くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「パドルの子」虻川枕

2017-08-31 05:50:19 | YA・児童書
 仙台出身作家さんとのことで、書店でPRブックレットをもらったのです。
 で、興味をもって読んでみました。
 虻川枕「パドルの子」(ポプラ社)。わたしより二十歳も若い! 新鋭ですね。
 わたし、実際に屋上にプールのある学校に勤めたことがあります。
 水泳部が活動していました。
 この水無月中学では、屋上プール重要です。だって、本当は先日までなかったものなのですから、
 じゃあ、何があったのか?
 生徒が自殺したために立ち入りを禁止された屋上と、天文台です。
 仲が良かった三輪くんが転校する日、「ぼく」こと水野耕太郎は別れの挨拶をしたくないばかりに旧校舎の屋上へ続く踊場に逃げます。
 三輪くんがいなくなると一人になってしまう水野は、その後も踊場に通いますが、突然の水音に驚き、鍵がかかっているはずの屋上に飛び出してしまいました。
 そこには大きめの水たまりがあって、同学年の美少女水原さんがバタフライで泳いでいたのです!

 水原さんは水野にも水たまりに入るように誘い、この現象を「パドル」と呼びます。
 次第に、パドルを行うと現実世界に何かしらの影響が現れることがわかってきて。
 一種のパラレルワールドと考えていいのかな? 「携帯伝話」(誤変換じゃないですよ)や「自動車」が消え、「公衆伝話」にはお釣りが出るようになる。
 でも、実際最も大きな違いは「水源」です。

 この世界には雨が降らず、ある国の「水源」が水を浄化している。
 そのため日常的に節水が必要で、ときには大きな事故につながるほどの放水が起きることになります。
 水野の父はこの水源を研究しており、近隣の国に単身赴任中。母は警戒警報が鳴ると不安になります。
 水源がなければ世の中の事故も減り、もっと水も有効に使えると考えた水野は、蒸発した水分を集める飛行船をイメージします。(このとき、父はパイロットになっています!)
 でも、うまくいったはずの飛行船計画は翌日にはもとに戻ってしまう。
 そして、パドルには三輪くんも絡んでいることを知った彼は、自転車で会いに行くと決意します。

 物語の舞台は東北地方で、三輪くんは隣の県のすごい田舎町に引っ越しています。
 なぜ東北とわかるかというと、担任の大森が中学時代に野球で東北大会出場権を得たから。
 野球部はこのとき練習第一の環境を認められ、授業よりも練習をするような状態になったため、耐えきれなくなった下級生が屋上から自殺したのです。メディアの前で保身を図る大人たちに、ばしっと演説して一躍ヒーローになった大森は母校で英語教師になり、その経歴から校長も口出しできない雰囲気があるのだとか。
 水野は、この大森に目を付けられており、ことあるごとに絡まれます。
 読み進んでいくと、実際のところ下級生が飛び下りたのは先輩によるいじめからだということがわかってくるのです。
 ついでにいうと、野球の県大会時期は夏休みに入っているし、東北大会はその二週間後なので授業はないですけどね。
 読後感が爽やかで、確かに新人賞作品に選びたくなる一作でした。

「幸せ戦争」青木祐子

2017-08-30 05:39:31 | 文芸・エンターテイメント
 青木さんの本がもっと読みたくて借りてきました。集英社文庫「幸せ戦争」。
 四件の家が建てられた一帯。その家族たちにスポットを当てる連作短編です。
 元々の地主だったのは仁木家の妻多佳美。夫陽一が描く小説のためにと、土地を売って家を新築します。多佳美は、高校時代から陽一に憧れ、彼のためなら何でもできると思っているお嬢さま。
 陽一の幼なじみだった能生美和は、多佳美の気持ちを知って二人をまとめた立役者。父の遺産を使って三階建ての家をつくります。彼女はゴシップ好きで策略家。隣家の娘が陽一に近づくように画策した結果、その家は出ていくことになります。
 代わりに引っ越してきたのが、氷見家。美和の娘と同い年の麻衣花は、いつまでも少女のような母に閉口しているようで……。
 もう一軒、周囲と関わらないようにしている高井戸家がありますが、そううまくはいきませんよね。
 各家の誰かを視点にして、彼らの思惑を語っていきますが、それぞれが何かを抱えていて、うまくやっているつもりでも実のところ見透かされている面もある。
 中でも、作家を目指しながら全く執筆をしない仁木陽一が、隠れ蓑として覆面作家の仁木亮之輔を利用しているあたりが姑息だよなあと思わされる。
 幸せって、誰かと比べるものではないということが伝わってきます。象徴のように光るツリーの星が、実際には眩しすぎるのもうまい比喩ですね。
 
