くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「昨日の海は」近藤史恵

2015-10-27 07:18:50 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 わたしって、もうこういう小説では親の世代なんですね……。
 主人公光介は四国に住む高校一年生。母親夢の姉、芹が娘の双葉を連れて帰ってくることになり、少し困惑します。
 芹は、自分の両親が亡くなったときのことを知りたいと光介に話します。二人は夢が高校生のころ、海で心中したのだと聞いていました。しかし、芹はどちらかが睡眠薬を飲ませて、海に背負って行ったらしいと語るのです。
 両親を失い、噂と中傷の中で、夢は高校を卒業。夫とは高校の同級生です。夢は四十一歳。卒業後東京で働き、夢を援助した芹は、多分わたしと同じくらいでしょう。(近藤さんも同じ年ですからね)
 祖父の写真に写る祖母は絶世の美女。しかし、ヌードがメインのために写真集などは家に残ってはいません。
 写真に興味を持ち始めた光介は、芹に紹介された中古カメラ店を訪ねます。

 海の美しさと容赦のなさを運命と重ねる構成の巧さ。さすがは近藤さんです。
 普通の高校生である光介が、祖父のことを知るために単身東京に向かうところや、友人の絵理香が店のシャッターに絵を描くあたりもとても好きです。双葉が犬を飼うところもね。
 読み終わって真実を知ったとき、これは夢の話だと思いました。特に「ちゃんとしてない家って、もっと恐ろしいものなのよ」というせりふが。

映画「図書館戦争」

2015-10-26 19:16:41 | 〈企画〉
 先日、夫がビデオに撮っていたドラマ「図書館戦争」を見たのです。まりえちゃんの回。小牧さん役の俳優さんがえらい格好よくて、思わず検索してしまいましたよ。田中圭さんとおっしゃるのですね。
 ということで、本日代休が重なった夫と映画を見てきました。
 パンフレット買ったのですが、なんだか人物紹介にまりえちゃんとか郁の両親とかが紹介されていて、一抹の不安がよぎります。
 もしやこの映画館、周回遅れで前のシリーズをやっているんじゃないよね?
 今回、撮影には宮城県図書館が使われていて、「ことばのうみ」(県図書の広報紙)にそのことが取り上げられていました。さらに、地元紙によれば、俳優さんたちが映画フィルムを寄贈してくれたそうです。館長さんのお願いで、メインに使われた広場に「カミツレ広場」という愛称を考えてもらったということも書かれていました。
 いやー、県図書、あんなふうに使われたんですねぇ!
 エスカレーターと平行する階段も、あの本棚も、さらにバックヤードも映画の中では非常に効果的だったと思います。
 わたしがこのシリーズを読んだのは、もうずいぶん前なので、細部は忘れています。手塚兄(ドラマのラストに登場したのはインパクト大でした!)は何を狙っていたんだっけ? この闘争はどうやって終結したんだっけ? 
 まあ、その分、楽しめました。
 堂上と郁の最後のやりとりがすごくかわいい。笑ってしまいました。
 で、やっぱり岡田准一さんがえらい格好よくて! アクションシーンなんて魅せますよねー。
 わたしはデビュー当時ワールドカップバレーの応援キャラクターとしてV6を知ったのですが(当日なぜか5人しか来ていなかった)、二十年経ってこんなに存在感のある俳優さんになるとは。
 そのあと寄った書店に、岡田さんのカードカレンダーが置いてあって、思わずいただいてしまいました。格好いいよねぇ。

