くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「孔雀の羽の目がみてる」蜂飼耳

2015-01-07 05:39:23 | エッセイ・ルポルタージュ
 昨年、短編を読んだことで気になっていた蜂飼耳さん。詩のアンソロジーもおもしろかったし、ずっとエッセイを読んでみたいと思っていたのです。
 「孔雀の羽の目がみてる」(白水社)。言葉の選び方が、非常に詩的。
 耳さん(と図々しく呼んでみる)の自然や物事を見る目も、はっとさせられます。
 それにしても、「橋の名は」を読んで驚きました。宮城県白石市に「児捨川橋」があるとは知りませんでした。いや、もしかして聞いたことがあるのかもしれません。でも、記憶してはいない。
 新聞記事で、この名称が「児童虐待」をイメージさせるために改称することになると知って、地名にはその由来もあるはずなのに、と割り切れない思いを抱いた耳さんは、白石市役所に電話をします。
「ええ、あれは白鳥橋に変わることになりました」
 でも、実のところ「児捨川橋」と呼ばれる橋が二カ所あり、混乱を避けるための改称であることが説明されます。
 そこで耳さんは考えるのです。「その記事に、なんら嘘はないのだから。どこをとっても本当のことだけ書かれているのだから。これは面白いな、と思ったのだ。事実をより合わせて話を組み立てるにしても、なにを強調し、なにを書かないかによって、全体の印象はがらりと変わってくる」。おお、これはメディアリテラシーですよ。
 事実を描いていても、意図的に隠されることで相手に与える印象は変わります。
 また、カリブエスキモーのシャーマンが語ったという言葉。
「唯一の正しい知恵は、人類から遥か遠く離れた大いなる孤独の中に住んでおり、人は苦しみを通じてのみそこに辿り着くことができる」
 星野道夫さんの本に紹介されていたのだそうです。
 中盤は本にかかわる文章が集められていますが、読んだことのない作品が多かった。でも、魯迅がとてもお好きだと聞いて、なんだか非常に納得しました。
 おばあさんとお寺に竜の絵を見に行ったり、外国を訪ねたときの様子を描いたり、アフガニスタンの映画について語ったり、すっきり清冽で、新しい世界を見せてくれる本でした。
 わたしも風呂敷を普段使いにしたい……と思いますが、ついついエコバックを持ってしまいますねぇ。