くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「美森まんじゃしろのサオリさん」小川一水

2018-01-29 20:06:49 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 昨年11月、宮城県の書店と光文社の「本屋さんへ行こう! キャンペーン」が行われました。
 書店員が選んだ文庫フェア、スピードくじ&スタンプラリー、女性誌連合プレゼント、ウォーキングアプリや現地ツアー専門予約サイトとのコラボ企画というラインナップでした。
 わたくし、この間に光文社の本を四冊買ったのですが。
 一度もスピードくじに誘われませんでした……。
 くじ企画を自分でも考えていたので、引いてみたかったこともあり、
「えーと、くじがあると聞いたのですが」
 と申し出てみました。
 すると、「キャンペーンの帯のついた文庫が対象なんですよ」と言われたのです。
 でも、別の書店でもらったパンフレットには、「光文社の本(単行本・文庫・雑誌・ムック)を買って、店頭でスピードくじを引いて商品をゲットしよう」と書いてあるよ?
 だいたい、帯のついてる本、ほとんど読んでいるので今更買えといわれても。
 でも、仕方ないので買いました。ここは別の店なのですが。
 やはり、申し出ないと引かせてもらえず。帯ついてるものでも気づいてもらえない……。
 で、11月の新刊だったこの本も買ったのですが、やはり何も言われず。
 光文社さん、わたしが間違った解釈をしているのでしょうか? 気になってなりません。

 まあ、いいです。小川一水、おもしろいので。
 「美森まんじゃしろのサオリさん」は、民俗学の味わいのあるSFミステリです。
 東京から祖母の住んでいた家の管理のためにやってきた岩室は、見た目はいかついものの心優しい青年。
 便利屋家業をはじめたところで知り合った女子大生詐織さんと町のトラブルを解決するユニット「竿竹室士」を結成。
 定年も近いのに役場の「ホープ」と呼ばれる宮寺さんからの依頼で様々な事件に向き合うものの、それは美森さまのお使いが起こしている?
 まんじゃしろというのは「卍社」、神仏混合のおやしろで、宮司はなんと、宮寺さん。詐織さんは幼い頃から地域の長老たちの話を聞き、美森さまにただならぬ信仰心を持っていたのです。
 彼女の本心に気づいた岩室は、新しい住民として地域との融合を求めはじめます。

 神様のお使いたちも個性的です。小川さんがオリジナルで考えたの?
 民俗学的アプローチですが、隠された真相は現実的です。
 続きがあるなら読みたいなー。
 キャンペーンがなければ買わなかった可能性もあるので、やっぱりあって良かったと思います。
 郵政省特別配達課シリーズ、買ってあるような気がするんですが、どこに閉まったっけ?

「江戸小咄」駒田信二

2018-01-28 13:19:42 | 古典
 古本屋さん、少なくなりましたね。わたしも新古書店はかなり利用していますが、昔ながらの古本屋さんも好きなんです。
 検診の帰りに駅ビルで古書フェアをしていたので寄ってきました。
 買ったのは、都筑道夫「猫の舌に釘を打て」、三浦哲郎・晶子「林檎とパイプ」、そして、この「江戸小咄」(岩波書店)です。
 駒田さんの中国伝奇小話がおもしろかったので、全集「古典を読む」から抜き出して買ってしまいました。
 江戸時代の小咄には、同工異曲のものもあり、そういうものは連続して載せてあります。
 中国の小咄からの翻案や、後世の落語に通じていく変遷の様子が伝わってきます。
 
 中学生の受ける模試には短い古典が出題されることが多いので、「醒睡笑」など読んでみたかったのです。
 この本に紹介される小咄も、当然ながら歴史的仮名遣いで書かれています。
 短いし、展開がはっきりしているから、結構読みやすいのですが、今では使わない表現や当時は常識だったことが分からなくて伝わらないこともあります。たいていは駒田さんが説明してくださるのですが。
 中国笑話との関わり、武士、儒者、殿様、泥棒、医者をテーマごとに分けて紹介されています。
 「矛盾」や「助長」のような故事成語などもありました。
 「小町の百夜通い」をモチーフにした小咄。
 公家のお姫さまに懸想した男が、「今宵より百夜通ふて、夜ごとに通ふたしるし、車の棍にきずつけよ。百夜過なばかならず逢ん」と言われて九十九日め、腰元があらわれて、
「お姫様のおつしやりまする、『お通ひなされて九十九夜、一夜ばかりはまけにしてあげませうほどに、わたくしにつれまして、お寝間へすぐに参れ』との事」
 しかし、言われた男はしりごみします。
「ナゼそのやうにおつしやります」
「アイ、わたくしは日雇でござります」
 明和期に描かれた「鹿の子餅」からの出典。まけてくれるつもりのお姫さまも、日雇いを使って百夜通わせる男も、なんだか人間くさいですよね。
 艶笑譚も結構多いのです。
 しかし、類似の物語を並べるためにはかなりの本を読まなくてはなりませんよね。駒田さんの博覧強記ぶりに驚きます。
 適切なガイドで古典を読むのは楽しいですね。

