くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「乗り越える力」荒川静香

2013-09-27 22:29:34 | 芸術・芸能・スポーツ
 恩師菊田先生が、しらかし台中の校長として赴任したとき、スケートの上手な女の子がいるからその子のためにスケート部を作るとおっしゃってました。直接聞いたかどうかは覚えていませんが、その女の子こそが荒川静香さんであります。
 だから、結構ジュニア時代から気にしていた選手なんです。この本も発売当初書店で立ち読みした記憶が。「乗り越える力」(講談社)。「十五歳の寺子屋」の一冊です。
 荒川さんはモロゾフコーチと出会ったことで、自分らしいスケートを模索していきます。イナバウアーもその一つですが、三連続ジャンプの前に入れてはどうかと提案されて悩んだそう。「トゥーランドット」の曲調や演技構成を考えてそうすることを決めたというので、ついYouTubeでトリノの演技を見てしまいました。
 う、美しいです。当時もテレビで何度か見たはずなんですが、こうやって自伝的な本を読んでから見直すとまた違う角度で見えてきますね。
 オリンピックゲームは、楽しむためにある。だから、その場が楽しめるように充分に努力していくことが大切だと語った女子コーチの言葉や、それを受験も同じではないかと感じる荒川さんの考え方。特別扱いされるのが嫌で、「普通」でいたいと東北高校を選んだあたりもおもしろい。同じような立場の人がいれば、目立たないと思ったんですね。
 試合前は調整もあることだし、学校を欠席してもよいと言われていたのですが、友達との交流を大切にしたいと参加。スポーツ推薦ではなく一般受験で、と荒川さんは非常に地に足のついた生活をされているようです。
 落ち着いた素敵な考えだと思いました。 

「気になる木がわかる」林将之

2013-09-26 04:56:59 | 産業
 この木なんの木気になる木ー、と思い続けていたグラウンド脇の大木。今を去ること三年前、枝にぶら下がって遊ぼうとした一年生(注・中学生)がずり落ちてケガをしたあの木は、何の木なのでしょう。
 そう思っていても調べるのは意外と難しいのです。図鑑をはじめからじっくりめくり続けるか、何科なのかをあてずっぽうに見ていくか。大体、花や実のならない時期の木をどうやって特定すればいいのか。
 宿題で俳句を詠むことになった生徒が、「夏の日の大きな帽子プラタナス」という句を作ったのですが、どう見てもプラタナスではないよ。幹も全然違う。多分校木がプラタナスだからそう思ったんでしょうけど。
 で、図書館でこんな本を見つけました。「葉っぱで気になる木がわかる Q&Aで見分ける350種 樹木鑑定」(廣済堂出版)。著者の林将之さんは、人気の樹木鑑定Webサイト「このきなんのき」所長、だそうです。(「人気の……」からが表紙に書いてある肩書き)
 いやいや、これは便利。葉っぱに着目すればある程度の絞り込みが可能です。単葉か複葉か。ギザギザがあるかどうか。枝に交互につくか対につくか。落葉樹か常緑樹か。
 今まで、冬に葉を落とすかどうかというイメージしかなかったのです。落葉樹は葉の色が明るく、つやが弱く、質が薄い。常緑樹は色は暗く、つやが強く、質が濃い。ああっ、そうだったんですか。さらにグループに分類していくと、AからWまで多岐に渡ります。
 問題の木の葉を見てみました。まあ、毎日見ているので印象はわかります。ギザギザの葉とつるりとした葉が混在しています。ギザギザは木の内側の方が強い。
 ギザギザの葉。めくっていくと、こんな質問がありました。
「家の裏山にトゲトゲの葉っぱの木が生えています。ヒイラギでしょうか」
 その写真を見ても、何やら小さいので判断がつきません。実は学校に「柊」という部屋があるので、それにちなんだネーミングなのかな、と思ったり。説明を読むと、成木は先端以外のとげがなくなるのだそうです。
 葉を持ち帰って照らし合わせようかと一枚摘み、ふとすれ違った理科の先生に聞いてみました。
「あぁ、ヒイラギだよ」
 やっぱりそうなんですね……。詳しい人に聞くのがいちばんなのかもしれません。
 

