くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「くるねこ」9

2012-03-31 21:08:47 | コミック
 やはー。9巻い買ました。特装版だもん。近くで売ってなくて古川まで探しに行きました。三軒めで発見。よかった。途中道を間違えて、やたらと狭い袋小路に入ってしまい、五分かけて脱出しました……。本屋に着いても心臓ばくばくです。でも、売ってないとそのほかの本をチェックする間もなく次の本屋に。
 一軒めでは特装版がないかどうか調べるわたしのすぐそばで、小学生の男の子とお母さんが、
「買おうか?」「でも、これ特装版じゃないよ」という会話を交わしており、やっぱり「くるねこ」好きの子はうちだけじゃないねーと実感。でも、そのまま次の本屋に行きましたけどね。
 ところが、帰ったら二人ともお友達の家に遊びに行っていて。「くるねこ」を自分が先行して読むのは初めてです。いつもは娘から。
 やがて帰ってきた子供たち、色めき立って読みたがりますがわたしも全部読まないうちに譲ることはできません。
 ウチの子たちがはまりはじめたのは8巻出版後のことなので、ネットチェックもその後からです。今回は、ブログで見た回も結構あって、なんだか妙に得した気分に。でもやっぱり、パソコンで見るのと紙媒体は違いますね。スクロールで見ていた分がまた新しい見方をさせてくれるというか。
 息子の心をとらえたのは、「もんさんでいってみよう、ポケモンさん」ですかね。ぼんにいがなんだかいたいけな感じがしました。
 付録として「中国嫁日記」の筆者とのコラボまんががついていて、お互いにさっぱりほめあっていないところが何とも言えません。くるさんは、旦那さんが自分の本の感想を話してくれないに、こちらの本は車の中でも読むと文句言っているし、むこうは中国人のお嫁さんが「くるねこ」しか読まないと語り、さらにはぼんのことを「黒ぼん」と呼んだり。
 とにかく、この巻もとってもおもしろい。カバーも可愛いし、その下も凝っていますよ。
 仙台放送は まだかなり昔の内容を放映しています。声は小林聡美、実家にチビが貰われぬていく辺り。
 DVDもかっちゃおうかな~と思ったら、どこにも売ってない。通販か? 
 娘が猫を買いたいと言ってましたが、実家の猫もさわれないようでは無理でしょうね。今から十巻が楽しみです。

「無菌病棟より愛をこめて」加納朋子

2012-03-28 21:40:33 | エッセイ・ルポルタージュ
 仙台の書店にて加納さんの新刊を発見! は、嬉しいのですが、なんと白血病を宣告されて入院されていたのだとか……。この闘病記「無菌病棟より愛をこめて」(文藝春秋)、読んでいていろいろいろいろ考えさせられました。
 何度か書いていますが、わたしの友人みえっちさんは悪性リンパ腫で亡くなています。彼女闘病の様子が、この本を読んでいると思い出されてならないのですよ。
 治療中の食べ物のこととか、髪の毛のこと、身体のむくみ、口内炎、発症の様子もよく似ています。わたしたちは手紙のやりとりをしていたのですが、治療の辛さがよく書いてありました。
 もっとお見舞いに行けばよかった。今になってそう思うのも申し訳ない話なんですが。
 加納さんがお友達と会うことでかなり励まされるのが分かるのです。みえっちさんもブログに、わたしと会った日のことを「ともたちパワー」と書いてくれました。残念ながら亡くなった後しばらくしてブログも閉鎖されたのですが、つながらないと分かっていてもリンクは外せないのです……。
 息子も血小板が減少して治療を受けたことがあり、語られる病棟の様子はよく分かりました。点滴につながれているので、バッテリーが切れそうになると警告音が鳴るんですよね。大急ぎで病室に戻ったこともよくありました。
 加納さんはこの点滴を「テンちゃん」と呼び、管だらけの入院生活をユーモアを交えて語るのです。辛いことがそれは山積みでしょうに、物書きとして綴らずにはいられない性のようなものに動かされる気持ちが、伝わってくるのです。
 白血病というと、若い人が闘病するイメージだと言い、同じ時期に入院している子たちは「ちゃん」づけで自分だけ名字だと嘆いたり。
 家族の皆さんの様子もとてもあったかくて、頼りになるお姉さん、移植のためにストイックな生活をしてくれる弟さん、まんがを貸してくれる妹さん、心配しているお父さん。そして留守中の家事を引き受けてくれるお義母さん。何よりも貫井さんの支えが心にしみました。文学賞の授賞式も欠席し、ふとした言葉からもお二人の絆が感じられます。子供さんは男の子?  「炎が消えたよう」という台詞につっこむのが個人的には好きですね。
 具合が悪くても連載まんがの続きが気になったりテレビがアナログであることに疑問をもったり、味覚障害でどんなものならおいしく味わえるか試したり。入院患者なのにやたらと元気がよかったり。
 弟さんが骨髄ドナーになってくれたこと、無事に成功したこと、本当によかった。読みながら、みえっちさんが移植後肺炎をおこしてしまったことが、頭のどこかに引っかかっていて、ふと寂しさが突き上げます。血液がキメラ状になっているという説明も当時聞きました。
 「七人の敵がいる」、文庫になりましたね。ドラマにも。時間は流れているのだなと思いました。わたしは幸い入院経験は出産時しかないのですが、フロッグスがいいという情報は覚えておこうと思います。このまま何もないといいんですけどねー。

