くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「国語辞典の遊び方」サンキュータツオ

2018-03-28 22:26:26 | 言語
 確かに! 学校では教えません、国語辞典の遊び方。調べ方も宿題にすることが多いのです。
 サンキュータツオ「学校では教えてくれない! 国語辞典の遊び方」(角川文庫)。
 サンキュータツオ氏の研究内容(?)に興味があります。「ヘンな論文」シリーズ、おもしろい。
 さらに、飯間さんのおかげで辞典に興味が湧きました。うちの図書室に三省堂国語辞典(三国)の七版ありました。わたしも、かつて友人からもらった三国の四版愛用してます。
 以前、小学舘の神永曉さんの講演を聞いて、日々更新すべく努める姿勢に感銘を受けて、新しい辞典を買おうと思ったにも関わらず、やっぱりまだ買っていません。だって、高いんだもん。
 しかし、息子も高校生。
 入学時辞典を購入するようにと学校からのお達しが。
 四冊のおすすめが提示されているため、参考にと思って読みました。

 でもさー、そのうちこの本に紹介されているのは、「新明解」と「明鏡」だけなんだよね。
 息子に辞書占いをさせてみたら、角川必携にたどり着いたし。(ちなみに、わたしも同じ結局でした)
 タツオさんの好みの集英社とかベネッセとかは息子の学校では推奨していないらしい。
 
 ただ、こうやって擬人化してもらうと、物凄く分かりやすい。
 辞書なんて皆同じ、ではないんですね!
 わたしが高校生のときに愛用者したのは旺文社でしたが、当時は他の辞書との違いなんて考えたこともありませんでした。
 実は単行本を丸善で見かけたことがあるのです。読めばよかった。
 
 で、ラストには辞書関連本も紹介されています。
 石山茂利夫「国語自転車事件簿」「国語辞典ー誰も知らない出生の秘密」、高田宏「言葉の海へ」が読みたい! 
 後者は大槻文彦の生涯を描いているそうです。
 大槻一家、一関と関連するはずなので、興味あるなあ。さらに、タツオさんはこれを読んで「大河ドラマ」にしてほしいと思ったとか。気になる!

「小説の言葉尻をとらえてみた」飯間浩明

2017-12-16 19:44:33 | 言語
 「三省堂国語辞典のひみつ」の方なのですね! 飯間浩明「小説の言葉尻をとらえてみた」(光文社新書)。
 「桐島、部活やめるってよ」「風が強く吹いている」「残穢」「オレたちバブル入行組」「チッチと子」「桜ほうさら」「横道世之介」「猫を抱いて象と泳ぐ」「マチネの終わりに」「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」「八日目の蝉」「阪急電車」「グラスホッパー」「ギケイキ 千年の流転」「チョコレートコスモス」の十五作を、辞書にはない言葉を中心に語る一冊です。
 例えば、伊坂幸太郎は「ささめく」という古語を愛用し、朝井リョウは高校生に方言混じりの若者言葉をしゃべらせるけど、「ら抜き言葉」は使わない。
 平野啓一郎は「割り込み感動詞」を使うというのもおもしろい。
 「え、洋子さんって……」ではなく、「洋子さんって、え、……」という語順で、驚きを示す。言葉遣いがリアルな感じがしますね。

 飯間さんの書き方がまた独創的で、彼自身が本の中に入り込んで登場人物に話しかけたり、地の文がどこからともなく聞こえてきたり、紛らわしい読み仮名は聞こえにくかったりします。
 そして、「言葉尻をとらえ」といいながらも、決してその言葉を否定しない。
 わたしは言葉に関する本が好きであれこれ読んできましたが、否定する系統のものが多かったので、なんだかこの本は懐が深いような気がします。
 辞書編集は例語収集が重要ですから、普段は古典といえるような作品を読まれているそうです。
 三浦哲郎さんの作品も、二作引き合いに出されていました。
 「忍ぶ川」に、「T字路」という表現がある。これは、「俺妹」がラノベなのに意外と古風な言葉遣いだという例。「丁字路」とこちらでは言っていたそうですよ。
 また、「海の道」では、「容易ならない」という表現(本来なら「容易ならぬ」「容易ではない」)の例として引かれています。(恩田陸が「穏やかならない」という使い方をしていたため)
 