「夢裡庵先生捕物帳」泡坂妻夫

2018-01-22 20:49:51 | 時代小説
 最近泡坂さんの本が新装版で刊行されていますよね。嬉しいなあ。この勢いで亜智一郎の未刊行本(生前最後の単行本ラストにそれらしきことが書かれていた記憶が……。間違っているかもしれませんが)を出版していただけないかしら。

 「夢裡庵先生捕物帳」(徳間文庫)、上下巻です。
 わたしは「宝引の辰」は文庫で全部持っている(はず)ですが、同時期に読んだ「からくり富」の方もまた読みたかったのですよ。
 だから、書店で発見してすぐ買ったのですが、ストックを入れる箱に入れたままその上にどんどん積み重ねてしまって……。
 最近週末はどこにも出かけずひたすら本を読んでいて、同じ傾向のものを読みすぎたせいかなんだか読む気力がないというか。
 あと、コンタクトレンズだと夜は読みづらい。
 それで二三日まんがばかり読んでいました。
 で、箱を整理していたらこの本があったので、嬉々として読みました。
 富士宇兵衛門は、夢裡庵先生とも呼ばれる八丁堀同心。
 様々な事件を解決していきますが、彼は狂言回しの役割で、前短編に登場した人物が次の話にも続けて中心的役割を果たします。いわばしりとりのような構成ですね。
 捕物帳ってレギュラー以外は入れ替わりが多いかと思うのです。でも、印象的な人はしばらくするとまた登場したり、すごく親近感がある。
 中でもやっぱりお千代さんでしょうか。
 青馬の俵助という御用聞きの娘で、ときに父親の代わりを務める男まさり。三十になるけど、囮捜査で若い娘に扮することもできます。
 あと、小桜屋の女将たけもいい味出しています。

 読んだのが、かれこれ十年以上前なので、筋はほとんど忘れていて新鮮でした。「一天地六」のさいころの話を始め、ぼんやりと覚えている部分はあると思います。
 エピソードを結構予測できたので、記憶のどこかに残っているものがあるのかもしれません。
 夢裡庵先生、年配のイメージだったので、最後が思ったより血気盛んで驚きました。彰義隊に入って大砲のデモンストレーションに参加してみたり……。
 泡坂さんの本、いろいろ読み返したくなりました。

「本格力」喜国雅彦・国樹由香

2018-01-18 21:27:08 | 書評・ブックガイド
 仙台の本屋で発見し、「本棚探偵」のシリーズはもう出ないと思っていたので二千五百円したけど即座に購入。
 普通この厚さだったら中断することが多いのですが、もう読み終わるのが惜しくて。
 外国ミステリ、しかも本格、ほとんど紹介されている本、読んでいません。でもおもしろい。不思議です。一気に読みました。
 メフィストに連載されたもので、「エンピツでなぞる美しいミステリ」(ミステリの一部分が原稿用紙に薄刷りしてあり、喜国さんの解説がある)、「本格だもの」(「みすを」なる人物の筆文字)、「勝手に挿絵」、「ミステリのある風景」、そして「H-1グランプリ」。
 ミステリを研究する博士と、女子高生りこがテーマを決めて読書会をするのです。現代的視点で本格を読むとどうなのかという試みがおもしろい。
 読んでいると気になる本も出てくるものです。でも、きっと読まないな。昔のような児童書版で見つけたら読みやすいかもしれませんが、わたしは余り翻訳ものが好きとはいえないので。
 だから、喜国さんは読ませるなあと感心しきりです。
 何冊か「昭和64年発行」の本があったのですが……。
 1月8日から平成ですよね? 奥付がそう印刷されて、出版したということでしょうか。急なことだから直せないとか?

