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初歩の投資教室 18  現金比率をどうすべきか、その1

2012年10月15日 | 初歩の投資教室


  前回の記事でカリフォルニアとNYの州職員年金のことで、特に加州は「泣く子も黙るカルパース」と紹介しました。ある方からいったいどれくらいの資金を運用しているのか、という質問がありました。現在の運用資金は加州が19兆円、NY州が12兆円で、もちろん全米屈指(地方職員年金の1位と3位)の資金量です。日本の投信の総額が44兆円ですから、両者だけでその4分の3くらいの規模になります。

   もっとも日本の公的年金の運用をしているGPIFは、108兆円も運用しています。これは大きすぎです。何故なら個々の取引サイズも必然的に大きく、売り買いのたびに自分が相場を動かしてしまい、不利な取引になってしまうからです。

  さらに言えば、GPIFは安全のため「分散」投資を旨としているのに、自分自体は年金資金が「集中」しているという矛盾を抱えています。もし何か大きな相場変動や一大事でもあったら、我々すべての国民の年金がいっぺんにおかしなことになる可能性を否定できません。もちろんAIJ(2千億円近く年金を焼失させた)とはわけが違うでしょう。しかし絶対の安全性などないのが投資です。

  GPIFの中で例えば日本国債のポーションは非常に大きいと思いますが、私のように公的資金での国債への投資(日銀も含め)は『国全体でねずみ講をやっている』のと同じだと思っている人間から言わせれば、「お願いだからもうこれ以上国債は買わないでちょだい」。集中の悪い例の象徴です。

  ちょっと話が横道に逸れましたが、日本全体が大きな間違いを犯しつつある現段階では、そうしたリスクをみなさんは是非頭に入れて、今後の投資活動をすべきです。

  さて、ポートフォリオの組み方で質問をいただいたモンドさんのご質問に答えていきましょう。

質問1.現金の比率の考え方記述が少なくフルインベストに近い形にすべきに読めてしまうが正しいのか?

  現金比率については、さほど難しく考える必要はないと思います。必要な資金を手元に残すべきでしょう。必要な資金とは、将来の生活全体を考えたうえで必要な資金で、よくライフ・プランナーとかファイナンシャル・プランナーという方々がモデル家計で細かく生活費の試算などをしているものです。

ご質問の趣旨は、「そんなことはわかっているよ、それは別にしてどう投資資金だけでの現金比率を知りたいの」ということだと思います。しかし実はその将来の必要な現金がかなりの額、例えばあと20年生きるから2千万必要、というような金額になったら、それを預金で放っておくのはもったいないですよね。安全な個人向け国債にでもして年々すこしずつ満期がくるようにしておけば、多少の金利は得られます。

 ではそれを除いた純投資に使う全体額の中で、現金比率をどうすべきかについて、次回以降で私の考え方を述べることにします。
コメント (6)
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