 表現の特徴には、作家自身も気づいていないものがあるのかもしれません。朝井リョウの「体操座り」や有川浩の「お幼稚」は、本人の生育歴で獲得した語が自然に出てきた感じですね。おそらくわたしは、自分の馴染み言葉に置き換えて読んだと思われます。
 それに対して小川洋子は、「綿菓子」圏内で育っているのに「綿飴」と書く。
 三浦しをんが、マイクテストで使った「メーデーメーデー」は、飯間さんにとっても知らなかった言葉だそうです。
 うーん、わたしもここに紹介されたものの半分は読んだはずなのですが……。あんまり言葉に着目しないですね。かなり飛ばし読みしている気がしてきました。
 「ギケイキ」読もうかな。確かに「姉歯の松」あたりを彼は通りそう。近くに住んでいても、どこにあるのかよくわからないわたし。同じものを見てひっかかることって、それぞれ違うのかもしれませんね。

「漢字のひみつ」

2016-11-29 22:10:53 | 言語
 これ一冊で、中学校国語の言語事項はほとんどカバーできます。
 「漢字のひみつ」(学研)、加納善光監修、中尾雄吉まんが。
 漢字の音訓、部首、画数、送りがな、熟語、六書、故事成語、対義語、類義語など。わたしがこれまで勉強してきたことがコンパクトにまとまっている。
 授業で学んだことを再確認するのにも最適です。
 もともとは故事成語の調べ学習に使おうと借りてきたのですが、なんかいろいろ参考になる。自分で一冊ほしいほどです。

 国語教育でわたしが最も得意とするのは、言語事項。
 他の分野に比べると、あまり脚光を浴びないかもしれません。研究授業でも歓迎されないし……。
 中でも、六書で漢字の成り立ちを紹介するのがいちばん好きなんですが、「転注」ではいつも困っていました。
 代表的なのは「楽」。もともと「音楽」の意味だったのに、「たのしい」という意味に転用した。
 教科書に紹介されているもの以外ももっと知りたい。でも、なかなか見つからないのです。
 この本には「長」が出ています。
 もともとの意味は「かみの長い老人」。次第にリーダー全体をさすようになり、「一番上のもの。かしら」という意味に広がった。
 なるほどー。

 部首は違うのに同じイメージの漢字もおもしろい。
 晴・清・静には「青」の字が入っている。部首はそれぞれ「ひへん」「さんずい」「あお」。同じ部分は「共通するイメージ」を示していて、他にも情や精、請があります。青のイメージは、「けがれなくすみきっている」。
 形声文字の発音符号というだけではないのですね。中国では同じ発音字を代替することがあると聞きましたが、これもそうなのでしょう。
 「且」は、「次々に重なる」(助・査・祖・粗・組)。力を重ねたり、気を重ねて邪魔したり、何代も続く先祖を表したりするそうです。興味深い!
 漢字の勉強は楽しいなあ。(転注文字使用) 

「大和言葉つかいかた図鑑」

2016-02-20 10:27:21 | 言語
 夫が買ってきました。海野凪子・ニシワキタダシ「大和言葉つかいかた図鑑」(誠文堂新光社)。
 わたしは「和語・漢語・外来語」の授業でクイズをしようと思っていて、和語にかかわる本を探していたところだったので、興味がありましたが……。
 でも、そういうニーズに合った本ではありませんでした。
 パターンとして、和語を含む短文「かろうじて失敗はまぬがれた」(「かろうじて」に傍点)と、凪子先生の解説、ニシワキさんの一コマまんがという構成。
 わたしは「整理→かたづけ」系のことをやりたかったので。
 語彙力をつけたい初心者向きでしょうか? 日常的な言葉ばかりだと思うのですが。

 わたしが初めて知ったのは「かぜをひく」という言葉。おせんべいがしけったときなどに使うらしいです。(先日、職場で消費期限切れの煎茶が山のように見つかりましたが、これを「かぜをひいたお茶」と言っていいのかな?)
 
 先日、わたしが書店に行ったとき、この本の隣に西東社の言葉にかかわる本(タイトルは忘れてしまいましたが、「2200」とついていたと思います)が並んでいました。
 外国語になった日本語(edamame,bonsaiのような)の一覧とか、地名の由来、着物の用語などトリビアルでおもしろかった!
 言葉に関する本は大好きですが、必要な情報をうまく引き出すためには、様々な本にあたることが大切だと感じました。
 凪子先生、また蛇蔵さんと組んで本を出してくださいよー!

