くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「図書室のピーナッツ」竹内真

2017-03-29 05:32:56 | 文芸・エンターテイメント
 うわあーっ、「図書室のキリギリス」の続編?
 同僚の結婚式帰りに、ジュンク堂で発見しましたー。一年経って、司書さんらしくなった高良詩織が、図書室の常連たちと繰り広げる学園ものです。
 「図書室のピーナッツ」(双葉社)。
 「キリギリス」は「蟻とキリギリス」をイメージしたタイトルでした。今度は、あれですよ。「peanuts」! 
 そう、スヌーピーです。
 でも、落花生も「隠し味」として重要なモチーフ。
 
 今回は、市立図書館の司書山村が登場します。結構個性的な人です。
 「なんちゃって司書」から「本物の司書」を目指すことにした詩織。資格をとるために通信制大学を選びます。専門的に学ぶ決意をしたのですね。
 わたしは、司書教諭資格は集中講習で四年かけて取りました。好きな勉強だから、スクーリングは楽しかった。
 図書室の運営は、机上の履修だけでできるものではありません。
 詩織は、そういう点での視点は鋭いですよね。「図書室ノート」や「早朝おしゃべり図書室」など、次々仕掛けていきます。
 山村との関わりで、司書は学び方を伝えていくことが大切な仕事なのだと感じていく詩織。
 わたしは村上春樹に全く興味ないのですが、今回これで「1973年のピンボール」の仕掛けを知った人はおもしろいでしょうね。
 これから経験を積んでいく詩織が楽しみです。
 卒業していく生徒や、新しく出会う生徒が可能性を広げてくれるのがおもしろかった。

「むすびや」穂高明

2017-03-28 19:54:47 | 文芸・エンターテイメント
 双葉文庫の新聞広告を見ていたら、穂高さんの文庫が新刊で出てるじゃないですか!
 早速買いに行きました。うふふ。嬉しいなあ。
 「むすびや」。おむすび専門店を舞台にしたオムニバスです。
 この店の息子・結(ゆい)は、就職活動に失敗してしぶしぶ店を手伝っています。結構イケメンなんですが、あがり症だし人見知りもします。小さい頃から女の子みたいな名前はコンプレックス。周囲からもよくからかわれてきました。
 八百屋の俊次も、からかった一人なのですが、なんだかんだで仲はいい。韓国から来たチョルスとも、米穀店の清の紹介で親しくなり。
 商店街で次第に自分の場所を見つけていく結が、仕事の責任を自覚していく物語だと思います。
 
 どのおむすびもおいしそうで。たらこもきゃらぶきも、かやくも赤飯も。
 おかかは鰹節を削って作るし、だしをとった昆布から作る佃煮もおいしそう。
 わたしは今朝、梅干しを食べましたよ。作中では、国語教師富田の、亡くなったお母さんの思い出の味として描かれるのです。
 富田の描き方が、穂高さんらしいなと思いました。
 ある人からは好感を、ある人からは嫌悪を感じさせる。視点の多様性が。
 
 この作品は「小説推理」に連載していたそうです。推理小説ではないとは思いますが。でも、心に残る作品です。
 本になって良かった。

「みやこさわぎ」西條奈加

2017-03-21 04:42:22 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 「みやこさわぎ お蔦さんの神楽坂日記」(東京創元社)。
 新刊が出たと聞いて借りられる日を心待ちにしていました。
 読んでいると、前の話も読みたくなるんですよー。文庫を買おうか検討しています。

 今回も望の料理は非常においしそうです!(今気づいたけど、わたし、このフレーズをやたらと使っていますね……)
 すだち塩を使った天ぷらとか、すだちのケーキとか、パエリアとか、それから、ザーサイとネギと生姜をみじん切りにして、醤油、みりん、酢、ごま油で和えて冷や奴にトッピングするのは、夏にぜひ作りたい!
 
