くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

2014ベスト

2014-12-31 13:59:01 | 〈企画〉
 今年は、なんだか気ぜわしくて、読んでも感想を書く気持ちになれない日が多かったんです……。
 今年のベスト。
 1 「月間少女野崎くん」椿いづみ  
 今年何度となく読み返したのが「野崎くん」です! 四コマならではのストーリー展開と、個性的な人物たちがたまりません。
 アニメDVD買おうかな、とまで思ってます。
 2 「ビブリア古書堂の事件手帖6」三上延
 シリーズ途中のものをあげるのもどうかと思うんですが、個人的に今まででいちばんカタルシスがありました。話が集約されてくるというか。
 3「忘れ物が届きます」大崎梢
 沙羅の実に関する短編、素晴らしいのです。真実に気づいたとき、主人公とともに号泣……。
 4「ドアの向こうのカルト」
 わたし、洗脳にも興味があるようです……。価値観が逆転していく佐藤さんの描写が、とてもリアルでした。
 5「考証要集」
 時代考証についてユーモラスに説明がしてあり、とてもおもしろい。時代の空気のようなものを大切にする姿勢を感じました。
6「サバイバー」
 この時期、ホロスコート関連の作品を立て続けに読んだのですよね。そのおかげで、買ったまま本棚に置いていたこの本を読むことができました。セリンジャー監督が、ユダヤ人だったこと、アウシュビッツでアンネと知り合ったこと、どうしても現地には行けないこと、そういう様々なことが胸に残ります。沈澱している感じ……。アウシュビッツの写真集も手にしましたが、正視できませんでした。
 7「営繕かるかや怪異譚」小野不由美
 読んだばかりなんですが、いやー、やっぱり小野さんの作品が読めるのは幸せなことですよねー。ネーミングの由来は「幽霊の正体見たり枯れ尾花」?
 8「金閣寺 黄金天井に挑む」
 職人さんの仕事ぶりに感涙。ちょうど夫が修学旅行の引率から帰ってきたときでした。わたしもいつの日か金閣寺を拝観したいと思います。
 9「光のうつしえ」朽木祥
 原爆投下から二十五年後の広島を舞台に、中学生たちが身近な人に話を聞いていく物語です。とても繊細な美しさで、時間が経ったように見えても思った以上に近いと感じました。よく考えると、これ、わたしが生まれた年なんです。衝撃的でした。
10「夜明けのカノープス」穂高明
 繊細でやさしい物語です。穂高さんの作品はわたしの琴線に触れるのですよね。「盆土産」のエピソードがまたうれしい。

 今年気になった作家は原田ひ香さん。「母親ウェスタン」とか「彼女の家計簿」がおもしろかった。
 前半はイリオモテヤマネコに関する話題、中盤は戦争と平和にかかわる本を多く読んだと思います。
 例年よりも読書量は少ないです。読んだけど書けなかったものも多々ありました。
 来年はもう少し落ち着いて過ごしたいな。では、よいお年を!

「忙中閑話」安野光雅

2014-12-31 06:51:45 | エッセイ・ルポルタージュ
 年末休みです。心おきなく本が読める。ビバ! 読み過ぎて目が痛いくらいです(笑)。今年結構苦労していたので、最後がゆったりできてよかった。
 安野光雅「忙中閑話」(朝日新聞出版)。安野さんの短いエッセイが285入ってます。戸板康二の「ちょっといい話」みたいなスタイル。わたしはこういうの大好きなんです。
 「花野に眠る」にも安野さんの絵の話題がありましたよね。わたしも秋田まで絵画展を見に行きました! ギミックに富んだ細密な絵がすてきですよね。(でも、「旅の絵本」は読んでない……)
 安野さん、絵もおもしろいけど、文章も素晴らしいです。短いんだけど、話題性やおかしみに溢れています。そう、つい誰かに話したくなるような。
 中でもわたしが大興奮したのは、251。「メロス」について考察した中学生の作品を「算数・数学の自由研究」の最優秀賞にえらんだという話題です。
 「メロス」で数学?! いやいや、柳田理科雄さんも検証していますよね。
 この少年は、シラクスまでの道のりを39キロと計算し、行きと帰りの時速を比較します。
 すると、行きは3.9キロ/時。帰りは平均2.7キロ/時だという結論に達したとか。必死に走ったはずの後半も5.3キロ/時で「ただの速歩きだったということがわかりました」だって!
 柳田さんは太陽の沈む速さと比較していたので、「マッハ11」という計算でしたよ!
 ライチの上げ底包装(箱の9分の1しか入っていない)も印象的ですね。こんなのつかまされたら、腹が立つだろうなあ。
 短い文章できちんと落ちまでつけるのは難しいですよ。こういう趣向の本をもっと読んでみたいですね。

