くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「ラブオールプレー 君は輝く!」小瀬木麻美

2014-07-31 04:34:45 | YA・児童書
 念願の? 岬省吾サイドの話があって、おもしろかった。「ラブオールプレー 君は輝く!」(ポプラ文庫ピュアフル)です。
 今回は、結構榊がキーマンかな、と思いました。彼が絡むと平静ではいられない水嶋が、スター選手なのに微笑ましいです。
 遊佐さんのプレーの前には勝利はないと思い詰めた岬が、高校で頑張ったこととか、自分しか考えていなかったのが「チーム」について心を向けるようななったことが愛しい。
 買ってすぐに読み始めたのですが、今回は短編集だったのでちまちまと読みました。松田やツインズが主役で、横浜湊の面々のその後がわかるのも楽しみでした。また、水嶋の中学時代の友人静雄が、無名の高校で軸となり活動している話も、素敵です。普通の高校生が普通に部活をする、そこにも彼らのドラマがあるのですよね。
 バドミントンというスポーツ、自分も顧問をしていたので思い入れがあります。もっと関わりを深めればよかったなー、と生徒に無関心な「静雄の高校顧問」を見ていて思いました……。
 

「空耳の森」七河迦南

2014-07-29 20:51:16 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 「七海学園」のシリーズ、「空耳の森」(東京創元社)です。
 一関図書館がリニューアルのために、半年待ちました。期待通りのおもしろさ! ああ、でも細かい伏線を忘れているので、続けて読みたかった。
 思い出のデートコースだった山にやってきたカップル。しかし、ケガをしてしまった彼女を残して彼が山小屋を離れると、やにわに天候が荒れてきます。二人をつなぐのは、トランシーバーだけ。電波の調子がよくなくて、不安を感じる彼女のもとに近づく黒い影が……。
 携帯電話普及直前の舞台設定、そして手旗信号の「HR」があとに活きてきます。
 一見ばらばらに見えた九つの短編。ラストでみごとにつながります! すごい力業!
 七海学園のことを知っている人には、尚子と仲良くなった二人が春菜と佳音だということはぴんときます。どこにも春菜の名前がないというのに。
 わたしは「晴れたらいいな、あるいは九時だと遅すぎる(かもしれない)」が好きですね。推理ゲームとしてもおもしろいけど、シリーズもののピースとして読むとまた味わいが違います。
 あとは、「さよならシンデレラ」もショックを受けました。「発音されない文字」も「アルバトロス」のときには隠されていた事実が描かれていて、なんというか、被害者と加害者が逆転したような感じ。
 今回は、「カイエ」と呼ばれる女の子の人生が浮き上がるのがぐっときますね。さらに、「It's only love」を読み返してみますと、様々な秘密がくっきりと立ち上がる。一度では分からなかったことが、するするとほどけて目の前に現れるのです。
 語り手の「あたし」が誰なのか。(地元の商業高校を出てから新しい道を探したことが手がかりです。でも、なぜ「ミッキー」なのかはよくわからない。「イヨちゃん」はわかりましたが。) 結婚式に呼ばれた仲間たちの年齢がばらばらな理由。それから、出席できなくて祝電を打ったのは春菜だろうということも。(つまり、時期的にはこれが最後の物語です)
 絡み合った少女たちの物語。もう一度しっかり読んでみたい。
 最後の部分、はっきり書いていないけれど、ネタバレしてしまいますね。子どもたちが知らせた手旗信号「HR」は「Haruna resurrection」ということだと思います。

「仇討」田牧大和

2014-07-22 05:01:10 | 時代小説
 「とんずら屋弥生」の第二弾。角川文庫書き下ろしです。
 例によって発売してすぐに買ったのに(本屋さんはしごして探したのに)、やっと読みました。読みはじめるとあっという間なんですけどね。本を買いすぎなんでしょう。
 男装して船頭をつとめる弥生(弥吉という名で働きます)。裏家業は「とんずら屋」といって、逃げ出したい人々を逃がす商売です。それだけでもおもしろそうな設定ですが、実は弥生、さる大名の血を引いていて、お家騒動まで絡んでくる。
 今回は、女中として入ったお鈴という女が、武家の育ちらしい仕草をするのに気づいた若旦那(商人のふりをしていますが、弥生の父親の藩の武士です)に忠告される。探っていくうちにある浪人が浮かび上がってきます。その男は、お鈴の仇といわれているのですが、なぜか彼女の身辺を見守っているように感じられます。
 藩で言われている仇討話は、何やら裏があるのではないか。
 今回は、弥生が「とんずら屋」の跡継ぎとしての力を出し始めるエピソードもあって、続編がさらに期待されます。また、弥生の周囲の男たちもみんなかっこいい。わたしは啓治郎が一押しです。
 