「残穢」小野不由美

2013-09-25 20:29:57 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 小野さん、2006年に何があったのですか。
 この十年、小野さんの新刊を待ち望んでいたわたしですが、その間の出来事をあれこれと考えたくなる一冊です。「残穢」(新潮社)。
 発売日に仙台に行くという夫に頼んで買ってきてもらったんですが、近所の本屋に行ってみたら平積みしてました。以来一年、やっと読んだ次第です。
 前半はさらっさらっと読めました。小野さんの文章が淡々としていて、ホラー作家なのに超常現象には合理的な理由を見つけようとしてしまう。しかも、地縁で嫌なことがおきる家って、小野さんの得意パターンです。「緑の我が家」とか「悪夢の棲む家」とか。
 それが、どんどん時空を遡るにつれて、原因と思われることが明らかになっていく。2001年には読者の久保さんが、部屋の中で畳をするような音を聞いて嫌な感じを覚える。これを調査していくうちに、作家の「私」の集めていた怪談がつながっていきます。根っこが同じ怪談は、恐ろしい。そんなことも書かれていましたが、調査をするうちにいろいろなものが結びついていく。やがて、平山夢明さんや福沢徹三さんの集めていたものまでつながっていきます。
 穢れた土地は、祟る。祟りは伝染していく。
 全ての元凶は、ある有名な怪談に集結していきます。それを淡々と書きながら、自分の身に降りかかる災難を加えていく筆致が見事です。超常現象ではないと思う、と書きつつ、首にコルセットを巻くことになったとか。否定しながらも、その根底に何かしらしきれないものが残っていることを感じさせます。
 このとき、夫の帰りが遅くて、薄暗い部屋でずっと読んでいたのです。ぞわぞわと肌寒いものがある。といいつつ、平山さんたちと現場を探索にいく辺りは眠気に負けてうたた寝してしまいましたが……。
 地域を調べていく作業が多いため、住宅地図をメモしながら読もうかとも思ったのですが、小野さんはさり気なくどこの家の裏がどの家で、と明示しているので非常に読みやすい。
 さすがに、因縁のある住宅地の住民だった男が逮捕される事件(犯人なのにインタビューに答えていたという表現から、イメージされる事件がありますよね)や、新興宗教で凶器となった刀までがつながってしまうと少し鼻白むものはありましたが。
 布団に入ってからも、二の腕の辺りに冷え冷えとした気配が残り、つい家の中の音に耳をすましてしまう、そんな物語でした。
 いずれにせよ、都市部の流動性を感じさせられます。わたしは田舎育ちなので、その地域に先祖代々住んでいる人の方が多いんですよね。

「謎斬り右近」中路啓太

2013-09-24 05:09:33 | 時代小説
 えーと、これはあれですね、「あずみ」。でも、天海は敵なので、逆サイドといいますか。
 中路啓太「謎斬り右近」(新潮社)。はじめて読む作家です。第一章を読んで、これはあんまりわたしの守備範囲じゃなさそうだと思ったんですが、なんとか読み切りました。陰謀とか殺戮とか、次々とおこるのです。歴史上の有名人も続々登場。
 将軍は家光の時代。豊臣の宝がどこかに隠されていると信じる山王御供衆一派が、太閤の墓を暴きます。それを止めようとした木下家の家臣は「砂迅雷」という目潰しの技で殺されます。
 木下右近俊基は、その仇を討とうとして、否応なしに戦いに巻き込まれていきます。許婚だった豪と想いを交わしたのも束の間、彼女はさらわれ、右近も身を隠すことに。
 圧倒的に強い剣豪宮本武蔵を抱き込んだ山王御供衆。「豊国神宝」というものをめぐっての攻防。東慶寺はどんなかかわりがあるのか。伊達政宗は?
 スリリングですよ。豪が小鼓を打つあたりが好きですね。
 しかし、魅力的な脇役が次々死んでしまうのです。犬の黒も……。
 おろくに純愛を感じる燕藤十郎が印象的でした。
 この本、表紙カバーと挿絵がエマさんなのです。今まで読んでこなかったジャンルが開けてくるのはおもしろい。次はPHP文庫のあれ(表紙のイメージしか覚えていません)を読もうっと。
 