 芸妓の都さんが結婚直前に姿を消してしまいます。385万円もする婚約指輪を持ったまま。お蔦さんや芸妓組合長の勝乃は青ざめますが、実は都にはある秘密が……。
 望の思い人楓、友人の洋平や彰彦、神楽坂の人々の生活ぶりが、イキイキしていておもしろい。
 演劇祭を前にしての様子や、近所の三つ子に振り回される姿、著名な日本画家が若い頃に描いた絵が発見されたいきさつなど、どれも印象的なのですが、わたしは冒頭の「四月のサンタクロース」に涙してしまいました。
「それこそ世界中を、十年以上も逃げ回って、それでも消えないんだ」
「消えない、とは?」
「娘の、面影です」

 奉介おじさんの言葉を、楓は聞きます。
 人を思うということが伝わる物語でした。

「シャルロットの憂鬱」近藤史恵

2017-03-20 04:20:06 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 うーっ、近藤さんの描く犬ってなんでこんなに可愛いのか!
 つい、わたしも愛犬(ヨークシャーテリア)を触りに階下に降りてしまいましたよ。(もちろん、胸をなでました)
 「シャルロットの憂鬱」(光文社)。図書館の整理中のカートで見かけてから、ずっと読みたくて。期待通り、いえいえ、期待以上におもしろく読みました。
 シャルロットはリタイアした警察犬。ジャーマンシェパード。現在六歳です。
 飼い主は「わたし」(真澄)と夫の浩輔。二人は高校時代の同級生で、不妊治療を諦めたところでした。
 シャルロットは警察犬だったこともあって、躾はばっちり。近所の小火を吠えて教えたこともあって、賢いと評判です。
 散歩が大好き。仕事のストレスで熟睡できない真澄は、早朝からシャルロットと散歩に行くのですが、どうやら猫集会に遭遇してしまいます。
 そこで拾ったのは、尻尾をひかれたらしき子猫。
 猫集会はどうやら最近場所を変えたらしい。野良猫に餌をやっている人がいるのではないか。さらには、またたびまでも撒かれているのです。誰が、何のために?
 子どもたちとの関わりを描いた話が今回は多かったのですが、足を噛まれたりぎゅっとされても受け入れるシャルロットが健気です。
犬たちが本当に可愛くて、一気に読んでしまいました。
 近藤さんは、コージーミステリがうまいですよね。

「古書カフェすみれ屋と悩める書店員」里見蘭

2017-03-19 19:13:14 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 予想通り続編が出ました! やったーーー!
 「古書カフェすみれ屋と悩める書店員」(だいわ文庫)。
 すみれさんのおいしそうなお料理の数々! 今日久しぶりに寄ろうと思ったカフェの駐車場に空きがなくて断念したわたしには、さらに羨ましい環境です。
 すみれ屋ので核になるメニューは、サンドイッチ。
 もうどれもおいしそうなんですが、結構がっつり系です。でも、そこが魅力なんだろうなあ。
 今回はすみれさんにオリジナルのホットドッグを考案してほしいという雑誌からの依頼があり、さらには「ジョーさんのハンバーガー」をもう一度食べたいと願うおばあさんが現れて。
 すみれとしては、アメリカの文化を思い出しながら、バーベキューにしたりケチャップを増やしたりするのですが、どうしてもおばあさんの記憶とずれがある。
 いつも、困っている人に本でアドバイスしてくれる紙野くんに、思わずすがってしまいます。
 紹介されたのは、ウッディ・アレン。
 この本と、おばあさんのアルバムから、すみれがたどり着いたのは……。

 「彼女の流儀で」と「ほろ酔い姉さんの初恋」のようなラブストーリーも、とても良かった。
 不思議なことに、このシリーズ、一本読むと次まで少し時間を置かないと読めないのです。密度が濃いのかな?
 

「いじめと探偵」阿部泰尚

2017-03-18 04:55:53 | 社会科学・教育
 以前思うところあって購入した「いじめと探偵」(幻冬舎新書)を読みました。
 著者の阿部泰尚氏は探偵事務所を営んでおり、おそらく日本ではじめていじめについて探偵依頼を受けた方だそうです。
 学校の機能不全や、大人社会の縮小版として存在する子どもの世界。
 いじめを認識しようとしない教師たちや、親としてどう関わればよいのかなど、考えさせられる内容でした。
 事例も多く紹介されています。
 仲間だろうといわれて万引きさせられる。ファーストフード店で全員分をおごらされる。いじめがあるなら証拠を持ってこいと言われる。水に突き落とされる。相談に行ったお母さんを校長が口説く。いじめの事実を認めず、外部からの侵入があるかもしれないと警備を強化する。
 ああ、でもなんか分かる気がします。
 いじめに限らず、具体的な証拠がなくても「犯人」を断定して騒ぐ人はいるものですし、怪しいと思っても表面上は平等に接しなければならないのだから。
 阿部さんは、証拠を手に入れる手段を中心に子どもたちをサポートします。
 大人の予想以上に厳しいいじめも……。
 やられたままではなく、自分がどう戦うかを彼らに教えていくように感じました。
 親や学校が真剣に向き合い、何らかの指導を入れることで、いじめ問題の六割は改善するのだと阿部さんはいいます。
 子どもの世界。大人とはまた違う価値観が働いていることも少なくありません。
 証拠を求めていると思えば、痛めつけられるのも苦ではないと考えたという少年の思いに、強さを感じさせられました。