「営繕かるかや怪異譚」小野不由美

2014-12-30 10:37:31 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 発売すぐに買ったものの、第一話の冒頭からなかなかすすまなくて。
 でも、読み始めたら止まりませんでした。小野不由美「営繕かるかや怪異譚」(角川書店)。
 家にまつわる怪異は、小野さんの真骨頂。非常に怖い。
 中でも、「雨の鈴」が怖かった。夜に読んだからですかね。
 袋小路になった古い家に越してきた七宝焼き作家有扶子。雨の日になると、喪服を着て袋小路を歩いてくる女がいることに気づきます。それは生きている人ではなく、「いない人」なのだと察しますが、このままだと自分のところまできてしまう。その女が玄関から入ってきて悔やみを言うことで、近所で亡くなった人が何件かあったのです。
 雨を恐れるようになる有扶子。
 ひたひたと近づいてくる喪服の女。彼女の帯締めについた鈴……。
 視覚的にも聴覚的にも訴えてくる一編です。
 「屋根裏に」も怖い。地元に伝わる河童の話が、実は祟りを示していたなんて……。
 このような怪異を、鮮やかに解決するのが「営繕かるかや」の尾端です。狂言回し的な役割とでも言いましょうか。うーん、「雨柳堂」の蓮みたいなイメージ?
 挿絵が漆原友紀さんなので、「蟲師」のギンコのイメージかもしれません。

「新聞は、あなたと世界をつなぐ窓」木村葉子

2014-12-30 06:31:21 | 総記・図書館学
 メディアリテラシーにかかわる本も定期的に読んでいるのですが、この本はなんていうか、すごく親近感のある一冊でした。
 木村葉子「新聞は、あなたと世界をつなぐ窓」(汐文社)。
 木村さんの初任地は、なんと仙台。わたしとは二つ違いなので、同じ時期を過ごしたのだなあ、と感じました。
 さらに、東日本大震災や毎日新聞がスクープした石器発掘捏造事件。
「遺跡とされた町は原人ブームにわきました。原人は町おこしのかっこうのキャラクターだったのです。『原人パン』や『原人ラーメン』『原人まん(まんじゅう)』なども登場しました」
 原人まんは覚えてないなあ……。今ならゆるキャラになっているところですね。
 集団的自衛権行使容認を伝える紙面とか、皆既月食とスカイツリーとをレイナウトした紙面、わかりやすいですよね。
 わたしも新聞記事紹介(ニュースの伝え方比較)をしますが、こういうお手本があると授業がしやすいです。
 NIEの授業は、子どもの心に小さな種をまくものだと木村さんは言います。「種さえまいておけば、いつか芽吹き花開くときがくるでしょう。中には、いつまでたっても芽か出ない種もあります。それでも種はまかなければ、芽は出ないのです」
 とても励まされました。わたしも種をまく人でありたいものです。

「君たちに明日はない」垣根涼介

2014-12-29 16:25:05 | 文芸・エンターテイメント
 本屋さんの文庫コーナーで、このシリーズの最終巻を見かけました。興味あるけど、突然ラストから読むのも……ってことで、はじめの二冊です。
 垣根涼介「君たちに明日はない」「借金取りの王子」(新潮社)。
 リストラを促す「日本ヒューマンリアクト(株)」の村上真介を主人公に、様々な仕事と人間関係を描いています。
 この作品がすごいのは、リストラがテーマだけどちゃんとお仕事小説になっていることです。
 こういうシリーズって、どうしても様式に流れてしまいがちなんですが、続けて読んでもおもしろい。普段は接触のないような仕事のことも伝わってきます。
 建材メーカー、玩具メーカー、銀行、車コンパニオン、音楽プロデューサー、百貨店の外商、生命保険、消費者金融、ホテルの中居さん。
 バラエティーに富んでいて、一人ひとりにドラマがある。
 第一話で面接される気丈な女性芹沢陽子と、やがて恋人関係になっていくのが大きな流れとしても提示されています。
 「借金取りの王子」がいちばん好みでした。
 端正で学歴も高い三浦宏明。消費者金融会社では店長をしていますが、三カ月単位で査定される実績がぎりぎり。これは偶然なのか故意なのか。
 三浦は新入社員時代、店長から「王子」とあだ名をつけられています。この店長がもとレディースのトップで……。なんというか、強烈なんてすよ。
 でも、三浦は非常に彼女に魅力を感じている。
 わたしは金融会社と接触ないですが、叱責の電話ががんがんかかってくるのは嫌だな。
 仕事って本当にいろいろあるのですね。一般的には実直な人が求められると思うけど、そうでもない職種もある。雇い主の要求と会社自体が必要とする人物像が合致しない場合もある。
 もう図書館休みなので、三冊めはお正月あけに借りてきます。

