世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

中国の古都洛陽には、繁栄を偲ぶものは少なく牡丹の花がひとり咲き誇っていました(中国)

2015-02-08 08:00:00 | 世界の町並み
 ドイツの商都であるフランクフルトの南に位置し、ヴェルサイユに告ぐ広さを誇る宮殿が待ちの中心にある都市がマンハイムでした。マンハイムはマンハイム・クァドラーテと呼ばれる直行する道路で区切られた都市計画でも知られています。直行する道路で区切られた都市というと、平城京や平安京を思い浮かべますが、そのお手本となったのが中国の長安や洛陽でした。今回は、その一つである現在の洛陽を紹介します。

 洛陽市は北京の南西600km、上海の西北西800km、そしてかつての長安、現在の西安の東300kmという内陸の都市です。在来線の駅は、洛川の北に広がる市街地の北辺にある洛陽駅で、西安と鄭州とを結ぶ高速鉄道の洛陽龍門駅は、市街地からずっと南の世界遺産の龍門石窟に近い所に位置しています。町中には、路面電車は無く中国の都市に多いトロリーバスが多くの路線で走っています。

 洛陽の歴史は平城京の比ではなく、紀元前8世紀には東周王朝の都でした。歴代の王朝は都を長安と洛陽との間を行ったりきたりで、長安が都の時にも、洛陽は副都とした王朝も多いようです。ただ、西安に比べると現在の洛陽市には遺跡や寺院などの歴史的な見所はあまり多くなく、龍門石窟が唯一のメジャーな観光地のようにも思えます。

 
 
 この少ない観光資源のなかから、3箇所を紹介しましょう。最初は、市街地の東はずれにある白馬寺です。西暦68年にインドの僧の2人が四十二章経を持って来訪し、この寺で翻訳をしたと伝えられる中国で最古の寺院です。山門の前には、2人の僧が白馬に乗ってきたという故事に従い白馬の像が建っています。また、境内に建つ斉雲塔は西安の小雁塔を思わせる塔で、基底部より中央のふくらみのほうが太い塔です。

 
 
 続いて、市街地の南、世界遺産の龍門石窟に行く途中にあるのが関林廟です。三国時代の蜀の武将である関羽の廟で、各地にある関帝廟の中で最初に作られたものと言われています。門を入って大殿と呼ばれる建物に入ると、関羽の巨大な像が極彩色で迫ります。どうも日本人の感覚からすると、極彩色の聖像には違和感を覚えますが、かつて日本のお寺にある古い仏像は、できた時には極彩色だったようです。この建物の裏の境内には、関羽の首が埋葬されているという塚もあります。

  
最後は、牡丹の花です。日本人は桜の花が好きですが、中国で最も人気のある花の一つが牡丹です。洛陽は温暖で土壌も牡丹の生育に適しているようで、牡丹は市の花にも指定されています。毎年4月下旬から5月にかけて牡丹祭りが催され市域のあちこちの牡丹園に人が集まります。その中の王城公園は、遊園地や川の北側には動物園もある東西800m、南北400mほどの公園ですが、その半分くらいと川沿いの斜面一面に牡丹が植えられています。ただ、日本にある牡丹園と比較をすると、大規模ではあるのですが、ちょっと大味な感じがしました。

 洛陽の地名を聞くと芥川龍之介の「杜子春」を思い出します。お金があるときには人が寄ってくるが、無くなると冷たくあしらわれる現世に嫌気が差す主人公ですが、現代の社会にも通じるところがあるようにも思います。お金にしか価値を認めない人間が、必要以上に金を集めた結果、富が1%の人間に集中する格差社会を生んでいるように思います。人々を幸にするはずのIT機器類についても、金儲けのための独占がまかり通っているようにです。コンピュータが格差を助長しているとの指摘もあるようで、人類は杜子春に出てくる仙人のようには、なかなかなれないようです。