図書室に、講談社の中学生向き図書セットを入れたのです。いいラインナップなんですよー。「つづきの図書館」「たまごを持つように」「園芸少年」。その中にあって、なんとなーくページをめくったら止まらなくなってしまい、会議室の角で立ったまま35ページ読んで持ち帰りました……。
すごい。中学生の顔が思い浮かぶ小説です。有沢佳映「アナザー修学旅行」。
五月二十八日(水)から二泊三日の修学旅行。とってもわくわくと楽しみにしていたのに、骨折してしまった「私」は同行することができず、普通に登校することになります。通常の学校生活を送る下級生たちから少し隔たって、それぞれ事情があって修学旅行に行かない七人が、同じ教室で過ごすのです。
テニス部顧問の安藤先生がやってきて出席をとり、あとは自習でビデオを見たり(これが、修学旅行の事前指導みたいなビデオ)体育館や図書室で過ごしたりして時間をつぶすわけですが、爆弾を投げ込んだような事件が勃発。七人は協力して証拠隠滅に奔走……というと、ちょっと語弊もありますが、おもしろい。保証します。
始めは全く誰が誰だかわからない。だって、七人って多いよね。それがだんだんわかってくる。読者もなじんでくるのです。そして、なんだか彼らとともに過ごしているような気になります。
まず「私」、三浦佐和子。平凡でひかえめな女の子です。隣のクラスの芸能人・岸本雅は、前年爆発的にヒットした青春ドラマに出演したため、ネットで修学旅行の研修先に行くというファン(?)の書き込みがあり、参加を断念。美少女転校生の湯川仁稀は始めから参加拒否。「ホーム」(施設)で暮らす野宮千里と小田知也は金銭的な問題。直前まで参加するはずだった「インテリヤクザ」こと片瀬幸博の理由は、喧嘩??
女の子たちがとってもかわいい。でもって、彼らはお互いに好意をもっていたことがわかる後半がいいです。望未のモデルは三浦さんときいて、わたしも頬がゆるんじゃった。
実は世界的なフォトグラファーの娘で、被写体でもある湯川さん。林檎の芯まで食べちゃうワイルドな子です。(この学校、「狼少女」のように階段を四足で上る女の子もいるそうですよ)
そうそう、七人といいながら六人しかあげていませんでしたね。秋吉直人。保健室登校の少年です。心因性の嘔吐をしてしまうために孤立している。
彼を教室に呼ぼうと小田が言い出すのです。女子にもてもての彼はちょっとお調子者。何度か「賭け」をしたがり、これもその一つなんですが……。
結果として秋吉も加わり、友達というには微妙だけど、なんとも個性的な集団に。
「次郎物語」を読み始める湯川さん。学級通信を作る安藤先生(「犯人が部長の話」といってブーイングがおきるところ、好きだなあ)。修学旅行先から電話がきて告白された小田。同じように友人から、片瀬のけがの理由を聞かされる「私」。弟がひどいめに合わないようにと県外の受験を考える片瀬。ホームの不思議な鬼ごっこ(?)の話題など、エピソードも好みです。
わたしは流行り言葉で書いてある文章って好きにはなれないんですが、例えば小田の台詞がそうなっていてもするっと受け止められました。
学校環境で「ん?」と思うことはちょっとあるけど(机がそんなことになっていたら、前の日の施錠巡視で見つかりますって)、でもでも、許せる。
湯川さんが「東京」から転校してきて、岸本さんは「東京」に行くとも言っているので気になるんですが、場所としてはどのあたりなのでしょう。子役から仕事をしていることを考えると、芸能活動しやすいところだよね。
わたしは野宮さんと友達になりたいな。小田とのやりとりがかわいい。もてるくせに彼女を作らない小田は、他の子としゃべっているのを気にされるのが嫌なんだそうです。この台詞がいい。
「それか、もう一生そいつとしかしゃべらなくていいってくらいのやつなら別だけど! そこまで面白いって自信があるならドンと来いっつうんだよ!」
