世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

妻のために世界一美しい廟を作った王が息子に閉されてしまったアーグラ城(インド)

2008-11-02 16:06:05 | 世界遺産
 兵馬俑は、陵墓に付属する俑抗としては世界最大のものでしたが、世界で最も美しいお墓(廟)といわれているものがタージマハルです。タージマハルはムガル帝国第5代皇帝シャー・ジャハーンが先立った王妃のために作ったものです。王は、タージマハルと川を挟んだ場所に、黒大理石による自分の廟を作る計画でしたが、自分の息子に捕らえられアグラ城に幽閉されました。幽閉されたアグラ城からはタージマハルが遠望でき、王は毎日涙して眺めたといわれています。今回は、インドのアーグラにある2つ目の世界遺産、アーグラ城を紹介します。

 アーグラはインドの首都のニューデリーの南200kmほどのところあって、ガンジス川の支流のヤムナー川に沿った都市です。このヤムナー川はタイジマハルそしてアーグラ城のそばを流れていて、上流にはデリーがあります。タージマハルとアーグラ城とは2km足らずの距離で、幽閉された王様が窓越しに見られる距離ですが、筆者が訪問した時は朝方だったせいでしょうか、川霧に阻まれてほとんど見えませんでした。城は焼く雄のホームベースを押しつぶしたような形をしていて、尖がった頂点と対向する辺を東側で川に接するように作られています。

 筆者たちは、2つある門のうち南にあるアマル・シング門から入場しましたが、城壁も門も赤い色の砂岩で作られていて、かなり派手な印象です。

 お城全体がイスラム様式で作られているために、門などに施された装飾は具象的なものはなく、幾何学的なアラベスク模様になっています。城内は南北が600m、東西が400m程度ですが、ずいぶんと広い感じがしたように記憶しています。複数の宮殿や庭園がゆったりとした配置で造られていたからかもしれません。調べてみると、以前に紹介したドゥブロクニクの城壁に囲まれた旧市街はおよそ300mの正方形の町なので、アーグラ城内にはドゥブロクニクが2つ以上は入る勘定です。広く感じたのも無理は無いわけです。

 建物やそこに細工をされている模様などを見ていると、スペインのアルハンブラ宮殿に似ているなという印象です。アルハンブラが高台に建ち、こちらは平地という立地上の差はありますが、景色を眺めるテラスの造りや、回廊の途中に作られた小部屋のドームの模様など、スペインンにいるような錯覚にとらわれます。

 文化の伝播路は違っても、同じイスラム文化に根ざしていることによるものなのでしょうか。アーグラを訪れる観光客の大部分はタージマハルがお目当てでしょうが、そこから2km足らずのアーグラ城もなかなか見所が多いように感じます。

 アーグラ城の城壁の中が意外と広いので、ドゥブロクニクだけでなく、ちょっと比較のために調べてみました。先ほどのアルハンブラは100mx500mくらい、ドイツのロマンティック街道にあるローテンブルグの城壁内は400m四方、日本の姫路城の堀の内側もやはり400m四方くらいのようです。一方、中国で城壁に囲まれた町が完全に残されているということで世界遺産になっている平遥古城は1200m四方ほどもあり、かつての長安の西安にいたっては、3kmx2km程度の範囲が城壁によって囲まれています。これらの比較が簡単にできるのも、Web上で世界各地の航空写真が検索できるからで、最近では国内の主要都市については空からだけではなく通りからの眺めも見られるようになったようです。プライバシーの侵害だ!という議論の一方で、その場所に行けば誰でも見られる風景の規制を許すと、公権力によって規制の範囲が際限なく拡大する恐れがあるとの議論もあって難しいですね。