「生き延びるための作文教室」石原千秋

2015-09-25 04:58:56 | 言語
 ラストの「坊っちゃん」の読書感想文を書く章がおもしろかった! 論文の視点は細部に宿ることがよくわかりました。わたしも学生のころにもっと考えを深めておくべきだったと思います。
 石原千秋「生き延びるための作文教室」(河出書房新社)。14歳の世渡りシリーズですが、これをすんなり理解する中学生は恐るべし。
 大まかにいえば、ふたつの作文指南をされています。「プロット型作文」と「審査員特別賞狙いの読書感想文」。
 まず、「プロット型」とは「ふつうは~しかし~」の構文で主張を書くもの。二項対立ですね。わたしは「確かに~しかし~」で書かせることが多いです。批判をそのまま相手に投げ返す「クオーター制」など参考になりました。
 で、読書感想文の方はというと、国語の教科書に採用されている「坊っちゃん」を俎上に、細部に目を向けて新しい解釈をする方法が描かれます。
 例えば、「佐幕派の文学」と唱えた平岡敏夫さんの視点。また、実は学歴のある「坊っちゃん」の立身出世を願う清が、将来麹町に家をもつのだと語る一貫性。
 そういえば、清水義範さんが教育実習でこの作品のテーマが「清への愛」だなんて納得いかないと憤慨していましたね。
 わたしは「坊っちゃん」は読書クイズ+文庫読みをしますが。(あんまり主題にはこだわらないので)

 「ふつう」であること。違う視点をもつこと。それでも、状況に合わないような考えはうまく隠すこと。
 中学高校で書くような「道徳的視点」や「みんな同じような読み方しかできない」ことから脱却させるために、石原先生は苦労されているようです。
 基本的には、文学を読み取るときにはある共通したストーリーがあるわけですが、作品の細部を読むことで違う物語が浮き上がるということだと思います。表面的に読んだだけではつかめない。
 わたしは学生時代、「春琴抄」の佐助犯人説に非常に感銘を受けたのですが、そういうことではないかと思いました。
 

「15歳の日本語上達法」金田一秀穂

2015-01-06 03:34:39 | 言語
 講談社「15歳の寺子屋」シリーズの一冊です。「15歳の日本語上達法」。著者は国語研究の大家金田一秀穂先生。
 わたし、先日お祖父様にあたる京介さんが啄木について書いた文章も読みました。盛岡の学校に入学したときのやんちゃぶりを描いています。わたしは「文人悪食」を読んで以来、京介さんは啄木にたかられているイメージがあって(笑)。
 ああ、でも同じ本にアイヌ語についての文章もあったのですが、わたしが中学生のときに読んだ記憶のある場面が見つかりませんでした。アイヌの女の子が坐っていた座布団にすぐ坐ると自分の運命が移ってしまうから、と気を使うようなエピソードがあったと思っていたのです。違う本なのかな?
 すみません、横道にそれてしまいました。
 秀穂先生は国語一家に生まれたものの、それほど勉強は好きではなかった。出席確認が終わると、バスで新宿まで行って、喫茶店で本を読む。そして、帰りの会には間に合うように学校に戻っていたそうてす。
 この本は、言葉とは何かをテーマに、中学生にもわかるよう具体的に説明してくださいます。「伝える道具としての言葉」をどう活用するか。言葉の意味を知って、きちんと理解することは、世の中を正確に理解することにつながり、自分の心を整理することができるようになる。たとえばデジカメだって、画素数が多い方が被写体を美しく捉えることができるように。
 秀穂先生は、自分が何をしたいのかがわからない時期を振り返って、そのときは最終的に行きたい道が見えていなかったのだと気づいたそうです。きっかけは、「アリス」のチェシャ猫の言葉。どこに行きたいのかわからないなら、どっちに行っても同じ。
 ゆっくり大人になっていい、という先生の言葉に励まされる生徒はいると思います。

