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初歩の投資教室 19  現金比率をどうすべきか、その2

2012年10月18日 | 初歩の投資教室
  ではモンドさんの質問に回答させていただきます。

その前にモンドさんのコメントにコメントします。

>投資の本などには「必要資金」や「給料3か月分ぐらい」を残して投資みたいなことが書いてありますが、「必要資金」を「当面の」と解釈すると、特段支出の予定がなければ、手持ちの資金の多くが株式等の投資商品につぎ込まれてしまうことになるのでは、と疑問に思っていました。

そうですね、たしかにほとんどの投資の本は、投資商品のリスクの本質をしっかり見極めていないため、そうした方針になってしまうのでしょう。

>自分は、それは何か直観的に違うかな(怖いな(^_^;))と思っていたので「当面の必要資金」以外の「投資に回せる資金」の中でも現金をそこそこ確保しており、それが緩衝材となり、リーマンショック時も致命傷にはならずに何とか完全撤退を免れました。

お見事です。モンドさんは投資家としてリスクを嗅ぎ分けるセンスがあるようです。

>そういうような自分の状況をもとに、お尋ねさせていただいたので、まさしくブログで記載ただいたように「投資資金のうちの現金比率」という点についてご意見を伺えればとおもいます。

了解です。

現金比率をどうしたらよいか。リーマンショックを例に解説します。

現金をある程度のポーション確保し、リスクから避難させておくのも一手ですが、欠点は「現金は損はしないけど稼げない」と言う点にあります。では、現金に匹敵する安全資産とは何か。

すでに私の著書やこのブログでも何度か書いていますが、その点世界で最も安全と言われ、リーマンショックでも売られず、逆に買われたのが米国債日本国債、価格変動は激しいですが3つ目はゴールドです。

流動性の高さから言えば、この3つは現金に最も近い流動性を持っていますので、いつでも現金化できます。ゴールドはデフォルトはしませんが価格変動が激しいので、私は安全資産には入れません。除外します。

残るのは米国債、日本国債、現金です。

私は日本国債も当面は大丈夫だとおもいますが、将来はかなり高い確率でデフォルトもしくはハイパーインフレで実質デフォルトの道をたどると思っていますので、これも除外します。

すると米国債と現金だけが残ります。

この二つ、米国債の高い流動性からすればほぼ同等に扱っても差し支えないでしょう。ただし米国債は為替リスクがあり、理論上そのリスク分金利を得られることになります。

そして米国債の大事な点は、他の投資商品が暴落する相場にあっても、逆に買われる商品であることです。つまり分散対象としてパーフェクトに近い商品です。

モンドさんは「現金に置いておいたので難を逃れた」ということですが、もし米国債のこうした性質をあらかじめ知っていたらどうでしょう。「米国債にしておいたので、難を逃れると同時に、キャピタルゲインを得た」となります。

世の中の多くの投資本は、投資の国際的スタンダードを知らないので、米国債という最も大切な投資対象が「フライト・トゥー・クオリティの対象」となっていることすら理解していません。

フライト・トゥー・クオリティとは、危機的状況下での質への逃避で『米国債への逃避』を意味します。

一般的に日本を除く世界の投資アドバイザーがアドバイスをする際、何をアドバイスするかと言いますと、株・債券・現金(MMFを含む)の3つのカテゴリーの比率をアドバイスするのです。銘柄などは二の次です。

例えばこうです。
「経済成長に陰りが見えるので、株式比率は50%から40%に下げ、債券を50から55%に上げるべきだ。現金は5%を保持する」という具合です。

国際的スタンダードの一般論から申しますと、現金比率は危機的状況下で3割。通常状態では、かなりの変動があっても0-5%程度です。

そんなに低くてよい理由は、米国債という超安全、もしかすると現金より安全な資産に常に片足を置いているからです。

つづく
コメント (1)
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