くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「怖い女」「怖い家」

2023-10-22 15:42:08 | 社会科学・教育
母なる存在の恐ろしさを、多数の文献から紹介している「怖い女」。
「妖鬼妃伝」「黒い家」「ギリシャ神話」「マハーバーラダ」など、怖い本の紹介としても楽しめるのでは?
私は「古事記」が好きなのでイハナガヒメやトヨタマビメのエピソードが興味深かった🍀
都市伝説もいろいろありますねぇ。

対をなすのが「怖い家」。
生まれ直しと成長のメタファでもある家の情景が、神話から現代小説まで事例をあげながら語られる。
「ラーマ・ヤナー」懐かしい!
「古事記」にも見られる禁忌の伝承は、家のあり方にダイレクトに関わってくるのですね。
私もずっと小野不由美、宮部みゆき作品には家を描くものが多いと思ってたので、実に興味深かったです。
「ゴーストハント」「残穢」「営繕かるかや」以外にも思い浮かぶ作品たくさんあるなあ。「三島屋変調百物語」にも多いと思うんですよ。
こういうスタイルの論文、もっと読みたい。

「つけびの村」高橋ユキ

2020-04-19 13:43:37 | 社会科学・教育
 図書館もさらっとしか滞在できない今日この頃。
 久しぶりにドキュメント読みました。高橋ユキ「つけびの村 噂が5人を殺したのか?」(晶文社)。
 2013年7月、山口県周南市で起こった5人殺害、2軒の放火。
 犯人と目される男の家の窓には「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」という貼り紙が。

 ……気になるでしょう?
 でも、なんていうか、著者の姿がちらちらしがちで「異物感」が拭いされませんでした。わたしだけ?
 実録って、著者の「目」を通して事件を切り取る訳です。
 取材の結果よりも過程を重視しているのか、村をうろうろする描写がやけに出てくる。住人から見たら、見慣れない感じじゃないかと。
 なにしろ、12人しかいない集落なんですよ。
 その中で5人亡くなり、1人が逮捕。事件後転居した人もいるから、かなり目立ちますよね。
 イメージとしては、再現ドラマに近いと思うんです。「主人公」が巻き込まれていくスタイルの。
 取材のために子どもの世話を旦那さんに頼む苛立ちのような不要な表現があったり。

 結論からいうと、この事件にはどんでん返しも意外な真相も、ありません。
 犯人の妄想に引っ張り回される感じ。(この妄想は相当変ですが)
 古老が語る「ことの真相」も拍子抜けですが、伝奇的な方向なら成立しなくもないか……。(ないか?)
 と思っていたら、あとがきで愕然!
 「古老」の語りは、複数人の話をまとめたもので、実際には存在しない人物の回想として統合したんだって。
 うーん、事件そのものより、この方の「切り取り方」に疑問を感じます。「私が」「私が」「売れたい」というもがきのようなものに。
 執筆のスタンスって、大事だなと思いました。なぜ、この事件を自分が書かなければならないのか、という熱が、伝わってこない。
 彼女の切迫感は、違うところにあるような気がします。

「新婦、入場です」御蔭直

2019-08-06 19:11:52 | 社会科学・教育
 同僚の結婚式におよばれしましたー。
 しかし、会場を間違えてフラワーシャワーに間に合わず……⤵️
 素敵な披露宴で、知っている人も多く、楽しかったです。
 ただ、わたしの車、クーラーが効かなくて……。汗みどろで、申し訳ない。
 結婚式つながりで、御蔭直「新婦、入場です」(小学舘)を読みました。97年出版! 最近こういう古い本ばかりですね……。
 御蔭さんは司会者として結婚式に携わってきた方。様々な場面のエピソードを紹介しています。
 カフェバーで知り合った新郎新婦、初めて会った気がせずに交際を深め、結婚を決めて挨拶に来たところ、お父さんが仰天。昔、借金がらみで困っていたときに、助けてくれた人の息子さんだったのです。
 このエピソード、かつて出久根さんの読書エッセイで読んで、たまらなく読みたくなって買ったのでした。
 他にも53歳の花嫁とか、仲人さんが再婚しちゃって代理人を立てた話とか、ディスコでのナンパで知り合ったことをごまかすために「ダンスパーティー」と言い換えたとか、式場ならではの話題が満載です。