「僕のお父さんは東電の社員です」その2

2012-03-26 19:34:03 | 産業
 決して少なくない数の子供たちが、悪いのは原発の設置を許した福島県であると書いています。いや、でも、分かっているんですよね? 原発があるのは福島だけではなく、日本中にそれこそ五十基以上あるんですが。同じように計画段階で受け入れた県に対しては? 同じように悪いのか、それとも地震で壊れたのはこの原発だからこその限定なのか。さらに、「東北の人が悪い」と書いている子もいて、相当遠くに住んでいるのか、電力会社の管轄地域で一緒にしてみたのか。
 ただ、東電に非難が集まるのは、原発が壊れたこともありますがそれ以上に、震災での対応がよくなかったからだと思うんですが。そりゃ、もともと原発がなければ事故もないわけだから、そう考えるのも仕方ないかもしれないけど、原因と結果を取り違えてはいけませんよね。
 わたし自身は、原発には長いこと不信感をもってはいました。原発施設で働いていた方が亡くなったお葬式で、息子さんが泣きながらお別れの言葉を読んでいた、あの場面は忘れられません。そのこともあって、社会の先生が後年原発問題の授業をするというので「パエトーン」(山岸凉子・角川書店)を紹介しました。授業後、ある生徒が
やってきて、「わたしのお父さん、女川原発で働いているんです」と言われたと複雑な気持ちを話してくれました。
 東野圭吾も、「天空の蜂」で原発問題は考えるべきことだて書いていたと思いますが、まず考えなくてはならないのです。でも、時がたつうちに、なんだか原発は「クリーン」なイメージをどんどん増していったのですよ。地球温暖化だから二酸化炭素の排出が少ないとか宣伝もしていましたよね。(実際には他の発電と比べてそれほどの違いはないと、森さんは言います) これがプロパガンダなんでしょう。
 わたしたちは、何を選択すればいいのか、それを判断するための情報が原発問題では不足していると思うのです。別に意図的に隠しているわけではなく、まだ分からないことの方が多いから、利益を期待してハイリスクであることから目をそらしてしまう。
 わたしたちが後世に残せるものは、もっと安心できる世界でなければならないはず。三十年前に比べて、便利な世の中にはなりましたが、なんだかいろいろ欠けているような気がするのです。

「僕のお父さんは、東電の社員です」毎日小学生新聞+森達也

2012-03-25 19:26:13 | 社会科学・教育
本屋で最初に見かけたときから、ずーっと気になって仕方ないので、買いました。「僕のお父さんは東電の社員です」(現代書館)。毎日小学生新聞に投書されたある手紙をもとに、読者からの意見を募ったものがメインで、それをもとに森達也が考察する構成。東電の責任を考える旨が書かれたコラムをきっかけにして、東電の責任は追及されるものではあるけれど、原発を作るための需要は国民の生活状況と密接な関わりがあるはず。みんなで話し合って解決することはできないのか、と、お父さんが東電に勤めているという少年が手紙を送ったのです。
編集部はこの少年を「ゆうだいくん」と呼び、彼の考えに対しての意見を募る。そうしたら、小学生のみならず中学生や大人まで実にたくさんの人が投書してくれたんですよね。
 形式として、とてもおもしろかった。とりあえず内容のことは後で述べますが、テーマに対して多様な立場の人が意見交換をするというディスカッションの模様が書籍として展開するのが興味深いのです。東電に関してのことだけをとっても、彼の立場に賛成する、反対する、部分的には賛成とか、ちょっと視点を変えてとかいろいろスタンスがあるのですよね。 
 中にはみんなで作文を書いたクラスもあったようで、授業者として魅力的な題材だという点で共感できます。内容が似通ってしまう傾向はあるけれど、書き方を学ぶにはいい教材だとと思います。その視点で見ると、実に書き慣れない感じといいましょうか、初歩的なミスが結構見られます。
 まず、「なので」の多様。社会的に認識された感があるせいか、これをとがめだてる指導者は減っているようです。でも、作文を書く上では文頭に使うのは意識して避けさせないと。それから、「危険だと分からなく、」のような書き方。「ない」を「ず」に言い換えない文が増えていることも。全体的に原稿のあからさまな誤り(主語述語のミスとか誤字脱字とか)は編集部が直しているはずなので、ちょっと気になるような表現が目につくのかもしれません。作品からは外れますが、ニュースソースが偏っているのも、小学生らしいかな。目立ったのは「節電」と「ひまわり」ですか。
 続きます。

