くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「震災後の不思議な話」

2018-03-31 18:50:19 | 社会科学・教育
 書店で面陳してありました。ずっと気になっていたので、読めてよかった。宇田川敬介「震災後の不思議な話」(飛鳥新社)。
 三陸でいつの間に話されるようになった怪談や、実際に見たという人に聞いた奇妙なエピソード。自分が死んだ自覚のないらしい悲しい話が集められています。
 著者は以前マイカルにお勤めだったそうで、出張で東北に来たときに知りあった方々から聞いた話が多かった。 
 これは釜石だろうとか、気仙沼だろうなと思う場所も、なんかぼかして書いてあるのは、自分の住む町に怪異があると伝えられるのは嫌だからという人に配慮したからだそうです。
 母親が、死んでからもなお子どものことを心配している話が印象的でした。
 瓦礫の下にある車に取り残された子どものことを探している姿が、幾度も目撃されたのだそうです。余りにも一瞬で死んだ自覚がないらしいながらも、一心に探し続ける姿は、怖さを感じさせるものではなかったといいます。
 以前テレビドラマで、自分が拷問を受けても仲間が殺されても、決して口を割らなかった女性刑事が、娘が狙われると我慢ならなかったという場面を見たことがあります。
 わかる、と思いました。
 子どもには、未来を生きてもらいたい。
 もう、それが叶わなくても、探さざるをえない逼迫しものが、概念としてあるのです。
 わたしたちはあの震災で、多くを失いました。
 失ってしまったものには、取り戻せないものもあります。
 どこかで、誰かの耳に伝わる悲しい怪異、本来ならば広範囲には広まらないはずの物語が、こうやって読まれていくことは、やはり大切だと思いました。

「国語辞典の遊び方」サンキュータツオ

2018-03-28 22:26:26 | 言語
 確かに! 学校では教えません、国語辞典の遊び方。調べ方も宿題にすることが多いのです。
 サンキュータツオ「学校では教えてくれない! 国語辞典の遊び方」(角川文庫)。
 サンキュータツオ氏の研究内容(?)に興味があります。「ヘンな論文」シリーズ、おもしろい。
 さらに、飯間さんのおかげで辞典に興味が湧きました。うちの図書室に三省堂国語辞典(三国)の七版ありました。わたしも、かつて友人からもらった三国の四版愛用してます。
 以前、小学舘の神永曉さんの講演を聞いて、日々更新すべく努める姿勢に感銘を受けて、新しい辞典を買おうと思ったにも関わらず、やっぱりまだ買っていません。だって、高いんだもん。
 しかし、息子も高校生。
 入学時辞典を購入するようにと学校からのお達しが。
 四冊のおすすめが提示されているため、参考にと思って読みました。

 でもさー、そのうちこの本に紹介されているのは、「新明解」と「明鏡」だけなんだよね。
 息子に辞書占いをさせてみたら、角川必携にたどり着いたし。(ちなみに、わたしも同じ結局でした)
 タツオさんの好みの集英社とかベネッセとかは息子の学校では推奨していないらしい。
 
 ただ、こうやって擬人化してもらうと、物凄く分かりやすい。
 辞書なんて皆同じ、ではないんですね!
 わたしが高校生のときに愛用者したのは旺文社でしたが、当時は他の辞書との違いなんて考えたこともありませんでした。
 実は単行本を丸善で見かけたことがあるのです。読めばよかった。
 
 で、ラストには辞書関連本も紹介されています。
 石山茂利夫「国語自転車事件簿」「国語辞典ー誰も知らない出生の秘密」、高田宏「言葉の海へ」が読みたい! 
 後者は大槻文彦の生涯を描いているそうです。
 大槻一家、一関と関連するはずなので、興味あるなあ。さらに、タツオさんはこれを読んで「大河ドラマ」にしてほしいと思ったとか。気になる!

「たぶん、出会わなければよかった 嘘つきな君に」

2018-03-26 05:24:07 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 あー、わたしにはこの落ちは理解できませんでした。
 好きな女の子の復讐を阻止するためにどうします?
 結局失敗してるし。第一章途中で奈々の正体は予測できます。
 佐藤青南好きなんですが、何だか違和感を覚えるのは、原案があるからでしょうか。
 佑子の境界性人格が読みどころだと思えばよいかもしれません。

 ネット検索すると、アマゾンでは高評価だし、TSUTAYAでは原案を担当した書店員の方が現場の意見を取り入れた自信作というアピールをされています。
 でも、これ、おもしろいの?
 
