くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「きみはいい子」中脇初枝

2012-07-31 20:12:32 | 文芸・エンターテイメント
 やっぱり中脇さんはいい。
 「祈祷師の娘」以来本が出なくて、ずーっと気になってはいたんですが。今回はPRにも力が入っているように思います。新聞書評でも好評のうえ、わたしが買ったのは六刷ですよ。 
 「きみはいい子」(ポプラ社)です。テーマは母親の虐待。さらに、なんらかの障碍をもっていたり仕事でうまくいかなかったりと、どちらかといえば、社会的には弱者であろう人々が関わる連作です。舞台は、もともとは自然に溢れた町でありながら、切り開かれて造成された「桜ヶ丘」という場所。そこの小学校には素晴らしい桜の大木があったのに、地域の反対で切り倒されたのだそうです。
 またもとの地名が「烏ヶ谷」であったことや、目つきの悪いパンダの遊具があったために「パンダ公園」と呼ばれていたという事実も少しずつ語られていきます。
 非常に地図がはっきりしている。秘密基地を作った裏山とか、今は誰も住まない団地とか。なんとなく自分も歩いたことがあるような町と、そこに暮らす人々の暮らし、誰にも言えない苦しみ。そういう背景が、見えるようです。
 よせあつめの小学校の教師になった「ぼく」は、二年続けて学級経営がうまくいきません。(新任を一年生担任にしてはいかんでしょう)
 クラスの神田さんという子(全員にさんづけするそうです。この子は男子)が親から構われていないため、給食はおかわりし休日も校庭で過ごし、五時になるまで帰れないという、大変厳しい環境にいるんですね。彼との交流を通してクラスの子供たちの内面に気づいていきます。
 どれもいいんですが、わたしが好きなのは「うそつき」。物語の本筋よりも、「もっちゃん」の人生に、涙が……。
 耐え難いような苦難であっても、宝物のような記憶がそのあとの心を支える。境界を争う夫婦のエピソードも、四月一日生まれの子供の話題も、表情ない継母のことも、ひとつひとつが美しい。
 「こんにちは、さようなら」も、広汎性自閉症であろう少年と母親、戦時中に青春時代を送ったあきこさんの関わりが胸をうちます。「障碍」と「障害」の書き分けも見事。
 ぜひたくさんの方に手にとっていただきたいと思います。
 

「鬼談百景」小野不由美

2012-07-29 21:22:58 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 夫に頼んで買ってきてもらいました。小野さんの新刊、買いでしょう。
 わたしはもともと掌編が好きで、川端の「てのひらの小説」とかショートショートとかよく読んでいたんです。この連載も、「幽」で一回読んで気になっていました。でも、どれがそのときに読んだものなのか、よくわからない。 
 ずっと読んでいると、何故だか構成が気になって。
 帯文によると、これは小野さんの「百物語」なのですよね。でも、数人で順番に語っていくという形式にはなっていません。うーん、「ゴーストハント」の冒頭で麻衣が友達とやっていたものとは違う、と申しましょうか。これは、もともと小野さんが怪談話を収集していたことと関係があるのかな。今回新作を加えて九十九話にしたのですよね。一話一話が端正な作品になっているので、特に百物語的な造りにしなくてもよかったように思います。
 そうですね、例えば物音の怪異が語られる作品があります。「影男」。夢で影のような男に暴力を振るわれた母親。しかし、夢での被害と同じ場所をケガしている。そのことを母が語り終わると、「ドンッ」という苛立ったような音が窓の外から聞こえるのです。さらには、友人に顛末を話したところ、同じように音がする。
 でも、さらにそれを聞き取った人がいるはずですよね。記録者の耳に入っているのですから。そのときのことまで、書くのは蛇足でしょう。でも、全体構成からみると不安が残るといいますか。
 「逆らう手」も同じように、じつのところ記録者のもとにくるまでにもうワンクッションあったはずでは、と思うような作品です。普通の怪談話というかショートショートならこれでいいんですが、なんだか腑に落ちない。話者のイニシャルが入るのは、伝聞性を高めるためなんでしょうかね。三人称とはまた違った不安定さを感じます。
 個人的に印象に残るのは「ひろし」「鏡」「髪あらい」といった、どちらかというと、恐怖よりも不思議さとか奇妙さとかがある話なんですよね。なかでも、「胡麻の種」がすごい。ごく短い、六行ほどの作品です。でも、わたしも蒔きたくないな。
 あとは「ぬいぐるみ」がたまらなく怖いです。
 