 で、国樹さんのエッセイも楽しい。
 喜国さんと犬のことが中心なんです。読んでいると、なんだか「由香ちゃん」と呼びたくなってしまう……。
 犬の写真もすごくかわいい。新しい犬のしつけの話題を読んで、うちのわがまま愛犬の前でドレッシング振ってみましたが全然反応なし。やっぱり缶に石でないとダメですよね。(そりゃそーだ)

「息子が人を殺しました」阿部恭子

2018-01-17 22:23:20 | 社会科学・教育
 先日、この本の出版が新聞に載っていました。加害者家族支援のNPO法人代表阿部恭子さんの「息子が人を殺しました 加害者家族の真実」(幻冬舎新書)。
 以前鈴木伸元「加害者家族」を読んだときに、阿部さんの活動を知ったので、今回も興味深く読みました。
 詐欺、窃盗、殺人など、報道される事件は様々ですが、「犯人」が隔絶される一方、家族たちは逃げ場もなく社会と関わり続けるしかありません。
 地域や見知らぬ人からの中傷。どうしたらよいのか? 相手への謝罪は?
 事件の渦中に否応もなく放り込まれて、どうにもできなくなる人も少なくないはずです。 
 親が犯した罪に自分は関係ないと思う子どもに、世間の目は冷たい。たくさん事例が紹介されていましたが、中でも気になったのは、お嬢さまから転落した子のエピソード。
 カナダ短期留学中に父親が詐欺で逮捕され、母親の実家に引っ越して近隣の定時制高校に転校するように言われた彼女は、3月までの授業料が支払い済みであることからバスで一時間半かけて通学することに。
 しかし、学校からは転校手続きをするように話され、部活では一緒に活動したくないと言われます。カナダのお土産は拒否されて、ネットに誹謗中傷が記載されます。唯一親身になってくれた友人に八つ当たりしてしまったことから、ついに転校を決意。
 新しい学校では居場所が見つかったのが、せめてもの救いですね。
 
 先日読んだ押川さんの本でも、家庭での過ごし方が影響していると書かれていました。阿部さんは「人に迷惑をかけるな」と言われて育った子どもが加害者になるケースも紹介しています。
 加害者家族、自分を追い詰めてしまう人も多いのですね。なんとも、心苦しい感じがしました。

「子供部屋に入れない親たち」 押川剛

2018-01-15 05:42:13 | 社会科学・教育
 タイトルがどぎつくて買うのに抵抗があると感じたまんが、「『子供を殺してください』という親たち」について、その後テレビでルポを放映していたのです。
 まんが原作の押川剛氏が登場し、精神障害者移送サービスの現状を話していました。
 そのまんがの脇に置いてあったのが、新潮文庫版の「『子供を(略)』」です。
 押川さんが実際に行った移送を紹介しながら、精神障害者・パーソナリティ障害・グレーゾーンと呼ばれる事例とその家族の問題をあげていきます。
 就職したものの、次第に行けなくなって引きこもる男。交際相手への執拗な執着。母親を支配して家にゴミを溜め込んでいく女。
繰り返される家庭内暴力。意味不明の落書き。退院を恐れる兄弟。
 究極の子育ての失敗とまで言われるのは、彼らの精神を大きく揺さぶるのが家庭由来の要因だからでしょう。

 興味深かったので、「子供部屋に入れない親たち」(幻冬舎)を借りてきました。
 こちらの方がソフトな感じはします。タイトルもどぎつくない(笑)。
 押川さんがこの仕事をはじめたきっかけや、ノウハウを身につけるためにしばらくボランティアとして活動したことなども描かれています。
 こういう本の肝になるのは、実例紹介だと思います。
 おそらく二冊とも取り上げられるのは違う事例かとおもうのですが、驚くくらい共通したイメージがありました。
 暴力。親への反発。エリートからの挫折。異性への過剰な執着。片づかない部屋。 
 この本では、バスジャック事件のニュースを見て、自分ならナイフを取り上げるのに、と考える場面が出てきます。
 そして、凶器は性的な意味を表している、と。
 実際、少年は男性たちをバスから降ろし、自分のまわりに女性を集めたというエピソードも紹介されています。
 家庭生活の歪みは、押川さん自身も自分と同年代の人々から顕著になってきたように感じたというようなことが描かれていました。
 また、不満のない環境で壁にぶつかったとき、どのように回避するかを学ばないまま大人になってしまうと、そこからどうしたらよいのかが分からなくなる。
 打たれ弱いということですかね。
 守られすぎる、というのも、つらいものだと思います。
 最近思うのですが、人付き合いは「自分とどう付き合うか」ではないかと。うまくいかないことも多いけれど、切り換えるとか受け流すとか、方法はあると思うのです。
 この親たちが、子供部屋に入れなくなるのは、いつからなのでしょう。
 大人になっても「子供部屋」みたいな感じですよね。