 司法試験合格を念頭に、公洋が働いている事務所はワンマン所長の暴言が厳しいブラックな職場。
 友人とのみにいった店で、女子大生の奈々と知り合います。
 デートの約束をした日、友人と現れた奈々は、同僚も誘って飲むことを提案。その中に峰岸佑子がふくまれていました。
 佑子は公洋に親しげな態度をみせるようになりますが、彼の心は奈々に引かれていきます。
 佑子が意図的に公洋の足をすくい、事務所をクビになったというのに、彼女は平然と映画に誘ってくるのです。
 「たぶん、出会わなければよかった嘘つきな君に」(祥伝社文庫)というタイトルなんですが、「嘘つきな君」というのは奈々のこと? 「たぶん」もよくわからない。
 出会わなければ、殺されずに済みますかね?
 同僚ですし、奈々がいてもいなくとも同じような罠は待っていたと思うのです。
 佑子を手にかけようとしなくて済んだ?
 普通、こういう理由で自分が人を殺そうと思いますか? 
 疑問は次々浮かびますが、最も腑に落ちないのは、奈々が公洋に引かれていたという割にはけろっとしていること。
 なんか、全体的に後悔がない感じです。
 現場が求める売りって、どういうことなのでしょう。どんでん返し? 一気読み必至のラブストーリーとか純愛とかいってますが、これが純愛だとはとても思えない。
 佐藤青南の魅力はちょっとした意地の悪さと、それでも残るあたたかさだと思うので、不完全燃焼ぎみです……。

ビブリオバトルやってみました

2018-03-24 08:13:35 | 〈企画〉
 準備に二時間かけたのですが、実際に五分タイムを計ってみないと、話すのは難しいものです。
 シナリオメモが二分で終わってしまう。あらすじをどう話せばいいのか分からなくて迷走する。他の人の紹介本を読み始めて発表を聞いていない……。
 それでも何とか五分話しきろうとする子と、最初から時間を計って練習した子では、話のレベルが違いました。
 中にはぎりぎりまで本が決まらない子もいました。 
 四人グループで、全体の司会はわたしが、質疑応答二分は各班で進行。
 チャンプ本は指差し確認しました。

 まんがや雑誌を持ってきた子は多かったのですが、図書室から借りてきた子も多かったです。
「前から読んでみたかったから、今回読みます」とか。
 「ざんねんないきもの」や絵本、心理占い、将棋、ライトノベル、雑学、釣りの本、読書感想文を書いたときに読んだ本など、いろいろ。「広辞苑」や「るるぶ」もありました。卓球のカタログなんてどう説明する気なのか……。
 
 まんがの貸し借りはしないように話したのですが、グループで紹介された本を読んでみたいと感じる子は多かったです。
 普段ケータイ小説しか読まない女の子が、図書室から一冊借りていきました。(もう貸し出し期間は終わっているのですが、ぜひ読みたいそうです)
 それはいいのですが、勝手に図書室から持っていったまま教室に残された本が数冊……。そして、持ってきたまんがを隠れて読んでいて、教頭先生に叱られた子が一名……。

ビブリオバトル説明ブックトーク

2018-03-22 20:49:39 | 〈企画〉
 分かりづらいタイトルですみません。
 年度末で時間が三時間くらい残ったので、ビブリオバトルをしてみることにしました。
 最初は、学年の先生方に見本を示してもらおうかと思ったのですが、なんだか今年はやけに忙しくて、お願いするのが申し訳ない……。
 本の紹介スピーチと、大まかなルールが伝わることを目的に、ブックトークをしてみました。

 選んだ本は、「外来鳥ハンドブック」「いじめ 心の中がのぞけたら」「京大芸人」「よく考えて! 説明のトリック」、それに「坊っちゃん」を加えた五冊。
 図鑑風、まんが、エッセイ、リテラシー、小説と、タイプの違う本にしてみました。
 授業の残り時間を使うので、クラスによってどれにするかは変わります。(「坊っちゃん」からの流れてなので、これだけは必ず触れます。六分半かかるけど)
 付箋紙にシナリオメモを書いて貼り、キッチンタイマーを使って、通勤中に練習しました。
 ……五分なんて、全然たりない。
 最初、三分でもいいかなと思ったのですが、それは大きな間違いだった!
 あらすじすら、話しきれないじゃん!
 でも、五分でも足りないことが多かったため、冗漫になりそうな部分は削りました。

 生徒に人気があったのは、トリックの本。わたし自身は「水は答えを知っている」の話題が好きですが、生徒を関心を考えて「血液型占い」と「エッフェル塔を売った男」を紹介しました。
 それから、「いじめ」。二巻にしたのは、最近図書室に入れたからPRと、まんがも選んでいいよというアピールです。
 借りていく子はいないのですが、放課後に読んでいる子は結構いて、卒業した女子が「図書室にある本でいちばんのおすすめ」と友達に話しているのを小耳に挟みました。何より、本山理咲さんの作品をもっと広く読んでほしい!

