上野先生の「死体は語る」(角川書店)、単行本で持っています。まだベストセラーになる前に、おもしろそうな予感がして手に取ったのですが、思った以上に読みごたえがあって、著作を貪るように読みました。
その頃、著作を何冊も読み漁ったのですが、このところ読んでなかったので、久しぶりに借りてみたのです。「監察医の涙」(ポプラ社)。
司法解剖という制度を、わたしは上野先生の本を通して知りました。東京などの都市では、不審な死に解剖が義務づけられている。一見事故死に見える場合でも、死体は語り出すことがある。自分は、殺されたのだ、と。
今回、あるエピソードを読んでつい泣いてしまいたした……。仲のいいご夫婦の、奥様が半身不随になってしまい、旦那さんが献身的に介護をする。五年間、必死で世話をしてきて、貯金も底をつき、旦那さんは、このまま自分の方が先に死んでしまったら、妻はどうなるのかと考え、心中を決意したそうです。
奥様は浴槽で溺死で見つかり、旦那さんは薬で自殺を図ったものの、近所の方に助けられ、自分が妻を殺した、と告げます。
しかし。
妻の検死からわかった事実は、手首についた夫の手のあとが、むしろ引っ張りあげるときにできるものだったのです。
ふと目を離したすきに溺れていた奥様を助けようとしたところ、唯一動かせる右手で、彼の手を振りほどいた、のだそうです。
「あなた、もういいです」
切ない。奥様も、ずっと辛い思いをしてきたのでしょうね。旦那さんがどんなに苦しい思いをしているのかも。
人間って、自分が苦しむよりも愛する人が辛い思いをしているときの方が胸が痛むのだそうです。
親として、子供を先に亡くすことはあまりにも悲しいこと。そんな事例も多く引かれています。
また、上野先生は事件などのコメンテーターとしても引っ張りだこ。ニュースで取り上げられた事件も紹介されていますよ。
こうやって本を読ませていただくのは、もう十五年ぶりなのですが、なんというか、基本的なスタンスは変わっていないと感じました。
お父さんの思い出や、先ごろ亡くした奥様の回想など、先生御自身の気持ちも、家族をめぐるエッセイに示されていましたよ。
その頃、著作を何冊も読み漁ったのですが、このところ読んでなかったので、久しぶりに借りてみたのです。「監察医の涙」(ポプラ社)。
司法解剖という制度を、わたしは上野先生の本を通して知りました。東京などの都市では、不審な死に解剖が義務づけられている。一見事故死に見える場合でも、死体は語り出すことがある。自分は、殺されたのだ、と。
今回、あるエピソードを読んでつい泣いてしまいたした……。仲のいいご夫婦の、奥様が半身不随になってしまい、旦那さんが献身的に介護をする。五年間、必死で世話をしてきて、貯金も底をつき、旦那さんは、このまま自分の方が先に死んでしまったら、妻はどうなるのかと考え、心中を決意したそうです。
奥様は浴槽で溺死で見つかり、旦那さんは薬で自殺を図ったものの、近所の方に助けられ、自分が妻を殺した、と告げます。
しかし。
妻の検死からわかった事実は、手首についた夫の手のあとが、むしろ引っ張りあげるときにできるものだったのです。
ふと目を離したすきに溺れていた奥様を助けようとしたところ、唯一動かせる右手で、彼の手を振りほどいた、のだそうです。
「あなた、もういいです」
切ない。奥様も、ずっと辛い思いをしてきたのでしょうね。旦那さんがどんなに苦しい思いをしているのかも。
人間って、自分が苦しむよりも愛する人が辛い思いをしているときの方が胸が痛むのだそうです。
親として、子供を先に亡くすことはあまりにも悲しいこと。そんな事例も多く引かれています。
また、上野先生は事件などのコメンテーターとしても引っ張りだこ。ニュースで取り上げられた事件も紹介されていますよ。
こうやって本を読ませていただくのは、もう十五年ぶりなのですが、なんというか、基本的なスタンスは変わっていないと感じました。
お父さんの思い出や、先ごろ亡くした奥様の回想など、先生御自身の気持ちも、家族をめぐるエッセイに示されていましたよ。