「インフルエンス」近藤史恵

2018-01-14 22:36:32 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 近藤さんは、友人の学生時代の同級生です。手紙のやりとりをしていたため、あとから話を聞いて「あの人かー」と思いました。当時は三島が好きだったと友人は言っていました。
 ただ、近藤さんの作品を読んだのは、そのことを知る以前ですし、そういうつながりがなくても、作品を読みあさったと思うのです。
 今回は、近藤さんを仮託した作家に、自分たち三人の関係を聞いてほしいという手紙が届き、「友梨」と名乗る女性からの独白を聞く体裁で話が進みます。
 大阪在住で同じ歳の作家として選ばれたのだろうと、彼女は考えますが、話を聞くうちに自分と同じ中学に通っていた同級生であることに気づくのです。

 友梨は団地育ちで、一生をここで過ごすのだろうと感じていた娘でした。
 同じ団地で育った里子と仲良くしていたものの、家族からのある疑念で次第に距離ができます。
 中学に上がるときに転居してきた真帆と、まんがを通じて親しくなる友梨。真帆は東京から来た都会的な少女ですが、周囲になじんでいません。また、中学も校内暴力で荒れており、地味な友梨は居心地の悪さを感じています。
 あるとき、グループ内の女の子が、殴られたり蹴られたりして亡くなります。中心だった不良は少年院へ。その男と付き合っていた里子は、集団から浮き上がっていきます。
 中学生の閉塞感、あの時代の嫌な感じが、友梨に大人を信じられない意識をもたせていまいます。自分も同じ歳なので、その感じはわかります。地方なのでそこまでひどくはなかったのですが。
 さらに、友梨は真帆を助けようとして、男を殺してしまいました。ところが、警察に捕まったのは里子。混乱する友梨ですが……。

 なんだかうまく説明できないですね。
 友梨・里子・真帆の三人が、打算もありつつお互いをかばい合いながら過ごしてきた友情(?)の記録。
 「インフルエンス」(文藝春秋)という題は「影響」という意味だそうです。
 この作品、「死」が非常に近い。ハードルが低いというか。
 もう四十を過ぎて、大人不信を抜けきれない三人。
 友情と一括りにいえるとは思えませんが、誰かが欠けたら事件までにはつながらない場合もあるかもしれませんね。

「椎名くんの鳥獣百科」十月士也

2018-01-12 05:45:20 | コミック
 「鳥獣」は、「とりけも」と読みます。「椎名くんの鳥獣百科」(マックガーデン)。
 11月半ば、娘とアニメイトに行ったときに、限定版CD付最終巻が売っていまして。
 生物分野の学習系まんがが好きなわたしとしては、ちょっと興味が湧いて四巻まで買ったのです。
 そしたら、やっぱり結構好みでした。
 山裾大学理学部生物学科を舞台に、助教の椎名了と准教授の花千歳を中心にした物語です。
 椎名と花は二十年にわたる友人関係です。当時小学生だった椎名が、長期入院していた花と知り合い、年齢差を気にせずに親友になりました。そのとき、花がくれたアダムミル博士の本が縁で、二人は「動物はかせ」の道を選びます。
 フクロウを研究する准教授南、大学院生の森、天才少年波木、毒物を扱う柳准教授など個性的メンバーが、ペンギンやハシビロコウ、シマウマ(理事長の孫のペット)、オウムなどなどと繰り広げる大学生活。
 続きが読みたいので、一週間後の人間ドックが終わるなり探してみました。
 そしたら、どうしても7と8がないのですよ!
 アニメイトに行ってもない。菊屋書店にも。
 地元なんて、10巻がかろうじてあるくらいで、この本見かけません。それどころか……。
 マックガーデン、本当に在庫ないですよね。あちこち見たけど売ってないので、仕方ないから9から先に読んでしまいました。
 そしたらー。
 8って、このまんがでは佳境になる部分だったのです。
 アダムミルの血を引く子、ドクターゴードンの秘密、ああ、先に知りたくなかった……。
 とりあえず、年明けには全巻揃いました。
 十月さんは絵がきれいで、キャラクターもいきいきしていていいですね。わたしは柳と南の関わり(打算的ですが)が好きですよ。
 コミック表紙が似ているので、一冊ずつ買ったら混同したかもしれませんが、なんとか揃って良かった。
 

