世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

王子周辺には3つの博物館や、しゃれた建物が残されています

2012-12-09 08:00:00 | 日本の町並み
 六甲山塊がくびれた場所にあった浄水場が水の科学博物館となって建っている場所が平野でした。水に関する専門の博物館は、平野の博物館以外にも数館ありますが、比較的珍しい博物館です。珍しいテーマの博物館は、いろいろとありますが、その中で今回は紙の博物館のある東京都北区の王子近辺を紹介します。紙の製造に大量の水が必要ですから、そのあたりのつながりもありますね。

 高知県の伊野町の紙の博物館など和紙のふるさとににはいくつかの博物館がありますが、洋紙の博物館は珍しいようです。洋紙の製造といえば富士市を思い出しますが、富士市の市立博物館は洋紙の展示コーナーが設けられているだけのようです。王子の紙の博物館は、名前の通り王子製紙の工場跡地に建てられた博物館で、高速道路の工事のため堀船から飛鳥山公園に移転したものです。飛鳥山公園には、他に2つの博物館が並んでいて、紙の博物館の左には北区の郷土資料を展示する飛鳥山博物館、その左側でもっとも奥まった所には渋沢栄一の記念館が建っています。

 
 
 渋沢記念館は、日本資本主義の父と言われる渋沢栄一の飛鳥山邸にちなんで建てられたもので、記念館の後方には、共に重要文化財の晩香廬と青淵文庫とが残されています。晩香廬は洋風茶室で賓客の接待に用いられたようです。一方の、青淵文庫はステンド・グラスが美しいコンクリート製の書庫で、現在の記念館の新館ができる前は、展示室の一部として使われていたそうです。


 王子は、23区の北寄り、JR京浜東北線の王子駅の周辺で、唯一残った都電もJRの高架の下を潜り抜けています。飛鳥山公園は、JR線の南西に沿うように伸びていて、桜の名所にもなっています。お花見の頃には、上野公園などと同様に、大変な人出があります。この飛鳥山公園の地下には、杉並区から流れてきた石神井井川の分水路が通っています。洪水対策で、駅の近くを流れていたのを付け替えたのですが、かつての流路は音無親水公園として水車などが置かれて散歩道になっています。




 この石神井川に沿って遡上して、ちょっと南に逸れると公園の向こうにレンガ造りの建物が連なっているのに出くわします。周りの木々の緑との対比が美しい建物は、酒類総合研究所の東京事務所です。1995年に本部は北広島市に移転しましたが、かつてはこのレンガの建物の中でお酒の醸造に関する研究・開発が行われていました。


 
 
 石神井川に戻ってさらに上流に行くと、左手には紅葉が美しい金剛寺が現れます。さらに進んで、右手の北側に逸れると北区中央公園が現れます。公園の緑の中に建つ白い建物が中央文化センターです。文化センターにしては、しゃれた建物ですが、元は東京第一陸軍造兵廠本部として建てられたものです。エントランスのアーチ越しに眺める緑、天井の照明器具、それに窓に施された装飾、ちょっとアールデコ的?かもしれません。特徴的な建物は、映画のロケにもたびたび使われているのだそうです。

 日本の資本主義の父といわれた渋沢栄一は「道徳経済合一説」と唱え、富は個人が独占するのではなく、国民全体で共有するものとし、自身も実践しました。資本主義の父と呼ばれますが、現在の利益を独占するための資本主義とは違うようです。ITの発達で、便利なことが増えました。しかし、新しい技術の開発者の思いをよそに、それが製品化されると、富は一部の巨大資本が独占しているように思えてなりません。

追記 毎年大晦日には、王子駅近くの装束神社から王子神社に向けて「王子狐の行列」が行われます。かつて、狐が装束を改めて王子神社におまいりをしたという言い伝えにしたがって、人間が狐の格好をしてお参りをするものです。見に行くことが可能な方は、ホクトピア周辺に行かれてはいかがでしょうか。