「最後の晩ごはん」椹野道流

2017-03-16 22:43:28 | 文芸・エンターテイメント
 買ってからどのくらい放っておいたのか……。
 まだハッケンくんグッズのチラシが入っているし、第二巻は「2015年1月25日発売予定!」って帯に書いてあるし、図書館に続編が何冊か入っていたし。
 これを読み終えたら、その続編を借りて来よう! と結構長いこと思っていたのです。
 でも。
 ごめんなさい。続編はもうたぶん、読まない。

 椹野道流「最後の晩ごはん ふるさととだし巻き卵」(角川文庫)。
 この苗字、なんて読むのよ?
 と思ったら、著者紹介に書いてありました。「ふしの みちる」と読むらしいです。
 ちなみに、「椹」は「ふし」では出てこなかったので検索しました。「さわら」という読みがあるそうな。

 朝のバラエティニュースの料理コーナーを担当していた五十嵐海里。駆け出しの俳優だった彼は、スキャンダルの巻き添えを食った形で仕事を干されます。信頼していたマネージャーや後輩も頼れず、関西の実家に帰りますが、厳格な兄に叩き出され、さらにはコンビニの駐車場で少年たちから暴行を受ける。
 そこを救ってくれたのが、食堂の店主夏神。夜のみ営業。定食のみ。一人で切り盛りしているため、下準備を入念に行っており、店を空ける場合は準備中の札を出すなど工夫しています。
 料理コーナーを受け持っていたとはいえ、番組で紹介する料理はアシスタントさんが準備して仕上げを見せるくらいだった五十嵐。パフォーマンスを気にして、キャベツの千切りだけは猛特訓した彼。店を手伝ううちに自分も料理の道を歩きたいと思うようになります。
 で、なぜタイトルが「最後の晩ごはん」なのかというと。
 実は五十嵐、霊感があるのです!
 いつの間にか店にやってきて、ぼんやり坐っている幽霊を満足して成仏させたいと考えるのです。
 夏神も霊を感じる質で、更にそこには眼鏡のつくも神まで加わり、ものすごい状態。
 すみません。わたし、基本的にオカルトとか好きじゃないんです。
 だから、五十嵐がこのパターンで未練をなくした霊たちを救う物語なら重ねて読まなくてもいいかなぁ、と。
 未練の残る幽霊たちにとって、最後の晩ごはん、なんですよね?
 夏神の料理はおいしそうだけど……。
 ところで、ラストに豚の生姜焼きのレシピがついていますが。
 下味をつけるのに一晩かかるような調理法では、この店の営業に支障があるのでは? (定食の内容は買い物して考えると言っていた気もしますが、なおさら難しいのでは)
 とりあえず、長い間放っていたものやひとに、気にかけてもらえるのは幸せなことじゃないかな?