「このゴミは収集できません」滝沢秀一

2019-07-25 22:26:32 | 社会科学・教育
 ビブリオバトルをするなら、今はこれをとりあげます。
 マシンガンズ滝沢秀一「このゴミは収集できません」(白夜書房)。
 筆者は2012年にゴミ収集の会社に就職。著者名にマシンガンズと書いてあるように、お笑いコンビとしても活動されています。
 東京都のゴミ収集員の中には、役者を目指している方やミュージシャン、ボクサーなどを生業とされている方も多いそうです。中には、声優を目指していたのに、いつの間にか「タンゴレッスン生」とやらになっている人も……。
 ツイッターからの出典も結構あって。
「粗大ゴミ回収の日に、ガラスケースに入った人形がオンパレードで出てくると、やっぱり怖い」
「ビン1本ぐらいわからないだろうと可燃ゴミに入れている人がいるが、1年も働けば持った瞬間、音と重みですぐわかる」
「生ゴミを新聞紙でくるんで出しているお宅は、きっとおばあちゃんが台所に立っている」
「濡れた畳の重さを皆にも味わってほしい」
 引っ越しを考えている人は、ゴミ集積所をチェックすると良いとのこと。清潔に保っている場所は、治安も悪くないと言います。近所の人たちの「目」が行き届いている。
 更に近所のコンビニや公園も、要チェック!

 ……と、ここまで書いてまとめないまましばらく放ってありました。
 そしたら、奥さんがまんが化した単行本が出たのですよ! 滝沢友紀「ゴミ清掃員の日常」(講談社)。
 前作にはないエピソードも紹介されています。手軽に手に取れるのはいいですね。
 瓶を捨てたことがあることを、ここに懺悔します……。

「ストーカーとの七○○日戦争」内澤旬子

2019-06-30 19:15:14 | 社会科学・教育
 内澤さんの新刊!
 うおー、何年ぶり? と思ったけど、前作「漂うままに島に着き」が初読みで、その後あれこれと既刊を読み漁ったわたしとしては、これ、待ちわびていた本なのです。
 前作のあとがきで、現在はこの理想的な住処から移り住んでいることや、何やら困っていることが匂わされていて、一体何があったのかと。
 付き合っていた人との別れ話がこじれて、嫌がらせを受けていたのですね。
「ストーカーとの七○○日戦争」(文藝春秋)。仙台に出張した帰りに買いました。
 このところ、なかなか本をちゃんと読めずにマンガばかり手に取っていましたが、これは読めた!
 よくここまで書いたよなー、内澤さんへの敬意を表明したいと思います。口語表記が、すごく身近に感じられて、もういかに困り果てているかよく分かる。
 小豆島に住んでいるため、相手が上陸したかどうかで緊急体制がしかれるシステムに感心しました。警察が、頑張ってくれている感じ。
 だけど、いろんなことが引き金になって、示談したのにメッセージがくるし、2ちゃんねるで中傷されるし、そのことで相談すればかなり際どいことまで繰り返して話すことになるし、本当にお気の毒です。
 中でも、警察に相談したら、実は前科があって知らされていたのも偽名だった! ってーのは、相当ショックですね!
 当時SNSでのやり取りはストーカー認定されないとか、削除依頼を出しても手続きが煩雑で受け入れられないとか、いらいらするような出来事がたくさんあります。
 相手がいつ近くに現れるか分からない恐怖。実刑を受けても長くはないので、やがて保釈されるのです。そうしたら?
 他の犯罪なら再犯は不特定だけど、ストーカー被害はターゲットは一人に絞られてしまう。位置情報の提供と、病理認定して治療ができるようにしてほしいとの考え、賛成です。
 こじれた人間関係は、苦しいですね。二度と会いたくない人は、噂を聞いただけでもやりきれない思いがします。
 内澤さん、応援してます。次の新刊、また待ってますね。