 

「この自伝・評伝がすごい!」成毛眞

2017-08-29 05:21:51 | 歴史・地理・伝記
 成毛眞さんといえば「このノンフィクションがすごい!」の中心人物。その方が「この自伝・評伝がすごい!」(角川書店)ですからね。
 自伝・評伝二十冊。古今東西の二十人を紹介します。あまり学校図書館の偉人伝記シリーズには採用されないラインナップ(笑)。
 では、ご紹介しましょう。イーロン・マスク、小倉昌男、安藤百福、土光敏夫、ビル・ゲイツ、ラマヌジャン、山中伸弥、中村修二、岡崎慎司、桂米朝、十八代目・中村勘三郎、タモリ、田中角栄、安倍晋三、ウィンストン・チャーチル、リチャード・ニクソン、保科正之、徳川綱吉、横井小楠。
 なかでも印象的なのは、クロネコヤマトの社長小倉昌男。他社との差別化のために宅配業に参戦。ライバルは郵便局!
 さらに、岡崎慎司と他のサッカー選手を比較して彼の「ネガティブ力」について書き、中村修二はノーベル賞を取ったこと以上に喧嘩を売り続ける姿勢をほめています。
 チャーチルは政治家である前に文筆家であるとか(ノーベル文学賞を取っていますね)、山中教授はiPS細胞の研究では金策やコーチの立場にいることなど、一般的なイメージを覆していく。
 ただ、一人だけ、どう頑張ってもほめることができなかった人物がいます。それは誰でしょう?
 ちなみに、綱吉の「生類憐れみの令」については、それまでの問題解決方法が「人を殺すこと」だったことを革新した法律であり、決して動物愛護ではないとほめています。

 自伝・評伝のブックガイドとしても読めますね。藤原正彦「天才の栄光と挫折 数学者列伝」、明石和康「大統領でたどるアメリカの歴史」、「山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた」(聞き手・緑慎也)、岡崎慎司「鈍足バンザイ!」、小松成美「勘三郎、荒ぶる」は読んでみたい。

 イラスト(越井隆さん)もポイントつかんでいておかしい! 「ニクソン、今度俺マスターズ出るよ(笑)」の角栄や、「金がなきゃ研究できないじゃん」の山中教授、それから「都会? 一流? かかってこいよ!! 上等だよ」の中村修二。
 いろいろとくすぐられる一冊でした。

「うちの子は字が書けない」ほか

2017-08-28 05:48:34 | コミック
 千葉リョウコ「うちの子は字が書けない」(ポプラ社)。
 中学生の息子さんが、ディスレクシアではないのかという疑問から、専門家に相談して字の覚え方や学校生活のことなどを描いたエッセイまんがです。
 とにかく、この実態を広く知ってもらいたいという思いを感じました。
 中学生でも、なかなか漢字を覚えられない子は結構います。勉強の仕方がわからない場合もあるし、やる気や必然性を感じない子もいます。
 一生懸命やっていても成果に結びつかない子はどうすればいいのか。わたしも、それは常に考えてきたことでした。

 わたし自身、小学校三年生から中学二年までは漢字が苦手で。
 克服できたのは、一年間みっちり日記を書いたから。(公開日記だったので、他者意識もつきました)
 大体において、漢字は似ている字が多い! 読めるけど、細部まで気をつけないと書けない。
だから、コツのようなものが分かれば覚えやすいとは思うのですが……。
 
 漢字を分解して、覚えている文字を使った言葉カードを作るという発送は、おもしろい。「父のハラはメタボ」とか「花がサイてヒヒと笑う」とか。漢字をパーツに分けるとカタカナとして覚えられるのです。まず、かなを完璧に覚えなければならないという意味が分かりました。
 ただ、本人以上に家庭の協力は大切かもしれません。自分の知っている範囲を増やしていくには、既に分かっている人の力が必要なのです。

