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初歩の投資教室 17  何で損するの?つづき

2012年10月13日 | 初歩の投資教室

  ここまでなぜ投資で損をするのか、その理由について書いてきました。

私の意見をまとめますと、

1. 国内投資では日本経済が低迷し、株価が低迷しているから
2. 外貨建て投資では、円高が進行したから
3. リスクの超高い商品に手を出すから
4. 証券会社が1.2.3.を薦めるから


そして4の証券会社が薦めるままに投資を行うとロクなことはない、ということの理由は、「証券会社と投資家の利害は一致していないから」だ、と説明しました。これには異論のある方もいらっしゃると思います。

  日本の証券会社でも顧客は損失が続けば離れて行きますので、長期的利害は同じ方向を向いているように見えます。ところがどっこい、日本の顧客は損失を被っても、「それは市場のせいだ、投資は自己責任だからすくなくとも証券会社のせいではない」と考える方が多いのです。証券会社にとっては大変ありがたい客です。

  この考えの裏にあるのは、「投資とはリスクを取るのだから、損失はつきものだ」という考え方でしょう。

  もし「世界には損をしない投資があるのだ」と知ったらどうでしょう。

損をした客は証券会社にくってかかるでしょう。でも日本の投資家はそんな投資はないと思っていますから、喰ってかかるようなことはしません。

  損をしない投資とは、高格付けで安全な債券に投資することです。債券は100で買ったものが100で返ってきて、その間にもらえる金利分は必ずプラスになります。もちろん発行体が倒産したりしなければ、という条件はつきますが、償還まで保有すれば価格の変動などに左右されない安全な投資法です。

  そして繰り返しますが、「生の債券投資」は証券会社は決してお薦め商品に入れていません。証券会社のメニューに入っているのは安全性は確保されていない「債券投資信託」だけです。債券投資と債券投信、似たような名前がついていますが、内容は全く違うのでご注意ください。生の債券投資では証券会社は売買を繰り返さないと1銭にもなりませんが、債券投信では黙っていても損をさせても、毎年必ず運用の手数料収入が入ってきます。

  10月8日付の記事、「その17」にモンドさんからコメント(質問)がつきました。

質問は、
  ①現金の比率の考え方記述が少なくフルインベストに近い形にすべきに読めてしまうが正しいのか?
  ②「債券」のクラスは、実際の「債券」か「債券のインデックスファンド」のどちらで構成すべきなのか?

次回はそれに回答していきたいと思います。


  今回はもう一つ、年金運用に関して10月13日の日経新聞朝刊に、興味ある記事が載っていましたので、みなさんに紹介します。

  アメリカの公的年金で、カリフォルニア州とニューヨーク州の職員退職年金の運用結果についてです。私が投資銀行にいた90年代には「泣く子も黙るカルパース(加州年金)」と言われたものですが、最近はかなり運用に苦労しているようです。

  記事によりますと、最近の成績について加州年金の責任者は、
「今年6月までの1年の利回りは1%だった。海外株のマイナスが響いた」。HPで調べた運用成績は、過去10年は年率6.9%、過去20年はおよそ年率9.7%でした。

一方、NY州の責任者は、
「過去10年で年率11.6%、20年では12.4%だった。マドフ事件(投資詐欺)やサブプライムなどを避けたからだ。大半の投機的ヘッジファンドにも投資しない」

  日本の公的年金運用をしているGPIFが過去10年あまりで年率1.3%の成績であること考えると、両者の成績は素晴らしいのですが、特にNY州の実績は際立っています。

  ちなみにポートフォリオ全体の中で株式投資の比率は、カルパース63%、NY州54%。債券はカルパース18%、NY州は27.5%。

  責任者の言葉通り、NY州は保守的に運用しているにもかかわらず、とてもよい実績を示しています。

以上、海外の年金運用実績の例でした。
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