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初歩の投資教室 16  分散投資の評価

2012年10月05日 | 初歩の投資教室

  さてここまで様々なポートフォリオを組んだ分散投資の例と実績を見てきました。

ポートフォリオの例としては
・証券会社のサイトにあった、年齢別・リスク別のお薦めポートフォリオ
・山崎元氏の退職金のアロケーション
・公的年金GPIFの例
・野村マイストーリーB
・日興GW7つの卵


ポートフォリオを組んだ実績としては以下のような数値でした。
・公的年金GPIF・・・10年間で年率平均1.3%
・野村マイストーリーB・・・年率ではほとんどゼロに近いプラス
・日興GW7つの卵・・・年率2%プラス


  もともとのテーマは、「分散投資に意味はあるか否か」でした。

  この3つとも実は年によって大きくマイナス実績の年があり、それも全期間の半分近い年でマイナスを食らっているのです。私にはそんな分散は意味がない、としか思えません。特にリーマンショック後は、大きなマイナスになっています。

  だったら、日本国債でも買って寝て暮らせば、マイナスなど心配せずに償還までのプラスのリターンが確定しているのですから。

(注)債券の毎年のパフォーマンスは、厳密には毎年時価評価をすることになっています。しかし償還まで保有すれば、時価評価は関係ありません。

  
  そのほかに、投信などのパフォーマンスを厳密に計る場合、「ベンチマークとの比較」という方法を用います。

  例えば株式投信だと、日経平均やトピックスに比べてどうか、という比較です。しかしベンチマークとの比較だと、その投信のリターンがマイナス20%としても、トピックスがマイナス25%だと、「ベンチマークを5%も上回った」と勝利宣言が行われるのです。

  冗談じゃありませんよね。2割も負けたら大負けです。どうかみなさん、どうしても投信がいいという方も、このいかにも証券会社らしい言い訳で騙されたりしないように注意してください。

  比較方法はリスクフリー・レートとの比較という形でもなされます。投資を行っている国の国債の金利レートをリスクフリー・レートと言い、それと比較します。日本なら日本国債で、だいたいが10年物のレートを使います。BISという世界の銀行を規制している機関も日本国債はリスクなしと一応認定していますので、この際リスクフリーは国債と認定してみましょう。

  GPIFの実績を検証するのに、この10年間を比較してみましょう。10年前の日本国債10年物の金利はちょうど1%くらいです。20年物だと2%くらいでした。「国債に投資をしてなにもせずに放っておいてもそれだけのリターンがあるのだから、リスクを取るのであれば当然それにプラスしたリターンがあるべきだ」というのがリスクフリーとの比較です。私はこちらの方法が妥当だと思っています。

  その比較では、GPIFはリスクフリー・レートを0.3%ほど上回っていた、となります。また日興の7つの卵は、1%ほど上回っていた、となります。野村はマイナス1%だった、ということです。

  大きなリスクを取るのですから、プラスとなったGPIFにしろ日興にしろ、その程度では「リスクフリーとほとんど一緒だった」というのが妥当な評価でしょう。

  私のザックリとした感じでは、リスクフリーに対するスプレッドがプラス5%なら上出来3%ならまあまあ、それ以下は不出来というところです。


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