「トコトコ三国志紀行」「孔明のヨメ」杜康潤

2012-07-26 22:09:15 | コミック
 忙しい毎日ながらちょっと時間を作って本屋に行ったところ、おもしろそうな新刊が結構出てました。そんななかでつい買った本といえば、杜康潤さんのマンガですね。坊主マンガ大好きなのです。共著の三国志ヨンコマも買おうかと思ったんですが、エッセイ担当と知って断念。で、満を持してと申しましょうか。孔明さまを愛するあまり、中国に留学までしてしまった杜康さん、史蹟をめぐって地球を一周半するくらい旅したんだそうです。
 思えばわたくし、「三国志好き」の知人に恵まれており、高校時代は孔明さまの命日には断食する先輩(マンガ家になったと聞きます)に借りて、江森備さんの本も読みました。(是非とも読みたいという文通相手に頼まれて書き写しまでしましたよ……当時はコピー機なんて手軽に使えない環境だったので)
 わたし自身はそれほどははまらなかったものの、一通りは読んでいます。ふふっ、劉備の耳たぶにやられました。確か腕も長いはずですよね、彼は。「トコトコ三国志紀行」(スクエア・エニックス)には、杜康さんの愛と冒険がたっぷり詰まっています。
 特に興味深いのは、ジャングル化している孔明山に登ったところでしょうか。わたしは運動が苦手なので、登山自体学校行事でしかやりません。先日蔵王に行きましたが、雪渓は苦しかった。
 あちらこちら回った杜康さん。ツアーでは同好の人たちと巡り会え、ひたすら盛り上がる。発見されるや否や、曹操の墓と見られる場所に出かけていく。すごいバイタリティ。なかなか腰が上がらないわたしは、見習わなければ。
 この取材(?)は、「孔明のヨメ」(芳文社)にみごとに活かされているといえるでしょう。
 変わり者で有名な孔明を父が見込んで、たったの三日で嫁ぐことになった月英。資産家の娘ではあるものの、家名や財産目当ての人では嫌だと仮面を使って撃退していたため、評判もよくないし、良縁にも恵まれずにいた彼女。でも、孔明とは波長が合うのです。二人とも勉強好き。世間一般が求めるような価値観とは少し異なるけれど、お互いを優しく認めることができるのです。
 やっぱり杜康さんの世界は、あったかいな。そんな優しい気持ちを感じさせる作品でした。当時は入れた施設が今はもうないなど、さすがは中国と思える場面も満載です。
 

