くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「仏像ぐるりの人びと」麻宮ゆり子

2017-01-29 19:19:11 | 文芸・エンターテイメント
 「敬語で旅する四人の男」を数ページで挫折したのです。
 同じ棚から借りてきた「仏像ぐるりの人びと」(光文社)は、楽しく読めました。
 どちらも麻宮ゆり子さんの作品とは気づかずに手に取ったのですが、やっぱりわたしは仏像好きなのか。大会会場に早く着きすぎて読み始め、続きが気になって仕方なかった。

 予備校への通学途中で事故にあい、リハビリの末二浪して京都の大学に入った雪嶋。幼い頃から仏像に興味があり、大学で見つけたアルバイトとして、仏像修復師の門真の工房に出入りするようになります。
 彼の従妹もえ美。「のんびり仏像めぐり研究会」の今岡と宇田。門真の友人で学芸員の天津。
 持ち込まれる仏像のなかには、パーツが失われたり新品として修復されて元の姿がイメージできないものもあります。
 取材協力には飯泉太子宗さんのお名前もありました。
 東寺にはおじいさんがいたのに、もえ美は会わなかったのかなと思わないでもないですが、自分の決意を貫こうと決めた雪嶋がいいですよー。

「本バスめぐりん」大崎梢

2017-01-18 05:37:36 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 発売直接から読むのが楽しみでした。
 大崎さんの図書館もの。しかも、移動図書館(本バス)が舞台。
 二週間のローテーションでステーションを廻るバスには、司書のウメちゃんが厳選した図書が三百冊積んであります。
 運転手のテルさんは、定年後の新人。新しい環境で様々な出会いがあります。
 引っ越してきたばかりの美少女杏奈ちゃん。派遣会社の野路さん。移動ワゴンのシチュー屋さん。(でも、営業中は職務上買えませんが)
 市民祭りへの参加や、利用者を増やすための企画もおもしろいです。
 やっぱり本が好きだなあ、と思うのでした。
 
 わたし自身は本バスを利用したことはありません。
 日中は勤務ですからねー。
 学校では市立図書館から2ヶ月、学級文庫を配架してもらっています。運転手さんには毎回コンテナを運んでいただいてありがたいです。
 
 保育園トラブルとか、ちょっとした誤解とか、講演会の持ち方とか、いろいろなエピソードがありますね。
 コージーミステリ好きの皆さんが、登場するお菓子を作るサークル、いいですねぇ。
 

「まことの華姫」畠中恵

2017-01-17 20:30:39 | 時代小説
 次に予約が入っていることで読み始めたのです。
 とても読みやすかった。
 畠中恵「まことの華姫」(角川書店)。
 華姫とは、月草という男が操る姫様人形。月草はもともとは人形師でしたが、工房が火事にあい、そのためにけがをして現在は腹話術の芸人として身を立てています。
 理屈として、月草が話していることはわかっているはずなのに、お華の可憐さに心ひかれてしまう人々。
 親分の娘のお夏も加わって、様々な事件に関わっていきます。なにしろお華は真実を語ると言われている人形。毎日小屋は大繁盛です。
 「お華追い」と言われる追っかけまでいるんですよ。

 火事のどさくさで生き別れになった子どもを判別する話では、候補となる子がたくさん出てきて困惑します。誰が本物なのか教えてほしいというのです。
 もちろんお華にわかるはずはないのですが、推理や洞察で判断していく。
 お華の目は、真実の井戸から汲み出した水から出てきた玉を使っているため、本当のことを見通せるらしいのですが。
 すみません、急いで返したので誤読かもしれませんが、井戸は江戸にあり、月草は西国で人形を作ったのですよね? 玉はわざわざ西国に運ばれたの?
 やりとりや仲間同士の連携がおもしろかった。やっぱり畠中さんは団体活動ですよね!
 