「花野に眠る」森谷明子

2014-12-29 05:58:18 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 すごくよかったです。
 ありていな言葉で申し訳ないのですが、ラストでぼろ泣きしてしまいました。前作「れんげ畑のまんなかで」の細かいことをほとんど覚えていなくとも、人物たちのその後の展開とか結びつきとかがゆるりと描かれていて、気持ちがあたたかくなります。
 森谷明子「花野に眠る」(東京創元社)。図書館が舞台です。新米司書の文子は、幼児の読み聞かせを頼まれて出向いた保育園から落雁をもらいます。
 そのなかに一緒に入っていた篆刻は、秋庭町時代の町章に似ていました。大地主の秋葉さん、まごの佐由留(中学生男子)、絵画教室の咲子先生、彼らの間にある事実が、山の斜面から白骨が出現したことをきっかけに現れていきます。
 こう書くと何やらおどろおどろしいですが、大丈夫、ほのぼのしていますから。
 ブックガイド的な側面もあって、「タチ」(オールドリッチ)、「ある小馬裁判の記」、「ちいさなろば」を読んでみたいと思いました。
 また、装丁によってストーリーに影響があるというのも、納得です。たとえば「しゃばけ」なら柴田ゆうさんの絵で読みたいとか、さねとうあきらさんなら井上洋介さんの絵だとか、自分のなかで持っているイメージがあるのだな、と。
 途中、図書館司書なら当たり前の知識ってことも何点かありましたが、ごめんなさい、「旅の絵本」ちゃんと読んでなかったです。もっと勉強しますね。

「鴨川食堂おかわり」柏井壽

2014-12-28 07:00:10 | 文芸・エンターテイメント
 うーん、続編を楽しみにしていたのですが、あまりのワンパターンぶりにちょっと食傷気味? という感じです。エッセイ立ち読みしたら、なんかいけ好かない文章だったからかしら。
 「鴨川食堂おかわり」(小学館)。看板ものれんも出ていないけれど、絶品の料理、思い出の料理を提供してくれるお店です。
 料理を作るのは父の流、探偵事務所担当は娘のこいしです。
 店を訪ねてくる依頼人は、おいしい料理を食べたあと、こいしに思い出の味を探してくれるように依頼。そして、ゆかりのある土地を流が訪れて調査し、二週間後にその結果を披露してくれる。
 満足した依頼人は、口座への入金を約束し、猫のひるねを撫でて帰っていく。
 形式美といわれればそうかもしれませんが、ずっと同じだと「天丼」で流自身がいうように、飽きてしまう。
 どうなんでしょうね、コミカライズならいいのかな?
 今回は、「ハンバーグ」がちょっと変化球っぽくておもしろかった。依頼人が嫌な感じなんです。亡くなった旦那さんが肉や魚の形を崩すのを嫌がったので、息子にも食べさせたことがない。不仲気味の父(弘前で食堂をやっています)が、どうも食べさせたようだけれど、その味を再現して自分のベストであるステーキと比べさせたい。
 ね、すごいでしょ。
 石巻出身の歌手が現れる「天丼」もよかった。京都の寒さはこちら並みですか。誰かの心に残り続ける歌や味があるのは、いいですよね。
 わたしだったら、思い出の味は何でしょう。祖父が作ってくれる芋の子汁かな?