「株式会社ネバーラ北関東支社」瀧羽麻子

2012-07-25 21:40:02 | 文芸・エンターテイメント
 夫が退院したあと、息子が右腕骨折。そろそろ治ったかという時期に義母が足を折りまして。このところ多忙な生活が続いております。地域の夏祭りの準備とか県大会とか駅伝練習とか、夏休みになっても行事山積み。でも、体を動かして具体的に何かやっていくのがいいですよね。
 瀧羽麻子「株式会社ネバーラ北関東支社」(幻冬舎文庫)を読みました。ネバーラという名称から想像がつくように、この会社の主力商品は納豆です。でも、「ネバーランド」にちなんでの命名らしいと聞いて、主人公の弥生はちょっと脱力。
 証券会社でバリバリ働いていた彼女は、あることが原因で転職をすることにします。東京の自宅を出て、なんの縁もなかった町に移り住む。会社まではバスに揺られて、隣の席に座る上司と毎日同じような会話をする。とてもアットホームな会社で、互いの誕生日を祝うためにケーキを手配するなんていう行事もあります。
 ある日買い物に出たら、会社の人たちの行きつけの店「なにわ」の女将・桃子さんから声をかけられます。彼女のことがよく話題に出るので、会ってみたかったというんですね。話しているうちに、もともとは大阪に住んでいたこと、旦那さんの故郷に戻って店を開いたのに、程なく亡くなったことを聞かされます。二人とも自分の生まれた町が好きだった。人生の半分を大阪で、残りをこの町で一緒に過ごしていこうと思っていたのに。
 この後悔が甘く胸を刺すのです。どうせ一人になるのなら、余生を大阪で送った方がよかった。でも、桃子さんはこの町に残ることを決めるのです。
 この町から出て東京に行きたいと願う同僚のマユミちゃんや、さわやかな沢森くん、おっとりした課長。食堂では納豆が主力メニューで、社内の人たちは丁寧にかき混ぜます。中には歌いながら混ぜる人も!(このへんのエピソードが楽しい)
 そんな中に佐久間さんという男性が研修に現れます。マユミちゃんが恋のライバルに? 会社も乗っ取っられるという噂が! どうなるどうする弥生……。
 というほど、深刻にはならないのですが。文庫のうしろにあるあらすじを読んで、てっきり課内一丸となって立ち向かう話だと思ったんですが。いやいや、立ち向かってはいますよ。ただ、読む分にはなんとなくあっさり。もう少し盛り上がってもいいような気はします。でも、こののんびりとした雰囲気がいいんでしょうね。
 書き下ろし「はるのうららの」も素敵ですよ。菅野くんがいい味出してます。ふふふ。

「沙羅は和子の名を呼ぶ」加納朋子

2012-07-19 21:25:54 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 なんだかあらすじを適当に聞いていたようで、当初のイメージとは違っていました。
 まず、長編だと思っていたのですよね。ところが、「黒いベールの貴婦人」を読むと展開が早いし、「沙羅」も「和子」も出てこない。加納朋子「沙羅は和子の名を呼ぶ」(集英社文庫)は、短編集だったのでした。
 沙羅というのは現実には存在しない少女です。一樹が昔付き合っていた絵美(エイミイ)が、子供に名づけたいと語る名前。エイミイと別れて、一樹は上司の娘と結婚したのです。妻の名は佐和子。彼女にちなんで、子供は「和子」(わこ)といいます。
 和子の目の前に現れ、木いちごや花をくれて遊ぶ沙羅。転校したばかりでなかなかなじめない和子にとっては、とても大きな存在になっていきました。
 しかし、一樹の実家に預けられた和子のもとにやってきた沙羅はいつもと違って……。
 沙羅を生み出したのは、一樹の幻想なのでしょうか。エイミイと結婚していたらどうだったか。そんなことを繰り返し考えていたのです。
 沙羅によってパラレルワールドに踏み込んだ一樹は、エイミイと暮らす世界を覗くことになります。そこでは佐和子は違う男の妻で、一樹はそのことに苛立ちを感じる。このあたりの流れが実にうまいのですよ。
 社宅での評判や同期の中で格段の出世をしていること。客あしらい。子供の学用品にいたるまで細かな配慮がされている佐和子。学生時代には魅力的だったエイミイの美貌や奔放さが、現在の自分にはしっくりとこない。なによりも、佐和子がつらそうなことに、一樹は胸苦しさを感じるのです。
 掌編を含めて十本収録されていますが、わたしは「商店街の夜」が好きですね。ある男が、気づかないうちにシャッターに絵を描いていき、いつの間にか森が出来上がっている。なんの変哲もなかった通りが、心地よく変化する様子が、静かで綺麗です。
 「エンジェル・ムーン」も幻想的でいい。「天使の都」は、同じテーマの作品がありましたよね、確か。あ、「セイムタイム・ネクストイヤー」です。自分の失った子供の幻想を、ホテルの中で見つけて再生の希望を抱く女性。そこにはある作為があるのですが、とても温かくてやさしい。
 あ、「オレンジの半分」は、「掌の中の小鳥」の続編です。二義文に関する謎解きでした。
 今回は、いるはずなのにいない、いないはずなのにいる、という人物がモチーフとして作品をつないでいるように思います。非常に凝った構成ですよね。
 