「十年交差点」中田永一ほか

2017-01-13 21:23:12 | 文芸・エンターテイメント
 すごい期待して読んだせいか……どの作品も長編の一部みたいでなんだかもったいない。
 「十年交差点」(新潮文庫nex)。
 中田永一、白河三兎、岡崎琢磨、原田ひ香、畠中恵。
 すべて好きな作家さん揃いなんです!
 「十年」をテーマにした競作。
 中田さんはタイムトラベルもの。ラストがなるほどの展開でした。
 白河さんは学園もの。主人公は若い男性教員です。作文を書こうとしない女生徒に話をしていくのですが、読者は多分前半でこの子が何を悩んでいて何を隠しているかわかってしまうと思うのですよね……。
 岡崎さんは「ターナー症候群」に関わる恋愛もの。
 原田さんは亡くなったお姉さんの息子を育てていく女性の物語。「東京ロンダリング」とか「母親ウェスタン」の流れがあるように感じました。
 本来なら後妻に収まっても不自然ではない立場の主人公。しかし、義兄には再婚を考える相手ができたのです。
 ずっと会えなかった甥との邂逅を期待しながら、十年前のことを回想していきます。
 クロスオーバーしていく現在と過去。十年ぶりに再会する場面で幕を閉じるのですが、なんだかもったいない。続きはあるのでしょうか。
 畠中さんは「しゃばけ」のスピンオフ
 河童の彌々子さんに縄張り相談に現れたよその河童たち。安定しています。でも、このシリーズに関心のない人にはおもしろがれないような気がしました。
 

「アンと青春」坂木司

2017-01-12 21:44:01 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 中華街を歩いたとき、もうすぐ春節だなと思ったのです。
 ああ、その場面は、「和菓子のアンソロジー」で坂木さんが杏子と立花さんのデートを描いたものでした。印象に残っていたのですね。
 その「空の春告鳥」が入った「アンと青春」(光文社)を読みました。
 このタイトル!!!
 このまま続いたら「夢の家」とか「娘」とかもありですか?

 今回は意地の悪いお姑さんやライバルっぽい(注・立花さんにとって)人も登場。
 そして、立花さんからの謎かけの和菓子! きゅんきゅんしますねぇ。
 それから、ジューススタンドを舞台にある問題についても考えさせられます。
 この本を読んだら、あんこが食べたくなるのですよね。
 八つ橋買ってしまいました……。

芭蕉記念館に行く

2017-01-11 22:54:17 | 〈企画〉
 今回、わたしが是非行きたいと主張したのは、すみだ北斎美術館と江東区芭蕉記念館。
 北斎の方はとても近代的な建物で、開館前から二十人くらい並んでいました。作品の説明もタッチパネルです。わたしはずっと「風流なくて七癖」の遠眼鏡のどこが癖なのか謎だったのですが、物見遊山にいきたがるのも癖とのこと。
 また、文字や家紋を絵にあしらったものをなぞり書きするタッチパネルもありました。
 売店で、神奈川沖浪裏のエコバッグなど購入。
 
 で、芭蕉なのですが。
 位置的には結構近いのです。でも、歩くには遠い。
 ちょうどバスがあるとのことなので、高橋で下車。
 歩きながら、ふと「志乃を連れて深川に行った」というフレーズが浮かびました。
 わたしは東京の位置関係がよくわからなくて夫におまかせなのです。だから間違っているかもしれませんが、この辺って元の木場? 材木屋さんもあるよ! 「忍ぶ川」のお兄さん関連の場所、近いのでしょうか?
 それに、深川なら七不思議とかもあるのでは? もっと観光っぽくてもいいのではないかと思ったのですが。
 芭蕉記念館もずいぶん歴史のある展示パネルで、わたしには興味深いのですが、集客力は今一つなのでは……。
 おくのほそ道の写本系統や、俳諧の系統図がおもしろい。でも、古い。
 採茶庵跡には芭蕉像などもあるようですが。ちょっと遠いので行きませんでした。
 
 その後訪れたのは浅草。
 「浅草うねうね食べある記 おみやげ編」(上野うね・ぶんか社)に紹介されていたお店を何軒か見つけましたよー。
 ただ、「芋きん」しか食べていないけど。(また食べたい!)
 あとは浅草あんぱんもおいしかった。
 八重洲ブックセンターで四冊ほど買って、帰途につきました。
とにかく食べてばかりいたような気がしてなりません……。