 それから、場面緘黙症の女の子を描いたモリナガアメ「かんもくって何なの?」(合同出版)と、らせんゆむ「私はかんもくガール」(合同出版)。
 これまでも、緘黙の子は何人か受け持ってきました。友人関係が深まったら、特定の人の前ではしゃべるようになったという子もいます。部活の子がわたしとしゃべっているのを見てびっくりして話しかけてきた方もいました。
 まんがを読むと、家族が機能不全だったり、ふとした言葉に過敏になってしまい、どうしたらいいのか分からなくなることも感じます。
 学校はどう支援していけばいいのでしょう?
 ディスレクシアでは、その子にだけ特別扱いをすることはできないと断られる場面があります。
 確かに、抜き出し問題の漢字が書けなかったら、国語のテストは減点ですねぇ……。まんがに出てきた先生が、平等ではないと答える気持ちは分かるんです。
 支援の法律ができたそうですが、どういう基準ならいいのか?
 そういえば、小学校では「覚えられないなら、漢字は捨てましょう! 読み取りができればいいです」といわれたという生徒もいました。
 

似鳥鶏 短編

2017-08-27 05:44:28 | 文芸・エンターテイメント
 似鳥さんの参加したアンソロジーを二つ発見しました。

 1「どうぶつたちの贈り物」(PHP)
 ペンネームに動物の漢字が入っている作家さん5人が書き手。
 そのラインナップは、小川洋子「黒子羊はどこへ」、鹿島田真希「キョンちゃん」、白河三兎「幸運の足跡を追って」、東川篤哉「馬の耳に殺人」、そして似鳥鶏「蹴る鶏の夏休み」。
 もちろん似鳥さんのテーマはニワトリ。そして、カラスも登場します。
 頭の白いカラスを見たという情報から、同級生の日吉さんの家にやってきた飛田(新聞部員)と「俺」(加古川)。
 自動販売機で飲み物を買おうとした飛田は、柵を超えて攻撃してくるニワトリの「ピーちゃん」に閉口します。
 そうね、ニワトリは乱暴だよね。わたしも縁日ひよこが成長しちゃった過去がありますよ。
 ところが、ピーちゃんは最近ケガをしている。こんなに乱暴なニワトリが、たびたび出血するのって、なにか訳があるのでは?
 その推理を展開しているうちに、なんだかどんどん物騒になってきて……。
 自分は「普通」のつもりなのに、周囲が納得していないらしい加古川くんの、その後が気になります。

 2「この部屋で君と」(新潮文庫nex)
収録は他に、浅井リョウ「それでは二人組を作ってください」、飛鳥井千砂「隣の空も青い」、越谷オサム「ジャンピングニー」、坂木司「女子的生活」、徳永圭「鳥かごの中身」、三上延「月の沙漠」、吉川トリコ「冷やし中華にマヨネーズ」。
 似鳥さんだけ読んで返すつもりだったのに、コンセプトがおもしろくて全部読んじゃいました。坂木さんのは続きが気になるので、今度単行本借りてきます!
 テーマは「同居」。ルームシェアあり同棲あり夫婦あり。
 似鳥さんは「神様」との同居です!
 のっけから、見ていたテレビに危機を告げられる「俺」(紺丸)。理解に頭がついていかず、呆然とした彼の背後に「鏡女」(本当はもっと長い)と名乗る少女が現れます。おかっぱ頭で浴衣姿の鏡女は、やがて部屋にやってきた巨大むかでを撃退しようとします。
 食器が割れ飲み物や食事が落ちて、部屋は無惨な状態に。逃げたむかでがまた襲ってくるだろうから、部屋にいて守ってやるという鏡女のために、紺丸は毎日大量の食事を用意し、次第に生活に慣れていきます。
 ところが、鏡女にはある秘密があったのです……。
 SFっぽいというかラノベっぽいというか、読者層を広げてくれそうな一作です。
 外見のこともそうですが、「神」のあるべき姿とかこの後やっぱり紺丸は餌食にされるはずだったのかとか、いろいろ考えてしまいます。正義の視点も。
 しかし、似鳥さん、荒ぶる神もむかでもなんとなく可愛げがあるっていうのはすごいな。
 