「薔薇の恋唄」山崎洋子

2012-07-16 06:49:48 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 ある日。痛烈に「横浜秘色歌留多」が読みたいと思って、実家の書棚を覗いたけれど見つからず。古本屋を探したら、この本が脇に並んでいました。山崎洋子「薔薇の恋唄」(角川文庫)。
 山崎さんの本を立て続けに読んだことがあったのですが、この本は読んだことがないな、と買ってみました。
 もとアイドル歌手の藤岡みのり。(芸名は高岡まろん、だそうです)
 敏腕プロデューサーの大和田から、ある女性をモデルにした映画への主演にとオファーを受けます。しかし、どうも気乗りしない様子。実のところ、彼女を主役にというのは原作を担当することになっている有名作家の鮎川。監督志望の恋人啓介が、みのりの映画ならば自分がメガホンをとるのも夢ではないと言い出し、大和田や鮎川とイタリアにロケハンに行くことに。
 モデルになったのは南条水晶子(みあこ)という女性で、ゴールデン街のアイドル的な存在だったにもかかわらず、宝石強盗をして海外に高飛びし、ついにはベニスで消息を絶ってしまったというのです。水晶子の足跡をたどるうちに、みのりは自分が驚くほど彼女に似ていることを実感させられ……。
 いやはや、結構破天荒ですかね。わたしは山崎さんの時代ものっぽい作品が好きなんですが。
 ローマ、フィレンツェ、ミラノ、ベニスと、舞台は目まぐるしいほどに変わり、街の様子や食文化が紹介されていきます。うわー、懐かしい! わたし十年前にイタリアに行ったことがあるんです。すっかりこの経路でした。ローマの石畳で足が痛くなり、時差で頭も痛くなり。みのりがヘップバーンの真似をしてスペイン坂でアイスを食べる場面があって、この当時はできたのねーと感心。単行本出版は92年だそうです。(今は飲食禁止です) 
 フィレンツェのTボーンステーキ、おいしかった。ピッツアも薄くてうまいです。おぉ、ベッキオ橋。ベニスの涙橋もこれを読んで思い出しました。カフェも粋で。いろんな建物とか美術館とか、記憶が蘇ってきました。
 山崎さん、東野圭吾と誕生日がおんなじで、乱歩賞に前後して輝いているんですよね。「しのぶせんせ」が復活するなら、「花園の迷宮」もまた読みたい。斉藤由貴が演じたドラマもよかったんです。
 あれ? この本の話題があんまりないような……。まあ、コミカルな感じで楽しく読みました。でも、この登場人物のような「大人の恋」は、ちょっと遠慮したいなー。
 ……冷静に考えると、わたしの方が年をとっている気はしますが。

