世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

長谷寺の登廊はおよそ400段もの階段があってきついのですが、登廊を囲む牡丹の花に見とれているといつの間にか本堂にたどりつけます

2023-08-13 08:00:00 | 日本の町並み
 前回は女人高野の室生寺を紹介しました。室生寺は境内いっぱいに咲くシャクナゲが見事ですが、同じ時期にボタンが咲き乱れるのが長谷寺です。同じ近鉄線の沿線で花の時期が似ているため、2つのお寺を梯子をする観光客も多く、花の時期には二つのお寺を直接結ぶ臨時バスも運行されます。今回はその長谷寺を紹介します。

 
 長谷寺は大阪難波から近鉄戦で1時間ほど、明日香村の北辺をかすめて少し東に走った長谷寺駅が起点になります。近鉄線は吉隠川の南にある山塊の北斜面を横切るように走っていて、長谷寺の本堂は川向こうの初瀬山の中腹まで上ったところにあります。したがって、電車でお参りをすると、往復ともに坂を上らなければならないことになります。バス道から清滝川までありて、また急な坂道を登らなければならない神護寺ほどではありませんが。

 
 
 麓の仁王門から本堂までの上りの登廊はおよそ400段できついのですが、この登廊の周りに植えられているのがボタンで、花の季節には花を愛でながら上っていくのは、上りのきつさを忘れさせます。この登廊は趣があり重文指定ですが火災で焼失後の大正時代に再建されたものです。

 
 登廊を登りきったところにある本堂も奈良時代の創建後に度々火災にあっていますが、現在のものは江戸時代の再建で国宝指定です。清水寺や書写山円教寺と童謡の懸崖造りで、山の中腹のきゃだいな建物は存在感があります。懸崖状態の部分は礼堂で背後に本堂があり10mを越える巨大な十一面観音立像が安置されています。これだけ巨大な観音像なので礼堂唐は腰のあたりから上半身しか拝むことができません。春と秋には特別拝観と言って足元まで入堂でき足に触れることができますが、足元からは引きが足らなくて像の全容がつかめません。ただ、その巨大さだけは実感できる貴重な空間です。

 
 本堂からの戻りは、本堂の裏に出て本長谷寺から五重塔を経由することができます。戦後に建てられた初の五重塔で、檜皮葺の和様建築で、緑の木立の中の朱色の塔はそれなりに美しいのですが軒の出が小さく塔心が太く感じて、室生寺の軽やかな五重塔とは比べるべきもありません。


 長谷寺の十一面観音立像は重文ですが、前回紹介の室生寺の十一面観音は国宝指定で、国宝の十一面観音は室生寺を含めて全国でたったの7体しかありません。観音は種々に姿を変えて人々を救いにやってくると言われ、36通りとも6通りともいわれ。これらを変化観音と呼ばれており、十一面観音もその一つです。これらの十一面観音は、名前の通り頭上に十一面の仏面を載せていますが、それぞれに顔立ちが違っています。これは、人々を救うための役割の違いとされています。これらは役割を特化したマルチプロッセッサーでできたコンピュータみたいなものでしょうか。