「シチュエーションパズルの攻防」竹内真

2013-09-23 05:20:16 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 「図書館のキリギリス」がおもしろかったので、同じように謎解きのあるこの本を借りてみました。竹内真「シチュエーションパズルの攻防 珊瑚朗先生無頼控」(東京創元社)。
 結論からいうとそんなに好きな設定とはいえないんですが、銀座の文壇バーが行き着けのベストセラー作家辻堂珊瑚朗が日常の謎を解くシリーズです。文壇バーって、なんとなく川端とか谷崎とかあの時代のイメージがあったので、現在もそういう風潮があることに驚いています。そういえば、東野圭吾も「○笑」シリーズで登場させていますね。
 辻堂先生は根本的にはミステリ作家ですが、時代ものも紀行エッセイも書く。若い頃に売れた本があって、その印税でアメリカに渡り、帰ってからはある劇団のシナリオを書いたこともあったそうです。で、このころ「僕」の叔母であるミーコママと知り合います。
 辻堂先生が解いた事件は、画廊から盗まれたデッサンのありかとか、
 ……と書こうとして、はたと迷います。うーん、路地裏の誘拐事件についてははじめから知っていたものだし、「シチュエーションパズル」についてはライバル作家とのやり取りがメイン、もうひとつはあるホステスの「伝説」を作り上げる作業の物語だから、彼が探偵役とはいえないわけです。
 むしろ、興味深かったのは、ラストに登場したロードムービー風の作品を書く若手作家を励ます書き下ろしの部分かしら。
 読んでいないけど、竹内真といえば「自転車冒険記」のような作物なんですよね? デビュー作の選考委員が誰なのか気になるのですが。
 個人的には辻堂先生を大沢在昌と重ねて読んでいました(笑)。

「国語が子どもをダメにする」福島隆史

2013-09-22 09:14:07 | 社会科学・教育
 国語教師としては、読まねばなりますまい。
 と思って、かなり以前に買ったんですが、後半になったところでストップしていました。だって、同じ主張は何度も読みましたもん。わたしは結局のところ、けなし批評が好きなのかも。
 福島隆史「国語が子どもをダメにする」(中公新書ラクレ)です。国語の授業に関して、子ども任せにしていることを「支援」と言い、彼らから考えを引き出していると悦に入る教師が少なくないことを語ります。
 槍玉にあげられているのは、朝日新聞に紹介されたある付属小学校の先生です。これを読んだあとにその記事をまとめた本も読んだのですが、もう福島先生の視点でしか読めませんでした。
 自分なりの読み方をしたかったから、子どもたちにも「それぞれの読解方法を見つけてほしい」と、思っておられるのだとか。教材をどう扱うかを子どもたちに投げかけて、「みっけカードを集めたい」「なぞをもっと解明したい」と答えたらそれをやらせるんですって。
 いやいやいやいや、そんなこと自分でできる小学生(二年生!)おかしいんですって。というよりも、自分なりの読み方を習得するには、考えが対立する意見が必要ではないですか?
 自分なりの読み方を各自がすることは、別に授業でなくてもいいということでしょうか。授業って、お互いの考えを磨き合うものだと思うんです。その中で意見を深めていく。
 福島先生はこの方の指導は、おそらくノートには反映していないと考えています。プリントとか模造紙が好きな教師は、ノート指導がおろそかになりがち。そうですね。ワークシートは良し悪しだと思います。ノートが、構造的に作れるようでないと、やっぱり厳しいですね。
 とはいえ、わたくし、先日の研修会で自分の勉強不足をこてんぱんにやられまして。そのときも、実はプリントでした。付箋紙を使ったりグループワークの流れをつけたものなんですが。もともと予定していなかったことを無理にこじつけるのは、やっぱりダメですね。
 手法を教えて、やらせる。それが肝心です。で、福島先生のいつもの「三つの力」に集約していきます。
 わたし自身は、国語には様々なアプローチがあっていいと思います。俳句や書道が得意な先生もいることですし。でも、その中でやっぱり技術を教えていくことが必要ですよね。
 うーん、自分の教え方について考えさせられます。
 現在、国語科で主流になりつつあるのは、「単元構想」ですかね。自分ではまじめに取り組んでいるつもりですが、わたしも傍目から見るとダメダメでしょうか。
 
 

