世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

教会の天を突く鋭い尖塔の前にはリューベックの象徴のホルステン門の傾いた塔がそびえています(ドイツ)

2010-07-18 08:00:00 | 世界遺産
 メディチ家が銀行業によって得た莫大な富によってルネサンス文化が花開き、町中が屋根の無い博物館のような都市が南ヨーロッパのフィレンツェでしたが、北ヨーロッパ・バルト海沿岸の都市間の交易で莫大な富を得たのがハンザ同盟の諸都市です。このハンザ同盟の盟主であった都市が、北ドイツのリューベックです。今回は、町中にハンザの栄華の香が残るリューベックの旧市街を紹介します。

 リューベックは、ドイツの北のはずれのバルト海に面した港町です。世界遺産の旧市街は、トラヴェ川と運河とに囲まれた東西1km、南北1.5kmほどの川中島部分で、教会やファサードの美しいが家並みが続いています。鉄道の駅は島の西600m位のところにあって、そこから伸びる通りを島に向けて歩いてくると、リューベックのシンボルのようなホルステン門が現れます。ホルステン門があるところも、南北に長い別の川中島で、川が入り組んでいます。このような土地のせいでしょうか、地盤が軟弱なようで、ホルステン門は自重のために不等沈下をして、2つある塔が中央に向けて傾いでいます。ただ、ピサの斜塔ほどは極端ではないので、どうも変なのは目のせいかな?とも思ったりします。

 
 旧市街の中心はホルステン門を通り抜けて少し行ったマルクト広場あたりで、この広場の周辺に市庁舎やマリエン教会、聖ペトリ教会が建っています。これらの教会の尖塔は、緑色で凹凸や穴がまったく無い鋭角三角形で、まるで青銅の剣が空に向けて突き立っているような印象を受けます。

 
ヨーロッパの教会に入堂すると大部分の教会でパイプオルガンが設置されているのを見ることができます。運がよいと演奏を聞くこともできるのですが、かってはバッハもその音色に感動して通いつめたというマリエン教会の世界最大級のオルガンの音は聞き損ねました。このマリエン教会では、巨大な天文時計も見ることができます。天文時計は教会で見ることが多いのですが、みんなが集まる教会に時刻を知らせるために設置されたということより、権力で押し付けた天動説を可視化するためだったのではないでしょうか。

 ところで、ハンザ同盟ですが、これはバルト海沿岸の都市の間で、貿易独占のために結ばれたもので、時には北のデンマークと対立して戦争となったときには軍事同盟的な性格も持ったようです。北ドイツの都市が中心ですが、フィンランドのトゥルク、ノルウェーのベルゲン、バルト三国のタリンやリガなどのドイツより北の諸都市や、バルト海沿岸ではないベルギーのブルッヘやイギリスのロンドンにまで広がったようです。独占による利益は巨大であったようで、リューベックの美しい町並みの元は、この富に支えられたものであったのかもしれません。市庁舎のファサードは黒光りをした独特の質感を持っています。通常のレンガの上に釉薬をかけて焼いたものを使用している贅沢なもので、これもハンザ栄光の残り香でしょうか。

 リューベックへの鉄道路線は、巨大都市ハンブルグから北へ延びるローカル線のような感じがしますが、意外にも幹線のようで、特急列車も数多く走っています。この路線は、海を渡ってデンマークのコペンハーゲンに延びている渡り鳥ラインで、列車ごと連絡船に積み込んでしまう珍しい形態で鉄道ファンには人気の路線のようです。リューバックは、日本からドイツへの入り口になっているフランクフルトから、列車に乗り継いで6時間以上もかかるドイツの北のはずれです。一方、渡り鳥ラインを使ってコペンハーゲンから行けば4時間少々で着いてしまいます。北ドイツだけを旅行するならば、入り口はコペンハーゲンがいいかもしれません。

 天文時計は複雑な惑星の動きを表示するために、数多くの歯車の組み合わせで実現しているようです。天動説を採るために、論理が複雑になってしまったようで、地動説によればシンプルな公式で済んでしまいます。核分裂/融合によるエネルギー放出を表すアインシュタインの式などは E=mc**2 というシンプルさです。科学の発展の過程は、複雑化の流れで、理論はどんどんと複雑な公式を生んでいきます。しかし、あるときに新しい発想によって複雑な公式がシンプルな式にまとめられたりもします。IT分野の特許は、見るのもいやになるほど複雑な記述が続いて、本文も膨大なものが多いのですが、内容がシンプルで本文も薄い特許の中に、製品化の過程でその特許を回避しづらい優れものがあることも多いものです。