「ぼくの地球を守って」日渡早紀

2015-10-25 19:42:07 | コミック
 「ぼく地球」ですよ、「ボクタマ」。
 白泉社文庫で読みました。こうやって一気に読んでみて、ああそういうことだったのね、と思うことが結構ありました。
 ありすって、ずいぶん前から輪が好きだった感じですね。
 なかなか彼女が覚醒しないことも意外でした。
 わたし、高校時代ずっと花とゆめを買っていたので、この連載はリアルタイムで全部読んでいるんです。だけど、細かいところを忘れているなー、と思ったのですが、今思い出しました。貸す友達の順番が決まっていて、次々回っていくんだけど、最後の子がなかなか返してくれないため、さらっとしか読んでなかったのですね……。
 まあ、わたしは当時「ぼく地球」が好きではなかったため、返ってきても読み返さないでしょう。
 「記憶鮮明」のような短編が好みなので、なんだかやたらと引き伸ばしている感じが強くて。
 だいたいコマ割がどんどん大きくなって、ストーリーが動かない。
 だから、やっと今更理解できました(笑)。
 でも、木蓮ってちょっと裏表ありすぎではないですか……。
 両親がキチェを失ってもいいと思うほど愛し合ったこともあって、自分も恋人と結ばれて現在の地位から逃れたいと考えるあたり、とっぴすぎてついていけないのですが。
 それまでの描写が、男たちサイド(紫苑とか玉蘭とか)だったから?
 ただ、紫苑を救ったと思われるせりふが、彼女からみるとまるで違うというニュアンスは、さすがだと思いました。
 次世代サイドの続編もあるとのことですが、うーん、怖いもの見たさと似たような印象を受けるのですが。

「魔法をかける」原晋

2015-10-18 16:24:31 | 芸術・芸能・スポーツ
 この本が出たとき、すごく読みたかったのですが、この度図書館で検索して借りて参りました。原晋「魔法をかける アオガク『箱根駅伝』制覇までの4000日」(講談社)。
 すでに「逆転のメソッド」を読んでいるので、だいたい内容は同じなんですが、どうもこっちのほうが偉そうな感じがします(笑)。坂口さんや悪口を吹き込んだOB氏のこととか。
 でも、選手育成イコール人間教育と思っているところや、独自の考え方がおもしろかった。
 チャラチャラ見えるけど本質的にはまじめな子を活躍させたい感じも、やはり従来の駅伝監督にはない考えだと思います。
 ところで、原監督が幼い頃に興じたという野球のような遊び、全国的には「ろくむし」と呼ばれていると書いてあって、それにわたしの記憶を刺激されてしまいました。やったよねー、そういう遊び! でも、「ろくむし」じゃなかったな……と、三日くらい考えて思い出しましたよ。「ろくもん」と言っていました。懐かしいなあ。
 それから、本屋さんで今、大学駅伝の雑誌が売っているんですねぇ。選手名鑑もついていました。わたしが応援しているのは、日体大の三浦くんです。中総体の応援に行ったとき、三千メートルをダントツで走っていた姿が忘れられません。去年の都道府県駅伝の記事が「ひとめぼれスタジアム」に飾ってありましたよ。
 大学駅伝のおもしろさ。最近はなんとなくしか見ていないな……と反省しました。でも、学連選抜が活躍した年は覚えていますよ! あれも原監督の手腕だったのだなあ、と思いました。

「高峰秀子の人生相談」

2015-10-17 09:21:51 | 哲学・人生相談
 「二十四の瞳」を見て、高峰さんの凛とした姿に惹かれました。著作を読もうと買ったものの、やっぱり買っただけで満足してしまう。
 で、「高峰秀子の人生相談」(河出書房新社)です。
 すごくおもしろかった! 人生相談って、答える人のスタンスが重要だと思うんですね。高峰さんは自分の意見を率直に書かれていますが、そこに至るまでに言葉を選び、じっくり考えていることが伝わってきます。
 親子、兄弟、夫婦、友人など、様々な人間関係の悩みが紹介されていますが、この初出はもう二十年ほど前なのです。携帯電話はありません。でも、こういう悩みは今も共通していると思います。古びていない。
  高峰さんのような考え方、おもしろいと思いました。それに、励まされる。旦那さんや斎藤さんとはどう過ごしていたのでしょう。高峰さん個人にも興味がわきますね。