「妻は、くノ一」風野真知雄

2013-09-21 05:35:34 | 時代小説
 図書館に寄って帰らなきゃ! 
 風野真知雄「妻は、くノ一」(角川文庫)、おもしろかった。ドラマ化したんですってね? 彦馬は結構ぼうっとした男ですが、これからどんどん魅力的になっていくように思います。なんといっても織江がいい。仕事はこのところ暇なのか、ずーっと彦馬を観察してピンチを救ってくれるのです。
 てっきり、二人の新婚生活がもっといろいろなエピソードで語られるのかと思っていたのですが、織江は舟を漕いで嫁入りすると、次の項にはもういない……。二人の暮らしは回想でしか語られないのです。七夕とか弁当とか。あとは、江戸にきた彦馬をひっそり見つめている。
 ただ、くノ一らしく様々な変装をしているのがおもしろい。唐辛子売りとか奥女中とか。
 ラストでは巡り会えるのかと思っていたので、松浦静山の家臣として動き出しそうな展開に驚いています。「甲子夜話」のエピソードがあったので、これは彦馬から静山に伝えられたのかなと思う場面も。
 シリーズずいぶん続いているようなので、借りてみます。いつ再会するのかしら? で、大体そうなってしまうとつまんなくなってしまうことが多いのですが、どうでしょうか。
 しかし、帰る頃にはもう図書館は閉まっているのですよね……。

「はまじと9人のクラスメート」「変形菌な人びと」

2013-09-20 21:32:57 | エッセイ・ルポルタージュ
 市の図書館から集団貸出をしてもらったうちの一冊。浜崎憲孝「はまじと9人のクラスメート」(徳間書店)。
 非常に内輪ものと言いましょうか。「ちびまる子ちゃん」に登場するキャラクターのモデルになった方々を、「はまじ」が訪ねるというコンセプトです。
 丸尾くん(のモデルになった人。以下同じ)は、漫画を読んで自分がこのキャラクターだとわかったそうです。野口さんは、はまじに言われてはじめて「そうかなぁ」と感じたとか。他にも花輪くんのモデルは女性だとかたまちゃんは結婚してアメリカに住んでいるとか、ブー太郎の家はスーパーで、さくらさんちの八百屋と競合したのではとか書いてありました。
 なんというか、不思議な本です。まんがであるからには、作者の創作として触れるべき作品のはずなのに、そのキャラクターの一人(のモデル)が実際の自分の生活と作者を重ね合わせている。創作作品のキャラクターを推定して、それについてどう思うかをインタビューする。
 しかもこれが、別に出版社のコンセプトによるものではなく、浜崎さんが本を書きたいと思って出版社を紹介してもらったところ、やっぱり「まる子」から離れすぎている文章では駄目だと言われたから、なんだそう。
 例えば、かつてバンドブームのときに、インディーズ時代を知る人がそのバンドの来歴や裏話を書いた本が結構出ましたよね。そんな感じ。
 あ、でも出版は2003年とのことなので、この本も同時期くらいでしょうか。
 「さくらももこ再婚」の話題があり、そんなに前のことだったのかと驚いております。
 もう一冊「変形菌な人びと」(福音館書店)。月刊「たくさんのふしぎ」の、やはり2003年6月号です。越智典子文、伊沢正名写真、牛尾篤絵。
 変形菌、気持ち悪いんです。うぅ、でも気になる。アメーバ状になって木の表面を覆ったり、変形体から子実体になったり。写真がまた色とりどり。
 この研究をしてきたポルタやマルシャン、バリ、熊楠が登場して説明してくれます。今まで木の表面のものを注意して見たことはありませんでした。これを機にちょっと見てみようかと思わされます。