「風の生まれる場所」小瀬木麻美

2012-03-23 17:04:49 | YA・児童書
 小瀬木麻美「風の生まれる場所」(ポプラ文庫ピュアフル)。「ラブオールプレー」の続編です。とてもおもしろかった。主役はバドミントン界のスーパースター遊佐賢人です。結構「イイ性格」の彼ですから、どうなるのかと思っていましたが、前半は前作とのつながりがすごく多くて、あらすじ紹介のようでした。(細かいところで忘れている部分が多かったので、思い出すにはよかったのですが、続けて読むにはくどいかも)
 横川くんがやっぱりいい。ダブルスの芸術的なゲームメイクに感心しました。遊佐をシングルスで生かすために、自分がどう動くのかをきちんと考えている。
 バド部顧問だったことがあるので、動きがよく見えて楽しいです。試合のシーンがいいよね。ただ、技の名前がわからない人にはちょっときついかな。「ハイクリヤー」とか「ヘアピン」てどんなショットかとか。学連のシステムがわからない人には「五部」って言われてもイメージがわかないかも?
 今回わたしにとってほっとしたのは、輝くんの動きでした。コートに立たない主将だけれど、ゲーム分析やスコアの記録で貢献する。そんな彼が東大生として大会に出場している姿に、胸が熱くなりました。
 わたしは運動神経に自信がないので、どうアドバイスするかは考えたつもりです。コートのラインを紙に書いて、ショットの決まった場所に○をつける。攻撃パターンとかコースとか、結構癖が出るものなんですよね。他校ではどのようにミスをしたのかなどチェックしている人もいましたが、わたしはサーブのミスとネットだけ正の字で集計していました。データの生かし方、団体戦では重要だと思います。
 さて、今回もう一人あげるとすれば松田くんの行動もよかったと思うんです。もうバドはやめると言っていた彼が、自校のバドミントン部をどう活性化していくか、すごく楽しみ。やる気はあるのに今ひとつ上に上がる方策を知らないチームを、新入生が押し上げていく。好みです。
 チームの一人一人や雰囲気がすごくよくて、彼らのつながりが心地いい。欲をいうならばちょっとラブコメな部分(梓ちゃんとか)は説明じゃなくて描写してほしいところですが、そうなるとバドミントン小説から離れちゃう気もするのでこれでいいのかな。
 テーマになるはずの賢人の故障についてももうすこしほしかったような……。
 今度は岬省吾主人公で、水嶋との大学生活の様子希望(笑)

「金魚屋古書店」「あやし」など 最近読んだまんが

2012-03-22 04:49:28 | コミック
突然ですが、わたしはまんが単行本のカバー下は必ずチェックします。最近、こった装丁の、ものが多くて楽しい。例えば有名なところで「大きく振りかぶって」。「ちはやふる」も数冊に一度ちょっとした遊びがありますよ。
だから、書店員を目指すほどにこのまんがに感銘を受けながら、一度もカバーをめくってみようと思わなかったらしい樋口さんに驚きです。
しかし、もっとショックだったのは、この話に登場した「ひまわりさん」(メディアファクトリー)が、全く好みではなかったことでしょう。二冊一気に買ったのにー。わたしは書店が舞台というだけではおもしろさを感じないんでしょうね。本が好きという情熱がそれほど感じられず……。残念です。
あ。すみません、冒頭のまんが芳崎せいむ「金魚屋古書店」(小学館)です。十三巻。
今回は実力のある書店員さんだった女性(ゆかりさん)が、自分のセンスで棚を一つつくるように話します。まかされた新米書店員の樋口さんがディスプレイした棚にこのまんががあって期待したんですが。(そのほかの紹介本は結構読んでいたんですよ)
でも、コーナーの展示にはわたしもそれなりに主張が必要だと思うので、ゆかりさんの考えは刺激になりました。
それから、「マスターキートン」を読みたくなりました(笑)
それから、この本と一緒に買った「あやし」(角川書店)はすごくよかった。宮部みゆき原作・皇なつきまんがです。皇さんのデビュー当時から好きだったので(「李朝暗行記」すばらしい)、和風も魅力的だと思いました。作品世界を再構築する力はやっぱりすごい。空気が共通しているなーと感じました。
「日本人の知らない日本語3」もよかった。ちょうど踊り字とか外来語の話をしたあとだったので非常に親近感がありました。学級文庫に置いてたら誰かが借りっぱなし(そのまま卒業……)になってしまった1も、買い直しましたよ。
それから、今注目は芳家圭三「壊れた仏像直しマス。」(芳文社)。すごくおもしろかった。背表紙とタイトルで買ってみたんですが当たりだと思います。飯泉太子崇さんの本を参考にあげられていますね。納得です。