「ぶたぶた洋菓子店」「ぶたぶたは見た」

2015-10-14 02:52:33 | ファンタジー
 先日、I図書館に行ったら、「ぶたぶた」シリーズ全部入っていた!
 わたしはかつての勤務校にこのシリーズを買った分だけ寄贈してきたので(徳間デュアルだけ何冊か残していますが。入手するの大変だったんだもの)、読み返すということがない。
 最近、結構早いペースで出版されるので、気になるジャンルのときしか買わないと心に決めたのですが。
 こうやって、全部揃っていると嬉しいよー。
 早速借りることにしたのですが、実際読んでいない本がどれなのか迷ってしまいます。とりあえず四冊借りましたが、今回はまず「洋菓子店」から。
 彼の料理の実力は折り紙付きですが、いやー、わたしも「コション」に通いたいです! ぶたの顔がついたマカロンとかマドレーヌとかシュークリームとか。どれもおいしそう。
 お菓子教室やスペシャルケーキなどの企画も楽しそうです。
 しかし、ぶたぶたにケーキづくりのアドバイスをもらう高校生三人組の一人が「岸利融」(キシリトール)なのはびっくりです。おじいちゃんがお茶問屋さんなのでものすごくおいしいお茶が淹れられる。だから、ケーキでも日本茶。
 「帰ってきた夏」が個人的には好きです。なんかラブコメでした。
 会社で窮地に立たされた中で、相手にやり返したあと退職して帰郷した倫子。友人からお菓子教室に誘われても気が向きません。そこに現れたのは飲み仲間だった小久保。どうやら倫子を追って転勤してきたようですが……。
 
 「ぶたぶたは見た」は、ワイドドラマ仕立てでした。
 主婦の苑子は交通事故で入院することになります。心配なのは家事。夫も子どもたちも全く家のことができないのです。
 しかも、苑子につきまとうおじいさんがおり、もしかしたら彼が事故の原因となったのではないかという疑惑が出てきます。
 そういう謎解き的なところもおもしろいのですが、なんと苑子さん、わたしと同じ年なのよー! まだ小中学生の子をもつ身として、なんとなくショックです。(彼女の息子は大学生)
 
 あと二冊は返却日までには読み終わらない気がするのでまた今度。

「雲は湧き、光あふれて」須賀しのぶ

2015-10-13 19:46:10 | YA・児童書
 オレンジ文庫、売り方が上手いですよ。
 書店でスポーツ新聞ふうに構成されたペーパーを配布していたんです。高校野球を取り上げる感じの配置、なかなか侮れない。
 「ピンチランナー」「甲子園への道」「雲は湧き、光あふれて」の三編。わたしは表題作がいちばんよかった。
 あらすじを読んだときには「ピンチランナー」に惹かれたのですが、なかなか読み進まない。だって、超高校級バッターの専門代走になる話と聞いたら、その二人でどんどん活躍していく試合がメインだと思いませんか? それなのにそこまでのやり取りで終わってしまったので。わたしの好みの問題なのでしょうけれど、展開がわかってしまうと物足りない。
 「甲子園への道」も、キャラ読みなのかなあ? 月谷くんの造形や「ムンバレメガネ」とか、記事の書き直しとか小道具はおもしろいのですがいまひとつ乗り切らない。
 なぜ主人公が甲子園取材記者にこだわるのかも、なんか腑に落ちないというか……。
 でも、表題作は後半涙が出そうになりました。天才ピッチャー滝山への羨望、戦争が激化していく中での練習、憧れだった沢村投手が戦地で肩を壊したことを知ったかなしみ……。
 おそらく、主人公鈴雄太は、昭和の元号と同じ年くらいではないかと思います。そう遠い出来事ではない。
 甲子園に流れるこの曲、わたしの耳にも聞こえ続けているように思いました。
 わたしにも、甲子園に出場してマウンドに立った教え子が二人います。彼らや周囲の人の思いを知らず知らずに重ねて読んでしまう。
 この本を読んで、地方大会から高校野球を見ようと思ったという書店員さんの声が、例のペーパーに紹介されていましたが、わたしにとってはむしろ地方大会の方がメイン。どのチームにもドラマがある。そう感じさせられました。