 「チャージ」という話を選びました。
 学校も習い事も友人関係もきらいじゃないのに、何だか学校にいけなくなる女の子。
 電池が切れたら充電するように、自分のチャージ時期が次第にわかってくるはずとお母さんに励まされる。
 中には「やっぱり不登校のままじゃん」という子もいましたが、思惑通り読んでくれる人が増えました。

「多肉植物の寄せ植え」

2018-03-21 16:13:45 | 産業
 最強、多肉植物に心引かれています。
 もともと、息子がテラリウムを作りたいと言い出したのがきっかけなんですが、その前から百均の植物を育てるのが趣味だったので、ちょこちょこ買ってきてしまいます。
 かわいい寄せ植えが作りたいなー、と借りてきたのが、松山美紗「多肉植物の寄せ植え」(日東書院)です。
 白い器、製氷皿、ビーカー、マグカップ、アルミ、ケーキ型、スコップ、枡など、さまざまな器に植えられる多肉植物たち。明日はホームセンターで水ゴケとパミスを買わねば! と思ってしまいます。
 いままで、ただただ土に植えてきたのですが、モスだの水ゴケだのを使う方法もあるのですねぇ。
 この本には、紙の箱にモスを入れてカット苗をプレゼントしたり、ガラスのババロアカップに水ゴケを入れてエケベリアやセダムをよせ植えするアイデアもありました。
 植え木鉢じゃなくとも、いいんですね! 
 ガラスのプリン型なら何個かあるので、作ってみます。

「ふしぎな110番」

2018-03-20 22:22:01 | 総記・図書館学
 何年前だったか、ある書店で「ふしぎな110番」(彩図社)という本を見かけたのです。
 「県警本部の通常指令課に『本当に』寄せられた110番通報」というサブタイトルから、内容は察知されますよね。
 ぱらぱらめくると、ひったくりにあったとか無銭飲酒があったとかの通報に、なんとも言えない味わいがある。 
 だけど、さすがに買いすぎだよなと反省したため、当時は諦めました。
 その後、しばらくして再来店したものの、本はもうありませんでした。

 ところが、授業でビブリオバトルをすることになり、生徒の紹介したい本を教えてもらっていたら、Eくんが担任の先生の本を借りて行いたいというのです。
 見せてもらったら、あの本ではないの!
 授業終了後、さっそくわたしも借りました。

 夫婦喧嘩中の酔っ払った男性からの入電。
「警官がいつまで経っても来ないじゃないか!」
 警「確認したところ、すでに警官は着いているようですが……」
「俺の味方の警官が来ないんだ!」
 →それは、いつまで待っても来ないでしょう。

 暗い声の少女からの少女。
「お父さんとお母さんが喧嘩をしています」
警「大丈夫ですか?」
「お父さんは、警察官なのに……」
 
 今回読めて満足です。I先生ありがとう!

「歴史はバーで作られる」鯨統一郎

2018-03-18 20:24:16 | 文芸・エンターテイメント
 「邪馬台国」シリーズなのかと思って借りてきました。でも、違うバーで、違う登場人物(多分。人物の名前を覚えていないことが分かりますね……)
 バー<シベール>。美人バーテンダーのミサキさんと、常連の歴史学者(自称? それとも……)の村木老人。(二人は親密な仲?)
 そして、最近日曜日を夜に明日運ぶようになった喜多川先生(新進気鋭の歴史学者)と教え子の「僕」(安田)。
 ネアンデルタール人絶滅の謎、八百屋お七が小火程度に処刑されたのは? マヤ文明、銅鐸、そして、義経は別人説!
 歴史の知識がなくとも、話しているうちに鋭いひらめきを見せるミサキ。さらに彼女、提供してくれるカクテルやおつまみが魅力的です。
 カルピスを日本酒で割るYOSHITSUNEがおいしそう!

 わたしは日本史が好きなので、義経の回が最もおもしろかった。
 義経といえばジンギスカンといくのかと思いきや、常磐御前の願いで別人と差し替えられたというのです。
 義経の乱暴のエピソードで、金売り吉次の家を焼いたというのがあるそうです。(「義経記」)
 でも、「平治物語」だと陵助重頼という人なんだとか。
 すみません、わたし、あえて順番を逆にしました。陵の方が「歴史はバーで作られる」(双葉社)では先に描かれたています。
 鞍馬山から、義経を連れ出して平泉に案内した男ですよね。
 地元では「金売り吉次」が一般的なので、他の人の名前があるとは思ってもいませんでした。
 吉次は、金成という地域の出身です。父親は炭焼き藤太と言われています。都からお告げに4日嫁いだ奥さんの預けた黄金を鴨に向けて投げつけ、諌められたときに、炭焼き小屋の近くにいくらでもあると伝える。
 金成から平泉はそう遠くないので、藤原一族につてがあるのだと思うのです。
 でも、鯨統一郎のこういう視点はおもしろいですよね。