「紅はこべ」山崎洋子

2018-01-11 05:45:03 | 外国文学
 オルツィの古典的名作「紅はこべ」! なのですが、今回は講談社の世界の冒険文学シリーズから、山崎洋子の翻案で。
 というのも、文庫本を入手できなかったのですよ……。
 「ペリーヌ」のときに書きましたが、先生方おすすめの本を展示することにしたので探しまわったのですが、何しろ「中学時代に感動した本」が最初のアプローチだったため、挙げられている書名が古い……。「氷点」とか「僕の音楽武者修行」とか(前の学校にはありましたが)。
 そんななかで英語の先生が挙げていたのが、これ。
 確か数年前に文庫が出ていたし(当時買おうと思ったのに!)、どこかの古本屋に山崎洋子版が売っていたなーと思って探しに行ったのですが。
 十件回って、全くないんです!
 古本屋はおろか、新刊書店にも。仙台まで行ったのに!(駅前ならあったのかしら……)
 創元社と河出から文庫が出ているらしいのですが、見つからない。
 でも、ここまで探してないのだから、とりあえず図書館で借りようと。
 そしたら、これしかありませんでした……。

 実はこの本、二十年近く前にも読んでいます。というより、「紅はこべ」はこれしか読んだことがない。
 山崎洋子が好きなので、当時の勤務校から借りて読んだものです。
 どのくらい原作に忠実なのかもわからない。(確かこのシリーズ、著名な作家が執筆していて、好みに応じたある程度のあらすじ調整をしていたような記憶が)

 フランス革命の最中、貴族たちを密かに逃がしてくれる「紅はこべ」という謎の一味がありました。
 マルグリート・ブレイクニーは、夫のパーシーとのすれ違いに悩んでいます。情熱的な恋人だった彼は、マルグリートの何気ない一言から捕まった貴族がいたことを知って距離をおくようになったのです。
 彼女はもともと、兄のアルマンと共和党に加わっていましたが、最近の党の風潮についていけず、夫とイギリスに渡ったのです。
 親友のシュザンヌが「紅はこべ」の手引きでイギリスにやってきて、協力した男性と恋に落ちます。
 その男性は「紅はこべ」の手下ですが、フランスの全権大使ショーヴランによって次の計画を書いた指示を奪われてしまう。
 さらに、マルグリートの前に現れたショーヴランは、兄の逮捕をちらつかせて「紅はこべ」の正体を探るように迫るのでした。

 ……再読して思ったのは、マルグリートって浅はかだなあ、と。
 なんだかどんどん自分で墓穴を掘っていません?
 アルマンが恋をした女性の父親から袋叩きにされたのを恨んで、噂に聞いたこと(フランス革命の制圧を図っている)を口に出したために、サン・シール一族は処刑。
 ショーヴランに脅されたから、秘密のメモを覗き見して伝えたため、パーシーがピンチに陥る。
 さらにはショーヴランたちを追跡してまんまと捕まる……。
 それにしても、ショーヴランの命令に従った部下たちの行動が余りにもマヌケでびっくりなんですが、原作通りなの??
 背の高いイギリス人が現れるまで、何もしないように言われて、アルマンたちが脱出するのも黙って見てるんですよ!
 ああ、気になる。文庫二冊持っているという同僚から借りて読むべきでしょうか?

「うつぬけ」田中圭一

2018-01-10 05:39:27 | コミック
 古本屋に行ったらこの本があって、立ち読みしているうちに、自分にとって必要な本かもしれないと思い、購入しました。
 昨年、「ペンと箸」(小学館)を買ったらすごく良かったのです。特に吉沢やすみとかわぐちかいじの回が。諸星大二郎も。
 だから、前後してこの「うつぬけ うつトンネルを抜けた人たち」(角川書店)が出たときも、書店でぱらぱらめくったんですよね。
 そのとき、熊谷達也が取り上げられているところを読んだのです。
 直木賞作家の熊谷さんですが、わたしの初任地管内で退職されています。当時は荒れた学校も多く、そのせいなのかなーと漠然と思っていたのですが。
 田中さんは熊谷さんの話を聞いて、「ステルスうつ」ではないかといいます。本人には自覚がない。でも、ストレスがたまっていることを見ないようにしているうちに身動きが取れなくなる。
 熊谷さんの場合は、奥さんが退職してもいいと舵を切ってくれたことが良かったのだろうとのこと。(奥さんは美術の先生を続けてらっしゃるようです)
 思い切って仕事から離れてみることを、田中さんはすすめています。
 時々フラッシュバックすることを繰り返しながら時間をかけてゆるやかに回復することが多いそうです。気温や気圧の影響を受ける人も。

 まんがでは、ゲームクリエーターや編集者、コミケのボランティアをまとめていた人、教師、作家といった方々が体験を振り返っています。
 教師、うつになる人、増えているように感じます……。
 わたしも他人事ではないと思って読んでみましたが、とりあえず今の「自分付き合い」はなんとかなっているかなと思いました。結構自分に甘い性分なので(笑)。