くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「拝啓、本が売れません」額賀澪

2018-05-27 20:58:00 | エッセイ・ルポルタージュ
 結構読んではいるのです。でも、なかなか文章にならない。なんでしょうね。更年期?
 額賀澪「拝啓、本が売れません」(KKベストセラーズ)。わたしにとって額賀さんは、かなり注目の若手作家さんなんですが、本人としてはまだ納得できないことが多いらしくて、ライトノベルの編集さんやWebコンサルタントさんに取材にいきます。
 なんと、盛岡のさわや書店まで「スーパー書店員」の松本大介さんに会いにくるのです。
 本を売るための仕掛け方とかポップとか、いろいろ刺激になります。
 そのなかで、額賀さんが朝井リョウと住野よるへの劣等感を激白。自分のブラックさをさらけだすのがすごいですね。
 また、ブックデザイナーの川谷康久さんの話もおもしろくて、画像検索しまくりました。あの本もあの本も、川谷さんの装丁なんですね! 
 ラストに入っている吹奏楽小説、気になります!
 

「一〇五度」佐藤まどか

2018-05-21 23:10:11 | YA・児童書
 今年の課題図書です!
 去年はなんだかおすすめしにくかったので……。これなら興味をもってもらえるような気がします。
 佐藤まどか「一〇五度」(あすなろ書房)。中学三年生、中高一貫校に編入してきた「ぼく」こと大木戸真の物語です。 
 真は、職人だった祖父の影響で椅子に強い関心があります。自己紹介でつい話したら、「イス男」なんて言われてしまう。 
 そんな真が、図書館で出会ったのは、学年でただ一人スラックスを選択した女子、早川梨々(あだ名は「スラカワ」)。
 二人の祖父は、かつてライバル関係にあった職人ですが、お互いの仕事を認めていたことが、話をするうちに伝わってくるのが好きです。
 協力してデザインコンペに 出品することを決めたのですが、父親は真の夢に反対するし、体の弱い弟は気に障るし、時々梨々と意見がぶつかることもあるし、すんなりとはいきません。
 でも、お父さんが、デザインを仕事にしている友達から話を聞くようにとセッティングしてくればあたりが、すごくいいです。
 夢って、叶えるためには努力が必要ですよね。
 先日、講演に来てくださった方が、「大きな夢をもって、好きだという気持ちを失わずに挑戦し続けること。第一希望ではなくとも、第三希望が叶う可能性がある」と話してくださいました。
 この作品では、おじいさんからも、親に反対されたくらいで諦めるようではクリエイターとして仕事はできないと話されます。
 何もかもが大団円ではないけれど、これから先の可能性に希望がもてるラスト。
 ちなみに「一〇五度」は、椅子の背もたれの角度です。もたれかかりすぎてはいけない。お互いに、支えあっていくパートナーであることも示しています。
 二人の夢、応援したいですよね。

「葬式探偵モズ」吉川景都

2018-05-08 20:58:29 | コミック
 「お仕事です!」というまんが、知ってます? わたしは仕事上「職業調べ」の参考資料として買ったのですが、この語り口が好きで吉川さんのまんがは結構買ってしまいます。「鬼を飼う」もいいですよー。最近また読み直しました。それぞれの「奇獣」にまつわるエピソードがおもしろい。

 で、「葬式探偵モズ」(集英社)ですが。
 先日、野外活動研修の買い出しに行ったついでに古本屋で購入しました。
 百舌一郎は大学で民俗学を研究しており、葬式の形式などに詳しい教員です。
 ゼミ生の都は、様々な事件に巻き込まれ、そのたびに彼と行動をともにします。そこには隠された真実が………。

 描かれた葬式の形態はすべて実際に行われたものだそうです。
 トオヅカイと呼ばれる、死を知らせ歩く役目。「別当」が入る特別な「立棺」。葬儀を取り仕切る「組」の役割。
 「食い別れ」(葬儀で食事を出して死者の冥福を祈る)の話では、曾祖母のことを思い出しました。
 「挨拶」「憂鬱」「帰還」の三冊で終わってしまうのがもったいない! 都自身の秘密も明らかになり、「怪」で連載していたというエピソードも読みたいのですが、コミックは品切れみたいです。電子書籍買うしかないのか!?
 とりあえず、月末に「鬼を飼う」の新刊が出るそうです! 楽しみー!