「今日もいい天気」

2018-03-14 19:50:18 | コミック
 三冊めが出るとは!
 山本おさむ「今日もいい天気 原発訴訟編 コタと父ちゃん編」(双葉社)。 
 震災で福島を離れた山本さん夫妻は、再び被災地に戻ることにします。
 原発の裁判を取材するうちに、人々の苦悩に次々と出会います。
 蕎麦屋を営んだいた男性。社交ダンス教室を営むでいたご夫妻。酪農をされていた旦那さんと、看護師を奥さん。悩む子どもたち。
 彼らの思いをまんがという媒体で描く山本さんの情熱を感じました。
 さらに、愛犬コタが散歩中に足を引きずるようになる。専門医に見せるために埼玉まで連れていきますが、やがて……。
 犬好きには切ない展開でした。
 山本さんは、これが最終巻とおっしゃいますが、まだ読みたい!

 東日本大震災から七年。
 教科書に「いつものように新聞が届いた」という教材があるので、生徒に当時(小学二年生)の記憶を話してもらいました。
 校庭で家の人を待っていた。余震で家に入れず、車で夜明かしした。せっかく作ったプラモデルが全部壊れてしまった。家に発電機があって助かった。等々。
 石巻から転校してきた子は、川の水が溢れたと話していました。
 わたしが当時担任した生徒たちも、この春、大学卒業です。
 
 「はじまりのはる」(講談社)、福島在住の端野洋子さんのまんがです。
 農業科に通う純。同級生の玄太が一年留年していることから、ちょっとぎこちない接し方しかできません。
 二人で牛の出産に立ち合い、感激したのもつかの間、震災で生活が崩れていきます。
 餌を調達できない、放射能の営業がある、風評被害。
 そんな毎日で疲弊していく玄太に、なんとか手を差しのべたいと思った純に、教師たちは「本当に役に立ちたいの?」「解らないっていうのは戦えないことだし、簡単に恐怖に飲まれる」と語ります。
 二巻に登場する研一は、放射能の影響で家業の椎茸栽培が廃業に追い込まれたことから、逆手にとって放射能助教授きのこをつくる決意をします。
 福島に生きる彼らは、この事故のために人生まで変えられてしまう。
 震災前に描かれた「ミルクボーイ」という作品が収録されています。シリーズのプロトタイプ的作品ですが、このキャラクターが気に入って、設定を変えて描いたのだろうなと思います。
 七年は経ちましたが……復興したとは言えない現状です。新たな問題も出ているはずです。
 震災以前には戻れない。それなら、次の被害を食い止めるために考えていく必要があると思います。

「坊っちゃん」夏目漱石

2018-03-13 20:24:46 | 近代文学
 教科書版です。11章のうち1章のみが掲載。
 清水義範が教員実習にいったとき、この教材を担当してテーマが「清への愛」であることに愕然としたエピソードを読んだことがあります。
 グループで問題づくりをする課題をしているのです。全体を読むわけてはないのだから、細部を考えさせたいのですが、自分だったら思いつかないようなものが生徒からは出てくるわけです
「清の強いところはなんですか」(答え「想像」!)
「親父がしないことはなんですか」(答え「えこひいき」……)
 ちなみに「悪太郎と呼ばれてどうされますか」という問題の答えは「爪はじき」だというので、意味を尋ねてみると「おはじき……?」。
 「ごましおのびん」の意味は分からない子が多いとは予想していましたが、ううむ。
 ただ、明治の文章が今でもすらすら読めるだけでもものすごい力強いですよね。
 
 そういえば、坊っちゃんは左利きのようです。ナイフで右手の親指を切りつけますからね。
 ドラマで二宮くんが演じたとき、本来左利きの彼が箸を右で持って食事をしていましたが。

 坊っちゃんは幼少のころ、人参畑の上で相撲をとったり、井戸を埋めて水をせき止めたりさんざんいたずらしますが、松山の学校でうどんや団子のことでからかわれたり、バッタのことで怒ったりします。自分がされるのは嫌ってことでしょうか。
 あ、食べるものについて描いてあるのも特徴かも。清からきんつばや紅梅焼きを買ってもらい、別れ際にも「越後の笹あめ」の話をしています。
 下宿の食事より松山の方がうまいとも言っています。
 そういえば、「命よりだいじな栗」とも言っている。
 わたしは漱石作品は「坊っちゃん」「こころ」「夢十夜」しか読んでないのです。
 でも、東北大学の漱石文庫に行ってみたいのです。地下鉄開通したことだし、行ってみようかな。