世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

内戦で戦場になったプリトビチェですが美しい湖水と森林は戦争を忘れさせます(クロアチア)

2012-12-02 08:00:00 | 世界遺産
 ローマの遺跡の文化遺産と石灰棚の自然遺産との複合遺産として登録されているのがトルコのヒエラポリス/パムッカレでしたが、もっと大きな石灰棚が数多くの湖水群を作っているのがプリトビチェです。今回は、クロアチアのプリトビチェ国立公園を紹介します。

 プリトビチェ国立公園は、クロアチアがスロベニアとボスニアに挟まれてくびれている場所のボスニアの国境に近い所にあります。国境に近く観光資源でもあるため、旧ユーゴの内戦ではドゥブロクニクと同様に激しい戦闘の舞台ととなったようです。1991年にはホテルなどの施設がセルビア系の軍隊に占拠されましたが、4年後にクロアチア軍により奪還されました。現在では、その痕跡は判りませんが、人々の心の中には傷を残しているようです。

 
 
 プリトビチェへのアクセスは、首都のザグレブとアドリア海に面した世界遺産の町のスプリトを結ぶバスを途中下車をします。世界遺産の観光地の割りに、森の中に溶け込んだようなバス停は目立たなく乗り過ごしそうになります。公園は緑豊かな森林の中に、2k㎡ほどの広さにわたって湖水が連なっています。石灰質を多く含む水が自然のダムを作り、130mほどの高低差を持つ大小さまざまな湖水が8kmほどの長さに連なっています。小さなものは数m四方のものから、大きなものでは遊覧船が走っている湖水まであります。

 
 湖水間の落差は、急流であったり、小さな滝の集合体であったり、かなりの落差のある大きな滝があったりで見飽きません。小さな滝のそばには水生植物が茂り、大きな滝のそばにはシダが垂れ下がっています。滝を彩る周りの景色もバラエティに富んでいます。公園内には、いくつものハイキングコースがあって、場所によっては木道も整備されており、歩き疲れればトラムも運行されています。


 
 
 
 石灰分による堰き止め湖沼群は中国にある世界遺産の九寨溝が有名で、風景も似ているように思います。ただ、九寨溝の標高は3200m程度で高山病の薬を携行する必要があるそうです.。プリトビチェの標高は600m程度で、日本からの距離は遠い場所ですが手軽に行けそうです。プリトビチェは、標高が低いためでしょうか、湖水だけではなく動植物の種類が多く、自然に満ち溢れています。滝を飾るシダなどの植物だけではなく、ハイキング・コースのそばには野生の花もたくさん咲いています。動物はというと、湖水が極端にアルカリや酸性ではないらしく、たくさんの魚もいます。ただ、このためか、水がちょっと生臭いのが欠点です。かえるや、きれいな色をしたトカゲが木道を横切ってびっくりもしました。

 クロアチアの国立公園では、公園にゲートがあって入域料が徴収されます。プリトビチェでも、本ブログで紹介したクルカでも同じような状況でした。入域料は公園の維持管理に使うことが名目でしょうが、公園内では船やトラムなどの乗り物は入域料を払えば自由に乗ることができます。プリトビチェは広大で、一日ではとても見て回れないし、長く滞在したくなる場所です。そのためもあって、付近のホテルに宿泊した場合は、カードにスタンプを押してもらえば2日パスに延長できます。

 このゲートカードで思うのですが、博物館や鉄道など一定期間を自由に使えるパスを購入すると、イリーガルに複数人で使いまわせてしまう、ということです。もちろん同時に複数の人間は使えないでしょうが、時分割でなら可能です。そのうちに、これらのパスにも顔や指紋認証などの個体認証が導入されるかもしれません。費用対効果の結果でしょうか、それともモラル向上の啓蒙が先でしょうか。