「サトコとナダ」ユペチカ

2018-05-07 21:02:51 | コミック
 サウジアラビアからの留学生ナダと、ルームメイトになった日本人のサトコ。アメリカを大学に通う二人の生活を描いたまんがです。
 以前、紹介文を読んで気になっていたのですが、図書館で借りたらすごいおもしろくて、自分でも欲しくなってしまいました。
 ユペチカ(監修西森マリー)「サトコとナダ」(星海社)。三巻まで出ています。
 様々なニュースで話題になるムスリムの方々。マララさんの本を読んだときには、女の子の教育が脅かされていることとか、武力による支配が目につきました。
 でも、この本では、諸外国の視点だけでは気づかない、彼女たちの思想が感じられるのです。
 ニカブ(目以外を隠す衣装)を着るということに、わたしたちは不自由さを感じがちですが、ナダは「もちろんこれを着てるとムスリムとして反応されてしまうわよね。でも……女として対応を変えられることはないの」「綺麗な人が得をする世界でしょう、ここは」と語ります。
 ニカブは彼女にとって「盾」。外では見せないのに、髪のケアもしっかりしています。隠すなんてもったいないというサトコに、「綺麗だから隠すのよ」「隠れているからこそ手入れは念入りにね」と答える姿に、信仰とか民族とか文化とか、そういうものが息づいていると感じました。

 文化の話題がおもしろくて。
 日本のアニメが翻訳されているそうですが、「進化」はご法度なので「友達を呼ぶ」設定になっているそうです!
 肌の露出があるような戦闘シーンは、音声だけでその間絵は静止しているというのも。
 そういえば、わたし以前イタリアで「巨人の星」を見たのですが、飛雄馬が「トミー」と呼ばれていましたね……。(それ以外の言葉は分かりませんでしたが、もっといろいろ設定があったのかしら?)

 サトコの友人ケビン(漢字で書いてという頼みに、サトコが書いたのは「毛瓶」……)は、日本でALTになりたいそうです。でも、外見がアジア系のため、採用されにくいのではないかと悩んでいます。ビジュアル的に白人とか黒人のように「英語を話しそうな人」が有利だと言っていました。
 わたし、アジア系のALTさんと勤めたことありますよー。留学していた時期に友達とファミレスに行くと、自分に注文を聞きに来られて困ったとか。最近は増えているんじゃないかな? 息子の学校にも中国系のALTさんがいましたよ。
 
 つい繰り返して読んでしまう「サトコとナダ」、おすすめします!
 次巻で終了だなんて、さみしー。でも、早く続きが読みたいなあ。
 

「あやかし草紙」宮部みゆき

2018-05-06 05:37:18 | 時代小説
 ほぼ一ヶ月、更新も何もせずに生活していました。読んではいたんですけどね……。携帯替えたので慣れないのと、予測変換のテンポが合わなくて気づいたら変な文章になっていたりするのと、四月はどうしても忙しいのと、そんなこんないろいろです。

 「あやかし草紙」(KADOKAWA)、「三島屋変調百物語」の新刊です。第一部完とのこと。
 というのも、おちかが嫁に行くからです。このあたりのことは、以前宮部さんのインタビューで読んでいたので(今回「宮部みゆきの江戸怪談散歩」で新しいものと一緒に再録されています)、予想はしていましたが、うーん、わたしの読解力に問題があるのか、地の文がいうほどおちかに「熱」を感じないというか……。
 まあ、それはともかく、視写する人の運命をあからさまにする本の存在には身震いしました。
 宮部さんの作品は「家」に関わるものが多いですよね。今回も「開けずの間」が怖い。霊的な怖さよりも、欲の深い怖さ。また、「面の家」も性根の悪い娘の語りに苦いものを感じました。
 「金目の猫」は、可愛い感じのふわふわしたものが現れるのでほっとしますが、なんだかやるせないものもありますね。
 今回、「江戸怪談散歩」も買ったので、「曼珠沙華」も読み返しました。
 このシリーズ、新刊のたびに既刊を読み直したくなります……。わたしは全部単行本で買ったのですが、一冊めだけ前の学校に寄贈してしまったのですよ……。
 買い直すべきでしょうか。(前回は図書館で借りました)