「装丁室のおしごと」範乃秋晴

2017-03-15 04:54:41 | YA・児童書
 あー、ごめんなさい。「ビブリア古書店」の感想を書いたときにタイトル間違いましたね……。
 範乃秋晴「装丁室のおしごと 本の表情つくりませんか?」(メディアワークス文庫)。
 出版社の合併により、傲慢な装丁家巻島と組んで仕事をすることになった本河わらべ。
 巻島はベストセラーを量産させるやり手なのですが、ゲラを読む気がなくパッケージデザインさえ秀逸ならば売れる本が作れると思っている。
 それに対して、わらべはできる限り著者の意図に沿うものを提供したいと考えています。
 二人は「新撰組列伝」で、それぞれの主張をこめたジャケットをデザインします。新撰組の羽織は、浅葱色が知られていますが、実際には一年ほどしか使われず、その後赤と黒に変更された。わらべは、その羽織をクローズアップしたデザインにしますが、巻島は流通イメージを重視して志士たちのキャラ絵。しかも、羽織っているのは浅葱色のもの。
 使用されることになったのは、巻島の作品でした。わらべには納得がいきません。
 さらには帯の問題とか、スキャンダルに巻き込まれている芸能人のエッセイ、装丁の価値を認めようとしない人気作家のエピソードも、おもしろく読みました。
 そして、わらべと巻島にはある関わりがあることが分かるのです。
 赤いバーコードが、こんなふうにつながるとは!
 本に関する話題が大好きなわたしですから、この本はジャケ買いではありません。
 でも、巻島が言うように、本のデザインを重視して買う方は多いでしょうね。
 こういうテイストの作品、もっと読みたいですねぇ。

「スイーツレシピで謎解きを」友井羊

2017-03-14 21:33:19 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 友井さんの新刊! しかもスイーツ。しかもイケメン男子。新シリーズの予感もしません? ウキウキして買ったのに、大掃除をしたらどこかに入れられてしまって。
 やっと発見したので、ウキウキして読みました。
 友井羊「スイーツレシピで謎解きを 推理が言えない少女と保健室の眠り姫」(集英社文庫)。
 なぜ推理が言えないのか?
 吃音だからです。菓奈ちゃんといいます。
 保健室の眠り姫って?
 保健室登校なんです。二年生二回やったようです。悠姫子さんです。
 もう一人。イケメンスイーツ男子の真雪くんが主要メンバー。
 真雪くんは学校の人気者で、プロ並みの製菓技術をもっていますが、途方もないうんちくとダメ出しのため、お菓子をプレゼントなんてとてもできません。
 菓奈ちゃんはバリバリの理系で、レシピも科学実験も同列っぽい。でも、だからこそお菓子に関する謎を解くことができます。
 調理部で作ったシュークリームは、なぜ膨らまなかったのか。
 しょっぱいバースデーケーキとは、何が理由なのか。
 悠姫子さんが不登校になったきっかけの、クッキーにはどんな秘密があるのか。
 中でもわたしは、悠姫子さんと真雪くんの幼なじみ加藤さんのエピソードに衝撃を受けました。
 誰しも何かしら悩みを抱えていて、ふとした誤解から行き違うこともある。
 悪意が隠されていることもあるけれど、歯止めは自分でかけなければならないという意志を感じました。
 

「不健全な精神だって健全な肉体に宿りたいのだ2」菅野彰

2017-03-13 05:15:43 | エッセイ・ルポルタージュ
 おぉ! もう12年経ってますね!
 菅野彰「不健全な精神だって健全な肉体に宿りたいのだ2」(イーストプレス)。単行本出版が2005年、雑誌掲載はさらにその前年です。
 わたしはこの本を確か古本屋で買って、いつの日か読むだろうと本棚に入れたままにしていたのでした。
 ちなみに、1と3はこれを買った時点で読み終わっており、この後には「海馬」を文庫で買ってちまちまと読み、その後「女に生まれてみたものの」と「あなたの町の(以下略)」ではまり、おそらく菅野さんのエッセイは全部読んだと思うのですが、なぜかこれだけいつまでもそのままでした。
 2巻だというのがネックだったのですかね?
 でも、読みはじめたら一息に読み終わりました。
 菅野さん、与論島でマラソンに挑むことにしたということで、そのために体力づくりをするのです。
 国立競技場を走ったり、バレエやストレッチやカポエィラをしたり、健康診断で高橋尚子並みの心拍数と言われたり、占いをしたり。
 なにしろ干支が一周しているくらいです。中にはあれ? ってこともある。
 「未来少年コナン」の舞台は2008年なんだってよ!
 さらにこの回で取り上げられている「虹彩占い」って、その後盛り上がることなく廃れた感じですか?
 しかし、体を張っているよね、菅野さん。
 3はどこかの段ボールに入れているはずなんですが、とりあえず与論島を走ったのかどうかは気になります。
 勝沼のマラソン大会、参加賞が葡萄って、なんかいいですよねぇ。