「食堂つばめ」矢崎存美

2014-07-21 04:49:37 | 文芸・エンターテイメント
 世間にはもう三巻目が流布しているというのに、刊行と同時に買ったこの本を今読むていたらく。
 半分人間ドックで、残りを陸上競技場で読んだのですが。
 ああわたしっ! どうしてドックから帰ってから自宅で読まなかったのっ!
 監督会議三十分前に着いたのでつらつらと読みはじめたら、なんとなんと、この怒涛の展開! そうかそうか、そういうことですか。正直、キクさんとの再会の場面は人目もはばからずに泣きたいところでした。(他校の先生方がぞろぞろ入ってらしたので、こらえました)
 真相を知ってから、りょうさんの台詞を読み返してみると、いろいろな思いが伝わってきます。
 わたしなら、こういう「街」で何を食べたいかしら? 
 思い出の蘇りは、生命力にもつながるのだと思わされました。生きることは食べること。つらいときには、わたしも腹ごしらえをしようと思います!(えっ、いつもしてるって?)
 ところで、二巻、どこにしまったんでしたっけ?

「今日の放課後、短歌部へ!」千葉聡

2014-07-20 04:49:49 | 詩歌
 歯医者の待合室。
 いや、わたしではなくて、息子の矯正です。最近、やたらと混むようになったので、開始の一時間前にきたのに、もう二時間たちそうです。
 読み終わってしまいました。千葉聡「今日の放課後、短歌部へ!」(角川学芸出版)。てっきり部活ものだと思って買ったんですが、千葉聡さん自身が歌人として周囲の人々を感化していく感じ。うまく表現できなくて、もどかしいのですが。
 千葉さんは、横浜の高校で国語を教えています。年齢も近いし、すごくよくわかる。あるある、と思いながら一気に読みました。
 転勤した戸塚高校は、あの「夜回り先生」も在籍していた学校で、知名度のある先生方が多かったのだそうです。
 それまで中学校の教員だった千葉さんは、新しい環境のなかで悪戦苦闘していきます。私語が多かったり、授業に集中させるために短歌を紹介したり。高校生たちとのやりとりも、とてもさわやか。
 おそらくここにはあっさりと描かれていても、教壇やバスケットコートではもっと悔しい思いをされたのではないかと思うのです。鬼の指導者カオリ先生、くっきりしていてかっこいいけど、わたしが千葉さんの立場だったら相当つらい気がする(笑)。
 短歌が折り込まれているんですが、実際に学校にいないとわからないなと思うような感性の作品がおもしろいと思いました。
   全員でひとつのおおきなかぶを抜き続けるようなスクールデイズ
   二年「古典」助動詞テストで五十点とれなかった子は追試をします
   反省会「どんなにバスケがうまくてもハートのない奴、試合に出るな」
 この歌、すっごくよくわかるんですけど! でも、穂村さん、東さんとの座談会では、今では学校内だけの価値観だと言われており、複雑な気持ちです。
 学校って、多分外の人が思うよりも「ハートのない」状態がはっきりしているのではないかしら。評価されるのは実績だと穂村さんはおっしゃいますが、思春期の子のそういう状態は態度に出てきてしまうといいますか。うーん、わたしが捉えている感じと穂村さんの印象は、多分少しずれがあるんでしょうね。
 実際にその生徒は「ハートがない」のではなくて、バスケットの練習中にやる気ない行動をしてしまったのでしょう。カオリ先生はそれを叱った。この言葉で彼に気づいてほしい、気づくはずだと思うからです。
 中学校生活を描いた作品も読みたいところですね。
 わたしはこの本、すごく助けられた気持ちになりました。

  

「迷いアルパカ拾いました」似鳥鶏

2014-07-19 11:02:39 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 人間ドックに行きました。日付を間違って覚えていたことに気づいたのは前日。でも、間に合って良かった。
 似鳥鶏「迷いアルパカ拾いました」(文春文庫)。今回は驚きのラストと、例によっての巧妙な伏線に、いろいろ楽しかったですよ。
 ある日、先に帰った七森さんから、アルパカを発見したという電話が入ります。桃くんが行ってみると、確かにアルパカ。しかし、どこからも該当するような迷子アルパカの情報は入ってきません……。
 休園日には、顔を隠した男たちが侵入しようとして。
 さらには、七森さんの友人が行方不明になります。
 これらの一連の事件は、もちろんつながっています。桃くん、七森さん、鴇先生、服部くんが事件を追いかける。
 とてもおもしろかった。ドックでは皆さん手ぶらでしたが、わたしはずっとこの本を持ち歩きました。アルパカ見にいきたーい。いやいや、これまでさんざん動物園には行っているのですが。
 もう、このところ、毎日余裕がなくて、仕事も地区活動もと、働きづめです。本を読む時間がない……わけではないけど、こうやって振り返る時間がないのは事実です。
 夏休みに入りますが、どのくらい時間に余裕ができるのか?
 明日から県大会の引率です。ああ、準備しなくては。

