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初歩の投資教室 17  何で損するの?

2012年10月08日 | 初歩の投資教室
  ここまで、分散投資をすることで果たして安全性やパフォーマンスは向上するのか、というテーマで様々な例をみてきました。すくなくとも代表的な分散投資の例では、個人投資家のみならず、プロにまかせても成果があまり上がっていないようだ、ということがわかりました。

「じゃ、いったい個人投資家はどうしたらいいの?」

  それに回答するため、何故損をするか原因をしっかりと突きとめたいと思います。今後同じ様な間違いをおこさないためのヒントを見つけていきましょう。

  損した読者の方の大半は自分が何故損失を出したか、原因はわかっていますよね。でもタイトルは初歩の投資教室ですので、ベテランの方はちょっと我慢してください。

損失の原因を簡単に並べれば、

1. 国内投資では日本経済が低迷し、株価が低迷しているから・・・バブル崩壊後20年を経ても日経平均は下げ続けています
2. 外貨建て投資では、円高が進行したから・・・バブル崩壊後でみても90年初の146円が00年初102円、10年初83円、12年10月現在78円程度
3. リスクの超高い商品に手を出すから・・・新興国ものやジャンクボンド(ハイイールド債券)などプロでも火傷を負った

これが直接の原因でしょう。しかしもう一つ大事なことがあります。それは

4.証券会社が1.2.3.を薦めるから

  これまで証券会社のアドバイスに従って投資をしたために大きな損失を出した方々の実例も見てきました。その方々の損失は代表的には株と外貨建て投信でした。

いったい、証券会社のどこがいけなかったのか?



  一般的にアドバイザーを選ぶという時に、一番大事なことはなんでしょうか?

「適切なアドバイスができるアドバイザーを選ぶんじゃないの?」

  いいえ、違います。それは当然ですが、それ以前に考える必要があるのは、「依頼者とアドバイザーの利害が反していないか」です。

  アドバイザーとして証券会社を選ぶ場合、証券会社と顧客の利害関係は、必ずしも一致していません。何故なら証券会社の一番の関心事は、顧客から手数料をどれだけ取れるかの1点で、投資で顧客が儲かるかは一番の関心事ではありません。一方顧客は儲かるかどうかが最大の関心事で、証券会社にはなるべく手数料を多く取られたくないのです。

  あたりまえですが、このように証券会社の利害と、顧客の利害は一致しないのです。顧客の損失に対して責任をとることはいっさいありません。もちろん証券会社に言わせれば、

「顧客に損失を与えれば逃げられるので、長期的利害は一致している」

と言うでしょう。しかしこれは表看板の言葉です。

  世界にはアドバイザーかつ運用者が顧客と同じ利害をもつケースもあります。ヘッジファンドの多くがそれです。ヘッジファンドの経営者は、自己資金もそのファンドに入れて顧客の資金とともに運用しますので、損得はすべて一致します。そうしたことを定款で確約しているファンドが数多く存在するのです。それだと利害関係を心配する必要はなくなります。そのかわり「儲けた時に2割は成功報酬でもらうよ」となっています。逆に損したらアドバイザーの収入はないこともあるので、必死で運用します。利害関係の一致・不一致は、こうした違いをもたらすのです。

つづく
コメント (7)
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