「飲めば都」北村薫

2017-08-26 05:33:43 | 文芸・エンターテイメント
 てっきり酒のみエッセイだと思い込んでいて、あんまりお酒に興味ないわたしは手に取っていませんでした。
 でも北村さんだしなー、と古本屋の五十円コーナーで発見してぺらぺらめくっていたら、どうも編集者さんの話らしい。
 小酒井都、文芸雑誌の編集者です。
 非常に酒癖が悪く、いわゆる「武勇伝」に事欠かない。第一話から上司に赤ワインをかけてしまいますし、すぐ記憶をなくす。
 のちに結婚する小此木さん(通称「オコジョさん」)には、とんでもない誤解から失礼な言動もしてしまいます。
 でも、「飲めば都」(新潮文庫)のタイトル通り、都は幸せなんだろうと思うのです。
 ちなみに、作品背景は現在よりも少し過去、という設定です。2000年問題も出てきます。

 この作品、編集部では何組かのカップルも描かれています。
 インパクトがあったのは、姉御肌の編集長大曾根さんかなー。そういう展開だったとは……。
 あと、とある女性が意中の人の結婚指輪を隠してしまうエピソードが、なんだか引っかかってしまいます。
 結婚指輪を見せてといってお手洗いにいく。洗面所で手を洗った際に排水口に落としてしまった。ごめんなさい、といって泣く。
 でも、すぐに排水管をあけて探したけど出てこない。
 考えてみれば排水口には十字に金具が入っていて、指輪が入っていくはずはない……。
 そこまでしてしまう女心っていうのが、わたしには怖いなと思うのですが。
 
 「夢十夜」のパロディや、「智恵子抄」の解釈、直木賞と思われる受賞待ちなどのエピソードもおもしろく読みました。
 で、あの、オコジョさんのモデルって、どう考えても大野隆司さんですよね。まゆげねこ、表紙にも登場していますし。
 とすると、オコジョさんの実家(山形市)から国道二時間のお薦めの温泉地というは、やっぱり鳴子ですよね?
 鳴子と大野さんの交流は新聞に取り上げられましたし、実際町には大野さんの絵があちこちで見られます。(先日いったO図書館にもありました)
 こけしの絵付け、わたしはやったことはありませんが子どもたちが作業するのは見ていて楽しかった。北村さんも鳴子を訪れたのでしょうか。
 そういえば、以前読んだ「愛さずにいられない」には岩手の藤原の里に感銘を受けたことを描かれていましたね。
 旅をしていても北村さんの目は様々な事象を捉えているのでしょう。
 酒のみでなくともおもしろく読めたので、次はお酒をたしなんでみるべきでしょうかね。

「いい加減な夜食」「メシマズ狂想曲」

2017-08-25 05:20:44 | 文芸・エンターテイメント
 秋川滝美さんの二連続です。
 まずデビュー作「いい加減な夜食」(アルファポリス)。
 びっくりしました。なんか、ハーレクインっぽかったから。
 いや、すごくおもしろいんですよ。苦学生の女の子・佳乃が若社長の俊紀に見初められて、秘書から恋人になっていく。彼女は書道の家元のたった一人の孫娘で、家を継ぐように言われており、すんでのところで策略をめぐらして奪回。社長はものすごく魅力的で、かつては派手に遊んでいたため、彼女は自分も半年で捨てられると思い込んでいて。
 普通の大学生かと思っていたら、パーティーマナーやダンス、英語やドイツ語もペラペラと、育ちのよさを感じさせる佳乃。
 秋川さんといえば、おいしい手料理がメインかと思いきや、結構違う面を見た感じです。
 佳乃が図書室を整理するくだりは、本もお好きなのだろうと感じました。

 「メシマズ狂想曲」は、三十過ぎて自炊したこともない和紗と、ライバルの村越が競い合って料理を作り、失敗しながらも思いを高めていく物語です。
 後輩の山埜や風花ちゃんも一緒に料理教室をするところがおもしろかった。  
 豆腐ハンバーグを作ろうと準備してきた風花ちゃん。実はみじん切りくらいならできる山埜くん。
 山埜くんは風花ちゃん狙いですが、彼女は村越を慕っていて、すごい積極的にアプローチします。
 和紗は喧嘩ばかりしていても、自分は村越が好きなんだと自覚しますが、なかなか自信が持てない。
 読者には、村越の気持ちはもうはっきりしているのですが、和紗の鈍感ぶりがなんともいえません。