「アネモネ探偵団」近藤史恵

2012-03-21 19:44:37 | YA・児童書
近藤史恵「アネモネ探偵団」(メディアファクトリー)です。三冊めは「ねらわられた生女学院」、主人公細川巴ちゃんです。
ああ、この文を一体何回打ったでしょう。携帯のメールソフトで原稿を作っていたのですが、スマートフォンにかえることになり、どうしてもコピー機能が使えないとあって閉口していたのです。ここもなんだか中途半端なままになってしまい、がっかり。 
実生女学院では突然体育の授業が中止になり、隣の実生中学では携帯やカメラの持ち込みが禁止されます。カメラマン志望の時生は妙な疑いをかけられて職員室に呼び出され、おじさんがカメラマンの光紀も平静ではいられません。
そんな中、巴の家におばあちゃんがやってきます。八十七歳。巴のお父さんは警視総監なんだからそうでしょうね。
わたしの祖母も生きていれば同じ年。ちょっとしみじみしました。(祖父は元気ですよ。九十過ぎてます)
このおばあちゃんが古い布で座布団やお手玉を作ってくれるんですよね。で、なかでも楽しいのは男装して実生中学に潜入使用と計画する智秋たちの女の子体型を、タオルやさらしでカバーしてくれるところですよね。なんと、おばあちゃんは若いころ歌劇団にいたんてすって。
このおばあちゃんと時生や光紀が知り合いになり、巴の家とは知らずにやってくるところもいいなあ。光紀はお母さんの作ってくれたお汁粉の味が忘れられないのです。(お汁粉は近藤さんの得意料理だそうですよ)
五月ちゃんという友人のお父さんが、新薬の制定に関わっていることが語られますが、マスコミへの取り上げられ方などに、リテラシーについての考察があるように感じました。

「女王さまがおまちかね」菅野雪虫

2012-03-19 21:48:54 | YA・児童書
スマートフォンに変えました。どうすれば記事投稿ができるのか試行錯誤すること3日。な
んとか正解にたどり着けそうです。
今回は菅野雪虫「女王さまがおまちかね」(ポプラ社)です。おもしろかった。前作がちょっと好みではなかったので躊躇していたのですが、これは等身大の小学生三人組のチームワークがよくて楽しめました。
テーマも、小説を書くとはなんぞや、ということで、本好きには興味深いのでは。
小学生対象の小説コンクールで賞をとったゆいはレストランの娘。「密林のマヤ」というシリーズが大好きでそれに感化されて書いた小説でした。今年出版されるはずの「マヤ」最新巻がなかなか出なくてやきもきしていたら、同級生の現から、どうやら作者のキリヤさんが「女王さま」にさらわれたらしいと言われます。
女王さまは、世界中のおもしろい物語を収集しているらしく、文壇ではさらわれるのがステイタスみたいになっているとの噂。現はゆいにおもしろい話を書いて女王さまに接触することを提案します。
この女王さまのお城がすごいんですよー。天蓋つきのベッドとか豪勢なお食事とか、考えたことがそのまますらすら書ける羽根ペンとかあるの。友人の荒太はそのペンで冒険活劇を書いちゃったり。
そして、ゆいはお城でキリヤさんと出会います。なぜ「マヤ」の物語は完成しないのか。この環境の中で何がたりないのか。
なんとなくわかる気はします。ただキリヤさんて、百年に一度のストーリーテラーと言われた人なんでしょう? その割には文書を直してもらったり失意で書けなくなっちゃったりすりるのは過大評価なのでは。
読書感想文についての考察もあり、小技が結構楽しい。こういうポップな児童書いいですよね。