「国語教育を救え」宇佐美寛

2018-09-29 05:13:22 | 社会科学・教育
 「学習指導要領は間違っている」!(121ページ)
 すごいよ宇佐美先生! このパワー、いっぺん読んでいただきたい。
 「私の作文教育」は途中で挫折してしまいましたが……。
 こちらは一気に読みました。宇佐美寛「国語教育を救え」(さくら社)。
 宇佐美先生の主張は、文章を批判的に視写させることが国語教育には必要である、ということです。
 指導要領が求める「言語活動」や、授業の肝とも言われる「発問」は、独自の視点をもつ読み手を育てることができない。

 わたし、先日研修で「小学校の国語の授業の思い出を聞くと、年配の教員は教材を答え、若い教員は学習活動を答えることが多い」と言われました。例として新聞づくりがあげられていて。
 この本には、「海の命」の父の死を、「新聞記事に書く言語活動」の意味のなさが指摘されています。
 教科書の文章と新聞の文章は異なる。この活動は、教材から遊離していくことに他ならない。ひいては、原文を精読することができなくなる。

 わたし自身、生徒にあまり本文を読ませていないと反省しきりです。
 視写や読み上げ筆記をさせないといけないと思いました。
 すぐ影響受けてしまいますね。
 アクティブラーニングについての本も、読みたいのですが……。
 それより前に「作文教室」を完読せねば。

「玄人ですもの」室井滋

2018-09-27 23:05:12 | 社会科学・教育
 対談ものが好きです。
 これも、すごくよかった。最初は気になる人だけピックアップして読もうと思ったのに(笑)。
 「室井滋のオシゴト探検 玄人ですもの」(中央公論新社)。
 室井さんが、「大人のための社会科見学」(帯の惹句より)として、最前線の27人を訪ね、体験インタビューをする一冊です。
 目次をめくってみると、なんと三人めに山口画伯が!
 全く気づかずに買ったので、嬉しい。絵とかアトリエの話、基礎知識があるのでイメージ浮かんでくる。
 続いて金澤翔子さん。さらに穂村さん。気がつくと、一気に全部読んでしまいました。(もちろん、初めのお二人も途中で戻って読みましたよ)
 以前から存じ上げていたのは、立川志の輔、日比野克彦、本川達雄、森岡浩(敬称略)。
 もっと知りたいのは、解剖学の遠藤秀紀、鍵師杉山泰史、昔話研究小澤俊夫(小澤征爾の兄!)。
 似顔絵捜査官や麻薬Gメンの方、ライトアップ職人やプラネタリウムづくりの方も興味深い。
 室井さんの引き出し方も楽しいですよ。できれば、単行本未収録の回も読みたいものです。

「カミングアウト」砂川秀樹

2018-09-05 20:34:41 | 社会科学・教育
 新聞の書評で読んで、関心を持った一冊。砂川秀樹「カミングアウト」(朝日新書)。
 カミングアウト、といえば、それはそう、LGBT関連ですよね。
 帯には、「『母さん、実はー』その時、関係はどう変化するか?」とあります。
 筆者自身に同性のパートナーがいて、2000年に東京レズビアン&ゲイパレード(東京プライドパレード)の実行委員長をされているそうです。

 様々な事情でカミングアウトする人、される人、家族など、具体的に紹介されています。
 冒頭に描かれている青年は、兄がゲイを拒否するような発言をしていたことから、カミングアウトをためらっていました。
 東京で仕事があったお兄さんに、イベントが終わらないから店に来てほしいと連絡する。その店がゲイバーで、「気づいてあげられなくてごめんな」と言われるのです。
 パートナーのお母さんに話をすることや、カミングアウトが原因で学校に行きづらくなるエピソードもあります。
 LGBT関連の書籍は、悩んでいる子が手に取りやすいように学校にも置いておくべきだと聞くので、寄贈します。