ははは。
小田が野宮さんを呼ぶシーンがないのが、彼の気持ちを代弁しているようにも思うのでした。
すごい。中学生の顔が思い浮かぶ小説です。有沢佳映「アナザー修学旅行」。
五月二十八日(水)から二泊三日の修学旅行。とってもわくわくと楽しみにしていたのに、骨折してしまった「私」は同行することができず、普通に登校することになります。通常の学校生活を送る下級生たちから少し隔たって、それぞれ事情があって修学旅行に行かない七人が、同じ教室で過ごすのです。
テニス部顧問の安藤先生がやってきて出席をとり、あとは自習でビデオを見たり(これが、修学旅行の事前指導みたいなビデオ)体育館や図書室で過ごしたりして時間をつぶすわけですが、爆弾を投げ込んだような事件が勃発。七人は協力して証拠隠滅に奔走……というと、ちょっと語弊もありますが、おもしろい。保証します。
始めは全く誰が誰だかわからない。だって、七人って多いよね。それがだんだんわかってくる。読者もなじんでくるのです。そして、なんだか彼らとともに過ごしているような気になります。
まず「私」、三浦佐和子。平凡でひかえめな女の子です。隣のクラスの芸能人・岸本雅は、前年爆発的にヒットした青春ドラマに出演したため、ネットで修学旅行の研修先に行くというファン(?)の書き込みがあり、参加を断念。美少女転校生の湯川仁稀は始めから参加拒否。「ホーム」(施設)で暮らす野宮千里と小田知也は金銭的な問題。直前まで参加するはずだった「インテリヤクザ」こと片瀬幸博の理由は、喧嘩??
女の子たちがとってもかわいい。でもって、彼らはお互いに好意をもっていたことがわかる後半がいいです。望未のモデルは三浦さんときいて、わたしも頬がゆるんじゃった。
実は世界的なフォトグラファーの娘で、被写体でもある湯川さん。林檎の芯まで食べちゃうワイルドな子です。(この学校、「狼少女」のように階段を四足で上る女の子もいるそうですよ)
そうそう、七人といいながら六人しかあげていませんでしたね。秋吉直人。保健室登校の少年です。心因性の嘔吐をしてしまうために孤立している。
彼を教室に呼ぼうと小田が言い出すのです。女子にもてもての彼はちょっとお調子者。何度か「賭け」をしたがり、これもその一つなんですが……。
結果として秋吉も加わり、友達というには微妙だけど、なんとも個性的な集団に。
「次郎物語」を読み始める湯川さん。学級通信を作る安藤先生(「犯人が部長の話」といってブーイングがおきるところ、好きだなあ)。修学旅行先から電話がきて告白された小田。同じように友人から、片瀬のけがの理由を聞かされる「私」。弟がひどいめに合わないようにと県外の受験を考える片瀬。ホームの不思議な鬼ごっこ(?)の話題など、エピソードも好みです。
わたしは流行り言葉で書いてある文章って好きにはなれないんですが、例えば小田の台詞がそうなっていてもするっと受け止められました。
学校環境で「ん?」と思うことはちょっとあるけど(机がそんなことになっていたら、前の日の施錠巡視で見つかりますって)、でもでも、許せる。
湯川さんが「東京」から転校してきて、岸本さんは「東京」に行くとも言っているので気になるんですが、場所としてはどのあたりなのでしょう。子役から仕事をしていることを考えると、芸能活動しやすいところだよね。
わたしは野宮さんと友達になりたいな。小田とのやりとりがかわいい。もてるくせに彼女を作らない小田は、他の子としゃべっているのを気にされるのが嫌なんだそうです。この台詞がいい。
「それか、もう一生そいつとしかしゃべらなくていいってくらいのやつなら別だけど! そこまで面白いって自信があるならドンと来いっつうんだよ!」
ははは。
小田が野宮さんを呼ぶシーンがないのが、彼の気持ちを代弁しているようにも思うのでした。