「サーカスのライオン」川村たかし

2013-09-18 05:01:36 | YA・児童書
 台風が接近するとのことで、雨が小止みになるのを見計らって実家を出ました。
 娘は、音楽で歌のテストをするとかで、どの曲を歌うか悩んでいると言います。季節に合わせて「もみじ」とか「真っ赤な秋」とか「小さい秋みつけた」とか、そういったところを提案するのですが、知らないとか覚えてないとか、さらには「歌詞を忘れた」と言われます。
 うううん? もしかして、歌は階名で覚えるの?
 娘はピアノを習っているので、どうもそうらしい。わたしは楽譜は読めないけど、提示された歌は結構早く覚えるタイプ。で、自分で再生するときは、歌詞が中心です。
 これがまた、自分でも疲れるんですが、流れてきた音楽の歌詞をいちいち頭の中で振り返ってしまう。先日、海水浴場で戦隊ヒーローソングメドレーが流れると、延々とその歌を心で歌わずにはいられないのです。
 わたしは、言葉を記憶するタイプなんでしょうね。勉強も暗記ものが得意です。
 さて、娘は暗記が苦手かというと、そんなことはありません。教科書の音読をしていると、大体本文は覚えてしまうそうです。「なまえをみてちょうだい」は全部暗唱していました。で、現在娘がやっているのは、「サーカスのライオン」。
 二つ上の息子が読んでいたとき、ラストで胸が詰まる思いをしたわたしですが……娘の音読は、すらすら読めているだけで、なんとも無味乾燥。「オーラオーラ」なんて、かけ声だと思ってもいないらしいし、じんざの叫びは迫真の演技なんですが、ああ、ちっとも「間」がないんですよ。
 そしたら、書き込み教科書を見てなんとなくわかりました。娘は、多分イメージを自分で作って読んでいないんです。例えば、じんざが少年からチョコレートをもらう場面。
「チョコレートは好きじゃなし、食べたことがないけど」と書いてある。いや、まてまて、食べたことがなかったら好きかどうかわからないでしょうよ。じんざは、苦手だけれど、少年がせっかくくれたものだから(おそらく少年にとっては大好物)そういうものをわけてくれる気持ちがうれしいのではないのかな。
 全体的に、そうやって想像することを書けない。文中にある言葉をなぞるだけなんです……。
 まだ三年生だから、想像して言語化するのは難しいんでしょうか。
 でも、この火の輪くぐりでむちを「チタッ」と鳴らすおじさんとか、じんざがいないことを承知してサーカスにきてくれたお客さんたちの気持ちを思うと、わたしは切なくて仕方ないのですが。
 わたしが三年生のとき、この作品は教科書に載っていたのでしょうか。五年生で「チワンのにしき」、六年生で「桃花片」をやったのは覚えているんですが。

「猫弁と透明人間」大山淳子

2013-09-17 21:08:57 | 文芸・エンターテイメント
 「猫弁」二冊めです。「猫弁と透明人間」(講談社)。
 今回は登場人物紹介がついているんですが、もう、半ばまで読まないと出てこないようなことまで書かれています。「沢村透明 法律王子のゴースト。引きこもり歴二十年」。
 先日亜子の紹介があんまりだと書きましたが、「大福亜子 ナイス結婚相談所職員。百瀬に恋する才能を持つ」です。えっ、才能なの? 今後どうなるってこと? と思いましたが、まあ、本文読んで納得です。
 それから、野呂さん「野呂法男 百瀬法律事務所の秘書。左手の薬指に指輪をはめている」も、ちょっと驚き。簡単に言えば筧弁護士さん(よしながふみ)と同じような理由なんですよ。あ、男性とペアではないでしょうが。
 小学生のときの一言が同級生の命を奪ったことから、声を出さなくなった沢村。昼夜逆転した生活を送る彼の生計は、ある男からのファクスから始まります。
 司法試験をトップで通過しながら、社会と関わることを拒む沢村に、自分の仕事を手伝わないかと声をかけたのが、二見でした。法廷でのやり取りをシミュレーションし、何通りかのシナリオを書いて実証する。二見は有名になり、沢村は自分なりの安定を得ます。しかし、夜の公園で遊ぶ母子を見てから、彼の生活は変わるのです。
 沢村の、ナイーブでやさしさを秘めた人柄は、二見を通じて知ったタイハクオウムの「杉山」を救ってほしいと依頼する(もちろんメールで)あたりからも伝わってきます。母子が看病の不安を訴えてしまうほど、好感のもてる外見なんでしょうね。
 百瀬の過去も詳しく書かれます。パチンコ屋の沙織さんがいい味を出していました。
 百瀬って、感情の揺れが大きくない人なので、亜子との関係もどうなるかと思っていましたが、なるほどの展開です。
 三冊めを借りておこうと思ったら、貸出中でした。あぁ……。