「聞き出す力」吉田豪

2014-12-21 19:41:43 | 言語
 息子が、「クリスマスに『空想科学読本』の十巻セットがほしい!」というので、本屋をめぐってみましたが、売ってない……。でも、本屋に来たからには何か買って帰りたい。隣のショップで買い物するつもりなので、駐車場借りるだけではあんまりですよね。
 でも、先週かなり買い込んだので、なかなか気に入ったものが見つからなかったのですが、ふとカートを見たらこの本が!
 吉田豪「聞き出す力」(日本文芸社)。阿川佐和子さんに便乗したそうです(笑)。連載は「漫画ゴラク」。冒頭を立ち読みして、即レジに向かいました。プロインタビュアーとしてかなりの強敵だった潮田玲子さんについての話題です。わたし、オグシオ全盛期にバドミントン部顧問だったので、彼女たちの本も読みました。(地元ニュースで松友さんの取材も見ましたよー)
 しかし、吉田さんはオリンピックにまるで興味がなく、彼女のブログを見ても引っかかるものがなく、好きな音楽とか旦那さんのこともよくわからない。あたふたする感じが伝わってきて、非常におもしろかったのです。
 基本的にはインタビューに行ったときのエピソードと、話を引き出すときに心がけていることで構成されています。
 杜喜朗から古舘伊知郎、さとう珠緒、ターザン山本……様々な人のことが語られますが、印象に残ったのは、前田吟です! 
 家庭環境がよくなかったために養子に出され、その養父母も死別。親戚をたらい回しにされる過酷な人生には驚きました。
 いや、でもそれ以上に、Wikipediaで当時、グループサウンズのヴォーカルを担当していたことがあると書かれていたのが全くの嘘だったこと、これが衝撃です。
 意外と常識が大切、ということもよくわかります。かさにかかって無理を通そうとするターザン山本とか、取材前に下調べを一切しないという吉田照美には批判的でした。
 永江朗さんのインタビュー本を読んでから、吉田豪に興味はあったので、こういうコラムとめぐり合えてよかったなあ、と思っています。
 

「もっと声に出して笑える日本語」立川談四楼

2014-03-07 20:16:31 | 言語
 買ったのはかれこれ数年前。でも、このたびやっと読みました。図書室に置き去りにしていたんですよ。結構トリビアルな内容でおもしろかった。
 先月、義両親が結婚五十年の節目を迎えたのです。わたしと夫はやっと十数年。年ごとに「○婚式」があったはずだけど、何を見れば分かるのか。
 ありましたよ。紙からダイヤモンドまで。ある程度の時期を過ぎると、五年ごとになるのですね。錫とか革とか鉄とか、いろんなものがある。レース婚式もあるんです。
 それから、「米寿」「卒寿」「白寿」の次、百八歳は「茶寿」だそうです。百十一歳は「皇寿」。すごいですね。
 若者言葉も槍玉に上げられます。普段から目を向けているからこそでしょうね。
 様々な言い間違い。「あわよくば予選落ちです」には笑ってしまいました。間違いではないけど、「波の高さは並みの高さではありません」も、音声だけでは伝わりにくいですよね。
 杉村泰蔵の話題もありました。三連休で政治の本を読んで勉強したというので、記者団が何冊読んだのか尋ねます。「……一冊です」
 で、タイトルを聞かれて、「……プライベートなことですので」
 この頃は、よもや議員を辞めるとか「珍百景」のレギュラーになるとか、考えてなかったのでしょうね。新幹線でグリーン車だと喜んでらっしゃいます。
 有名人ネタも結構あるんですが。
 今人気の古田新太さん。忙しい中お世話になった方の通夜へ。喪服は間に合わないので、派手な上着を脱いでいったそうです。しかし、なんだか視線が厳しい。ふと見ると、着ていたTシャツに「GO TO HELL」と書いてあったとか……。
 感銘を受けたのは、イチロー選手の「小さなことの積み重ねでしか大きなことはできないんだと、実感しました」
 新記録達成のときの一言だそうです。
 「声に出して笑える日本語」がヒットしたために、光文社知恵の森文庫から書き下ろしで出版。「もっと声に出して笑える日本語」立川談四楼です。次は「もっと」がついていない方も、読もうと思って図書室から持ってきました。