「たくましい脳に育てる毎日の習慣」川島隆太

2014-12-27 13:12:28 | 自然科学
 今年はあれこれと慌ただしくて、読んだまま感想を書かずにいた本がたくさんあります。書いたかどうかも覚えていないものも……。
 川島隆太「親子で『脳トレ』 たくましい脳に育てる毎日の習慣」(静山社)もその一冊です。
 川島先生の文章が中学一年生の教科書に取り上げられているので、そのときに読みました。昨年も同じように探したんだけど、こういうコンパクトな本は出ていませんでした。(今年の2月に出版されたようです)
 研究の最前線なのでしょう。
 とにかく脳を働かせるには、繰り返し勉強することが肝心! それによって、脳の中には学習の筋道ができる。それを高速道路のようになるまで鍛えることが大切なのだそうです。
 若いうちに脳を鍛えていく必要性を感じました。
 「学問に王道なし」って、そういうことなのかもしれませんね。近道をしようとするよりも、自分で着実に努力することが学習習慣と実績を作るのです。
 もちろん、川島先生か提唱してきた脳トレも詳しく書いてあります。クレペリン検査とか、間違いの仕方を教えてあげる実験についてなども。
 授業でこういうあたりを紹介するのが好きなんですよ。どう展開しようかと考えているとき、わたしの脳も活性化しているのでしょうか?

「ビブリア古書堂の事件手帖6」三上延

2014-12-26 19:30:23 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 つながっているのですね。全巻揃ったら、一気に読み直したい。(そのときまで我慢します……)
 「ビブリア古書堂の事件手帖6 栞子さんと巡るさだめ」(メディアワークス文庫)。素敵なクリスマスプレゼントでした!
 めでたく栞子さんと恋人同士になれた五浦大輔。しかし、そこに現れたのは、あの田中敏雄です。彼は祖父が持っていた「晩年」を探し出してほしいと依頼します。
 手がかりを求めて会ったある古書店の主人から見せられたのは、一枚の写真。そこには田中の祖父と三人の男、中学生くらいの女の子が写っていました。彼らは「ロマネスクの会」という文学研究会を行っていたのですが、師であった富沢教授の怒りをかって出入りを禁じられる。書庫から太宰の稀覯本「駆け込み訴へ」を誰かが盗んだというのです。
 若き日の彼らが出会ったのは、大輔のおばあさんのやっていた「ごうら食堂」。(五浦と強羅をかけているんですね)
 大輔がかつての彼らをイメージしながら調理場に坐っている場面がすごく好きです。過去とのつながりを実感していく感じが。
 そのあとの対峙もいいですよねー。なんというか、血のつながりを田中に意識させるあたり、非常に読み応えがあります。
「どういうわけか、君の考えそうなことはわかるんだ」
 このセリフ、効いてる!
 今回は、伏線がとてもしっくり決まっていて、ああ、そうだったのと感心しきりです。
 わたしは太宰はさらっとしか読んでいませんが、周囲にはファンが多かったんです。(日本文学科の女子にはそのパーセンテージ高いんですよ)
 斜陽館にも泊まりましたとも!
 あとがきによれば、もうちょっとで(次かその次)シリーズが終わるのだそうです。うーん、終わってほしくない……。でも、決着は読みたい……。複雑です。

「だいじな本のみつけ方」大崎梢

2014-12-23 20:43:15 | YA・児童書
 図書委員をしている中学生には刺激になる一冊。大崎梢「だいじな本のみつけ方」(光文社)。おもしろかったですよ。
 図書館で借りたまま、車に置きっぱなしでした……。
 で、この本の発端も置きっぱなしから始まります。
 本が大好きな野々香が学校の手洗い場でみつけたのは、人気作家新木真琴の文庫本。ところがこれ、まだ発売前のものだったのです。なぜ世の中に出回っていない本がそこにあったのか。野々香は、同級生の秀臣とその理由を探り始めます。
 まあ、そういうことから、知り合ったのは隣のクラスの浩一くん。三人は本屋のポップづくりを通して、ある計画を実施します。
 わたしは同時収録されていた「だいじな未来のつくり方」で読み聞かせをしてくれる尾藤さんのエピソードが好きです。
 あと、新木さんの本のセリフを引用してくれる友達もいいなあ。「みんな何かを持っている。なんにもない人はいない。ちゃんと持っていることに気づいてないか、それをちっぽけだと思っているだけ」
 確かにそうですよね。
 大崎さんらしい気遣いが随時に出ているように思います。これを読んだ中学生は、新しいことにチャレンジする勇気を見せてほしいですよね。
 書店員の青山さんがかわいいですよ。