 さて、性同一性障害についての本も読みました。LGBTのTの方は、ほかの立場と大分違うということでした。
 西村明樹「子どもの性同一性障害に向き合う」(日東書院)。
 トランスジェンダーというのは、自分の性を受け入れられない存在だと西村さんは言います。
 男だとか女だとかはっきりできない面もあるのだそうです。一人の中には混在している。 
 世間に情報が出回るようになって、自分の子どもがトランスジェンダーではないかと相談にくる人が増えているそうです。
 まだ未成熟な時期に、決めつけてしまわなくともいい。どうしていくのが本人にとって生きやすいのか、考えていきたいものですね。

「モンスターマザー」福田ますみ

2018-09-03 05:49:10 | 社会科学・教育
 福田ますみさんの本とあって、すごく読みたかったのです! 「モンスターマザー」(新潮社)。あの「でっちあげ」と装丁も似ている!
 副題「長野・丸子実業『いじめ自殺事件』教師たちの闘い」。
 丸子実業の事件と言われても、ぴんとこない人が多いのではないでしょうか。
 2005年12月、不登校の高一男子裕太くんが自殺しました。母親のさおりさんは、原因はいじめを容認したバレー部と、担任の心ない言葉、周囲が執拗に登校を促したこと、ひいては校長の責任だとして、メディアも巻き込み、学校関係者を訴えます。
 バレー部員たちや教師の家には連日の電話、ファクシミリ。しかも、聞くにたえない暴言ばかり。
 彼らは名誉毀損で母親を訴え、裕太くんの死の真実を知りたいと考えます。
 わたしが感激したのは、バレー部監督上野先生の奥さんの京子さんが証拠を集めようと奔走するところ。母親と同じ町内の出身なので、ママさんバレーチームなどに質問を重ねていくと、彼女の異常ともいえる行動や、前夫との離婚時の暴力と虚言がわかっていくのです。
 それにしても、この時期にネットで知り合った人と三度めの結婚をして、またすぐ離婚したというバイタリティー(?)には驚きます。
 弟のまなぶくんは、母親と兄の間に挟まれないような処世術だったのでしょうか。
 
 まんがですが、夾竹桃ジン「ちいさいひと 青葉児童相談所物語」(少年サンデーコミックス)も読んだので、裕太くんがもうじき保護されるはずだったのに自死の道を選んでしまったのは、悔やまれます。
(「ちいさいひと」は、東日本大震災の石巻を舞台にしたストーリーもありました)

「人間はだまされる」三浦準司

2018-08-10 06:27:12 | 社会科学・教育
 「人間はだまされる フェイクニュースを見分けるには」(理論社)。
 ネット時代、わたしたち一人ひとりが「記者」としてニュースを配信できる世の中になりました。
 多くのジャーナリストが報道の責任を考えて活動していますが、ニュースには様々な側面があります。
 よく考えないとだまされてしまうことも、情報が一人歩きしてしまうこともあるのです。
 今までメディアリテラシー関連の本はかなり読んできたので、内容としてはわかっていたことが多いのです。
 「前畑がんばれ」が当時批判されたというエピソードは、客観性というものを考えさせられると思います。(今は自国応援の中継ばかりですものね)

 先日も、「その情報本当ですか? ネット時代はニュースの読み解き方」(塚田祐之 岩波ジュニア新書)を読みました。

 ついでに、笹沢左保の「どんでん返し」(双葉社)もやっと読みました。
 二人の会話だけで続く短編集です。
 母と妹を失火で失った弁護士が、確執がありながら父と過去について話す「父子の対話」がおもしろい。