世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

しゃれた建物は重文にも指定されている牛久シャトー、閉店したレストランなどの再開が待たれます

2020-04-12 08:00:00 | 日本の町並み
 名古屋駅から歩いても20分足らずの都市の中心部にある産業遺産がノリタケの森でした。工場は移転してしまっていますが、工場であったことを表す遺跡や、赤レンガの建物を利用したレストランなどが立ち並んでいます。このような施設は、都道府県のアンテナショップと似たように、企業イメージを上げる効果も狙っているように思います。ノリタケの森に類するような施設の中から、今回はオエノン・ホールディングスが所有する牛久シャトーを紹介します。

 
 
 牛久シャトーは明治36年に、牛久駅から10分ほどの場所に神谷伝兵衛によって開設された日本初の本格的なワイン醸造所です。神谷と言えば、浅草に電気ブランで有名な神谷バーを思い浮かべられる方いらっしゃるでしょう、その神谷氏が作ったワインの醸造所なのです。しゃれた建物の事務室は、醗酵室、貯蔵庫とともに2008年に重文に指定されています。

 
 
 
 
 
 事務室は本館として、醗酵室は神谷伝兵衛記念館として、貯蔵庫はレストランとして利用されています。このうち記念館は内部が公開され、2階は資料展示室になっていて、牛久シャトーの歴史や、ワインを絞る道具など、ワインにまつわる道具類が並べられています。また、地下にはワインの樽が並べられ、ボトルに詰めらたワインセラーもあり、当時の様子をうかがうことができます。ワインのボトリング工場も上から眺められるようになっていて、1階には世界各地のワインの即売場もあります。

 
 
 貯蔵庫を利用したレストランのキャノンは、前回に紹介したノリタケのKilnと同様に手ごろな料金のフレンチレストランでした。ただ、Kilnでは食器類がノリタケでしたが、キャノンはどうであったか記憶にありません。過去形で表現したのは、筆者が訪問の1年半前にはおいしいフレンチが食べられたのですが、残念ながら2018年末を限りで閉店されてしまったようです。内部のドアの上部には葡萄などのステンドグラスやレリーフがあしらわれていて貯蔵庫であったことをしのぶ天井の無い内部空間は素敵だったのですが残念です。ただ、牛久市が再開に向けて動き出し、早ければこの春には再開にこぎつけられるかもしれないそうです。

 
 建物の裏庭には葡萄畑が広がっていて、鳥や人の侵入を防ぐために青色のネットがかぶっていたのは、ちょっと無粋な感じでした。不思議だったのは、畑の入り口に対の唐獅子が居て、台座には四方、?守と書かれていることでした。資料を調べてみたのですが、それに触れているものは無く不明でした。門のところで葡萄畑に入ってくる外敵ににらみを利かせているのでしょうか。

 ワインは樽から瓶詰めされた後も熟成が進む唯一のお酒の一つと言われています。熟成はワインの成分の一部が化学変化することによる味の変化ですが、化学式ですべてが表せるほど単純ではないのだそうです。主たる反応は酸化で、ワインの中のタンニンが酸化して、味に深みが出るのだそうです。酸化と言えば、アルコールが参加すると酢酸になるわけで、こうなってしまうと酸っぱいワインになり、やがてワインビネガーにはなってしまいます。聴覚や視覚それに触覚のセンサー技術は進んでいて、センサーから得られる情報によってコンピュータによる自動制御などが進みました。これらに比べて、嗅覚や味覚のセンサーは、まだまだ不完全なものばかりです。ワインの味は、当分は職人の感覚で決められるのでしょう。