「中野のお父さん」北村薫

2015-10-11 16:20:18 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 北村さんとお嬢さんが愛猫を紹介している記事を読んだことがあります。確か中高生くらいの時期。もしかしたら、あのお嬢さんも主人公美希と同じくらいの年齢になっているのでしょうか。
 「中野のお父さん」(文藝春秋)。北村さんお得意の「日常の謎」を扱った連作です。美希は「小説文宝」の編集者ですから、文学に関する謎もたくさん紹介されています。
 尾崎一雄が、志賀直哉の著書である「留女」に献辞を書いて渡したという「謎の献本」がおもしろい。なぜそういうことになったのかという顛末の、直哉の書き込みがある「白樺」を古本屋で見つけたのに、ちょっとしたすきに何冊か売れてしまったことをずっと後悔するエピソードが印象的でした。
 美希は編集者だからなんとなく文系のイメージがあったのですが、実はバスケ部のレギュラーだったこともあり、中学生のコーチを引き受けたり、ハーフマラソンを走ったりするのも楽しかった。
 しかし、北村さんの小説に真鍋さんの戦略がでてくるとは予想外でした! 本当にいろんなこと知っていますよね……。

「藤川家族カンパニー」ブラック婆さんの涙

2015-10-10 14:48:27 | 文芸・エンターテイメント
 「ザ・藤川家族カンパニー ブラック婆さんの涙」です。
 三理の母親スナが突然兄弟の家に現れ、そのまま居着いてしまいます。このおばあさんなかなか一筋縄ではいかない人。兄弟たちとそりがあうはずもなく、険悪な雰囲気です。
 三理の姉百合代と喧嘩して飛び出してきたらしい。なんとか家に戻せないかと考えますが、スナは四寿雄に自分も遺言代行を頼みたいと言い出し、ノートを前にのらりくらり。
 そのうち、近所の火事で亡くなった消防士の遺言代行の仕事が発生しますが……。

 今回、印象に残ったのは、仲が良いと思っていたお姉さんを失った女性の話。お姉さんの遺言は、この妹への辛辣な言葉を伝えることでした。葬式にもくるなという言葉に、彼女は嘆き悲しみます。
 姉妹の葛藤というには、つらい出来事です。悲しみをこらえて、遺言だから参列しないという彼女に旦那さんが激怒。しかし、そこに意外な共感者が現れます。
 意識的なのかそうではないのか。妹を貶めていく姉の悪意が……。

 また、生前代行を求める男性が、藤川家にする仕打ちもかなり強烈です。四寿雄ちゃん、そんなお金持ってたの! とわたしもびっくりしましたが。
 男性の飼い犬タタミが愛しいです。うちも犬を飼っていますよ。

 それから、スナは家に戻るのですが、数日して亡くなります。残されたのは、「スナ」と書いて消したらしきノート。遺言は何だったのか。
 でも、なんと家に帰った兄弟たちの前に現れたのはスナの幽霊!
 いろいろと驚きの展開でした。
 

「僕の死に方」金子哲雄

2015-10-08 05:41:18 | 歴史・地理・伝記
 正直にいえば、何のきっかけもなければ、わたしはこの本、読まなかったと思います。
 話題になった本って、内容をわかったような気持ちになってしまうし、わたしは金子さんのことを知らなかったのです。流通経済についても関心はありませんでした。
 でも、読んでよかった。金子さんのことをもっと知りたいと思いました。流通の裏にある因果関係とか、人の考え方の考察とか、うなずかされることが多かったのです。
 運動部のキャプテンに選ばれるのは、実力的には五番目の選手。部員投票だとトップ選手は妬まれるから。
 お土産を持参するなら、特定の商品に決めていつもそれを買っていく。すると、その品を目にしたときに自分を連想してもらえる。
 金子さんの場合はコージーコーナーのシュークリームだったそうです。
 この本、読書感想文の原稿指導のために借りてきました。本来なら書誌データがあれば済むところですが、内容に乖離がないか確かめるわけです。
 そしたら、ぐいぐい惹かれてしまって。
 あっという間に読み終えてしまいました。改行の仕方が計算されているというか……。すごく読みやすい。エピソードも印象的です。
 奥さんの稚子さんとの馴れ初め。自分の「嫌い」なものをどう感じているのか。つまり、価値観が合うかどうかを判断するのですね。
 稚子さんに話すことによってアイデアがブラッシュアップされていくようになったということからも、お互いの存在の大きさを感じました。
 本という形で、彼の生き方は残ったのだと思います。