「シャーロック・ホームズの十字架」似鳥鶏

2017-01-09 20:23:59 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 旅行中に読むために取っておいた似鳥さんの文庫「シャーロック・ホームズの十字架」(講談社タイガ文庫)。新幹線と電車で読みました。
 なんと! 冒頭から湖に十字架に縛られた死体! この湖は酸性湖で、どう考えてもそんな場所に設置するのは不可能なはず。さて、名探偵の遺伝子をもつ彼らはどう推理するのか? そして「機関」は?
 このパズル的展開、興味がわくでしょう?
 さらに、この場所は、宮城県と山形県の県境にある山の中にある、というのです。
 とすると、モデルになったのは栗駒・鳴子・蔵王あたり? なんて思いながら、ふと酸性湖ってどんなものかと検索したところ。
 なんと、鳴子に、あるんですね、酸性湖。「潟沼」というそうです、
 ……知らなかった。
 とすると、この沼に行くのに地獄谷を通るとき、ガスマスクをつける場面があるのですが……。
 これも、反実仮想? 身近にそんな場所が? 魚も住めない美しい湖なのだそうで、実際に見に行ってみたいですね。
 
 この場所に集まったのは、学生や主婦など4人とテレビスタッフ。シチュエーションパズルの番組を作るため、講談社の主催したアンケートで上位成績だった人を集めたのです。
 夜になっても出題者は現れず、スタッフの1人は姿が見えない。そして、隣のロッジから出火。意図的としか思えない火の広がりに愕然とする彼らに届いたメールには、いなくなったスタッフの殺害を示した写真が添付され……。

 直人も七海も御子柴もいつまでも登場しないので、このカメラマン女性は幸村さんの変装? などと邪推しました(笑)。
 いやいや、大丈夫。宮城県警と連携して登場します。
 今回は「組織」の連れ去りがかなり大胆で、架空取材で候補者を集め、スタッフに内通者を入れてトリックを発動、犯人解明を促してホームズ遺伝子を覚醒させるという展開が続きます。
 それにしても、似鳥さん、スケートファンなんですか? 湖の事件の語り手町田くんに「四回転できるか」と訊いていて、つい吹き出しちゃいました。わたしも町田と聞いてそのイメージで読んでいたので。
 スケート関係はいつものところ(左ページの隅)に注釈がついているのですが、若手俳人は一切紹介なしですが。
 今回の候補者たちの名前かと一瞬誤解する人がいるような気がします。

「鍵屋甘味処改」梨沙

2017-01-08 20:59:30 | YA・児童書
 前回ディズニーランドに行ったとき余りにも寒かったので、今回は万全の防寒対策をしました。でも、結構暖かかった。
 15周年のディズニーシーに行ってきました。わたしはシーは初めて。
 海底2万マイル、インディ・ジョーンズ、フライングカーペット、シンドバッド、ジャンピンジェリーフィッシュ、ブローフィッシュ・バルーンレースに乗りました。
 わたしは映像にそれほど興味がないので、「海底二万里」とか「アラビアンナイト」を読んだのは小学生版。細かいところを忘れています。ロック鳥は分かるけど。
 待ち時間がそれほど長くなかったのですが、そのとき読んだのが「鍵屋甘味処改 天才鍵師と野良猫少女の甘くない日常」(集英社オレンジ文庫)。
 人気作とのことなので、旅行中に続編を買ってもいいかなーと思って。
 あらすじを見ると、家出した女子高生が鍵師に拾われて居候。そこにどうしても開かない金庫が持ち込まれて……とのこと。
 この金庫に相続に関わる陰謀が入っていて、それを知った二人が巻き込まれながら謎を解いていくに違いない! と、わたしは勝手に予測したのですが。
 あれれれ? 淀川(鍵師)はアッサリ開錠して、持ち込んだ家族は去って行ったよ? こずえ(女子高生)は隣の和菓子屋のお姉さんと親しくなって、鍵屋で喫茶コーナーを開いてるよ? 三つめのエピソードで謎解きがでてきたけど、なんかほのぼのしてるよ? 鍵師をライバル視する幼なじみのイケメンまで出てきたよ?
 いや、おもしろかったのですけど。
 ただ、多くの読者さんがニヤリとするであろう淀川の入浴シーンとか、こずえが抱えられるところとかは心ひかれないんだなあ。わたしには「萌え」はないってことなのか……。
 写真に関わるあれやこれやはかなり好みではありますが、旅行中に続きは読まないと思います……。
 ちなみに、夕食は築地でお寿司を食べました。4時に(笑)。
 ずわいがにがおいしーい!

