赤いハンカチ

夏草やつわものどもが夢のあと

▼野良と交番

2023年10月12日 | ■日常的なあまりに日常的な弁証法

2002.12.15  世田谷区 

 以下も大昔の記事につき、恐縮至極。

 おい、そこを行くネコくん ネコくん。ちゃんと 横断歩道を渡りなさい。交通ルールを守ってネ。

 うっるせいなぁ。あの声はこの秋より本署から左遷されて交番勤めしている交通課のオマワリだな。へっ、知ったことか。アホ種ヒト科のガキと一緒されてたまるか。おいらは、毎日、いかに食っていくかで必死なのさ。今は、道路のあっち側に渡らなければ、おまんまに見放されるってなものだろう。今日は日曜だから車も少ない。週末ぐらいなものだぜ。こうしてゆったりと道路をわたれるのはよ。
 ネコの事情もしらないで、バカの一つ覚えみたいに、なにが交通ルールだ。ネコにはネコのルールがある。機会があれば、交番に入っていって講釈してやってもよいんだが。あいつらに聞く耳があるかどうか。
 そういえば今年はまだサンマを食っていないな。去年は二匹ほど食ったが、この不景気では今年はあきらめなければならないか。まったく世知辛い世の中になったものだぜ。おい、そこのオマワリ。おまはんは今年、サンマを食ったかね。ネコのために頭と尻尾ぐらいは残しておけよ。それが昔からのルールだったぜ。今はなんだい、ネコのことも考えずにあらかた捨てっちまいやがってよ。
 それも誰にも触れさせない見させないとばかりに後生大事に包み込んでから捨てるってか。においも嗅がせないうちによ。そこまでオラたちネコを小馬鹿にするのか。てめたちだけ小ぎれいに暮らせればそれでいいってんだからな。いくらなんでもアホ種のヒューマニズムにネコの存在を考慮しろとは言えないけどよ。ヒト科ばかりにのさばられたんでは、世も末だぜ。
 まあ、小難しい話をしても交番のオマワリはんにはわからんだろう。そこでオマワリさんよ。こうとなったら取引だ。サンマの頭と尻尾をここに持って来てくれるなら、きちんと横断歩道を渡ってやらないこともないんだぜ。

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