洞察力が求められる。
 そのような今、駐中国大使に丹羽宇一郎氏を充てる方針と報じられた。氏は6月8日の『産経』で「人事権者から何のコンタクトもない」が「お国のために役立ちたいという気持ちはある」と述べ、前向きである。
 氏は昭和14年生まれの71歳、伊藤忠商事の社長、会長を経て、現在相談役である。経営者としての能力は高く評価されている。が、氏が外交、安保をも論じてきたとは、私は寡聞にして知らない。
 今年3月に出版した『新・ニッポン開国論 今こそナンバーワンを目指そう』(日経BP社)ではアジアに目を向けて生きよと説き、国家間関係では政治的絆(きずな)より経済的絆が重要だとして、「日本の政治家が靖国神社を参拝しようがしまいが、関係ない。政治的主義・主張は経済の前には色あせるものだ」と書いた。さらに、経済発展には人間の質と教育が大事だと氏は説く。「65歳以上の政治家がゴロゴロいる」日本はダメで、「70歳を過ぎたら全員一線を退くという法律を作った方が良いくらいだ」、「老人よ引け、飛び出せ若者」とまで檄(げき)を飛ばしている。
 そのご本人が、「71歳」で民間企業の一線どころか、国際政治の一線に日本国代表として躍り出るお気持ちのようだ。私は年齢にはこだわらない。年齢など論じたくないが、氏自身が「法律を作っ」てまで、「老人は引け」と主張するから、あえて言うのである。
 前述のように、外交、とりわけ中国外交には、精神力、知力、体力に加えて、大局を洞察する国家観が必要だ。国家観を歴史の見方と言い換えてもよいだろう。これを丹羽氏も触れた靖国神社参拝問題を軸に考えてみる。
 靖国参拝問題は突き詰めれば、中国が道徳、倫理、品性において日本の上に立つのか、それとも日中は対等の立場に立つのかを決する歴史解釈の象徴になったのだ。
 丹羽氏が、政治はその前では色あせると語った経済をはるかに超える力で、靖国問題は日中関係を規定する。中国は靖国問題を政治力に転換して利用すれば、日本を抑制できることを学習した。

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 これによって、精神的に日本の上位に立てることも発見した。だからなおさら、日本は歴史解釈の壁を破り、真っ当な国としての歴史観を身につけるためにも、政府の靖国参拝を続けなければならないのである。
 小泉純一郎首相は在任中、6度、参拝した。丹羽氏も一員の経団連は当時、「首相参拝は日中関係に影響を及ぼしていない」との立場をとった。しかし、参拝は首相としてではなく、個人としての参拝だと説明した。正面切って非難はしないが、事実上、首相参拝を否定したとも受けとれる。
 丹羽氏もまた、小泉首相の参拝に否定的な発言をしていたという。私はこの件を、複数の責任ある人々に確認した。首相参拝はビジネスにマイナスに働くとの懸念でもあろうか。だと仮定すれば、大使就任の暁には、個々の企業や業界の思惑や利益を離れて日本の国益に基づく発想ができるのか。疑問なしとはしないために、その点は大使就任が決定すれば、確認する必要もあるだろう。
 一方、菅首相は平成14年9月に出した『改革政権準備完了 私に賭けてください』(光文社)で、自立外交について書いている。たとえば、自国の安全を守る「覚悟」を国民の側に作り上げよと言い、「自主独立外交」の実現には、密約外交の清算が必要だと主張する。情報全公開の真っ正直外交が自主独立国家の構築につながるという論理が、よく解らない。
 東アジア地域安全保障フォーラムを作り、中台問題への軍事的関与はするなとの主張も、近隣諸国と歴史共同研究を進め、(靖国神社とは別の)国立墓苑を作り、信頼の礎にするとの主張もある。個別案件についての考えはあっても自立外交の基盤を何によって構成するのかは、結局、明らかではない。菅首相にも国家の基本軸をどこに置くのかという国家観や大局観がないのである。
 首相と駐中国大使予定者、双方ともに国家観が見えない。そのような人々の下で、日本の漂流はさらに続くと思えてならない。
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