 料理シリーズでもう一冊、原宏一「踊れぬ天使」(祥伝社)。
 「佳代のキッチン」の三冊めです。
 相変わらずキッチンカーで全国をさまよっている佳代。今回は釜山に始まり、金沢、静岡(藤枝市)、佐渡、群馬(大泉)、山形、稚内。
 ラーメンに心ひかれる場面が多かったなあ。
 一冊めを読んだときには設定に違和感があったのですが、なんだかんだで続きを読み続けています。
 すぐ人との絆を作るのは、佳代の才能かもしれません。
 この本を読んでいるとき、実は地方局の取材を受けざるを得なくなり、テレビに映りたくない思いがこうじてすごい引き気味に答えてしまいました。(屋台ラーメンの目撃情報を聞かれました……)
 わたしにはこういう旅はできないなーと思いました。
 佳代はいつも湧き水を調理のために汲みにいきますが、こちらも山麓部にはおいしい湧き水があるんですよ。
 ただ、調理屋を開くには人出のある場所が必要ですよね。海からは遠いし。
 

「そろそろ、部活のこれからを話しませんか」

2017-08-24 05:29:18 | 社会科学・教育
 あーっ、そうですそうです、ぜひ話し合いたいですっ、と勢い込んで答えたくなるこの書名。
 「そろそろ、部活のこれからを話しませんか 未来のための部活講義」(大月書店)。著者は、早稲田スポーツ科学科准教授の中澤敦史さんです。
 学校で部活をするシステムは、日本と他数国だそうです。
 いろいろ弊害はありますが、中澤さんの主張は、活動する子どもの命は守らなくてはならない、指導する教師の生活を守らなくてはならない、がメインです。
 体罰とか部員内のトラブル、無計画な練習ではいつ事故が起きるかわからない。これまても部活中の事故のニュースは報道されてきました。
 また、教師の日常も部活に左右されがちです。
 わたしの知人は、六時に朝練を始め、正規の部活終了後(それでも勤務時間は間違いなくオーバーしています)に夜練。超過勤務時間は二百五十時間を超えると言っていました。
 百五十時間でひーひー言っていたわたしは比べものになりませんが、そんなことやってたら身体壊しちゃうでしょ! と思うのです。
 中学校では、週に二日程度は休息日を設けるようにと言われているんです。土日どちらかともう一日。でも、スポーツ少年団扱いで活動している部はあるし、保護者が生徒自身より燃えていて、キャパシティ以上を求めることもよくあります。

 中学校と高校の部活所属人数比較もありました。中学校上位は、ソフトテニスとバスケット、サッカー。高校はサッカー、野球、バスケットの順。
 ソフトテニスは高校では八位で、硬式テニスに転向する子がいるからだろうということでした。
 ただ、ある大会で県の理事さんたちも、高校ではテニスをやめてしまう子が多いと嘆いていました。
 全国大会出場校は、例えばバレーボールだと年間一千セットをこなすくらいの猛練習をしています。
 わたしも、全国大会を目指すチームの学校に勤めたことがありますが、土日はほとんど遠征、平日の帰宅は十時半、なんてのがざらです。
 指導者は、半年間の研修に出ていても土日は指導にくるし、地域の協会の役員のため、退職後も試合会場にいます。
 でも、それは仕事以上に「趣味」として好きでなければできないだろうな、と言っていました。
 わたしはスポーツ苦手なので、あまり部活に積極的ではない方でした。文化部だった高校・大学は、活動するのがとても楽しかった。
 中澤さんは、活動を楽しむ「練習」をすること、そのためには「決める」「交わる」「ふり返る」の練習が必要だと語っています。
 やらされている、のではなく、どうすれば楽しむことができるのか。それをデザインしていくことが大切なんですね。
 コラムには、部活に関するまんがや小説の話題、中澤さん自身が親しんできた部活についての話題もあり、興味深く読みました。
 でも結局、部活は学校生活からは切っても切れないものなんだなー、とも思います。生徒たちの活躍は、応援のしがいがありますからね。わたしも地道に頑張ります。