「マル合の下僕」高殿円

2017-01-07 19:58:06 | 文芸・エンターテイメント
 高殿さんのお仕事小説。いつも新しい世界を見せてくださいます。
 「マル合の下僕」(新潮社)。今度の舞台は、大学。
 といっても、大学の教員たちがメインです。「マル合」というのは、ドクター論文の指導ができる教授のこと。大学は、階級社会なんです。
 主人公瓶子貴宣(へいしたかのぶ)は、関西の女子大の環境学科で非常勤講師をしています。
 史学科出身の彼は、もともとは母校K大で順調にキャリアを積む予定だったのですが、ついた教授がスキャンダルをおこしたために、現在の職に甘んじています。
 所謂パートタイム講師のため、週に九コマある授業が命綱。それなのに、新しい講師に自分の履修講座を奪われそうだという噂が流れ、どうにか阻止できないかと画策します。
 貴宣は小学五年生の甥・誉と二人暮らし。この子がスーパー小学生で、成績いいわ家事はできるわ。いつも少ない予算で手作りの食事を作ってくれます。
 ある日、家にやってきたのは、誉のガールフレンドの実加ちゃん。二人に悩みを打ち明けてきます。
 義理のお父さんが帰りを待ち構えていて、靴下を脱ぐように迫る……。
 貴宣は実加ちゃんから改めて話をきき、お母さんと話すことに。
 同じ情報でも、見方によって変わるというエピソードで、おもしろかった。

 そして、学部の大ボス大和教授から、亡くなった教員の研究を引き継いでほしいと頼まれた貴宣。ところが、パソコンはパスワードが分からず、手伝っていたはずの助手は退職。かわりに来てくれたのは、授業の担当の件でライバル視していた新しい講師の川田。
 わだかまりを感じていた貴宣ですが、彼女の作業能力の高さを見直すようになります。
 そんなとき、三年前に誉を置き去りにした姉が現れ……。

 ひねくれ者で計算高い貴宣が、なんだか憎めないのですよね。
 アパートの大家・山さん一家もいい味出しています。中華料理屋さんなんですよー。おいしそう。

 で、横浜中華街に行ってきました。(すみません、強引な展開で)
 テレビで取り上げられた食べ放題の店は1時間待ちだったので、隣の龍盛飯店で、エビチリやら青椒肉絲やら二十品くらい食べましたよ。デザートのココナッツ寒天が非常に気に入りました。
 あとは、カップヌードルミュージアムに行って、アニメイト。夜ご飯は台場アクアシティでチーズフォンデュを食べました。食が細い娘が、この店ではかなり食べたのでびっくり。写真はわたしと息子が気に入ったクレソンのスクエアピザです。

 

「ニノ丸くんが調査中」石川宏千花

2017-01-05 04:49:18 | YA・児童書
 某書店では平積みにされていました。
 「ニノ丸くんが調査中」(偕成社)。表紙カバーのイメージではみもりさんの描くシーナ(地獄堂)みたいな男の子が、怖い話を集めていく感じの作品っぽい。
 作品視点の多くは、小泉今日太(……)という小学五年生です。みんなの人気者で、愛称は「きょん太」。
 隣の席のニノ丸瞑という少年のことが気になっていて、一緒に帰ったり積極的に話しかけたりしています。

 ニノ丸くんは都市伝説について調査しており、信憑性が高いかどうかを「白丸」「黒丸」で分類。
 この町にはリアルな怪談が多いようで、「記憶をなくすトンネル」「死者が戻ってくるポスト」「超能力者を連れ去る黒い服の男たち」など、ニノ丸くんのリストにはいろいろな事例が増えている模様。
 ただ、きょん太の存在で、怖い話に偏らない。
 わたしは、愛犬を生き返らせようとする二話めが好きです。
 三年生の男の子が噂を信じて、パピヨンの死体をそのポストに入れる。
 しかし、失われた命を保ち続けるためには、願った人の寿命が犠牲にならざるを得ないのです。彼は時々めまいを感じるようになり、あのとき術を使わなければよかったと後悔します。
 飼い主の思いを感じ取ったらしいパピヨンの行動が、なんともつらくて。
 うちにも小型犬がいるのでわかります。犬って表情豊かですよね。

 ニノ丸くんは大学で民俗学を教えるおじいさんと二人暮らしなのですが、きょん太が遊びにくるとずいぶん明るい雰囲気になります。
 なにしろ本人が家の鍵を取り出そうとしているのに、ノッカーを見たらつい使ってしまう。
 普段はいかめしいであろうおじいさんも、彼といると笑顔になるのです。
 「墓守のレオ」のときにも感じたのですが、石川さんは結構まんがの影響を受けているのでは?
 続編もありそうですよね。こういう連作ものは、好きな方が多いと思います。