「プリティが多すぎる」大崎梢

2012-03-16 20:19:02 | 文芸・エンターテイメント
お仕事小説でーす。雑誌編集者が主人公。週刊誌から中学生の少女向けファッション雑誌「ピピン」に異動になった新見佳孝は、それまで全く自分とは縁がなかった雑貨とかドレスとかリボンとかに関わるようになっていくんです。
自分が中学生のときって、どうだったかなーと考えたら、「中一コース」だか「中一時代」を読んでいたかな。「メル」という雑誌も読んでいたような(簡単な料理なんかが載っていた気がします)。あとは「なかよし」「りぼん」「月刊スポーツアイ」……。いっぱい読んでいたのですね。基本的には友人との貸し借りです。
大崎梢「プリティが多すぎる」(文藝春秋)。
「女の子はPが好き」というキャッチフレーズで、業界トップの売り上げを誇る「ピピン」ですが、これまで全く縁がなかったために恥ずかしくてしょうがない佳孝。しかも、名字のためかほかの編集者たちからは「南吉くん」と呼ばれるようになってしまう。
ドレスのフリルが二段か三段か。そういうことを真剣に話し合うほかのメンバーにもついていけないし……。
しかし、だんだんと編集部の体制になじんでいく佳孝です。さらに、「ピピモ」と呼ばれる少女モデルさんたちがすごくかわいい。
いや、もちろん活字ですから、彼女たちの容姿が具体的に見えるわけではないですよ。でも、トップのキヨラちゃんや気さくなジュリちゃん、新人モデルのサホちゃんなど、透明感があって頑張り屋さんの姿がイメージできる。
彼女たちの頑張りとか、契約に関するトラブルとかを通して、佳孝が自分の場所を見つけていく。同じように前の週刊誌の同僚のよさにも気づきます。
これからのびしろのある女の子を発見する力がある副編集長や、元はモデルのイチコさん、ほかの作品にも登場した作家さんも。
続きもあるのかしら。楽しそうで期待大です。

「恋愛検定」桂望美

2012-03-15 05:42:52 | 文芸・エンターテイメント
タイトルだけみると、恋愛小説みたいですよね。「恋愛検定」(祥伝社)。
でも、桂望美ですから、ふっと外しがくるだろうとは思っていました。
ふはは、スーツを着た「恋愛の神様」が現れて、その人の恋愛力を量ってくれるんだってよ。四級からマイスターまであって、資格を持っている人は称賛される。お見合いや結婚でもアピールポイントになるし、コミュニケーション力があるとして昇進することも多いのだとか。
でも、上級試験を通ったからといってモテモテというわけではありません。お見合い相手が三級をもっているとか、持っている人とそうでない人で同じくらいの離婚率という場面も出てきます。
わたしとしては、この資格あんまりありがたくはないような気がするんですが。そもそも「恋愛力」とはなんぞや。結局そのときの人と添い遂げるわけではないんですよね。
さらに準一級まではおもしろく読んだんですが、その上の級のエピソードを忘れ果てています。読み直しましたが。
うーん、一級受験の女の子の人となりを考えるに、優秀な恋愛力をお持ちとは思えない。
基本的に恋愛が人生の第一義という人とは仲良くなれないタイプなんです。
で、前後して石神賢介「婚活したらスゴかった」(新潮新書)も読んだんですが、これがなんだか意外なほど共通点があるような。
こちらは四十代で離婚経験ありのライターさん。ネットだのパーティーだの、出会いを求めて参加するのですが、百人を越えて今も婚活中とか。
桂さんの小説の方は、当たり前のように若い男女しか登場しません。でも、どうなんでしょう。検定の受検資格に年齢制限はないよね。既婚なのに突然「落ちる」人とか、石神さんのようにバツイチの人も恋愛を求めることはあると思うのです。
資格をありがたがる(その資格を取ったときの相手とは破局していても)というのは、桂さんの諧謔なのかなと思いつつも、主人公たちにうまくいってほしいようなそうでもないような。
成就すればいい、というものでもないようです。実際に思いを告げたところで検定終了という人もいました。
でも、メールを送るのはやっぱりこの次で、なんて思っているとハズレのブザーがなったり。
知人にものごころついたときから彼氏がいなかったことはないという方がいて、遠距離恋愛、破局、失意でふらふら歩いているときに通りがかった男性が次の彼氏になったと聞いてあまりの凄腕ぶりにぶっ飛びました。
わたしは恋愛体質ではないと思うので、この検定には挑戦したくないですね。
でもさー、普通落ちても何度かチャレンジできるものでしょ、検定って。この場合可能性としてはどうなの? 違う神様が現れるの?