やっぱり中脇さんはいい。
「祈祷師の娘」以来本が出なくて、ずーっと気になってはいたんですが。今回はPRにも力が入っているように思います。新聞書評でも好評のうえ、わたしが買ったのは六刷ですよ。
「きみはいい子」(ポプラ社)です。テーマは母親の虐待。さらに、なんらかの障碍をもっていたり仕事でうまくいかなかったりと、どちらかといえば、社会的には弱者であろう人々が関わる連作です。舞台は、もともとは自然に溢れた町でありながら、切り開かれて造成された「桜ヶ丘」という場所。そこの小学校には素晴らしい桜の大木があったのに、地域の反対で切り倒されたのだそうです。
またもとの地名が「烏ヶ谷」であったことや、目つきの悪いパンダの遊具があったために「パンダ公園」と呼ばれていたという事実も少しずつ語られていきます。
非常に地図がはっきりしている。秘密基地を作った裏山とか、今は誰も住まない団地とか。なんとなく自分も歩いたことがあるような町と、そこに暮らす人々の暮らし、誰にも言えない苦しみ。そういう背景が、見えるようです。
よせあつめの小学校の教師になった「ぼく」は、二年続けて学級経営がうまくいきません。(新任を一年生担任にしてはいかんでしょう)
クラスの神田さんという子(全員にさんづけするそうです。この子は男子)が親から構われていないため、給食はおかわりし休日も校庭で過ごし、五時になるまで帰れないという、大変厳しい環境にいるんですね。彼との交流を通してクラスの子供たちの内面に気づいていきます。
どれもいいんですが、わたしが好きなのは「うそつき」。物語の本筋よりも、「もっちゃん」の人生に、涙が……。
耐え難いような苦難であっても、宝物のような記憶がそのあとの心を支える。境界を争う夫婦のエピソードも、四月一日生まれの子供の話題も、表情ない継母のことも、ひとつひとつが美しい。
「こんにちは、さようなら」も、広汎性自閉症であろう少年と母親、戦時中に青春時代を送ったあきこさんの関わりが胸をうちます。「障碍」と「障害」の書き分けも見事。
ぜひたくさんの方に手にとっていただきたいと思います。
「祈祷師の娘」以来本が出なくて、ずーっと気になってはいたんですが。今回はPRにも力が入っているように思います。新聞書評でも好評のうえ、わたしが買ったのは六刷ですよ。
「きみはいい子」(ポプラ社)です。テーマは母親の虐待。さらに、なんらかの障碍をもっていたり仕事でうまくいかなかったりと、どちらかといえば、社会的には弱者であろう人々が関わる連作です。舞台は、もともとは自然に溢れた町でありながら、切り開かれて造成された「桜ヶ丘」という場所。そこの小学校には素晴らしい桜の大木があったのに、地域の反対で切り倒されたのだそうです。
またもとの地名が「烏ヶ谷」であったことや、目つきの悪いパンダの遊具があったために「パンダ公園」と呼ばれていたという事実も少しずつ語られていきます。
非常に地図がはっきりしている。秘密基地を作った裏山とか、今は誰も住まない団地とか。なんとなく自分も歩いたことがあるような町と、そこに暮らす人々の暮らし、誰にも言えない苦しみ。そういう背景が、見えるようです。
よせあつめの小学校の教師になった「ぼく」は、二年続けて学級経営がうまくいきません。(新任を一年生担任にしてはいかんでしょう)
クラスの神田さんという子(全員にさんづけするそうです。この子は男子)が親から構われていないため、給食はおかわりし休日も校庭で過ごし、五時になるまで帰れないという、大変厳しい環境にいるんですね。彼との交流を通してクラスの子供たちの内面に気づいていきます。
どれもいいんですが、わたしが好きなのは「うそつき」。物語の本筋よりも、「もっちゃん」の人生に、涙が……。
耐え難いような苦難であっても、宝物のような記憶がそのあとの心を支える。境界を争う夫婦のエピソードも、四月一日生まれの子供の話題も、表情ない継母のことも、ひとつひとつが美しい。
「こんにちは、さようなら」も、広汎性自閉症であろう少年と母親、戦時中に青春時代を送ったあきこさんの関わりが胸をうちます。「障碍」と「障害」の書き分けも見事。
ぜひたくさんの方に手にとっていただきたいと思います。