「東京ロンダリング」原田ひ香

2014-07-14 05:22:41 | 文芸・エンターテイメント
 祖父が九十八歳となりました。
 元気でいてくれて、ほっとします。お祝いに行ってきました。
 その日の朝に読んだのが、「東京ロンダリング」(集英社)。
 原田さんの文章は立て続けに読んでいたのですが、これはなぜだか読まずにいたんですよね。ナツイチフェアのチラシで見かけて借りました。
 りさ子は、カルチャースクールで知り合った男と浮気し、婚家を追い出されます。実家を頼ることもできずに、不動産屋を訪れますが剣もほろろの対応。しかし、ある不動産屋で、ロンダリングという仕事をしてみないかと誘われる。
 非常に存在感の薄いりさ子。原田作品のヒロインはいつもそんな感じではありますけどね。目立たずに事故物件に住み、期間が過ぎれば他に移る。誰ともつながりを持たずに生きようとしていた彼女に、定食屋の仕事をしないかと持ちかけた大家さんがいて……。
 この仕事で、りさ子は少しずつ変化していきます。
 定食屋の息子亮は、りさ子との距離をつめていくし、一緒に過ごすうちにかつて作った煮卵の味も思い出していく。
 裏切られて、ただ生きるだけだったりさ子が、自分を取り戻すのです。
 次の物件に移ることを求められたりさ子が、一瞬拒否してしまったシーンが印象的でした。

「我慢ならない女」桂望美

2014-07-13 05:19:49 | 文芸・エンターテイメント
 最近の桂さん、なんかエキセントリックな感じがします。
 ハートウォーミングだけど毒があるところが好きなのですが、今回は主要人物の樺山ひろ江という作家が強烈で、不思議な読後感でした。
 「我慢ならない女」(光文社)です。
 何に我慢ならないのか、よくつかめない部分もあったのですが、新人作家がベテランになるまでの経緯が姪(マネージャー)の視点中心で描かれます。時々ほかの視点も交じりこむし、ひろ江が描いたらしい小説が入ることもあります。
 ただ、この小説が、流行作家として一世を風靡したという感じがしない……。どなたかモデルがあるのでしょうか。背景を作っていくうちに、この「仕掛け」を思いついて描いたのかもしれませんが。
 ただ、姪が結婚するあたりがあまりにもさらっとしすぎていて、ピクニックにいくくだりが必要だったのかと思います。彼女自身が夫に執着していませんよね。
 みのるへの復讐のあたりはたいへんスカッとしました。

「増山超能力師事務所」誉田哲也

2014-07-06 11:16:22 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 地区のお囃子練習で忙しい毎日です。
 なんか継続して本を読む時間もないため、まんがばかり読んでいます。
 誉田哲也「増山超能力師事務所」(文藝春秋)。ブックガイドで読んで興味を持った一冊ですが、ISの問題とかもあって、興味深かった。
 でも、増山がかつて遭遇した史代という女性の事件が、今ひとつ納得いかないような。
 思春期になって能力があらわれた少女のことを、史代と重ね合わせているので、相当に有名な事件なのかと思っていました。 
 この世界、ダークマターという宇宙物質の影響で、超能力をもつ人がいるのだそうです。
 で、そういう能力師たちが集まって、探偵事務所をしている。念写で事件のアリバイを調べるのには驚きました。
 うーん、眠気がとれません……。 
 明日からもまた頑張ります。

「トネイロ会の非殺人事件」小川一水

2014-07-01 04:26:47 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 「くばり神の紀」がおもしろかった。
 父親が亡くなる連絡を受けた花螺は、そこで豪邸を譲られます。母とは結婚しなかった父親なので、これまで会ったことがないのに。 
 枕辺に集った人々は、くばり神が現れたと言います。ほかの人にも様々な遺産を渡した様子。
 でも、身内もなく住み込みのアルバイトで働く高校生に、そんな家は必要がない。
 辞退しようとする花螺を、いとこにあたるという道風は郷里に連れて行って……。
 伝承の裏にある真相に、主人公ならずとも衝撃を受ける一作。
 あと、閉鎖空間での殺人を描く「星風よ、淀みに吹け」と、共同殺人を扱った「トネイロ会の非殺人事件」(光文社)。
 殺人を扱っているのに、爽やかなラストなのですが、人物が多すぎるような気がします。誰が誰やら、こんがらがってしまう。
 でも、小川一水の本はもうちょっと読みたいなと思いました。