「下町不思議町物語」香月日輪

2012-07-15 20:02:25 | YA・児童書
 発売と同時に買い、その後単行本を図書館にて発見。でも読んだのは今ごろです。遅~い。読み始めれば一時間ちょっとでさくさく読めるんですが。香月日輪「下町不思議町物語」(新潮文庫)。
 ちょうど購入希望アンケートをとったら、三年生のE嬢が「地獄堂霊界通信」を読んでみたいというんで、触発されて。そしたら、「古本屋」とか「修繕屋」とか聞き慣れた名称が。えーと、「師匠」って「旦那」だよね? くらいのことはすぐわかるくらい香月さんの本を読んできたんだな、と。でも、この本は単品で読んで大丈夫です。香月さんのほかのシリーズを読んでいる人にはたまらないくすぐりも随所にありますが、基本的には独立した世界です。
 ということは、香月さんの本をこれまで読んだことのない人にすすめるには、ぴったり、ってことですよね。なにしろ、「妖怪アパート」にしても「大江戸妖怪かわら版」にしても「地獄堂」にしてもかなりの冊数。去年は学級文庫に「妖怪アパート」の文庫本を二冊置いて、続きは図書室へ~と誘っていたんですが。実際短期間に五人ほど回し読みしていましたが、続きにたどり着く前に卒業を迎えてしまった。
 さて、この話の主人公直之は小学校六年生。両親の離婚によって東京に引っ越してきたのですが、クラスの耕太とケンカを繰り返す日々。そんなとき、見覚えのあるような不思議な光景の町に迷い込みます。
 そこでは幽霊や怨念、呪術といったことが日常に溶け込んでいて、直之には珍しいことばかり。師匠の家に通ううちに、家庭の事情や学校での鬱屈、自分自身のコンプレックスも溶けていきます。
 しかし! 当然のようにそこで終わるはずがなく(笑)、いろいろあって直之は別れたお母さんに会いにいくことにします。
 このお母さんがひどい……。詳しくは書きませんが、この場面がいちばん苦味を感じました。
 現職の刑事犬塚氏、どこかの作品に出演中なんでしょうか。気になるなぁ。
 

「こいわすれ」畠中 恵

2012-07-09 05:30:37 | 時代小説
 噂には聞いていたのです。どうも出産に関わる悲劇があるようだと。でも、まさかこういうことになるとは。ため息が出ます。麻之助があまりにも不憫で。お寿ずの想いを考えると切なくてなりません。
 畠中恵「こいわすれ」(文藝春秋)。「まんまこと」かこいしり」の続編です。町名主の息子で知恵の回る麻之助は、初恋のお由有のことが忘れられないまま、友人吉五郎の親戚お寿ずと祝言をあげます。今回は二人の間に子供ができたことで、嬉しくてたまらない麻之助です。はしゃいで買い物に行ったり富くじを買ってみたり。
 その間もお寿ずは具合のよくない日が結構あって、麻之助は心配です。さらに、幼なじみから悪意のある噂を流され。
 お由有から、生まれてくる子供が女の子なら、息子のお嫁さんにぴったりだなんていわれて、ちょっと舞い上がってしまう場面もありました。
 でも、「こいわすれ」を読むと、これまでのことがいろいろと思い出されて、目頭が熱くなります。相手の名前を呼ぶということに着目する伏線がうまい!
 貞やおこ乃もちょくちょく登場します。大切なものを失ってしまった麻之助がこれからどうしていくのか、続きが気になりますね。
 忘れ草は好きな花なので、夏の喧騒の様子が伝わってくるようで、小道具だてのうまさもさすが。これは、庚申待ちや団子のエピソードにも言えます。しみじみとした短編は、細部がいいんですよね。
 