「世にも美しい日本語入門」安野光雅・藤原正彦

2013-06-22 19:16:58 | 言語
 昨年、安野光雅の作品をたくさん見る機会があって、その繊細さとユーモアに感激したんですが、図録を買わないでしまったことを今も後悔しているのです。
 「世にも美しい日本語入門」(ちくまプリマー新書)。安野さんが小学校の先生だった頃、教えを受けた藤原正彦さん。なんと松田哲夫さんも同じ小学校にいたそうで、三人が協力して作った本だということです。
 わたしは本を買うと、すぐさま読んでしまうかぼーっととっておくかということが多いんですが、この本は半年くらいかけて非常にちみちみと読みました。
 昼休みに図書室で、あっちを読んだりこっちを読んだり。何回か同じところを読み返したり。
 「好き」と「大好き」くらいしか知らない人は、「ケダモノの恋しかできそうにない」と藤原さんはおっしゃいます。日本語には細やかな心のひだを表す言葉がたくさんある。
 唱歌と童謡とか、文語文とか日本語のリズムとか、お二人は縦横無尽に語り合います。
 好きな詩を持ってきて、話したら相手も同じものが好きだったということも結構あったとか。
 始めの方に、藤原さんが大学で実践している「読書ゼミ」の話が出てきましたが、それをまとめた文庫本も持っているんです。でも、「武士道」から読もうと思ったけと、本を借りただけで一カ月過ぎてしまうわたしには難しいのかもしれません。
 で、そのゼミを受けている皆さんが、当時の教養について衝撃を受けている。特攻隊に出る人が、ニーチェや「万葉集」を読んでいる。戦争の悲惨さとか虐げられた女性像とかをイメージしてきたことががらりと変えられるのです。
 わたしも国語教師ですから、それなりに本を読んできてはいるんですけど、藤原さんが提示している本をほとんど読んでいません。「福翁自伝」がおもしろいと書いてありましたが、いつ読めるのだろう? 文庫本は車のトランクに入れたままなので、反省しきりです。
 意味が分からなくても積極的に文語文を読むべきだというお話は、わたしもそう思っていました。「冬景色」、五年生で習って、あまりの美しい言葉に泣きそうになりましたっけ。息子が五年生なんですが、今はそういう感じの歌は入っていないんでしょうか。
 ちょっと教科書を見せてもらおうと思ったら、学校で全員分を保管しているんですって。うーん、気になる。
 

「なんかヘンだを手紙で伝える」村中李衣

2013-02-07 05:14:07 | 言語
 市立図書館が六時までなので、仕事帰りに気楽には寄れません。やりくりしてなんとか行くんですが、仕方がないときは七時までやっている分館に返します。そのとき見つけた本。「なんかヘンだを手紙で伝える」(玉川大学出版部)。
 「小学生のための文章レッスン」の一冊です。はじめに不登校ぎみの友人に、クラスメイトが手紙を書くということになり、彼女が悩んでいるのはそんなことじゃないのに……と思った女の子が登場します。
 その女の子(佳奈)は、サミュエルくんというハーフの男の子に話を聞いてもらい、自分がどうしたいのかを考えていく。クラスの全員から慰めの手紙を送るとか、千羽鶴を届けるとか、学級委員がお見舞いとか、どれも友達のためにはならない。ではどうしたらいい? そう聞かれても代案があるでなし。
 じゃあ、みんなにその気持ちをわかってもらうために手紙を書いてはどうだろう。カナダから日本にやってきたサミュエルくんは、運動会の組体操をめぐって口喧嘩。もやもやしていたのを姉にみすかされて、アドバイスを受けながら手紙を書いた経験がある。そのときのことをもとに法則を四つ教えてくれます。
・これはケンカじゃない
・なにがヘンなのかを、頭の中で整理する。
・手紙を書くことで、いったいどうなってほしいのかを頭に思い浮かべる
・「もし、……だったら?」と、いつもと違う見方をしてみる
 手紙の内容によって、伝え方も変わってくるようです。「ストップ型」「よく聞いて型」「ちゃんと言わせて型」。いずれにせよ、伝えたら最後は「ことばの握手」があるのが肝心。「わたしの気持ちを受け止めてくれて(略)ありがとう」「あきらめないでこれからも、ちゃんとお互いの考えを伝えられる仲でいたい」なんてふうに。
 近年はメールで手軽に済ませられる世の中だけれど、そんななかで手紙という手段をとることにはやはり意味があるのだと思うのです。
 村中さんは文中でサミュエルくんにこう言わせています。
「(メールは)訂正できるから、届けることばに覚悟がいらない。(略)覚悟のないことばは、意外と弱いんだ」「自分が書いた手紙を相手が読んでくれるまでのあいだ、じっと待ついうこと」
 手で書いた文字と、機械で打つ文字。その違いもあるとわたしは思います。
 村中さん、前に読んだ本が好きになれなくて避けていたんですが、これはおもしろく読みました。