「お客さま、そのクレームにはお応えできません!」

2017-08-23 05:44:23 | 文芸・エンターテイメント
 三浦展「お客さま、そのクレームにはお応えできません! [小説]不動産屋店長・滝山玲子の事件簿」(光文社知恵の森文庫)。
 発売時に買うかどうか迷ったのですが、無事図書館で発見しました。
 著者は、マーケティングや社会デザインの本をたくさん出している方で、本書は初の実録ライトノベルだそうです。
 他の本を読んでいないのではっきりしませんが、なぜ、これを小説のかたちで出す気になったのか、ちょっと疑問です。
 それなりに知名度のある方なんでしょう?
 主人公を、なぜ自分より年上で、さらに異性にしたのか?
 いや、おもしろいんですよ。ただ、文体と内容がちょっと昔の「宝島文庫」みたいっていえば通じるかなー。確かにこういう需要はあるのでしょうけど、なんだかもったいない。
 必要以上に「〜なの」や「〜ね」が目についてしまうのですよ。他の部分はどちらかというとぶっきらぼうな常体なんですが。この前に女性作家のエッセイを読んでいたのですが、あんまり文末に終助詞つけないように思って。

 不動産屋さんって大変だなーというのは強く感じました。賃貸物件の掃除の手配とか何かあったときの対応もしなくてはならないのですね。
 物件を案内に行ったときにトラブルにあったり、家賃滞納の督促をしたりするのもきついですよ。
 玲子さん本人も、二度めに現れた契約希望者がお母さんを連れてきて、なんかやたらに質問されると思っていたら結婚相手と見なされていたという驚きの経験を話しています。
 家賃滞納で逮捕された間ウサギを預かってほしいと言われて行ってみると、部屋にものすごい数の箪笥と衣服が……というのもインパクトがありました。
 幽霊が出るとか、家族に秘密で一部屋借りるとか(この方は小説を書いていたそうです)、人の生活にはいろいろと外からは見えないことがあると感じました。

「ある日うっかりPTA 」杉江松恋

2017-08-22 04:30:44 | 社会科学・教育
 杉江さん? 杉江さんって、「本の雑誌」に書いてる杉江さん?
 杉江さんの書評、おもしろいんですよ。だけど、海外ミステリの本だとわたしは知識不足で読めないと諦めたことがあります。
 今回は学校が舞台。
 しかもタイトルは、「ある日うっかりPTA」(角川書店)。
 予想以上に楽しめました!

 わたしも現在、中学生の親として校外指導部の委員長(ローテーションで当て役)をしており、小学校時代は学年委員長、学年役員三回、広報委員、環境委員、福祉委員、子ども会地区長と一通り引き受けました。
 杉江さんは、最初から会長として参加し、三年間仕事を全うされて無事卒業。そのときのことを振り返った一冊です。
 すごいアクティブ!
 PTAの予算とか、校庭開放の報酬とか、周年行事とか、もっと合理的に行えると判断したことを次々に改革していくんです。
 周囲の人たちも協力して、やりがいを感じさせられます。
 特に校長先生とのコンビネーション。校庭の芝生が損なわれるからと夏の盆踊り復活に否定的だった前任者とは違って、使用許可を出してくれる。
 そこで杉江さんは何をしたのか。
 豚の丸焼きを作ったのです!
 旧知の学童保育の保護者たちにそのパワーがあることを知っていて、ここぞとばかりに仕掛けたのですね。
 わたしは集団で何かする活動は、つい面倒がってしまう方ですが、こんなにいきいきとしている人たちを知るとなんだか嬉しくなってきます。
 また、「がんばらないことを、がんばる」を裏スローガンにしたり、役員の人数を増やしたりと、いろんなことに取り組みます。
 PTA活動に積極的になり、新聞づくりに尽力してくれた女性が、事情で学校から離れていかざるを得ない場面は、ショックでした……。
 PTAには賛否両論あるかと思います。文中で「PTAの常識」とする括弧書きがあるのは、世間一般では常識ではないということなのでしょう。
 単位PTAそれぞれで、やることが違う、というのも、言われてみればそうだなーと感じました。転勤のたびにPTAのやり方は違うものだと感じてはきましたが、概要は同じパターンなので。
 思えばわたしも、PTAに加入して四半世紀(!)。広報一筋でしたが、今年は新しい部門にチャレンジしています。週末は草刈作業で五時半集合。雨天続きで順延だとつらいなあ。いい加減に晴れてもいいと思いません?