「ホラー小説時評」東雅夫

2012-07-08 11:50:49 | 書評・ブックガイド
 東雅夫の「ホラー小説時評」(双葉社)! おもしろいですよー。東さんが十年間雑誌連載した書評が、全部載っています。惜しむらくは、なにしろ初期が二十年も前なので、読みたくてもおいそれとはみつからない本がある。森真沙子の「女生徒」読んでみたいなあ。図書館で探したけど、角川ホラー文庫はなかった。森さんの本自体二冊しかないし。
 二十年間、わたしも本を読み続けてはきたので、既読の作品も結構あります。「屍鬼」とか。板東眞砂子が全盛です。「死国」も「蛇鏡」も「山姥」も読んだよ。「狗神」がいちばん好き。岩井志麻子……「ぼっけえきょうてえ」も「狗神」をすすめてくれた幼なじみに借りたんだなーとか。「夜なきの森」も、「八つ墓村」と同じエッセンスだったので読みましたよ。後年、かなり破天荒な人だと思うようになりましたが。
 松浦寿輝「幽」とか東郷隆「そは何者」とかも気になる。
 小野不由美「屍鬼」の話題もあります。キングやクーンツを始めとして、海外ものの話も多い。どこか適当なページを開いてちらほらと読むのもあり、です。
 若竹七海の「遺品」が好評ですが、わたしとしてはこの作品のラストが好きにはなれませんでした。作品リストの話題が出るのってこの本だっけ?
 高橋克彦の本でもう一度読みたいものがあったのですが、「私の骨」であることが判明。「ゆきどまり」が読みたいのですよ。
 いろいろなことを思い出しながら読める本ですが、なかでもおかしかったのは「リング」の変遷。なにしろ十年。最初の本について、東さんは非常に好意的です。わかるわかる。わたしも読んだあとは一人でいるのが怖かった。でも! わたしは二冊め以降はさっぱり好みではなかったため、鈴木光司の本をずっと読んでいません。
 とりあえず「リング」続編についても、東さんは「メタフィクション」ぶりを楽しんだそうです。で、「バースデイ」。
 帯文に、映画でいえば編集作業で切り捨てられたフィルムのようなものだと紹介してあるのを評して「切り捨てられるにはそれ相応の理由もあるのてはないか……というのが(略)率直な感想」とおっしゃる。
「あの救いない『リング』が、めぐりめぐったその果てにこんな臆面もない「愛は世界を救う」的な感動のグランド・フィナーレを迎えてしまってよいものだろうか。きっと今ごろ貞子も怒って……」 
 には、爆笑しました。さすがですね。
 わたし、考えてみるとあんまりホラーは読まないと思っていたんですね。夫はよく読んでいますが、その本を借りて読むのは少ないかも、と。でも、自分が思っていた以上には読んでいました。ホラーの解釈はもっと広いのかも。
 東さんの書評、もっと読みたいな。

「幕末史!」まめこ

2012-07-03 22:03:43 | 歴史・地理・伝記
 西郷隆盛、明治三年三月三日に切腹したと思っていました。子どもの頃に歌ったわらべうたで、「わたしは九州鹿児島の西郷隆盛娘なり。明治三年三月三日、切腹なされた父親のお墓参りに参ります」という歌詞があるんですよ。
 でも、そうではないのですね。
 まめこ「女子のための日本史入門 幕末史!」(朝日新聞出版)によると、明治十年に自害とのこと。大久保利通に頼まれて、彼らが海外視察に行く間政府を預かっていたら反対勢力にいいように操られていたというエピソードがなんとも言えません。
 上野の銅像を見に行ったこともあります。愛犬が「ツン」というのも知っています(日本史で習った)。しかし、あの銅像は、西郷本人にはまるで似ていないそうですよね。もっとやせぎすだったとか。奥さんが除幕式で困惑していたと聞いたことがあるのですが。
 おもしろいのは岩倉具視と木戸孝允。まめこさんも楽しんで描いている感じがします。
 岩倉具視というと、わたしは五百円冊を思い浮かべるのですが、岩倉村というところに蟄居しながらも、中央政府に多大な影響をもっていたというのはすごい。野口兄妹の暗躍(笑)が素晴らしいわ。
 日本で初めて癌を告知され、その闘病生活には明治天皇までお見舞いに来たとか。
 木戸孝允と桂小五郎が同一人物であることに、まめこさんはこの仕事で初めて気づいたらしいです。
 こうやってまんがで見ると、なんとなく親しみやすいですね。わたしの中学では歴史は江戸時代で終わってしまったため、どうも幕末は混沌とした感じがつきまといます。修学旅行で五稜郭には行ったんですが。
 幕末の日本史はわかりづらいと思いますが、整理してみると親近感がありますね。