世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

蓮華畑の向こうにすっくと建つ備中国分寺の五重塔は、最も存在感のある塔の一つです

2014-07-20 08:00:00 | 日本の町並み
 京都の東山の法観寺の五重塔は、京都のシンボルのように建つ、きわめて目立つ五重塔でした。塔は、ストゥーパーの音訳である卒塔婆の中央の文字が残ったもので、元々のストゥーパーは釈迦の骨を収納するものでした。日本に伝わるまでに姿も随分と変わり、現在見られるような三重塔や五重塔になったようです。日本に伝わっても、舎利塔の役割は変わっていませんが、高くそびえる塔は、お寺の存在を誇示する役割も負っているように思います。遠くからも目立つ塔も多いのですが、今回は備中国分寺の塔と、その近辺を紹介します。

 
 備中国分寺は、JR伯備線の総社駅の東3kmほどの周りは田んぼばかりののどかな場所に建っています。奈良時代の国分寺が廃寺となっていた場所に、18世紀初頭に再建されたお寺が現在の国分寺です。境内には、重要文化財の五重塔のほか、本堂、太子堂、山門などが残されています。かつての備中国分寺には50mを越える七重塔がそびえていたそうですが、現在の五重塔も34mを越える高さがあり、木造五重塔としては7番目の高さです。周りに高い建物や山などが無いために、遠くからもよく見え、特に初夏の蓮華畑の向こうにそびえる姿はカメラマンを引き付けます。仏像は蓮の花に乗っていますが、蓮華の花に乗っかるように建っている五重塔は仏様の代わりのようにも見えます。

 
  
 上層と下層との大きさにあまり差が無く、全体的に細身の塔は、ロッケッとを思わせます。ただ、塔身が細くて軒の出が大きいので、リズミカルな軽やかな感じがする塔の一つです。第一層には心柱を取り囲んで4体の仏像が安置され、その中には孔雀明王のあでやかな像もあります。さらに、初層の欄間には十二支の動物が彫られています。薬師如来を取り巻いて並ぶ十二神将の兜に十二支が乗っているのと似ているでしょうか。

 
 
 国分寺の東北4kmほどの所には日本三大稲荷の一つといわれる最上稲荷があります。稲荷というと神社ということになりますが、明治期の廃仏毀釈を免れた日蓮宗のお寺に神仏習合の形態を取る神社です。お寺の本堂に加えて、神社の社殿と拝殿さらには巨大な鳥居まであります。さらには、入り口のところにはインドの寺院を思わせるパゴダのような形をした門もあり、そばには日本船舶振興協会の笹川会長の像もあって、節操の無いごった煮の感じです。それでも、お正月や節分には岡山一帯からの参詣客で大混雑なのだそうです。

 蓮華草は蓮の花に似た花を付けることからの銘銘ですが、蓮といえば仏像が蓮の花に乗っていることからも解るよう高貴な花とされています。日本では、蓮の根っこ、つまり蓮根を食用にしますが、他の仏教国では、考えも及ばないことなのだそうです。蓮根といえば、奈良の当麻寺には蓮の繊維を使って織られたという国宝の曼荼羅が残されています。この伝説は、植物学者などによって否定され絹糸が原料であると考えられています。美術品の鑑定には、可視光だけではなく、赤外線や紫外線で撮影したり、絵の具などを少量取り出して、素材を分析したりという技法が使われます。それに加えて、その美術作品に、作者の個性が現れているか、品位や訴えかけるものがあるかなども判断材料にされているようです。これらは、鑑定家の長年の経験に基づくものですが、次第にコンピュータによる解析も加わって来ているのではないでしょうか。そのうちに、コンピュータの描いた、有名画家の贋作が出回るようになるかもしれませんね。